艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第九話 6 運命なんて

再編成を遂げた大神機動部隊。

だが、敵艦隊も地上戦力もほぼ無傷。

 

真の戦いはこれからである。

 

「隊長、敵、第二次攻撃隊を確認したぞ!」

「けれども――」

「ええ、さっきとは違うわ!」

 

赤城も、加賀も、蒼龍も、そして飛龍も、心に闘志が漲っている。

慕うものの指揮下で全力で戦い、そして勝利に導く。

そして赤城たちは一つのことに気付いていた。

 

すなわち自分の霊力に、そして自らの身体に満ちる大神の霊力に。

 

今なら出来る筈だ、大神の如く霊力を運用した戦いが、航空戦が。

 

「大神隊長、航空戦はお任せ下さい! 皆さん私達に続いて下さい!!」

「分かりました、赤城さん!」

「分かった。頼んだぞ! 赤城くん!」

 

ああ、隊長の信頼の声一つで、こんなにも幸せになれる。

その思いと共に弓を引き絞る赤城。

引き続き、蒼龍たちが弓を引き絞る。

 

「いきますよ、加賀さん!」

「ええ、赤城さん」

 

『大神機動部隊! 一航戦! 一の舞!!』

 

奇しくも、それは弓を扱っていた華撃団隊員、北大路花火のそれとよく似ていた。

 

『烈風怒涛!!』

 

その掛け声とともに矢が放たれ、多数の艦載機へと転じていく。

否、多数というどころの話ではない、空を埋め尽くさんばかりの勢いだ。

 

放たれた烈風は通常時以上の機動性を発揮し敵機を次々と撃墜していく。

それだけではない。

艦爆も艦攻も、偵察機でさえも戦闘機以上の機動性を以って敵機を撃墜する。

僅かな間に敵艦載機は激減していく、いや壊滅していく。

 

赤城たちは感覚で掴む。

制空権を確保しただけではない、完全に掌握したと。

 

「大神隊長! 制空権、完全に掌握いたしました!」

「よし! みんな反撃に転じてくれ! 先ずは敵艦隊を撃破する!」

「了解! 今度は私達の番ね、飛龍!」

「ええ、行きましょう、蒼龍!」

 

大神の声に大きく頷く蒼龍たち。

 

『大神機動部隊! 二航戦! 二の舞!!』

 

その声と共に蒼龍たち二人がジャンプし宙に舞い、一回転すると天に向けて矢を放つ。

 

『追魂奪命!!』

 

天に消えていった矢。

しかし一瞬の間を置いて、それは天より無数の艦爆艦攻となって驟雨の如く急降下し降り注ぐ。

 

「いっけー!」

 

僅かばかりの敵直衛機が艦隊を守ろうとするが、もはや絶対数が違いすぎる。

回避する隙間もないほど、文字通り雨霰とばかりに爆撃雷撃を受け、敵艦隊は紙屑の様に引き裂かれ、撃沈されていく。

 

「敵艦隊のうち、5艦を撃沈! 新型の空母型深海棲艦も壊滅状態、撃沈寸前です!」

「Wow~、私達の出番、必要ないデース」

「追撃をかけますか、隊長?」

 

航空戦のみで敵艦隊はもはや壊滅状態となった。

もはやこちらへの攻撃を行うことは叶わないだろう。

 

「いや、敵艦隊が完全に戦闘能力を喪ったのなら後回しにしよう。MI島を陥落させるぞ!」

「「「了解!」」」

 

大神たちはMI島へと向かう。

そして、矢を番えなおす赤城たち。

 

「いくわよ、翔鶴ねぇ!」

「もちろんよ、瑞鶴!」

 

『大神機動部隊! 五航戦! 三の舞!!』

 

続いては自分の番だとばかりに、瑞鶴たちが矢を放つ。

 

『炉火純青!!』

 

それは対地攻撃用の爆弾を積んだ艦載機たち。

だが、霊力の込められたそれは常なる赤い炎ではなく、蒼き浄炎を上げる。

浄炎に焼かれ2体の飛行場姫が朽ち果てていく。

しかし、

 

「飛行場姫2体の撃破を確認! 新型の陸上型深海棲艦にも打撃を……回復してるですって?」

 

 

 

MI島を目視できる位置に大神たちが辿り着くと、確かに新型の陸上型深海棲艦――中間棲姫は無傷で健在だった。

 

「何故回復を? ……作戦を『火』に変更する! 金剛くん、利根くん、筑摩くんは三式弾による砲撃を中間棲姫に! 神通くん、朝潮くん、秋雲くんは敵駆逐艦の撃墜を!」

「「「了解!」」」

 

そして金剛たちは三式弾による砲撃を加えるが、やはり中間棲姫は瀕死の状態からでも回復してしまう。

無傷の状態へと戻り、神通へと攻撃を加えようとする。

霊力による分身体によって神通を庇う大神。

 

「何でデース! あそこまでボコボコにしたのにーっ!」

「俺が行く! 霊力技で浄化すれば、或いは――」

 

その言葉と共に大神が中間棲姫へと接近する。

 

「いくぞ! 破邪滅却 悪鬼退散!!」

 

二刀から白き光を帯びた剣風が巻き起こり、中間棲姫へと放たれた。

一時的に浄化され、転じようとする中間棲姫。

しかし、MI島から、周辺の海から夥しい瘴気が中間棲姫へと流れ、深海棲艦へと戻ってしまう。

 

再度砲撃を爆撃を浴びせるが、やはり回復してしまう中間棲姫。

 

「どうしよう、このままじゃ……」

 

蒼龍が零す。

このままでは埒が明かない。

やがて弾薬も矢も底を尽き、撤退を、敗北を余儀なくされるだろう。

 

「そんな……まさか、運命には抗えないというの?」

 

ポツリと呟く赤城。

 

「そんなことはない!」

 

中間棲姫と切り結びながら、大神が叫ぶ。

 

「運命なんて、自分の力でいくらでも変えられるものだ!」

 

幾度も回復する中間棲姫を倒しながら。

 

「もし自分の力だけで足りないというのなら、人の力を借りたっていいんだ! そうして乗り越えていけばいい!!」

「大神隊長……」

 

中間棲姫が大神を薙ぐ。

一筋の傷を付けられ、血を流す大神。

 

「運命なんて……運命なんてクソくらえだ!」

「大神隊長!」

「ナンドデモ…シズンデイケ……!」

 

中間棲姫の一撃が大神を大きく跳ね飛ばす。

海に跳ね飛ばされる大神を抱きとめる赤城。

 

「赤城くん、みんな、いくぞ! MI島が、MI海域が中間棲姫を回復させているというのなら! 全てを浄化する!」

 

しかし、大神の闘志は揺ぎ無い。

その様子を見て、赤城の胸が熱く燃える。

この人でよかった。

この人を好きになってよかった、と。

 

「はい、大神隊長、行きましょう! 響さんのようにリードして下さい!!」

「ああ!」

 

そして繋いだ二人の手が天へとかざされる。

 

 

 

 

 

それはこことは異なる別の世界。

赤城は艦娘ではなく、ただの女学生。

そして大神はそこでも海軍士官学校首席のエリート。

 

赤城は大神に想いを寄せていた。

 

ランニングや鍛錬に明け暮れる大神へと、嬉しそうにタオルを、ドリンクを届ける赤城。

 

けれどその想いは決して口にはしなかった。

 

大神はいずれ、海軍にて一角の人物となる男。

食事が好きなくらいで何のとりえもない、ただの女学生の赤城とはつりあわない。

自分は大神を見守っているだけで十分なのだ、と何度も自分に言い聞かせる赤城。

 

手が触れ合うたび、

 

彼の匂いが付いたタオルを受け取るたびに高鳴る胸を必死にごまかして。

 

時には実らぬ恋の寂しさに枕を濡らしながら。

 

 

やがて時は過ぎ行き、二人の卒業が近づく。

 

そんなある日の放課後、赤城は大神に呼び出される。

同級生の加賀や、蒼龍、飛龍に囃し立てられながら校門へと赴く赤城。

 

「少し歩いてもいいかな?」

「はい……」

 

女学校の前の並木道を歩く二人。

やがて、女学校の生徒達から見えなくなったところで立ち止まる大神。

 

「あの、何の用なのでしょうか?」

 

尋ねる赤城に大神は珍しく照れくさそうにしている。

だが、しかし、やがて決意を決めたように赤城へと向き直る。

 

「赤城くん、今までありがとう。本当に助かっていたんだ」

「いえ、私が好きでやっていたことですから」

 

好き。

自分で言うそんな言葉にも激しく胸が高鳴る。

ああ、自分はどれだけ彼のことが好きなのだろうか。

 

「それで、あ、赤城くん。君さえ良ければなんだけど、これからもお願いしても良いかな?」

「……え? それってどういう意味なんでしょうか?」

 

まさか。

そんなことある筈ない。

そう落ち着かせようとしても胸が早鐘のように打ってとまらない。

顔が赤くなっていく。

 

「分かった、単刀直入に言うよ。君に傍に居て欲しいんだ、これからもずっと」

「…………」

 

その言葉の意味を受け取ると、赤城は静かに涙を流す。

 

「ごめん! そんなにいやだったのなら――」

「違います! 嬉しくて、本当に嬉しくて……」

「赤城くん……」

「だってこの恋は実らないってずっと思ってたから……嬉しくて」

 

涙で潤んだ目で大神を見上げる赤城。

その目はゆっくりと閉じられていく。

 

「赤城くん」

「はい」

 

そして二人の影が重なっていく。

 

『想いは永久に』

 

 

 

 

 

『想いは永久に』の言葉と共に大神たちを中心に霊力が膨れ上がり、天上から紅と白の光の柱が水面へと降り立ち、急速に広がっていく。

 

光の柱が降り立ったMI海域は、MI島は、そして中間棲姫も浄化される。

 

「ソンナ……ワタシガ……オチルト……いうの……?」

 

その言葉を最後に中間棲姫も浄化され消滅していく。

今度は蘇ることはない、浄化され一人の艦娘へと姿を変えていく。

 

いや、それだけではない。

 

急速に広がる光の柱はMI海域に留まることなく、周辺海域を全て浄化していく。

本海域に残る全ての深海棲艦が浄化されていった。

 

 

 

 

 

「赤城ー、一人だけずるいネー」

「先を越されて、流石に気分が減衰します」

 

だが、他の艦娘達は不満そうだ。

無論自分もそのつもりで居たからだ。

金剛や加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、利根、筑摩、果ては朝潮や秋雲までそのつもりで居たが、こればっかりは早い者勝ちなのだからしょうがない。

 

 

 

 

 

技説明

 

一の舞 烈風怒涛:制空値+1000

二の舞 追魂奪命:航空戦ダメージ5倍

三の舞 炉火純青:対地ダメージ10倍




精神攻撃 (書いた作者は)死ぬ
追魂奪命剣は絶対に使いたかった。

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