そして時は過ぎ、コミケ終了の時間間近。
サークルを一通り巡った大神たちと、その間に合流した空母などの艦娘たちが集まり、オータムクラウド周辺は艦娘たちでごった返している。
まだ帰らずに、サークルを巡っていた人々の目が艦娘たちに向いているようだ。
何か対応した方が良いかとも大神は思ったが、これだけ艦娘が集まって何か始めると、人通りを止めてしまうのでやめて欲しいとスタッフに一言言われたのでそれを守ることとする。
「しかし、なんだかんだでみんなコミケに行っていたんだね」
大神はコミケ会場で合流した艦娘たちを一通り眺めて呟く。
「ううう、絶対……絶対豊胸してやるんだからぁ……」
瑞鶴は胸のことを気にしているようだ、まだ言っている。
「なんでよ! なんでみんな私のこと、ツンデレって描いてるのよ!! これじゃ、私がクソ隊長のこと、す、す、好きみたいじゃない!」
何をいまさらという視線が曙に集まっている。
本当に何をいまさらというほかない。
「潮。なんで、魔性呼ばわりされているのでしょうか?」
ノーコメント。
「如月ちゃん、二人がかりでって言うのも悪くないね! にししっ」
「睦月ちゃん、そうね、大神さんを共有してしまえば問題ないのよね」
睦月たちは開眼したらしい、今後が怖い。
「うふふっ、大和は大満足です」
大和は大神との本を多く発見できたらしく満足そうだ。
「なんで、玉子焼きの話があんなに多かったのかなぁ、得意料理だけど」
瑞鳳は今一つ納得できていないようだ。
「ロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖いロシア怖い」
響は、ロシアに送られて、性的やリョナなどいろいろな意味で賠償させられることとなった自分の本を見てトラウマになっているようだ。カタカタ震えながら大神に抱きついている。
「響! 絶対ロシアになんて行かせないんだから!!」
「響ちゃん! 4人はずっと一緒なのです!!」
そんな響にしがみつく雷と電。
「そうよ! 第6駆逐隊は一緒なんだから! でも、6駆のみんなで仲良しな本が多かったのはいいけど、一人前のレディとして大神さんとの本も見たかったわ」
暁、それはサークル主たちが気を使って見せないようにしただけだ。
見たらきっと卒倒する。
なんだかんだで、艦娘たちも楽しんで(?)いたようだ。
と、大神は常に傍に居ながらも、自分にべったりであまり本を探していなかった艦娘を思い出す。
「そういえば鹿島くんは、あんまり自分の本を探していなかったけどよかったのかい?」
「ええ、だってせっかくのデートだから大神くんには本の中の私より、私自身を見てほしかったんですっ。それに……」
「それに?」
「大神くんが秋雲さんを手伝っている午前中の間に、そういった本は回収済みです! 早々に完売してしまったサークルさんのも含めて! ねぇ、大神くん、今度二人っきりで私と大神くんの本を読みましょう?」
衝撃が艦娘たちの間を走る。
鹿島と大神がいちゃラブする本を二人っきりで読む。
それって……思いっきりヤバくない?
「ええっ?」
「台詞とかも再現しちゃいましょう! 私、気に入った台詞とかあるんですよ。大神くんに言ってみたい台詞も、大神くんに言われたい台詞も!」
「ど、どんな台詞だったんだい?」
早々に完売するようなサークル、どんな本なのか多少興味はある。
「ダメですっ。そ れ は、二人のときに」
「うん……」
微笑みながら、大神の唇に指を当てて口止めする鹿島。
妖艶ささえ漂う鹿島の様子に気圧されて、少年のように頷く大神。
「ダメーっ! 二人っきりの読書会なんて許さないデース! やるんだったらみんなで読書会するデース!!」
「そうだよ。一人で読み返すと悲しくなる本とかもあるからみんなと一緒がいい」
二人の間に漂った空気が危険であると判断した金剛が割って入る。
抱きついていた響も懇願するように大神を見上げる。
「はいはい、読書会は後でやるとして、それくらいにしときなさいよ~。もうすぐコミケ二日目も終了なんだから」
パンパンと手を叩いて、鹿島たちを制する秋雲。
そして、コミケ二日目の終了アナウンスが為される。
拍手でコミケ二日目が無事終了したことを喜ぶ人々。
今日一日何だかんだでコミケを満喫した大神たちも人々に倣って拍手する。
拍手が終わると、人々は帰途へと付いていく。
祭りの後の静けさに一抹の寂しさを感じる大神たち。
「よーし、じゃあみんな速やかに撤収するよー! コミケ3日目の準備の邪魔になっちゃうし」
それを知ってか、秋雲が一際大きな声で艦娘たちに撤収を促す。
「秋雲、一つ連絡を忘れてますよ」
「あ、そうだったそうだった。ねえ、みんな、秋雲たちは鎮守府の食堂で打ち上げをするつもりだけど、どうする? 間宮さんたちにお願いして用意してもらってるんだ!」
不知火の言葉で、思い出した秋雲は集まった艦娘たちに問いかける。
答えなど決まっていた。
鎮守府に戻ってみると、食堂の一角に七輪が準備されていた。
そして、間宮が仕込んだ上物のお肉がトレイに鎮座している。
つまり、
「焼肉なのですか!!」
思わぬご馳走に目を輝かせる赤城。
「何でかよく知らないんだけど、即売会の打ち上げって言ったら焼肉が基本みたいなんだよねー。あ、でも赤城さん、食べ放題じゃないから」
「それは残念ですが、間宮さんが自ら仕込んだお肉! 美味しいに決まってます! 一航戦! 赤城! 食べます!!」
餓えた狼のように赤城が臨戦態勢を取る。
いや、それキャラ違うから。
その間に伊良湖がみんなに飲み物の注文をとり、渡していく。
今日は休みということもあってか、バーの方からお酒を持ち出している。
大神も流石に今はビールを頼む。
のどが渇いていたし、肉が本当に美味しそうだったからだ。
「それじゃー、オータムクラウドの初コミケ参加と、完売と、皆さんの戦果を祝してー」
飲み物がいきわたったことを確認して、サークル主である秋雲が音頭をとる。
だが、そこから先がちょっと違っていた。
「「「勝利のポーズ、決めっ!!」」」
その声と同時に杯を掲げる。
そしてビールを喉に流し込む大神。
旨い。
今まで何度もビールを飲んでは来たが、こんなにビールが美味しいのは初めてかもしれない。
「ふふっ、大神くん。今日はたくさん汗をかいてましたからね。はい、お肉が焼きあがるまでユッケでも如何ですか?」
ちゃっかり大神の隣をキープした鹿島が、ユッケを箸で掴んで薦める。
あーん、させようとしている。
いつもなら断る、慌てるが大神の選択肢だが、今日は本の中とは言え自分がいろいろなことをしているのを見て、気が大きく、いや、ちょっとおかしくなっているのかもしれない。
「ありがとう、鹿島くん」
鹿島の差し出したユッケにパクつく大神。
「ええっ? 大神くん!?」
ビックリするのは鹿島のほうだ。
この反応は予想していなかったらしい、目をパチパチさせている。
「あーん、間宮さんのユッケ、最高です~!」
「赤城さんの言うとおり、この味は外でもなかなか食べられないわ」
赤城が涙を流しながら食べている。
間宮の仕込んだユッケは、味付けも最高だ。
そうこうしている内に肉が焼きあがっていく。
一部席では肉の争奪戦も起きているようだが、みんなその味を堪能している。
その様子を秋雲がスマホで写真に取り、そしてツイートしていた。
『夏コミ二日目お疲れ様でしたー。秋雲さんは艦娘のみんなと、大神さんと焼肉で打ち上げ中。間宮さんが仕込んだお肉美味しいよ~』
そして、思った。
次のコミケもこうやってみんなでワイワイやりながら出たいな、と。
次回予告
とうとう発動されたAL/MI作戦。
私達機動部隊主力はMI作戦に向けて練成してきました。
私、加賀さん、そして二航戦のみんななら必ず敵に打ち勝ちます。
きっと大丈夫、勝ちにいきます!
次回、艦これ大戦第九話
「決戦! AL/MI作戦!(前編)」
今度こそ必ず、暁の水平線に勝利を刻みます!
「……え? 大神隊長、それは冗談ですよね?」
流石に長くなりすぎた(既に20回で最長)ので、圧縮。
夏コミ終了後のビールは最高。
好感度に怒涛の変化あり