艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第八話 12.5 こっそり吹雪のコミケレポ

「ううう、私の本、あんまりないな~」

 

その頃、吹雪は私服で一人こっそりコミケ会場に来ていた。

理由はただ一つ。

 

目立つこと、もとい、大神の気をひくことである。

 

そもそもおかしいのだ。

 

元ネタ的に、最初に大神を迎えに行った吹雪はメインヒロイン格の筈だ。

元ネタ的に、某鬼嫁のようなことをするつもりのない自分には敵など居なかった筈である。

 

なのに、気が付けばその他大勢の駆逐艦の中に埋もれてしまっている。

観艦式で久しぶりに大きな出番があると思えば、せっかくの晴れ舞台の描写はすっ飛ばされ、とどめに大神自らによる蹂躙である。

 

この状況を打破するためには、このコミケ会場の同人誌という大きな知恵の泉に頼るしかない。

 

そう思ってこっそり部屋を抜け出してきたのだが、状況はあまり芳しくない。

ようやく見つけた同人誌も大神と結ばれた後の話で(そうなる過程を吹雪は知りたかった)、しかも他の提督にNTRされる代物だった。

自分が陵辱されてNTRされる本を読んで気分が良い訳がない、読後感は最悪である。

 

それでも、吹雪は諦めない。

 

大神を自分の手に取り戻すため、サークルをひたすら回り続ける吹雪。

そして、それは吹雪の目の前に現れた。

 

「ブルマー吹雪本?」

 

表紙にはブルマを履いた吹雪の姿。

また、陵辱物ではないかと警戒する吹雪はおそるおそる手を伸ばす。

 

しかし、違った。

 

新型艤装としてブルマーを支給された吹雪。

脚の線が露になって恥ずかしがる吹雪だが、それでも支給されたものだからと着用する吹雪。

そんな吹雪と訓練していくうちに、吹雪のことが気になりだす大神。

そして、戦闘にて足を痛めた吹雪を庇う内に良い雰囲気になる二人はそのまま――

 

その瞬間、吹雪は稲妻に打たれたような衝撃を受けた。

 

これだ。

 

これこそ天恵だ。

 

ブルマー吹雪、これこそが現状を打破する神の一手に違いない。

 

しかし、

 

「ブルマーって、どこに行ったら買えるのかな?」

 

体操着などは基本支給品で買ったことなどない。

酒保でもブルマーは取り扱っては居なかった筈である。

 

と、ブルマー吹雪本を置いてるサークルスペースを吹雪はもう一度見る。

そこにはブルマーがおいてあるではないか。しかも吹雪の絵が刺繍されている。

吹雪は決断する。

 

「うんっ! あの、すいません!」

「はい、なんでしょうか? ……あれ?」

 

本を出すだけあって、吹雪の声を聞いただけで怪訝な顔をするサークル主。

このままでは自分が吹雪本人だと気づかれてしまう。

作戦は速やかに行わなければいけない。

 

「こちらのブルマー吹雪本と、ブルマーをいただけませんか?」

「合わせて○○○○円になります」

「え、そんなにするんですか? 足りない……」

 

吹雪の手持ちはそんなにない。

秋雲に聞いていた同人誌の値段は高くてもせいぜい1000円位だった筈なのに。

 

「すいません、ブルマーの方が特注品なので高いんですよ」

「ううう、そうですか……失礼致しました」

 

ブルマーが入手できないのであれば意味がない。

肩を落としてサークルを去ろうとする吹雪。

しかし、それでサークル主は気付いた。

 

昨日、観艦式で自分の歌をすっ飛ばされた時の吹雪の様子と目の前の少女が酷似していることに。

 

「あのー。もしかしたら、吹雪ちゃん?」

 

ビクッと大きく肩を震わせる吹雪。

 

「やっぱり! 吹雪ちゃん!!」

 

そのサークル主の声に辺りがざわつきだす。

それもその筈、吹雪がいる辺りは吹雪サークルが集まっているのだ。

反応しないわけがない。

 

「なんで、吹雪ちゃんがブルマーを?」

「いや、その、それは……」

 

結果、根掘り葉掘り聞きだされる吹雪。

 

「ブッ! ほ、本物の吹雪ちゃんがブルマーを! 履くですってー!?」

「あんまり大声で言わないでください!!」

「でも、吹雪ちゃん。履くのならウチの刺繍入りのよりも普通に売ってるものの方がいいですよ」

 

そうまくし立てるサークル主。

サークル主が作ったものはコレクターアイテムとしてのブルマーであって履く物ではない。

本物の吹雪がブルマーを履くというなら、刺繍入りのなんてむしろ邪道。

無地に決まっている。

無地以外ありえない。

 

「あの、ブルマーってどこに行けば買えるのでしょうか?」

「ネット通販でも買えるし、体操服売り場でも置いてるはずだよ」

「そうですか! じゃあ、本の方だけいただけますか?」

「吹雪ちゃんからお金なんて取れませんよ! むしろ、持って行ってください!」

 

そう言って本を吹雪に渡すサークル主。

最初は居心地悪そうにしていた吹雪だったが、何回か礼をすると、去っていく。

 

早くブルマーをネットで通販しなければ、それに受け取った本も熟読して、いろいろと勉強しなければいけない。

これからのことに思いを馳せる吹雪。

 

 

 

そんな吹雪の様子を見て、サークル主はにやりと笑う。

 

次の本のネタは決まった。

ブルマーを履いて大神を誘惑しようとする吹雪の話だ。




これ、閑話でブルマー吹雪を書かないといけない流れかなw

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