【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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昨日は寝てました。すみません。


貸し借りの関係

「えーと、ごめんなさい」

 

 家に帰った優は、雲雀が睨みつけるようにクロームを見ているので謝った。どうして連れてきたんだと怒ってるとわかったからだ。

 

「正体がバレればどうなるか、わかってるよね?」

 

 いくら雲雀が誤魔化しても優が自覚がしなければ意味がない。いつかバレてしまう。

 

「わかってますよ。大丈夫ですって。……多分」

 

 雲雀は思いっきり優を睨んだ。多分で連れてくるなといっているのだ。そもそも今から何とかして呪いについて聞き出そうとしていたのに、クロームが居ては話が出来ない。

 

「私だって危険だと思いましたけど、交流は必要だと思ったんです。女同士でなければ、話せない内容だってありますから」

 

 これから守護者として戦うならば、協力は必要不可欠だ。鈍いツナ達に察しろというのは無理がある。だからといって、女性特有のことを察しられれば気まずいだろうが。

 

 優の言葉に雲雀は理解できた。が、納得は出来なかったらしい。機嫌が悪いままだ。仕方がないと優は息を吐き、とりあえずクロームをベッドに寝かせようと寝室に移動しようとする。

 

「……何しようとしてるの」

「え?」

 

 不思議そうに返事をするので優は何もわかっていないのだろう。雲雀の中で優のベッドにクロームを寝かせるのは許せないのだ。もし骸と入れ替わりでもしたら、ムカツキどころの話ではなくなる。

 

「優のベッドは僕が使う」

「あ、はい。泊まるんですね。わかりました」

 

 言われるまで気付かなかったらしい。雲雀が2人っきりにさせるわけがないことに。優は寝室ではなく和室に行き、風を操り布団を敷く。

 

「だから何してるの」

 

 へ?と優は首を傾げた。クロームと自分の分の布団を敷いただけなのに、なぜ怒っているのだろうか。

 

「それはあれと繋がってる。優の寝室にそれの分を敷けばいい」

 

 群れることが嫌いな雲雀には珍しい提案である。すぐに咬み殺せるようにするためだった。

 

「ダメです。クロームちゃんは女の子ですよ?」

 

 優はクロームを異性である雲雀と同じ部屋に寝るのが許せず、雲雀は入れ替わった時のことを考え優と同じ部屋に寝かすというのは考えられなかったのだ。

 

 結局、寝室に布団を二枚敷くという案で落ち着いた。クロームだけを和室で寝かせる案もあったが、看病でもないのに雲雀と同じ部屋で寝るのは優が恥ずかしがったからだ。他にもどちらかが起きているという案も出たが、互いに却下した。

 

「そういうことでしたか。クフフフ」

 

 優が布団にクロームを寝かせた途端、クロームの笑い声が響く。トンファーをかまえた雲雀に優は抱きつき止める。クロームの身体なので咬み殺しても意味がない。

 

「ええっと、骸君。私の正体を見に来たなんだよね?」

 

 雲雀に抱きつきながらも優は話しかけた。ちょっと格好がつかない。

 

「そうですね」

「黙っててくれないかな?」

「どうしましょうか。クフフフ」

 

 ますます雲雀が暴れ始めたので、優は必死に抱きつく。

 

「わ、私に借りがあったほうが都合がいいんじゃないの?」

「確かに、沢田綱吉の身体を乗っ取るのに都合が良さそうだ。ですが、僕はあなたの身体もほしい」

「咬み殺す……!」

 

 雲雀は骸に挑発され頭に血がのぼっているので、優は溜息を吐き、雲雀を風で浮かせた。

 

「!?」

「ほぉ」

「少しは頭を冷やしてください」

 

 怒ってるなーと思いながらも、優は骸に向き直った。

 

「で、どうするの? 実際問題、骸君は私に手の内を晒しすぎだと思うよ」

「……あなたに借りを作ると考えた方が、僕にとって有益になりそうですね」

「じゃ交渉成立ってことで。それでさ、もう1つ私に借りを作ろうと思わない?」

「優!!」

 

 雲雀の様子を見て骸は楽しそうに笑った。優と良好な関係を築いた方が面白そうだと思ったのだ。骸は雲雀にも興味があるのだから。

 

「なんでしょうか?」

「明日クロームちゃんに弁当を渡すから、みんなに食べるように言ってほしいんだ。クロームちゃんが軽すぎたし、まともな食事してるか怪しそうだから。骸君が言えば、食べると思うからさ」

「……いいでしょう」

 

 優の提案を聞いたとき、僅かだが骸は目を見開いた。骸のためになることを借りとして頼み込んだのだから。

 

「つくづく、沢田綱吉といい、甘い考えだ」

「甘い考えなのは否定しないけど、私はツナ君みたいに善意だけじゃないよ。クロームちゃんと仲良くなったほうが私としても都合がいいからね」

「そうですか」

「もう戻ったほうがいいと思うよ。疲れてるんでしょ?」

「……また会いましょう」

 

 優は手を振り、骸を見送った。そして気まずそうに雲雀に視線を向け、ゆっくりとおろす。

 

「あははは」

 

 笑って誤魔化してもやはり意味がないようだ。かなりのお怒りだ。

 

「……優」

「は、はい!」

 

 ピシッと雲雀の前で優は正座をする。雲雀が嫌がることをした自覚があるのか、半泣きになりながらも目をそらさない。この行動に雲雀は言葉が詰まった。奇しくも潤んだ瞳で上目遣いである。恋愛は惚れた方が負けという言葉を証明するかのように雲雀は何も言えなくなったのだ。

 

「……もういい。僕は寝る」

 

 そういって雲雀は優のベッドに入り寝た。優は甘いが、決して頭が悪いわけではない。自分が不利になるような交渉は組まないという信頼があった。ただ、ムカついてるので反省すればいいという意味で、もう許してるとは説明をしなかった。

 

 呆れられたと優はショックを受け、眠っている雲雀に手を伸ばそうとした。だが、振り払われるのが怖く、優は手を下ろした。そもそも今回は自分が悪い。

 

 雲雀とクロームが眠っているので優は電気を消す。そしてほんの少しドアを開けたまま、明日クロームに渡す弁当の仕込みのため台所に向かった。

 

 

 

 

「はぁ」

 

 深夜に雲雀の溜息が部屋に響く。優が人形を抱きながら部屋の隅で座った状態で寝ていたからだ。布団を敷いた意味がない。それ以前にこのままでは風邪を引いてしまう。

 

 雲雀は優を抱き上げようとした手を止めた。今の姿が、怯えた時の優に似ている。このまま触れれば、風が優を守る気がしたのだ。

 

「……僕はもう怒ってないから」

 

 一言声をかけてから雲雀は優に触れた。拒絶はなかった。優を抱き上げ、ベッドに寝かせる。以前も思ったが、優は眠りが深くなかなか起きない。クロームさえ居なければ、イタズラするのに。

 

 再び溜息を吐いてから、雲雀は優の隣で寝た。

 

 

 

 

 朝起きると優は首を傾げた。隅っこで寝た記憶があるのにベッドの上に居たからだ。クロームはまだ眠ってるようだが、雲雀の姿はない。寝ぼけて雲雀が眠っていたベッドに入ってしまったのだろうか。もっと怒ってしまったかもしれない。優は項垂れながらも起き上がった。

 

「おはよう」

「……おはようございます?」

 

 リビングのソファーに雲雀が居たので何度も瞬きを繰り返す。そしてトタトタと雲雀に近づいた。

 

「なに」

「怒ってないんですか……?」

 

 昨日怒っていたはずの雲雀がいつものような雰囲気に戻っていたのだ。不思議でしかないのである。

 

「僕は言ったよ。もういいって」

「え? それって許してるという意味だったんですか!?」

「そうだね」

 

 そうだったんだと優はホッと息を吐いた。冷静になった優は、今の自分の格好を思い出す。顔もまだ洗っていない。

 

「わっ、わっ。着替えてきます!」

 

 慌てて動き出した優を見て、雲雀はいい加減慣れればいいのにと溜息を吐いた。

 

 雲雀の朝ご飯を作った後は、クロームの弁当とお昼の弁当を作り出す。ちょっと今日は朝から忙しい。ドタバタしているとクロームが起きたようだ。

 

「おはよう。クロームちゃん」

「あなたが骸様が言っていた風の人……?」

「そうだよー。風早優です。あ、顔を洗ったらこっちに座ってね。あの人は群れるのが嫌いだから近寄ったら危ないから。洗面所はこっちだよー」

 

 戸惑いながらもクロームは付いていく。優しくされることには慣れていないが、骸が言ったので逃げることはなかった。

 

「あ。そうだ。先にお風呂に入る? 昨日も入ってないし入りたいよね」

「……いいの?」

 

 優は笑顔で頷いた。やっぱり可愛いのだ。

 

 お風呂の使い方の説明を終えた優は、再び台所に戻る。クロームの朝ご飯も作らなくてはいけない。チラッと雲雀を見るともう食べ終わっている。先に片付けて、お茶を用意するべきだ。

 

「はい。どうぞ」

 

 お茶を飲んでいるが、雲雀は先程から無言である。クロームが起きてからずっと庭を見ているので視界に入れないようにもしているのだろう。

 

「クロームちゃんはクロームちゃんですよ。お風呂を借りれるとわかった時、私にもう一度確認してから凄く嬉しそうな顔をしましたから」

 

 そう言って優は再び台所に戻った。最後までは言わなかったが、骸ならば使えて当たり前のような反応をすると優は言いたかったのである。残念ながら雲雀の返事はないが、優もすぐに納得するとは思わなかったので気にならなかった。

 

「ここに座っていいよ」

 

 お風呂からあがり、どうすればいいのかわからず困っているクロームに優は椅子を引いてあげる。居心地が悪そうなクロームを気にしながらも、優は味噌汁やご飯を盛る。

 

「はい、どうぞ」

「…………」

「骸君に言われたでしょ? 気にせずに食べていいから」

 

 コクリと頷き、クロームはご飯を食べ始める。原作で知っていたが、骸の助言がなければ大変だっただろうなと優は思った。

 

 クロームが食べ終わり、引き止める理由がないので優は弁当を渡して見送る。

 

「ごめんね。面倒なことを言って」

 

 正体がバレないように幻覚をかけて出てほしいと優は頼んだのだ。クロームは気にした風もなく、フルフルと首を横に振った。可愛くて優は癒される。

 

「……優……ありがとう」

「クロームちゃんのためなら、何でも出来そうな気がする……!」

 

 優があまりの可愛さに悶えていると雲雀から視線を感じた。迂闊なことを口走るなと怒っているようだ。

 

「ゴホン、女同士でしかわからないこともあると思うから、相談に乗ってね。私も相談するから」

「…………うん」

 

 玄関で手を振り見送っていると、クロームはもう1度振り返ってお礼を言ってから去っていった。

 

「……骸君やっぱり許すまじ」

 

 昨日の試合に出てくるのが遅かったことを優はもう1度怒り出したのである。その様子を見ていた雲雀は単純すぎる思考に溜息を吐いたのだった。 

 


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