艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第九話 3 目薬

ブリーフィング後、保健室で大神は明石の診断を受けていた。

問題ないと大神はそのまま業務に戻ろうとしたのだが、平手打ちとは言え艦娘の膂力で何度となく打たれたのだ。

万が一ということもありうる。

それに真っ赤に腫れ上がった頬は、叩かれる大神を見過ごしていた艦娘達に罪悪感を覚えさせる。

 

艦娘達の気持ちが落ち着くまで、せめて一晩くらいは引き離した方がいいだろう。

そう判断した明石と大淀によって、半ば無理やり連れて来られたのだ。

 

「脳の方には影響ないみたいですね。はい、これで頬をしばらく冷やしていて下さい」

 

渡された氷水の入った袋を頬に当てると、その冷たさで頬の痛みが引いていく。

 

「大神さん、何度も言わせて頂ますがあんまり無茶はしないでください。例外の舞鶴を除くと、大神さんが一番保健室に来ているんですからね! 医者の不養生とはよく言いますが、隊長の不養生なんて話聞いたことありません!!」

「迷惑をかけて済まない、明石くん。けれども、俺が前線指揮官の隊長である以上、保健室の世話にはならないとは約束は出来ないよ。善処はするけれど」

 

大神の言葉に嘆息する明石。

 

「はぁ……それは、これからもお願いしますって言っているようなものじゃないですか……じゃあ、せめてこれだけは約束して下さい、大神さん。これからもこうやって私に怒られに来て下さい。ものも言えないほどの重症にはならないと、約束して下さい!」

「別に怒られるためにここに来ている訳ではないんだけど……分かったよ、明石くん。ここに来るときは病人らしく君の説教も聞きに来るよ」

「本当ですよ? 破っちゃダメなんですからね!」

 

後に明石はこの約束を苦い思いと共に思い出すのだが、そのことを彼女はまだ知らない。

 

 

 

そして、翌日からAL組の連携訓練が始まった。

個々の能力については勿論申し分ないのだが、作戦行動において大神の直接指揮下から外れて行動するのは久しぶりであるため、旗艦である響の下で地上目標である港湾基地撃破を視野に入れた装備の最適化、対列について永井司令官と話し決定していく。

 

「高雄さんと摩耶さんについては主砲2門、三式弾、水偵で行った方がいいのかな?」

「ああ、地上目標である以上三式弾は必須じゃな、弾着観測射撃のためにも水偵も要るじゃろう」

「分かったよ、そこはあんた達の判断に任せるぜ」

 

その判断は摩耶から見ても間違ったものではない。

頷く摩耶。

 

「飛鷹さんと隼鷹さんも空母のセオリーどおりの搭載で問題ないはずだから、後は私と暁なんだけど……」

「独逸の方では駆逐艦が搭載できる対地装備もあるようじゃが、今はないからな。主砲2門と、あとは電探か対潜装備じゃな。好きに決めていいぞ」

「じゃあ、私が対潜装備を、暁は電探をお願い」

 

そして、ターゲットをおいての撃破訓練を行う。

先ず、響の連装砲がターゲットを根こそぎ撃破する。

 

「響、お前本当に駆逐艦なのか? 戦艦って言ってもいいんじゃないか?」

「私は駆逐艦だよ、大神さんが大好きなだけの駆逐艦さ」

「……言うじゃねーか、響。私も負けてらんねーな!」

 

続いて放たれた摩耶の一撃もターゲットを根こそぎ破壊する。

あんまりやると、修理費用がかさむと思うのだが。

 

「摩耶、貴方だって十分重巡離れしているわよ」

 

そして数日が経過し練度も十分であると判断した永井司令官によって、響たちはAL海域へと向かっていった。

 

これで大神たちはAL海域の制海権奪取と同時にMI海域に向けて出撃する。

連合艦隊の艦隊運用の訓練も夏コミ以前から行っていた、勝つ算段もある。後は勝つのみだ。

 

だが、気がかりは残っていた。

 

AL海域での勝利についても勿論気がかりではある。

自分の直接指揮に依らない作戦行動、彼女たちは怪我なくやれるだろうか。

かつて聖魔城にて、花組にその場を任せ、結果死の寸前まで追いやったことが思い出される。

 

それに赤城たち4人のこともある。

あのブリーフィング以降、不満は言わなくなった。

翔鶴たちの訓練にも文句一つ言わずに付き合っている。

その様子を見て本当によかったのだろうかと大神の心に迷いが生じる。

 

「ダメだ、指揮するものが迷っていては」

 

一旦酒を飲んで、気を紛らわせようと、迷いを投げ捨てようと、大神はバーに向かう。

加山と何度か訪れたバーだが、一人で、こんな気持ちで酒を飲もうとするのはよくない。

分かってはいるのだが、今日だけは飲みたい気分だった。

 

「なんと! 隊長が一人でバーに来るとは珍しいの?」

 

カウンターで飲んでいた利根が驚きの表情を露にしている。

 

「俺一人で飲むのはそんなにおかしいかな?」

「はっきり言わせてもらおう、おかしいぞ。隊長らしくないとも言える」

「まあ、そういう気分のときもあるのさ」

 

そう言って、大神は間宮にカクテルを一杯注文する。

そして一息にあおる。

 

「隊長、そんな飲み方はよくないぞ。言いたい話があれば、我輩が聞くだけ聞いてやってもよい」

「ありがとう利根くん。でも仕事のことでは君たちに愚痴る訳にはいかないよ」

「それなら、仕事以外のことでも構わぬぞ。観艦式のときにやってきた幼い子のこととか」

「ゴメン、それは勘弁してくれないかな?」

 

そうして、大神は利根を隣に酒を飲み始める。

話せないことは確かにあるが、隣に人がいるだけでも気分はだいぶ楽になる。

次の日に残らない程度にと、酒を嗜む大神。

 

しかし、

 

「……あれ?」

 

大神を眠気が襲う。

 

「どうしたんじゃ?」

「いや、急に眠気が……あれ? どうして……」

 

大神を急激に耐えられないほどの眠気が襲う。

そして、大神はカウンターにうつぶせになって寝息を立てる。

 

「あら、大神さん眠ってしまったのですか?」

 

間宮が大神に水でもと思って持ってきたのだが、大神は完全に寝てしまっているようだ。

 

「……そうじゃな、隣に座っていたことだし我輩が部屋まで連れて行くとするか」

「そうですね、利根さんお願いしますね」

 

そう言って間宮は他の艦娘の対応に向かう。

 

それではと大神を抱え、バーを出る利根。

しばらく鎮守府内を歩くと、そこには赤城たちが待っていた。

 

「大神隊長は?」

「この通りぐっすりじゃよ、恐らく明日の夕方までな」

「では、決行は今夜なんですね」

「赤城くん、加賀くん、蒼龍く……ん、飛龍く…………すま……ない」

「大神さん……」

「隊長……」

 

寝言でなお、赤城たちに謝る大神。

心の底から赤城たちを案じていることが容易に分かる。

大神のこの想いを、信頼を踏みにじろうとしているのか自分達は。

 

「済まぬ、隊長」

 

大神は気づいていなかったが、舞鶴組が明石のカウンセリング時に処方してもらっていた遅効性の睡眠薬、その残りを利根が大神の飲んだアルコールに混ぜたのだ。

これで睡眠薬の効力は激増する。

大神は明日の朝まで起きないだろうし、明日一日、夕方までは起き上がることもできない筈だ。

それだけの時間があれば、MIまで駆け抜けることも出来るはずだ。

 

「済まぬ、隊長。やはり我輩たちは赤城たちの悲願を叶えさせてやりたいのだ。後でいくらでも怒られよう、処分も受けよう。じゃから今回だけは我輩たちの我侭を許してくれ」

 

けれども、大神に薬を盛ってしまった以上もう後戻りは出来ない、今夜決行するしかない。

 

 

 

 

 

AL組(抜粋)―装備なし状態

 

響 好感度97

 

    素 補正後

耐久 30→127

火力 44→141

装甲 46→143

雷装 72→169

回避 89→187

対空 46→143

搭載  0

対潜 52→149

速力 高速

索敵 31→128

射程 短

運  12

 

命中   +97%

防空率  +97%

 

夜戦火力  328

 

ますますイカレタ能力になりました。

大和並みの耐久、装甲に加え、雷巡並みの雷装、対潜、火力も申し分ありません。

惜しむべくはこの時点では駆逐艦用の対地装備がないこと。

 

 

 

摩耶 好感度61

 

    素 補正後

耐久 55→116

火力 73→134

装甲 71→132

雷装 64→125

回避 72→133

対空 85→146

搭載  8→ 69

対潜  0

速力 高速

索敵 40→101

射程 短

運  10

 

命中   +61%

防空率  +61%

 

夜戦火力  259

 

おかしい、十分頭おかしい能力のはずなのに響と比べると見劣りするwww

搭載69ってどこの空母ですかwww

 

 

あとAL組の能力補正について

好感度補正:あり

作戦補正 :なし


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