魔弾の王と戦姫 ~凍漣の雪姫と死神~ 作:ジェイ・デスサイズ
更に、エレンのカードスリーブも見つけ、モチベ上がったのですが。ミラとエレンのスリーブのデッキを使ったら事故る事故る…カードゲームにまで2人の仲の悪さは干渉するのかと思いました。
後、これからの後書きにはアニメの予告のようにキャラのセリフが入ったようなものにしたいと思います。
イマイチイメージが分からない人は、後書きを見てください。
それではどうぞ~
「なっ…お前、何のつもりだ!」
顔を真っ赤にするエレオノーラを意外そうな瞳を向けながらミラは言う。
「そもそも私達がここまで来たのは、彼に会うためよ。アルサスへ向かう途中であなたの別荘があることを思い出して念のために寄ってみたの」
「俺に何の用だ?」
そう尋ねるヴォルン伯爵の声には、かすかに警戒の響きがこもっていた。そして、その言葉使いにプローネは反応し、ヴォルン伯爵を睨みながら言う。
「貴様、戦姫であるミラ姉様に対してその口の訊き方は何だ!」
プローネの声にヴォルン伯爵は少しビクッとした。
「プローネ」
ミラは手をプローネの前に出し、静かにさせる。
「ミラ姉様…分かった」
プローネはミラの指示に大人しく従う。
「たいしたことではないわ、少し話をしたいだけ。嫌かしら?」
「御免だな」
即答したのはヴォルン伯爵ではなくてエレオノーラだった。エレオノーラはヴォルン伯爵の隣に立ち、ミラを睨みつける。
「こいつは私のものだ。その行動も、私が決める」
「あら?あなたはヴォルン伯爵に雇われたのではなくて?ジェイ、王都で雇われたと言っていたわよね?」
ミラが俺の方を見て問いかける。
「あぁ。確かに『雇われた』と言っていたな」
俺も同意するとエレオノーラは言葉に詰まった。するとヴォルン伯爵が言う。
「対等に近い関係だからね。雇われている側の考えも尊重することにしているんだ」
その答えにミラは納得したが、俺は納得しなかった。先程エレオノーラは「私のもの」と言った。それはつまり『雇われた』というのは嘘で、ヴォルン伯爵はただの捕虜という可能性も出てくる。捕虜なら「私のもの」と言っても不思議ではないが『雇った側』を「もの」と言うか?そもそも―――。
俺は腕を組み、考えていると腕に小さな痛みが走った。
「っ……ミラ?」
「ジェイ、また考え込んでいたのね…。ロドニークへ行くわよ」
「ロドニーク?何故だ」
「エレオノーラ達がそこへ行くのよ。「話があるならそっちが付いてこいって」
「なるほどな、分かった」
俺はミラの後ろを付いて行き、屋敷を後にした。
屋敷を出た俺達は馬を駆ってなだらかな斜面を下る。先頭にエレオノーラとリムアリーシャ、その後ろに俺とプローネ。更に後ろにミラとヴォルン伯爵の順に走っている。何故この順になったかというと、まずミラとエレオノーラがお互いに「一緒は嫌だ」と言い、ヴォルン伯爵は恐らくミラと話を終わらせるためにミラの隣になったのだと思う。残った俺とプローネな間に入るということになった。
馬を走らせていると前にいるエレオノーラに声をかけられた。
「そういえば…ジェイノワール、と言ったな。お前はリュドミラとどういう関係なんだ?」
俺とミラの関係…。親しい人物なら『恋人』と言うが、ここは表の関係を言うのが賢明…というか普通か。
「我がハーネスを治めるクロフォード家とオルミュッツを治めるルリエ家とは長年に渡る交流がある…ただそれだけですよ?」
ふ~ん、と言いながら俺を見るエレオノーラ。俺は嘘は言っていない…詳しく言っていないだけで。
「それと、報告であったんだがハーネスとオルミュッツ付近に『死神』がいるというのがあったんだが、そこはどうなんだ?」
『死神』…もしかしてもなく俺の事だな。
「噂は聞いたことがありますが、いるかどうかは私にも分かりません」
そうか、と言いエレオノーラは前を向いた。それからほどなくしてロドニークに着いた。
「…何もないところね」
「そう思ったなら今すぐ帰れ。喜んで送り出してやる」
またか…。俺はそう思いながらため息をした。するとプローネな何かに気づいたらしい。
「兄様、この町には何かあるのか?」
「どうしてそう思った?」
「この町の人達が何をやって食べているのかが全く分からないんだ。畑は少ししかなかったし、それに海道からも遠いから商売中心でもないだろうし…」
「よく気づいたなプローネ。ここには温泉があるんだ」
「温泉?温泉って山奥とかにあるんじゃないのか?」
プローネの答えに俺は少し笑った。
「フフ。お前は秘湯にでも行くつもりか?温泉は必ずしも山奥にあるとは限らないんだ。確か、井戸を掘ってたら水じゃなくて温泉が湧いたんじゃなかったかな」
さらにエレオノーラが説明を加える。
「大浴場だ。あの中には3つあってな、温泉から水道管を引いてそれぞれに流しているんだ。さっそく…」
そこでエレオノーラの言葉が途切れた。近くの露店を見ていた。俺も同じ方を見た、小麦の粥(カーシャ)の露店だった。…悪くない匂いだな。
「ちょっと食べていかないか?」
なんて考えているとヴォルン伯爵が提案する。
「うん、そうだな。お前が言うならそうしよう」
と、エレオノーラは頷いたが…ミラの事だ、拒否するだろうな。
「私はいらないわ。戦姫が露店でものを食べるなんて……。それに空腹というわけでも―――」
そこまで言った時、ミラの腹から可愛らしい音が鳴った。小さい音だったが少なくともこの5人にははっきり聞こえた。鳴った瞬間、ミラの頬が赤くなった。
「そうか。誇り高い戦姫であるリュドミラ様は露店の麦粥など食えないか」
そして露店へ行き、麦粥を買ってくるとわざわざミラの前に立ち麦粥を食べる。
―――お、大人気ない…。
この場にいる4人は同じ事を思った。
「(全く、世話の焼ける)」
俺はそう思いながら露店へ向かう。俺の分とプローネの分とで2つ注文する。
「腹が減っていてな、1つは多めに頼みたい」
銅貨を1枚多く渡して、俺は頼んだ。
麦粥には香草以外にとり肉や細かく砕いた木の実などが入っていて、とても美味そうだ。ひと口食べてみると塩加減がとてもよく、俺好みの味だった。1つをプローネに、そして俺の分をミラに差し出す。
「ミラも少しどうだ?戦姫が露店の品を食べたからってバチは当たらないだろ」
ミラにしか聞こえない声で言う。
「…ジェイがそう言うなら、いただくわ」
おずおずとミラは手をのばして木製の椀を受け取り、粥に息を吹きかけて冷ましながら口に運ぶ。
「…悪くないわね」
「だろ?…ってこら、ヨミ」
左腕に巻き付いているヨミが体をのばしミラの持っている粥をガン見している。そんなヨミを見たミラは粥に入っている大きめのとり肉をすくい、ヨミの前に差し出す。
「ほら、ヨミ。食べていいわよ」
ミラが言うないなやすぐにとり肉を食べ始めた。ミラは笑みを口元ににじませ、ヨミを見つめている。
それから少ししてヴォルン伯爵がミラに飲み物を勧め、それを見たエレオノーラはヴォルン伯爵の襟をつかみ喧嘩っぽいことが起きた。俺はそれを静かに眺めていた。そして俺同様に見ていた主婦や子供もいた。中から痴話喧嘩だとか痴情のもつれつだとか、さらに子供が「夫婦喧嘩、夫婦喧嘩」と楽しそうに言っていた。
「ふぅ~良い湯だな、この温泉は」
あの後、宿で手続きを終えた後俺はさっそく温泉に入った。
「疲れが取れる…」
「なら私も入れてもらえるかしら?」
「は?…この声、まさか…」
俺は反射的に後ろを向く。そこには体をタオルで巻いたミラがラヴィアスを持ちながら立っていた。
「ミ、ミラっ!?///」
「疲れてるジェイを癒してあげようと思ってね…それにしてもすごい慌てっぷりね」
フフ、と笑うミラ。
「いきなり入ってくるからだろ…ったく。っておい」
ミラは体をお湯で流し、俺のすぐ隣に浸かる。
「ん。確かに良いお湯ね」
「…(これは何を言っても拒否られるな)」
そう考えた俺は、ミラの腰に手をまわし引き寄せる。
「あら、いきなりどうしたの?」
「やられっぱなしなのはしゃくなんでね」
するとミラは俺の肩に頭を乗せた。
「なかなか良いわね」
「そりゃ良かった」
それから少しして足音が聞こえた。俺は念の為、声をかける。
「…プローネ?」
「に、兄様?」
やはりプローネだった。
「え、何故兄様が?」
「色々あってミラと入ってたんだ。今上がるから少し待ってくれ」
「やれやれ、分かった」
「と、言う事だ。後はプローネと楽しんでくれ」
「仕方ないわね」
俺はそう言い風呂から上がり、プローネと入れ違う。…もちろんお互いタオル巻いているからな?
「ごゆっくり」
「そうさせてもらう」
それから少しして不機嫌になったミラとプローネがやってきた。理由を聞くと、俺が上がった後2人で体を洗っていた所にヴォルン伯爵が入ってきてミラが仕留めた、とプローネが言う。
これは予想だがエレオノーラがわざと場所を教えたのではないだろうか…。だとしたら、本当に仲が悪いんだな…。
やれやれ。
「私は生きている証が欲しい。だから生死のかかった戦いに身を置く」
「臣下1人でここまで取り乱すなんてね。エレオノーラ、あなたは戦姫失格よ」
「派手なパーティになることは、間違いないと思うけどな」
「ちなみに、手土産は敗北だ。ありがたく受け取れ」
「死ぬぜぇ、俺を見た奴は皆死んじまうぞぉ!」
「斬り裂け、銀閃!(アリファール)」
「貫け、凍漣!(ラヴィアス)」
「斬り刻め、漆影!(ヘルヘイム)」
「次回、第9話。「死神VS風姫」見てくれると嬉しいわ」