魔弾の王と戦姫 ~凍漣の雪姫と死神~   作:ジェイ・デスサイズ

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どうも、ジェイです!!!
ヒロアカ後の投稿でございます

決して魔弾に飽きたわけではございませんのでご安心下さい。

さて、今回は・・・w
うん、見てもらったほうが早いですねw

それではごゆっくり~~~


第19話 死神と安らかな一時

 オルメア平原―――銀の流星軍(シルヴミーティオ)とムオジネル軍が激突した地から、街道を北へ四日ばかり進んだ所にペルシュ城砦がある。南北と東西を結ぶ二本の街道が交差する所に建てられた、交通の要衝だ。

 城砦を守る兵の数はおよそ四千。

 城砦周辺の街道はいま、武装した兵と軍馬の群れ、無数の幕舎に埋め尽くされていた。鉄の甲冑で隙間なく身を固め、その上に毛皮を巻いて寒さをしのいでいる者がいれば、服を重ね着して冬の風に耐えている者もいる。

 使い古されてところどころほつれている幕舎があれば、この日の為に用意したとでも言うかのような豪奢な幕舎が隣り合って設営されたりしていた。

 彼らこそが銀の流星軍である。とはいえ、その構成は非常に混沌としていた。ブリューヌ貴族の私兵に、国内の平和を守るのが務めの騎士団、さらには他国の軍までいる。

 言ってしまえば寄せ集めのこの集団を統率しているのは、弱冠十六歳の若者だ。

 名を、ティグルヴルムド=ヴォルン。親しい者にはティグルと呼ばせている。

 

「よくここまで来れたな・・・ティグルは」

 

 空には暗闇が広がっており、朝には程遠い時間、食事等を済ませた後各々部屋に戻った。

 ジェイはベッドに寝っ転がり天井を眺めながら、ふとそんな事を呟いた。

 それもそうだ、誰が想像できるだろうか。ただの田舎貴族で、剣などは上手く扱えない代わりに弓だけが得意で、ある戦で敵国の捕虜になった貴族が・・・その国の力を得て母国に帰り、ただ自分の領地を守りたいという一心だけでここまできた貴族を。

 

「エレオノーラ・・・ソフィー様・・・ミラ・・・そして俺達まで・・・ふっ、お前の矢は何処まで飛んでいくんだ?」

 

 ジェイは身体を起こし窓から空に輝く月を眺めながら言った。言い終えた数秒後、扉を叩く音が聞こえた。声の主はミラだった。

 

「ジェイ。いるかしら?」

 

「あぁ、いるよ。今開ける」

 

 ジェイはそう言い、ベッドから降りて扉まで歩き、扉を開けた。

 

「どうした、ミラ?こんな夜遅くに・・・何かあったのか?」

 

「別に何もないわよ?ただ貴方に逢いに来ただけ」

 

 ミラはそう言うと少し頬を染め、微笑んだ。それを近距離で見たジェイも顔を赤くする。前も今も、ミラの不意打ちには弱いジェイ。

 

「ふふ、死神なのにずいぶん赤いわね」

 

「し、仕方ねぇだろ・・・!」

 

「ふふ♪中に入っても良いかしら?」

 

「あ、あぁ・・・どうぞ?」

 

 そう言うとジェイは少し後ろに下がり、ミラに道を作る。

 

「ありがと、ジェイ」

 

 ミラはジェイの部屋に入り、扉を閉める・・・するとミラはジェイに抱き付く。ミラのこういった行動【だけ】は耐性があるジェイは優しく抱き締める。

 

「久々だな・・・ミラの温もり」

 

「確かにそうかもね・・・戦い続きだったものね」

 

 そう言いながらミラは俺が此処にいるのを確かめるようにすりすり甘えてくる。

 

「・・・っ///(か、可愛すぎるだろ)」

 

 ジェイはミラの行動に耐えながら、優しくミラの頭を撫でる。それを気持ちよさそうに目を細めるミラ。

 

「ミラ。今夜は此処で寝るか・・・?」

 

「・・・言わせる気?」

 

「・・・だな。俺は先に入ってるから、寝間着に着替えておいで」

 

 そう言い、ミラは手に持っていた服を着る為にクローゼットの方へ向かい、ジェイはベッドに入りミラを待つことにした。

 少し経つと、ミラがこちらに歩いてきてベッド端に腰をかける。

 

「お待たせ、ジェイ」

 

 そう言われ、ミラの方を見る。見た途端、ジェイの眠気は一瞬で消えた。

 ミラの恰好は薄地の夜着だった。ほっそりした首筋からなだらかな肩、胸元まで露わになっていた。

 ミラが伸びをした拍子に、胸がかすかに揺れる。その瞬間、ジェイの中の何かが鎌に切り刻まれた。

 ミラの手を取り軽く引き寄せると、ミラはなんの抵抗もせず引き寄せられる。ミラはそのままベッドに横にさせ、ジェイはその上に覆いかぶさる。

 

「ジェ、ジェイ・・・?///」

 

「そういや・・・まだ【ご褒美】もらってなかったな」

 

 そう言うと、ジェイの口角が上がり、いたずらっ子のような顔をする。それを聞いたミラは顔を真っ赤にする。

 

「そ、それはハーネスに戻ってからって言ったでしょ!?///」

 

「そんな恰好されたら・・・無理に決まってるじゃん♪」

 

 ミラの反論に対して、とてもいい笑顔で返事をするジェイ。

 顔を近づけ、ミラに唇を重ねようとする。ミラは真っ赤になりながらも眼を閉じ、ジェイを受け入れた。

 身体を重ねた回数は互いの立場上多くもなく少なくもないが、口づけだけは二人きりになれる状況をつくって何度も重ねている。

 お互いの額といわず頬といわず唇を押し付けあったこともあれば、軽く呼吸をしながら長く重ねたこともあれば、舌を絡めあい、その行為と感触に酔うような激しい口づけをしたこともある。

 今回の口づけは後者である。部屋に舌を絡める音が響く。

 

「ん・・・ちゅっ・・・あむ、んっ・・・ちゅ・・・///」

 

 十秒程続き、顔を離すとジェイの舌とミラの舌の間に銀の橋が架かり、途中で切れミラの口の中に落ちる。ミラの眼はトロンとしていて、口づけが長かったせいか肩を動かしながら呼吸をしている。

 

「はぁ・・・はぁ・・・な、長い、わよ・・・///」

 

「言っただろ?【久々】ってな」

 

 そう言いながら、ミラの右頬を優しく愛おし気に撫でる。それを「んっ」と言いながら受けるミラ。

 右手をそのまま動かし、頬からうなじを撫で、耳の形をなぞり、額に触れる。

 

「ジェ、ジェイ・・・んっ」

 

 そのまま肩に触れ、腕をさすり、ミラの手に触り、手と手を合わせ握る。

 

「こ、声・・・外に・・・」

 

「大丈夫、ヘルヘイムで既に部屋囲ってるから外に漏れないさ」

 

「じゅ、準備早過ぎない!?///」

 

「フフフ・・・俺は死神だぜ?こんなの簡単簡単」

 

「そ、それ理由になってないわよ!?・・・んぁっ」

 

 ジェイの手が再び腕を撫で、鎖骨を経由してミラの柔らかな胸に触れる。

 

「やわらかい・・・。ふにふにしてて、手に収まる感じ。気持ち良いな・・・やっぱり」

 

「な、何一人で・・・んっ、納得、してるのよ」

 

「ごめんごめん。ミラが変に胸の事気にしてるから、それを解いてあげようと」

 

「う、うるさいわね・・・もう気にしてないわよ」

 

 ミラはジェイの頬に右手を添える。

 

「ジェイが言ったあの時から、もう気にしてないわよ。ジェイは【私】が好きなんだものね」

 

 と言うと、愛おし気に微笑む。

 

「・・・それは反則だぞ///」

 

「え・・・?んぁっ///」

 

 ジェイは反射的に右手でミラの左胸を包んだ。感触を楽しむかのように何度も指を動かす、そして動かすたびにミラの口から甘い吐息が聞こえてくる。

 

「んぁ・・・ん、んん・・・あっ・・・///」

 

 その声を聞くたび、ジェイのテンションも上がっていく。

 

「さぁて・・・盛大なパーティーの、始まりだ」

 

「~~~っ!!///」

 

 その夜にどの部屋でも大きな声が聞こえた、と言う報告は無かった。知っているのはその部屋に居た者だけだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜が明けたか」

 

 徹夜だった。執務室から聞こえてきた鳥のさえずりにティグルは疲れきった声で呟いた。

 

「ティグル。昼からは軍議じゃ。それまで寝てこい」

 

 横で手伝っていたマスハスが見かねて、労わりの声をかけた。ティグルは虚勢を張らず、眠たげに瞼をこすりながら立ち上がる。

 

「お言葉に甘えさせてもらいます。マスハス卿は大丈夫ですか?」

 

「わしは夜のうちに仮眠をとったのでな。もう少し片づけてから休ませてもらう・・・あ、すまん、ティグル。部屋に戻るついでにルリエ殿を起こしてきてもらえんか」

 

「彼女がどうかしたのですか?」

 

「幕舎の配置の問題で相談があるのだ。危うく忘れるところじゃったわ」

 

「・・・分かりました」

 

 ミラの部屋は、ここから自分の部屋へ戻る通路の途中にある。だからマスハスも頼んできたのだろう。

 ミラの部屋に着くと、扉の前にはジスタート兵が立っている。ミラの部下だ。

 

「彼女はまだ寝ているかな」

 

 兵に尋ねると、昨夜ジェイと話があるからジェイの部屋に行ったこと、用があるならジェイの部屋に来るように、と言われたことを話してくれた。

 ティグルは兵に礼を言うと少し離れたジェイの部屋へ向かった。ジェイの部屋の前には兵はいなかった。なのでティグルは扉を三回軽く叩いた。

 すると、ジェイの部屋から別の声が聞こえた。

 

「誰かしら?」

 

「俺だ、ティグルだ。少し話があるんだけど、いいかな?」

 

「・・・入ってきなさい」

 

 ティグルは戸惑いつつ、扉を開けて室内に足を踏み入れる。

 夜が明けてばかりのせいか、部屋の中はまだ薄暗い。奥の方にぼんやりとベッドらしき輪郭が見えた。そのあたりでもぞもぞと何かの動く気配もする。

 

「朝早くすまないな。でも、入ってよかったのか?」

 

「当然でしょ。些細なものであれ、廊下で話させるわけにはいかないわ。貴方の言葉の断片が、誰かに変な風に伝わったりしたらおおごとじゃない」

 

 ---ごもっとも---

 

 ティグルはベッドのそばへ歩いていく。少しずつ薄闇に慣れてきて、青い髪の戦姫の姿を認識した・・・途端、眠気が吹き飛んだ。

 何故ならミラの格好が乱れていたからである。腰から下を覆っている毛布の端からわずかに覗く太腿が、妙に艶めかしく見える。

 

「どうしたの?」

 

 ティグルを見上げて、ミラは不思議そうに問いかける。

 

「さ、寒くないのか?」

 

「平気よ。私にはラヴィアスがあるもの・・・それにジェイも、ね」

 

 ベッドの傍らに立てかけていた短槍を手に取って、ミラは愛おし気にその穂先を撫でる。

 

「でも、そんなに私の格好が寒そうに見えるなら、温めてくれてもいいのよ?」

 

「もし俺が分かったと言ったら、ここで寝かせてくれるのか?

 

 半分は本音である。今すぐベッドに横になって昼までぐっすり眠りたい心境だった」

 

「かまわないわ。この前、一緒に寝たばかりじゃない」

 

 くすりと笑っての即答に、ティグルは早くも降参した。一言謝ってから、口早に用件を告げる。これについては彼女は真面目な顔で聞き、あとでマスハスのところへ赴き、対処すると答える。

 

「わざわざご苦労様。それじゃ、おやすみなさい。ティグル・・・あ、そういえば兵達から聞いたのだけど、最近この城砦に幽霊が出るらしいわ」

 

 予想だにしなかった単語を聞かされて、眉をひそめる。

 

「真っ白なドレスを着た女の幽霊だそうよ。私は見たことないけれど」

 

「ありがとう。とりあえず調べさせておくよ」

 

 ミラに礼を言い、ティグルは部屋を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静かに閉じられた扉を三つ数える程時間見つめて、ミラはそっと視線を隣に眠る死神に移した。

 

 ---まったく、ぐっすりに寝ちゃって・・・まぁ、昨夜は・・・その、は、激しかったからしかたないのかもしれないけど///―――

 

 思い出しただけで顔が熱くなっているのがすぐ分かった。

 

「もう・・・【ご褒美】はちゃんと渡したんだから、ね」

 

 そう言いながら、ミラはジェイの頬にキスを落とす・・・としようとしたら、不意にジェイの顔の位置がズレ、唇に落ちた。そこまでは別によかった、予想外なのは自分の後頭部と腰にジェイの手が回っていることだ。

 

「んっ!?///」

 

 ミラは恥ずかしくなり直ぐに離れようとするも、ジェイに押さえられているため逃げられない。そのまま甘いキスをして数秒、唇が離れた。

 ミラは力が入らず、ジェイにもたれかかった。

 

「ジェ、ジェイ・・・っ!///」

 

「ご馳走様、ミラ」

 

 いたずらが成功した子供のような顔をしてミラに言う。

 

「お、起きてたの・・・?」

 

「まぁな。なんか話してんのが聞こえてな。内容は分からなかったけど」

 

 そう言うジェイに、ミラは話の内容を伝える。

 

「---と、言うことで。これからマスハス卿の元へ行こうとしてたところよ・・・どこかの死神のせいで遅れるけど」

 

 軽くジェイを睨みながら言う。

 

「ま、まぁまぁ・・・気持ち良かった、ろ?」

 

「そういう問題じゃないわよっ!?///」

 

 ミラとジェイがマスハス卿の元へ着いたのは、それから半刻後だった。




「こうして見ると、私がジスタートに戻っていた間にいろいろあったのだと、改めて実感させられるな」



「・・・あらあら。私の心配とはずいぶん偉くなったものね、エレオノーラ。肝心の戦に間に合わなかった分際で」





「次回、第20話「死神と進む道」。もう20話なのね・・・これも応援してくれる貴方達のおかげよ、ありがとう(微笑)」

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