艦これ大戦 ~檄!提督華撃団!~   作:藤津明

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第八話 13 コミケ海域突入! 4

「それじゃ、秋雲達は挨拶回りしてくるから~」

 

知り合いのサークルに挨拶と新刊交換をするための本をかばんに入れ、秋雲は挨拶回りのため一旦サークルを離れる準備をしていた。

実際に挨拶するのは秋雲だけだが、挨拶する場所が多いため荷物持ちとして不知火も鞄に本を入れている。

他のメンバーは人のいなくなったスペースでくつろいでいた。

艦娘を一目見ようと時々やってくる人間もいるが、サークルスペースの中にいれば大丈夫だろう。

 

「秋雲くん。本当に俺は付き合わなくて良いのかい?」

「うん、不知火姉さんがいるから大丈夫! もう一時近くになっちゃったし、同人誌見て回ってきていいよ~」

 

本当に大丈夫そうだ。

確かにコミケも半分が過ぎてしまった。

2時くらいから撤収するサークルも出るというし、ここは言葉に甘えるべきだろう・

 

「分かった、じゃあ行こうか、金剛くん、比叡くん、榛名くん、霧島くん、鹿島くん」

「Yeah! で、隊長はどこから見て回るつもりデスカー?」

「チェックって言っても良し悪しがよく分からないからね、端から回っていくつもりだよ。あ、金剛くんのポスターが見えるし、最初はあの辺りにしようか?」

「え? ポスターって、えーっと……No!!」

 

それは、確かに金剛のポスターであった。

ただし桃色の。

コミケの規定に従って乳首とかは隠れているが、ほぼ素っ裸に等しい。

 

「隊長~、見ちゃダメデース! じゃなくて、隊長しか見ちゃダメなんデース!」

「どっちなんだって!」

「う~、見るなら本物を見てくだサーイ! 絵の私じゃなくてサー!」

「お姉さま、ポスターの自分に嫉妬してどうするんです!?」

 

金剛たちがそんな騒動を起こしているとき、

 

「あ、この表紙、榛名ですね。絵も綺麗だし、読ませていただいて宜しいですか?」

 

とあるサークルの榛名本の表紙に視線が吸い寄せられる榛名。

一冊手にとって、売り子に読んでも良いか確認しようとする。

 

「は、榛名さん!? 隣のサークルの方が綺麗だと思いますよ!?」

「いえ、榛名は貴方の絵の方が好みですので」

 

激しく慌てた様子の売り子、いや本の内容を熟知しているところを見るとサークル主らしい。

しかし、自分の絵が好みとまで憧れの榛名に言われてしまうと断る術が無い。

 

「中身は少し過激ですので、気に入らなかったら途中で読み終えても構いませんから!」

「いえ、ちゃんと読ませていただきますね」

 

ある種の死刑宣告を受け、サークル主は覚悟を決める。

そして、榛名が同人誌を読み始めた。

 

 

 

それは、呉から異動した榛名と大神の恋物語。

 

実際と異なり、呉から一人有明鎮守府に異動となった榛名。

 

姉妹達も居らず心細くなっていた榛名をサポートし、何度も榛名を危険から助ける大神に榛名は徐々に心惹かれていく。

 

そして、桜舞う伝説の木の下で、榛名は大神に告白する。

 

『守りたい気持ちが、溢れてしまいます。大神さん……貴方のことを……守らせてください』

『榛名くん、俺こそ君を守らせてくれ。艦娘ではなく、一人の女の子として……君が好きだ』

『あ……はい、大神さん! 榛名は幸せです! 貴方に出会えて!!』

 

そして二人は付き合いだす。

 

銀座で、プールで、そして大神の乗る車でデートを重ねる二人は本当に幸せそうだ。

 

 

 

「うふふっ、姉さんたちに悪いですね」

 

本の中の幸せそうな二人に思わず笑みをこぼす榛名。

R-18シーンも無いから安心して読める。

 

その微笑に魅入られる榛名サークルの人々。

好きな榛名が幸せそうに笑って自分が書いた本を読んでくれる、これ以上の幸福があるだろうか。

今度は自分の書いた本で笑って欲しい、そう思う人間が出ても致し方ない。

 

 

 

だが、警備府から金剛がやってきてから徐々に様相が変わってくる。

榛名がいると聞いてもなお、混じりっけなしの好意を大神にぶつける金剛。

不安で疑心暗鬼に陥る榛名。

 

そして、事態は起きてしまう。

 

『あのひとの、こんごうねえさんの、においがします』

『どうしてですか? きのうあんなにはるなのにおいをつけたのに?』

『おおがみさんから、こんごうねえさんのにおいがします! あのおんなの!!』

 

それは所構わず大神に抱きつく金剛の匂いが移っただけなのだが、逆上してしまう榛名。

そして包丁で大神を刺し殺そうとする。

しかし避けることも、取り押さえることも出来た筈の大神は榛名を拒まない。

狂気の一撃を身に受けた大神は、

 

『榛名、愛しているよ』

 

の言葉を最期に息絶える。

大神の無実をそこで初めて悟り、悲しみで絶叫する榛名。

 

 

 

「えーと……」

 

榛名が最後のページまで読み終わったことを確認し、恐る恐る榛名の反応を確認しようとするサークル主。

だが、

 

「……っ、榛名は、榛名は、大神さんにこんなこと致しません……」

 

榛名は完全に感情移入してガチ泣きしていた。

本を机に置き、ポロポロと涙を零す。

 

「大神さんを傷つけるくらいなら、自ら死を選びますっ! 榛名は、居ない方がいいんです!」

 

そして、小刀を取り出し自刃しようとする。

 

「榛名さん、止めてください!」

「榛名、落ち着くデース! それは漫画の話デース!!」

「だって、だって大神さんが、大神さんが!」

 

慌てたサークル主と、金剛が榛名を止めようとするが、榛名は大神が死んだと思い込んでる。

正気に戻すには大神が必要だ。

 

「隊長ー!! 榛名を、榛名を止めてー!!」

「榛名くん、俺は死んでない、傷ついてなんかいないから!」

「でも……でもぉ……」

 

そう言って榛名を宥める大神だが、榛名はなかなか落ち着かない。

 

「榛名くん、ゴメン!」

「……あっ……お、大神さん……」

 

最後の手段とばかりに大神は榛名を抱き締めた。

ホール内で蒸し暑いし、先ほどから周辺の視線も気になるが今優先すべきは榛名だ。

 

「榛名くん、俺の体温、感じるかい?」

「はい、大神さんの体温を感じます……あったかいです。それに、大神さんの鼓動も感じます……よかった、大神さんが生きてて……よかったぁ……」

 

大神に自ら抱きつき、再度一滴涙を流す榛名。

流石に金剛も今の二人に何かいうつもりは無い。

 

こんなまじめでけなげな子をヤンデレだとかNTRの材料にしようとしていたとは。

榛名サークルでヤンデレものとか、NTRものを描いていた人たちが罪悪感に襲われる。

今度は榛名に喜んで読んでもらえるものを書こうと心に決めようとしていた。

 

だ が、

 

「……でも、おおがみさんからかしまさんのにおいがします」

「「「え"」」」

 

凍りつく周囲。

 

まさか。

 

「なーんて、冗談です。ごめんなさい、榛名はもう大丈夫です」

 

大神から離れ、舌を出しながら軽く笑いそう言う榛名。

 

 

 

しかし、

 

榛名はやはりヤンデレ、間違いない。

 

周囲のサークルはそう思った。

 

次のコミケも榛名のヤンデレ、NTRものは減りはしないだろう。




今度は榛名が大暴走して、終わらなかったorz
キャラが勝手に動いて止まってくれないんですけどw
最長話確定です、すいません。

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