艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第二話 2 二天一流

「大神隊長~、私と手合わせして貰えませんか?」

 

大神を朗らかに手合せに誘うと、龍田は剣道場の中央に歩いていく。

確かに、剣の修練ならただ木刀を振るうより相手が居た方が良い。

 

「分かった。俺で相手になるか分からないが、その申し出受けるよ」

 

龍田のあとを歩き、剣道場の中央で龍田に正対する。

互いに一礼すると、龍田は長刀を構え、そして大神は木刀を左右の手に二本持つのだった。

首を傾げる龍田。

 

「ちょっと待って。大神隊長、何で木刀を二本構えてるの~?」

「言ってなかったっけ。俺が修めた剣術は二天一流、宮本武蔵を祖とする二刀流だよ」

「なんだって!?」

 

俄かに色めきたつ道場内。

宮本武蔵の名はここでも有名らしい、特に天龍の目の色が変わっている。

二人の手合わせを見ようと、おざなりになっていた柔軟体操を完全に放り出している。

 

「でも、昨日の戦いでは刀は一振りだったよね~?」

「自分が全てを託せる刀だからね、神刀滅却は。この身で戦う以上、もう一振り欲しいのは確かなんだけど」

「あらあら~。じゃあ昨日の戦いに、更にその先があるってこと~。すっご~い」

 

実に楽しそうに龍田は長刀を中段の構えから振り上げ、八相の構えをとる。

敵の動きに合わせて自在に斬撃を浴びせられる、龍田の好きな構えだ。

深海棲艦と対するときは振り上げるどころか、後ろに剣尖が付いてしまうほどに振りかぶってしまうのだが、流石に対人でそれは隙だらけだ。

 

「期待に応えられると良いんだけどね」

 

対する大神は両手の木刀を中段に構えるが、左右の木刀の剣尖は触れ合わんばかりに接近させている。

二振りの刀で攻めと守りに備える円相の構えだ。

そのままの状態で、大神は龍田との間合いを詰めていく。

 

(うーん、困ったわ~。大神隊長全く隙がない)

 

天龍を無自覚に弄ぶ大神に先ずは斬撃をお見舞いするつもりで八相の構えを取ったのだが、失敗だったかもしれない。

こちらから斬撃を仕掛けても、受けられる未来しか浮かばない。

けれども、このまま間合いを詰められる方がまずい。

 

「やっ!」

 

威嚇の意味も込めて、八相の構えから上段の斬撃を龍田は放った。

防御されることは間違いないが、身を翻しての石突で打突を匂わせれば間合いは一度開く筈。

その間に正眼の構えに直して、刺突をメインにすれば――

 

「せいっ!」

 

だが、龍田の考えが叶う事はなかった。

大神の左腕が龍田の斬撃に反応し、片手で長刀の斬撃を受け流そうとしたのだ。

 

(二刀ならともかく、片手で? バカにしないで~)

 

振り下ろす長刀に力を込める龍田だったが、大神の左腕はビクともせず長刀を受ける。

そして、同時に跳ねた右腕の刀が、次の瞬間龍田の胸元に当たるか当たらないか程度に添えられていた。

気付かぬうちに添えられていた右腕の刀に驚愕の表情を浮かべる龍田。

 

――兵法二天一流剣術 五法の勢法――

 

「……!?」

 

右腕の刀の動きが全く見えなかった。

砲撃だって回避するし、戦闘機相手に対空だってできる軽巡洋艦の龍田の目をもってしても。

周りの天龍たちも唖然としている、一体どれほどの速度で振るわれたのか――

 

「龍田くん」

 

大神の言葉で我に返る龍田。

そう、もう決着はついている。

 

「あら~、隊長ごめんなさい。まいりました~」

 

その言葉に大神は、龍田の胸元に添えていた木刀を引いた。

互いに開始時の位置に戻ると、再び一礼する。

礼が終わった途端、唖然として静まり返った道場内が騒がしくなる。

 

「隊長、次はオレとやろうぜ! いや、オレに稽古をつけてくれ!!」

 

居ても立っても居られないとばかりに、天龍は木刀を片手に中央部に歩み寄る。

 

「ダメだよ、天龍くん。まだ柔軟運動が終わっていないだろ」

「う……8駆、柔軟手伝ってくれ!!」

 

時間が惜しいとばかりにまじめに柔軟運動を始める天龍。

次の相手は天龍かと考える大神だったが、龍田は去ろうとしない。

大神を見つめている。

 

「どうしたんだい、龍田くん?」

 

再戦でも考えているのだろうか、と龍田を見やるが長刀を構えてはいない。

口元に手をやり考え込んでいる、何の用だろうか。

やがて、龍田の口が開かれるのだった。

 

「大神隊長~、深海棲艦とも二刀流で戦いたいと思いませんか~?」

「ああ、できるならそうしたいとは思っているよ」

 

一刀では、繰り出すことのできる技も限られている。

戦闘の幅を持たせる為には二刀流であることが必要だ。

 

「なら、いい場所がありますよ~」

「ちょっと待て、オレの稽古の時間は!?」

 

 

 

 

「あちゃー、整理で結局徹夜しちゃいました」

 

ノロノロと立ち上がると、明石はうーんと大きく身体を反らし伸ばす。

一晩中、細かい作業を続けていた身が引っ張られて気持ちいい。

捲くれ上がったセーラー服からお臍がチラリと覗く。

 

左右を見回すと、一度は崩れ落ちたであろう荷物や部品が再整理されている。

これでもう大丈夫、後は妖精さんが起きたらここは使えるようになったといっていいだろう。

もう少ししたら朝食の時間、今日の朝食は美味しく食べられそうだ。

 

 

ここは、明石の工廠。

 

艦娘の装備を開発したり、改造したりする場所だ。

昨日の襲撃では珍しく被害が少なかった場所でもある。

とは言え荷物に溢れ返っていた為、衝撃で散乱し見た目酷いことになっていたのだが。

と、工廠のドアが叩かれる、誰だろうか。

 

「はいはい、起きてますよー」

 

徹夜でボサボサになった髪のままドアへ向かう。

どうせ、艦娘と妖精ばかりの警備府、こんな朝くらい気を使う必要もないだろう。

 

はて、何か大事なことを忘れていたような――

 

「失礼するよ、明石くん」

「は、あ、え――ええっ!?」

 

ドアの向こうから聞こえる男性の声に、慌てふためく明石であった。




天龍さんの稽古は内容がかぶるので省略w

あと、作者は剣道はやったことありますが、剣術は学んだわけではないので描写はかなり適当です。
ご了承ください。


にしてもおかしい、2話の1で書こうとした内容が未だ書けずに居る(^^;

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