【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
ほんの少し話は脱線したが、これから鍛えて短期間に強くなるという話にまとまった。
「あ、私も場所を貸してほしい。それと出来れば一人でしたいかなぁ」
「はい。問題ありません」
ジャンニーニに言葉に優は良かったと頷く。
「オレ達と一緒だとダメなの?」
「スケボーに乗る練習で、ツナ君達にぶつかりそうで怖い。基本、私は風が勝手に守ってくれるから壁と衝突することはないしー」
そうなんだ!?とツナは驚く。距離が近いツナであっても、優の戦闘スタイルについてはよくわからない。もっとも、知らない理由はあまり優が話したがらないとツナが感じ取ったからだが。
「それにアルコバレーノのおしゃぶりの袋を取れないから、出来る範囲をしっかり確認したいのもあるんだよね」
「なっ、どういうことだ!!」
突如、声を荒げたラルにツナ達は驚く。
「なんだ、優がアルコバレーノって知らなかったのか」
「説明しろ!!」
そう言われても、話せる範囲が限られているので優は首を傾げるだけに留める。それを見た、草壁が口を開く。
「まずこの時代でヴェントがアルコバレーノと信じているのは極一部の者だけです。ほとんどの者は信じていません。理由は風早さんは他のアルコバレーノとは異なる時期で、赤ん坊ではありません。また非7³線の影響がある前からその袋を外すことは出来ず、奥の手になります。使った回数は多くありません。さらにヴェントの噂は我々以外にもボンゴレ、キャバッローネが偽の情報を流しているのもあります。恐らくですが、あなたの場合は信じなかっただけではないでしょうか?」
「……その通りだ」
誰かが悪いという話でもないので、ラルはすぐに落ち着いた。
「説明出来る内容もほとんどありませんよ。どうしても知りたければリボーン君に聞いてください。私は下手に話せませんから」
心配そうにツナ達が優の顔を覗き見るので、優は大丈夫という意味を込めて笑った。ただほんの少し雲雀に会いたくなった。
「じゃぁ私は雲雀先輩のアジトに行くね」
「こっちで過ごさないの!?」
「我々のアジトには風早さんの部屋がございます」
優が答える前に、草壁が口を開いた。ツナの言葉で優の気が変わってしまう事態を避けたかったのである。雲雀に咬み殺されるだけではすまない。
「だってさ。それにお風呂とか、こっちではどうなるかわからないし」
それは雲雀のアジトでもいえることなのだが、なにせ人数が少ない。雲雀と草壁と時間をズラせばいいだけの話だ。また優の予想では、雲雀と草壁が同じ風呂場を使っているとは思えない。
ツナも優の言葉で納得したらしく頷いた。が、声をかけた。
「こっちにも来るよね?」
「さっき修行場所貸してほしいってお願いしたでしょ?」
クスクスと笑いながら話す優を見て、ツナはそうだねと安心して頷いた。ツナは優よりも争い事が苦手だ。人の心配をする余裕はないが、それでもこの時代は優にとってかなり辛いのではないかと思っていたのだ。雲雀がそばにいるのはわかっているが、それでも顔を合わせれるように約束しておきたかった。
「あ、そうだ。草壁さん、すみません」
フードを被って出て行こうとしたところで思い出したように優は立ち止まる。ツナ達がどうしたんだろうと優をみる。
「ビアンキさん、ちょっと……」
ちょっと驚いたようにツナは優とビアンキの顔を見る。過去の時代ではあまり接点がないので、優がビアンキに声をかけた理由がわからないのだ。
「なにかしら?」
ツナ達の視線に気付いていながらも、ビアンキは立ち上がり優に近づいて声をかけた。
「京子ちゃん達の下着とかって大丈夫そうですか?」
コソッと優が耳打ちした言葉にビアンキは目を見開く。
「用意出来そうにないなら、雲雀先輩に頼みますけど……」
「……いえ、こっちで何とかするわ。ありがとう、助かったわ」
いえいえと優は手を前にだしブンブンと振る。優が言わなくても気付いた可能性があった。気付かなくても、厳しくなったところで京子達から相談されていただろう。優も出来ればこの件だけは雲雀の力を借りたくなかったので、ビアンキが動いてくれるといって正直助かったのだ。
「あなたは大丈夫なの?」
「……大丈夫です」
ほんの一瞬返事が遅れたのを見て、雲雀が用意したのだろうとビアンキは勘違いした。実際はタイムトラベルが起きると知っていたから、この時代の優が用意していたと言えなかったからだが。
「京子ちゃんとハルちゃんも心配だけど、特に花のことをよろしくお願いします」
「ええ、任せて」
そっとビアンキは優の頭を撫でようとした。優は思わず飛びのくようにビアンキから離れる。やってしまったと思った優は、いつの間にか足元に居たリボーンに助けを求めるように見つめた。
「優、草壁が待ってるぞ」
「ビ、ビアンキさん、すみません! 草壁さんお待たせしました!」
リボーンの言葉に優は飛びつき、去っていった。
「心配ね……」
「ああ。思った以上にやべーな」
人のことばかり心配し、自分のことを後回して恐らく自身の不安定さに気付いていない。普段の優ならば、さりげなくビアンキから距離をとったはずだ。もう正体を知っているビアンキですら、近づくのを恐れ始めている。
「……呪い」
リボーンがポツリと呟く。何度も優に親しいものを作りにくくし、周りが離れていくように仕向けるような状況に、まるで呪いのようだとリボーンは思ったのだ。
聞き取れなかったビアンキはリボーンに視線を向けたが、リボーンは何でもねぇぞと誤魔化した。
優の取り巻く状況を呪いと感じたことで、リボーンはアルコバレーノの呪いに結びついた。だが、それはないという考えもすぐに浮かんだ。もしこれがアルコバレーノの呪いなら、優はアルコバレーノになる前から呪われていることになる。ツナと出会う前に優には親しいものが出来なかったのだから。それにそれが優のアルコバレーノの呪いならば、救ってくれたツナとも親しくなろうとはしなかっただろう。
それでも、リボーンは己の勘を捨て切れなかった。
草壁に案内してもらい、優は雲雀のアジトへとやってきた。和風な造りに興味津々でキョロキョロと首を動かす。
「こちらです」
案内された部屋の障子を開ければ、雲雀が座ってお茶を飲んでいた。服装がスーツではなく着物だったので、もうツナのアジトには行くつもりはないようだ。
「優」
ポンッと雲雀の隣にある座布団を叩いたので、ここに座れという意味だろう。優が誘われるようにそこへと向かう。草壁は下がるらしく部屋に入ってこない。話し合いの内容は後で報告するのだろうか、それとも優がするべきなのだろうか。
「何してるの? おいで」
草壁を気にしてほんの少し歩みが遅くなった優を見て、雲雀は戸惑ってるのだろうと思ったようだ。確かによく見ると、座布団の位置がいつもの距離より近い。
「失礼しますね」
ほんの少し座布団を雲雀から離して座れば、視線を感じる。
「……う、わかりました」
座布団を元の位置に戻し、優は座りなおす。すると、頬に手が伸びてきて顔をあげることになった。
「おかえり、優」
ボンッと音が出るようなぐらい、真っ赤になる優。雲雀の目が愛おしいと物語っていたのだ。
「た、ただいまです……」
消え入りそうな声だったが、優はなんとか返事をした。本人は無意識にしていたが、恥じらいながらも時折視線を合わせる姿は凶悪なほどに可愛らしい。我慢するはずもなく、雲雀は軽く口付けた。
その結果、優の許容範囲が超えたようで寝込んでしまった。慣れた手つきで雲雀が抱きとめる。そしてポツリと呟く。
「……味見すれば怒るかな」
どうやら雲雀にとってキスは味見には入らないらしい。答えはわかりきっていたので諦めるように軽く溜息を吐いた後、意識を失った優を軽々と抱き上げて、雲雀は優の部屋へと運んだのだった。
ガバリと優は起き上がる。
「眠ってた……。いつから? というか、ここどこ?」
目をこすりながらも情報を整理するために声に出す、優。しばらくして全て思い出したのか、1度布団の中に潜り込み、近くにあった人形に抱きつく。
「って、こんなことしてる場合じゃなかった!」
慌ててケイタイに手を伸ばす。少し悩んだ後、電話をかける。
『ヴェント、何かあったのか?』
着信履歴からボンゴレ狩りが起きただろう直後に連絡があったのはわかっていたが、10年前と変わらぬ雰囲気に優はホッと息を吐く。
“少し聞きたいことがあるんだ。今大丈夫か?”
『ああ、問題ないぜ。それと無理して話さなくてもいい』
許可を得たので了平の居場所を知らないかとディーノに聞いた。ちなみにヴァリアーに居ると知っている優がディーノに電話をかけた理由は単純で、何も知らない状況なら先にディーノに尋ねるだろうと思ったからだった。
『ヴァリアーと一緒って聞いたぜ』
「そうなんですか!? 良かったぁ……。よく知ってましたね」
わからんと言われ、ヴァリアーと連絡するつもりだった優は予想外の展開である。
『この状況だからな。スクアーロと連絡をとったんだ。恐らく近いうちにボンゴレと同盟による会議が開かれる』
「……その内容は気になりますね」
『お前は絶対に来るなよ。こっちには笹川了平が居るんだ』
「わかってます。これ以上、混乱させる気はありません」
優が……ヴェントが行けば、裏切るものが出てくるだろう。雲雀に説明された優はその危険性を十分理解していた。
「それに外に出たらすぐ捕まっちゃうと思うんで」
『……何が起きた』
ディーノの口ぶりから、スケボーを使いこなせれば捕まる確率はかなり低そうである。
「ツナ君のアジトと連絡が取れないんですね。というより、盗聴の危険性があるから出来ない感じなのかな」
『ああ。優のケイタイじゃなきゃ、ここまで話せなかった。ん? 今ツナのアジトにいるのか?』
「正確には雲雀先輩のアジトです。まぁ出入りしてますけどね」
『そうか。……今なんて言った?』
今の会話で引っかかるということは、雲雀の話は本当のようだ。過去から来た自分には全く想像がつかない。
「10年バズーカに当たり、今会話しているのは10年前の私です。時間がたっても戻れません。ツナ君と獄寺君と山本君もです。私はもう3日ぐらい居ますよ」
『……ウソをつく意味はねぇか』
「ですねー」
『恭弥は大丈夫なんだな?』
「はい。雲雀先輩は私も小さいので随分ツナ君達に協力的ですよ」
ホッと息を吐いたのは安堵からなのだろう。雲雀が協力的かそうでないかで大きく変わってくる。
「ただ、ツナ君達の姿はミルフィオーレに見られてます。私はバレてませんが、あまり意味がないでしょうね」
優はバレたが誤魔化したという説明を省いた。この状況ではそこまでの説明はいらない。
「ま、リボーン君も一緒にきてますので何とかなりますよ」
こっちはこっちで何とかすると優は伝えたのだ。
『優、諦めることだけはするな。……ボス命令だ』
「……はい。努力します」
誰もが無茶を、無理をしなければならない状況である。過去から来たツナ達とは違い、それをよくわかっていたディーノはこの言葉を選んだ。そのため優は素直に約束したのだった。