【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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寝落ちしてました。


大空戦 3

 雲のフィールドといっても、堂々とグラウンドのど真ん中に居るわけではない。空を飛んでいるXANXUSに見えないように校舎の影に隠れるように優は居た。

 

 人の気配がし、優は目を向ける。

 

「ヴェント、みっけ」

 

 わざわざ逆刃刀の欠片を落としていったのだ。見つけてもらわなければ困る。ただ思ったよりも来るのが遅かったので、原作とズレて雲雀が勝ったかもしれないと僅かな希望を抱いていたが、その希望はなくなったと悟る。

 

“やっぱり僕が残るべきだったか……”

 

 殺されるようなヘマはしてないだろうが、怪我はしてるだろうと優は思った。

 

 戦う素振りを見せた優に、ベルは両手をあげ戦う気はないと示す。敵意がない相手に優は攻撃を仕掛けないことをベルはわかっていたのだ。そしてベルが両手をあげたのはもう一つ理由があった。

 

“……本当に君は僕の性格がわかっているな”

「うししっ」

 

 ベルはわざわざ優に見えるように、指に雨のリングをはめていたのだ。優が思っていた以上に冷静で、ベルは寄り道をしてきたらしい。指にリングをはめているのは、指で挟んで持っていれば風を操り奪われることを警戒していたからだろう。そして来るのが遅かったのは、解毒時間のギリギリを狙ったからだ。

 

“僕と戦うのを避けたのか?”

「殺りたいわけじゃねーし。それをやれば終わりってオレの勘がいってる」

 

 嫌いになれないから困ると軽く溜息を吐きながらベルの後を優はついていく。

 

“山本武の命の保障が先だぞ”

「オレに協力してくれるって約束すんなら」

”……そっちが全部のリングを集めたなら、最後に指にリングをはめてもいい”

「りょーかい」

 

 答えながらも優は、ベルが実現できる可能性を考えていた。ベルが来るまでに雲雀はやってこなかった。動けなくなってる可能性もあるが、恐らく優の意図を汲んで動いているだろう。ベルは雲のリングを持っていなかったのだから。

 

 原作と違い、優はベルを霧のフィールドに行かないように策をした。そして本来なら雨のフィールドに向かっていた雲雀が、霧のフィールドに向かったはずだ。だからベルが雨のリングを得ることが出来た。

 

 鍵を握ってるのはクロームだろう。雲雀はクロームの解毒をした後、恐らくマーモンのことをクロームに丸投げする。敵には容赦がない雲雀は校内で死なれても問題ないと思ってるはずだ。だからこそ抑える自信があるなら解毒すればいいという意味で丸投げをする。今の雲雀ではマーモンを抑える力はないのだから。

 

“……なぁ、ベルはどうして人を殺すんだ?”

「ん? 気持ちーし、楽しいから」

 

 優は長い息を吐いた。ベルの言葉にどこかで理解している自分もいたからだ。この世界では少ないが、前の世界では嫌な気持ちになることが多かった。目の前にいる人物が居なければ、どれだけすっきりするのかと考えたこともある。手を出せば、優はベルのようになっていただろう。もっとも一時の感情に流されず、優は自己評価を下げることで回避したが。

 

「ヴェント?」

 

 雨のフィールドである校舎に入る直前に動きを止めた優にベルは不思議そうに声をかける。

 

“……僕はボス同士の戦いの場所へと向かう。君の行動を止めそうだ。それは約束に反する”

「ししっ。またね」

 

 言葉のスキをついて、山本の解毒をすれば指にリングをはめると言ったがベルの邪魔をしないとは言ってないという抜け道を用意していたが、優はやめた。

 

 最後まで優はヴァリアーを嫌いになれなかった。もしベルが全部指輪を集めたのなら、優ははめてもいいと思えたのである。リングがXANXUSの血を拒みツナ達が勝つとわかっていたのもあるが、ヴァリアーのボスとしてXANXUSに前へと一歩進んでもらいたかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 ツナとXANXUSの戦いが見える位置に移動した時、風が優を守った。優を絡めて捕まえようとしたチェーンが地面に落ちる。

 

“君も結果を見にきたのか?”

 

 優は軽い口調で話しかけた。だが、一向に答える気配がない。それどころかトンファーの先から出たチェーンを振り回していた。

 

「僕は君の性格を知ってるつもりだ」

“……流されたと思ったんだけどなぁ”

 

 困った風に優はフードの上から頭をかく。優はクロームを助けた後は、雲雀にゆっくりと休んでほしかった。休んだ後、雲のフィールドに向かっても優はいない。雲雀が知らない間に全て終わらせるつもりだった。

 

「風であっても僕は流されない。僕が流されたように見えていたのなら、それは君の意見と一致していただけだ」

 

 優が敵に塩を送るほどお人好しと知っている雲雀は、誰にも雲のリングを預けず、優を止めるためにここに来た。

 

“その傷で動かない方がいい。僕は君を気に入ってるんだ”

「僕の力量を君の物差しで測らないで」

 

 今回はどちらが正しいという話でもないだろうと優は肩の力を抜いた。互いが己の考えを主張し、譲る気がないだけだ。

 

“君の好きにすればいい。僕は僕で動く”

「そう」

 

 優を捕まえようと動こうとした時、邪魔をするかのように足音が聞こえ雲雀は動きを止める。

 

「ム。どうなってるのさ」

「知らね。でも雲のリング、見っけ」

“今度は僕から交渉だ。マーモン、君なら殺さずにリングを奪えるだろ? 足止めレベルに留めてくれ”

 

 雲雀は優を睨む。優はベル達が近づいていたことに気付いていたはずだ。初めから狙っていたのだ。

 

“何もただじゃない。もしXANXUSがボンゴレのボスに決まった後、多少は協力しよう”

「多少なのかい?」

“当たり前だろ。守護者だが、僕は他の守護者とは枠組みが違う。それに僕はXANXUSをボスと認めたわけではない。ベルとの交渉には乗ったが、彼のために動くということではない”

「だったら、従わせるだけさ」

 

 マーモンが優と雲雀を縛り上げるように幻術をかけていく。が、優には効果がない。

 

“……交渉不成立で、いいのか?”

 

 優の怒気と共に、周りの小石などが浮いていく。体調が悪く立つのも辛いはずなのに、底知れぬ力を感じ優に圧倒される。

 

「ヴェントの言うとおりにしようぜ。その方がぜってぇいいって。オレもマーモンもヴェントの能力とは相性悪いし」

「……仕方ないね」

 

 雲のリングを奪ってる間、雲雀から痛いほどの殺気が飛んでいた。雲雀はまだ諦めていないのだ。否、諦めれるはずがない。

 

 抜け出そうとするたびに、雲雀の血が流れていく。この時になって優は選択を間違えたこと気付いた。

 

“君の手をとるのが正解だったのかもな……”

 

 優の呟きに反応して、雲雀は優に目を向けた。今からでも間に合うと訴えるかのように。

 

「ヴェント?」

“……いや、なんでもない”

 

 ベルに声をかけられ、優は首を振った。雲雀から視線を感じていたが、優は見れなかった。恨まれているんだろうと思い込んで……。

 

 結果、優は大人しくベルの後を追いかけていったのだった。

 

 

 

 

 

 優がツナ達のもとについたとき、XANXUSはもう氷漬けにされていた。

 

“……大丈夫か?”

「ヴェント……?」

 

 気力がほぼ残ってないツナを心配し声をかけたが、優は決して近づこうとしない。そのため、ツナは疑問に思い声をかけたのだ。

 

“……この場合、条件に当てはまるのか怪しいな”

「黙って見てるがいいさ」

 

 ツナからの視線に耐え切れず、優はさっさとXANXUSの氷を溶かすようにと促した。他のリングに同調するかのように風のリングに炎がともる。そして、マーモンは氷を溶かした。

 

「7つの完全なるボンゴレリングが継承されし時、リングは大いなる力を新たなるブラッド・オブ・ボンゴレに授けるといわれている。……君のリングはどう影響するかはわからないけどね」

 

 優もわからないと首を横に振る。

 

「やってみるだけさ」

 

 ベルがXANXUSにリングを指に通そうと動き出した時、笑った。

 

「ちょうどいいじゃん。証明になるしー」

 

 チラッと横に向ければ、獄寺達が駆け寄ってきていた。その中に山本の姿があり、無事を確認することが出来る。

 

“君が僕との約束を守らないとは疑ってなかったぞ”

「ししっ♪」

 

 XANXUSにリングを指を通すと同時に、優もリングに通そうとすれば、獄寺達の止めるような声が聞こえる。その中で、雲雀の声が聞こえ、優は目を向ける。

 

 獄寺達と現れた方向が違うので、雲雀は無茶をして自力で解いてきたのだろう。

 

「ヴェント」

“……わかってる。約束は破らない”

 

 ベルに促され、優は指にリングを通したのだった。




獄寺君達の戦闘を書こうか悩んだけど、止めました。

流れはベルが雨のフィールドで山本君の解毒とマーモンの解毒で獄寺達と交渉しています。ちなみに山本君はワイヤーで縛られているので解毒した後も動けない。
獄寺君達は優とベルの交渉を知らないので乗るしかありません。
ベルが策士でした。
毒にうなされながらもマーモンはベルの意図を汲めるので、解毒した後は幻術合戦がはじまり、優と雲雀さんが対立する時間が出来た。
そんな感じです。

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