魔弾の王と戦姫 ~凍漣の雪姫と死神~ 作:ジェイ・デスサイズ
他の作品も投稿しているので久しぶりではない方もおられますが、この小説の投稿自体久しぶりなのでご挨拶を。
色々アイディアが出てきてはおりますが、他の趣味に走ってしまう所がありまして投稿が遅くなってしまいました・・・申し訳ございません。
この作品に飽きた・疲れた等は一切ございませんのでそこはご安心下さいませ。
それはそうと。先日、公式様からのツイートで【魔弾の王と凍漣の雪姫】のタペストリーが在庫がある、ということをつぶやかれておりまして・・・無事購入することができました!!
いやぁ、眼福目の保養です。
もちろん、小説の方も買わせていただき愛読中でございます。
さて、本作はまだ原作の5巻辺りですが楽しんでいただけたらなと思っております。
長くなりましたが、本編をどうぞ
ティグル
「・・・一度、テナルディエ公爵に休戦を申し込んでみようか」
仲間をぐるりと見渡して、ティグルはそう提案してみた。もっとも早く反応したのはエレンで、紅の双眸を鋭く光らせる。
エレン
「それは、アルテシウムを救うためか?」
ティグルは頷き、迷いながらも理由を述べる。
ティグル
「ムオジネル軍が海から攻めてきたとき、テナルディエ公爵は海に面した諸都市を守るために兵を率いて向かったと聞いている。ブリューヌの覇権を狙っているなら、アルテシウムは自分のものにばる可能性のある都市だ。早く再建出来るなら、それに越したことはないんじゃないか?」
自分の意見を伝えてみたが、此処にいる者からは良い反応が得られなかった。
エレン
「お前の考えは正しい。しかし、恐らくテナルディエ公は乗ってこないだろう」
ハイト
「ティグルはん。あんさんが今申し出ても、相手は時間稼ぎを疑うだけや。ムオジネル軍を撃退したっちゅう声望で、兵を集めることが可能やからな」
エレンに軍師であるハイトに反対され、他のメンバーを見渡す。しかし、期待したような返答は得られなかった。
シャル
「ボクが相手の立場なら、キミの殲滅を優先するね。今の彼の立場で言えば、今すぐ手をつけなければいけない訳ではないからね。勝ちさえすれば、キミが妨害したと責任をなすりつけられるからね」
リク
「ティグルさん、貴方のこころばえは貴いものです。ですが、何もかも出来るわけではありません。せめて一勝しないと・・・」
ティグル
「・・・分かりました」
レギン
「ティグルヴルムド卿、責めを負うべきは私です。必要以上に苦しまないで下さい」
ティグル
「ですが、殿下・・・」
そう話をしている際に、謁見を求める兵士の声が響く。マスハスが対応し、兵士から話を聞き戻って来ると気難しい顔で告げる。
マスハス
「テナルディエ公爵からの使者が来たそうじゃ」
使者からの話を聞き終え、再び話し合いを始める。
ハイト
「いやはや、何とも慣例的な要求やったなぁ。ティグルはんの首を出せばその他貴族は全て助け、領土や爵位も安堵させるとは」
ライト
「おまけに戦姫やオレらはさっさと国へ帰れ、か」
リク
「・・・レギンさんの言及は、ないみたいだけど」
エレン
「どうする、ティグル」
使者を別の幕舎で待たせ、エレンはティグルに問う。
シャル
「何なら、さっきの休戦の話でもしてみるかい?結果は目に見えてると思うけどね」
そもそも相手の話を信用しておらず、シャルは先ほどの提案を持ち出した。
ミラ
「万が一、休戦したとして。休戦する代わりに何を要求されるか分かったものじゃないわ」
ジェイ
「向こうは、一応降伏を勧めたという形が欲しいだけだろう。こっちからも高圧的な要求をしてやったらどうだ?」
エレン
「おぉ、それは良い案だな死神。ティグル、やってやれ」
2人の言葉に乗って、ティグルは次のような返事を使者に持たせて帰らせた。
【貴方の息子が、アルサスに鉄靴で踏み込んだことへの詫びはまだか?】
分かっていたことだが、当然交渉は決裂した。
ハイト
「こっちは2万、あっちは2万4千くらいか・・・純粋な兵力なら何とかなりそうやけど、兵力以外に竜までおるのはズルいわぁ。まぁ、こちらには姉さん兄さんらがおるし一方的な戦にはならんはずや」
と、言いながらも竜と対峙するのは初めてのハイト。僅かながら身体が震えていた。そんなハイトに気付いたリムは肩をポンと叩き
リム
「安心して下さい。エレオノーラ様とリュドミラ様が負けるはずありません」
と、優しく微笑む。それを見たハイトは落ち着きを取り戻し
ハイト
「・・・せやね。良し、やったるで!」
拳を空へと掲げる。そして朝と昼の半ば、両軍は甲冑を鳴らしながら動き出した。
ジェイ
「さぁ・・・戦の始まりだ」
先に仕掛けたのはジスタート軍。一斉に矢の雨を浴びせ、テナルディエ軍は長盾をかざし矢を防ぐも、防ぎそこねた数十人は倒れる。しかし、テナルディエ軍は怯む事なく進軍する。双方の剣や槍、戦斧で相手を地に落とす。殺し殺されの連鎖が戦場の各所で起こる。
シャル
「・・・よしよし、相手は餌に食い付いた。ミラに合図を」
ジスタート軍の右翼を少しずつ下げており、それに相手の左翼が勢いこんで前進したが
シャル
「残念だったね、それは罠なのさ」
ハイト
「ミラ姉さんに少しばかり離れてもろて、このタイミングで相手の左翼に横撃を喰らわす」
シャル
「そして、それに合わせて反撃を開始する・・・良いねぇ、今の所流れは此方にある」
後方で指揮しているティグル達の所で一緒に指揮をしているハイトとシャル。しかし、ハイトは此処にシャルがいることに疑問に思っていた。
ハイト
「そういや、前に行かれへんのですか?」
シャル
「うん?竜が出て来そうな時にでも行かせてもらうよ。私が前に出たらあの子達の手柄を独り占めしてしまうからね」
はは、と笑いながら話すシャル。それを見たハイトは苦笑いするしかなかった。すると兵より新たな報せが届いた。
兵1
「新たに新手が出現、その後方に竜が5頭見えております!」
ハイト
「鱗の色は?」
兵1
「黄土が3・赤茶・鉄が1つずつです!」
ハイト
「らしいでっせ、シャル義母様?」
と、シャルに伝えると。シャルは武器を構え出る気満々だった。
シャル
「良し、伝令ご苦労。キミは暫く休め。ハイト、指揮は任せた!」
そう言い残し、シャルは意気揚々と馬を駆り戦場へと向かう。
ハイト
「・・・ホンマ、あの人だけは敵に回したくないもんや。なぁ?」
兵1
「あはは・・・その通りですな」
ミラ
「
双頭竜は奇形であり、ジスタートでは凶兆を運ぶとも言われている。しかし、ジェイは1つ気になる事があった。
---
しかし、ジェイは考えるのを此処までにしておいた。戦場で思考の海に沈んでは命に関わるからだ。
リク
「それにしても、本当に従っているみたいですね・・・ボクらの国ですら、そんな例はないのに。いったいどんな手を・・・」
ライト
「それについては関わっていないから何とも言えないが、これだけは分かるぞ。まともな手でなないな」
などと言っていると、敵兵の壁の奥から竜の咆哮が戦場を包み込む。敵味方、人馬問わず仰天しその場に立ち尽くす。ミラやジェイ達は軽く仰け反った程度だが、彼らの馬はそうはいかずがくがくと身体を震わせる。5体のうち、地竜3体が動き出した。それはジェイ達にとっても脅威だが、相手からしても脅威だった。何故なら・・・
エレン
「竜に人間の敵味方なぞ関係無いからな。敵兵も死にたくないから凄い勢いで左右に散っているぞ・・・さて、時間が惜しい。纏めて行くぞ」
ミラ
「そうね。5頭もいることだし、いちいち相手ににてられないわ」
???
「確かにそうだね、それに此処で竜を仕留めてしまえば戦力を大きく減らせるし。何より士気も大幅に落とせるはずだ」
ミラ
「シ、シャル義母様!?何故此方に?」
シャル
「いくら戦姫でも、5頭はキツイかなぁって思ってね。まぁ、ジェイやプローネ達もいるから大丈夫だとは思うけど」
エレン
「・・・シャルパルト殿、本音は?」
シャル
「竜とは戦ったことがないから来た」
ーーーそもそも、竜と戦いたいと言う人間がいる方が可笑しいだろーーー
その場にいたジェイ達は恐らく同じことを思ったが、口には出さなかった。出したら竜相手より恐ろしいことになるのが目に見えているからだ。
とにかく、戦姫2人の竜技発動後動こうとしていた・・・が、ジェイ達より先に地竜に
エレン
「なっ、た、大剣だと!?一体どこから!?」
ミラ
「ジェイ!貴方、何か知っているの!?」
ジェイ
「いや、知らないな・・・ハイトの策なら必ずオレ達に話しているはずだ!」
ライト
「それって・・・」
リク
「つまり・・・」
シャル
「何者かが、この戦に乱入したみたいだね・・・さぁ、ご本人様のご登場だよ」
シャルが指を大剣へ向けると、地竜へ向かって跳躍している人物がいた。その男は大剣を掴むと引き抜かずに、更に奥へと大剣を突き刺した。当然地竜も抵抗しようとするも、頭部に刺さった大剣を押し込まれ、脳へと到達し絶命してしまった。力無く崩れる地竜、すぐ側にいた地竜も巻き込まれ体勢を崩す。そして、地竜を一瞬で1頭仕留めた男はこう言った。
???
「久方振りの竜の血だ・・・たんまり喰わせてもらうぜ!」
先ほどジェイ達が思っていたことと真逆の人間が突如目の前に現れ、唖然とするしかなかった。
「エレオノーラ!貴女、何てことを・・・!」
「エレオノーラ様!リュドミラ様!ご無事ですか!」
「踏み止まれ!ここで退けたら、何も得られないばかりか、今持っているものさえもことごとく失うぞ!お前達は何の為にここにいる!」
「オレの目当ては【竜】、特に【竜の血】だ。それさえ手にできればお前さん達の邪魔はしねぇさ」
「打ち消した?」
「手は2つある」
「次回、第24話【死神・凍漣・銀閃VS火竜&双頭竜・・・に乱入者(2)】本当に、乱入してきたあの男、一体何者なのかしら」