【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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数日振りの登校、そして水中へ

 適当に寄り道した後、屋上についた優は中から人の気配がするので雲雀に電話をした。すると、予想通り家にいると言ったので慌てて屋上の窓から入る。

 

「すみません、遅くなりました。ご飯ですよね?」

 

 優は起きた時にロマーリオから食事を貰い食べていたので、そこまでお腹が減っていない。しかし雲雀は起きてから何も食べていない。すぐに取り掛かろうと動き出そうとしたところで、違うという声が聞こえる。

 

「電気がついてたから」

 

 説明してなかったと優は気まずそうに部屋の壁についている機械を指しながら話す。

 

「ここで予約とか出来るんですよ。あまり意味がないかもしれないけど、夜とかついてないと目立つんで……」

「へぇ、そうなんだ」

 

 感心していた雲雀だったが、とある事実に気付く。

 

「これ作ったの、誰?」

「私のお師匠様です。あ、保護者でもあります」

「優のこと、知ってるんだ」

「はい。私の1番の理解者です」

 

 悪気のない一言だった。雲雀からすれば面白くない一言である。誰よりも優のことをわかっているつもりだったのに、見知らぬ人物が1番と優が言ったのだ。掻っ攫われたとしか思えない。

 

「……どんな人」

「んー、そうですね。とっても優しくて、私がワガママを言ってもいつも許してくれます。いつも背を押してくれるんです。無理なら無理とはっきり言ってくれるんで、困ったときは相談に乗ってもらいます。他にも私がヒマな時にはお話に付き合ってくれたり、よく頭を撫でてくれます」

 

 えへへと嬉しそうに自分の頭を撫でた優を見て、ディーノに頭を撫でられて喜んだのではなく、その人物を思い出すからだと雲雀は考えた。絶対に雲雀は優の頭を撫でないと決めた瞬間だった。

 

「後、凄くカッコイイです!」

「ふぅん」

 

 あれ?と優は首を傾げた。いつの間にか雲雀の機嫌が最悪になっている。

 

「……僕より好きなの?」

 

 優は困ったように眉を寄せた。比べるものじゃない。優の反応を見てますます雲雀の機嫌が悪くなる。

 

「ええっと……そうだ! お師匠様はお父さんみたいな感じです!」

 

 神と説明できない優は、この言葉を選んだ。神に対して失礼かもしれないが、1番しっくりくる答えだったのだ。

 

「お師匠様はドシっと構えてくれるから好きで、雲雀先輩はドキドキする好きです。ち、ちなみにツナ君はホッと息を吐けるから好きです」

 

 恥ずかしくなった優は慌ててツナのことも話し、誤魔化そうとした。しかし雲雀の口角は上がっている。

 

「僕はドキドキするんだ」

 

 雲雀が笑った姿を見ただけでも真っ赤に染まるのに、もう1度確認するように言われると優は恥ずかしくて仕方がなかった。

 

 その反応に満足した雲雀は優の頬に手を添える。すると、ギュッと優は目をつぶった。よく見ると僅かに肩に力が入っている。2回も連続でついていけなかったからだろう。特に2回目は優のペースにあわせたものじゃなかった。優は怖がってしまったのだ。

 

 それでも雲雀から逃げなかった。その姿が愛おしく感じた雲雀は優しく触れるだけにし、肩の力が抜けたのを感じ取ってから雲雀は離れた。

 

 ジッと2人は見つめ合う。

 

「同じのをもう1度してもいい?」

「……聞かないで」

 

 か細い声だったが、了承の返事だった。雲雀は我慢するはずもなく、もう1度触れた。

 

 再び催促をし触れた後、優はのぼせたように雲雀に向かって倒れこんだ。

 

「もう、ダメです……」

「わかった」

 

 限界がきた優に無理強いする気はなかったので、雲雀は優を抱き上げた。

 

「え!?」

「力が入ってないし、今日はもう眠りなよ」

 

 その言葉を聞いて優は甘えるように雲雀の首に手を回した。思わぬ優の行動に理性を総動員するはめになり、雲雀はベッドに優をおろしてさっさと家に帰ったのだった。

 

 

 

 目覚めた優は寝ぼけながらもシャワーをし、数日振りに制服に袖を通す。雲雀はいろんな場所で戦っていたので、優の姿でも制服ではなかったのだ。

 

 出かける直前に鏡を見て優は笑う。ディーノのおかげでまだこの制服が着れるからだ。雲雀に見せたくなった優は真っ直ぐ応接室に向かったのだった。

 

 応接室についた途端、優は雲雀の前まで駆け寄り一周まわった。

 

「似合ってるよ」

 

 優の行動を理解した雲雀はすぐに答えた。嬉しくなった優は笑みがこぼれる。すると、雲雀も穏やかな目で優を見ていた。

 

 ちなみに草壁は全く優の行動を理解出来なかったが、2人の間で糖度が増していることは気付いてる。もちろんそのことについて何も言わない。草壁は雲雀が決めたことについていくだけである。

 

 そもそもこの2人は切り替えるのが早い。もう先程の空気を消し、雲雀は報告書を読み上げ、優は溜まっていた書類に手を伸ばしている。

 

「優」

「はい。なんですか?」

「後で校舎内を見回りするから、ついてきて」

 

 昨日の自分の発言を思い出し優は納得した。幻覚で誤魔化してるところがあると言ったので確認したいのだろう。

 

「そうですね。パッと見ただけでもありますもんね」

 

 ムスっと機嫌が悪くなったので優は苦笑いした。雲雀はわからなかったらしい。

 

「相性の問題ですよ。それに今はまだ短所より長所を伸ばすべきだと思います」

「……僕に指図するの?」

「聞き流してくれて問題ありませんよ。将来的にはどっちも頼りたいと思ってますから」

 

 優の言葉に雲雀は返事に詰まった。さらっと言ったが、優は雲雀と過ごす未来を考えているのだ。

 

「……すみません。図々しかったですね」

「いいよ。僕に任せればいい」

 

 再び2人は見つめ合う。仲が良いのは構わないのだが、やはり草壁は話についていけない。

 

「あの……」

「好きにすればいい」

 

 何も言っていないのに話が通じたことに優は笑った。草壁がいるのにそのまま話したことでわかっていたのかもしれない。

 

「草壁さん、私が言ってからプライベートの時間にも見回りしてくれてますよね?」

 

 草壁は目を見張った。絡まれると知ってから風紀委員の見回りとは別に、草壁は見回りをしていた。まさか気付かれていると思ってもなかったのだ。

 

「委員長、気付いていらしたんですか……」

「僕じゃない」

 

 ふふっと優は笑って言った。

 

「私、雲雀先輩より強いんです」

 

 機嫌が悪くなるだけで雲雀は何も言わない。つまり事実ということだ。

 

「でも雲雀先輩には勝てないんですよねー」

 

 不思議そうに呟く優の声は聞こえていたが、草壁は処理が追いついていなかった。

 

「草壁」

「は、はい!」

「誰かに話せば僕は許さないよ。……優が学校に通えなくなる」

 

 更なる内容に草壁は優を横目で見た。すると、頭を下げていた。雲雀は命令だけでなく理由も話した。2人から信用され、草壁の気持ちは決まっている。

 

「わかりました。誰にも話しません」

 

 ホッと優が息を吐いたのを見て、草壁は今まで通りに接した方がいいと判断した。優が強いと気付かせる要素は減らすべきだろう。雲雀の方へ目を向けると、草壁の考えを肯定するかのように雲雀が頷いた。

 

「事情はわかりました。ですが、今まで通り見回りはさせていただきます」

「えっと、そこまでしなくても……」

「風紀に関わりますので」

 

 そう言われてしまえば、優は何も言えなくなる。よろしくお願いしますと頭を下げるしかなかった。

 

「それで先程の話は?」

「術士による幻術のおかげで綺麗に見えてますが、今校舎が壊れてるんですよ。私は惑わされない体質なので、その確認です。見回り中にメモを取るわけにはいけませんから、応接室に帰ってきてから書き出しの手伝いをしてもらえると助かります」

「わかりました」

 

 話を聞いた草壁は校舎の見取り図を印刷するために動き出す。この作業は優や雲雀がすると違和感があるのだ。察してすぐに動く草壁の頭の良さがわかる。他にも草壁は必ず距離を保って話しかけ、雲雀の意向を汲んで行動するのだ。素晴らしい人材である。

 

「群れることが嫌いな雲雀先輩が、草壁さんを副委員長に任命した気持ちがわかりますね」

 

 優の呟きに雲雀は何も答えなかった。が、雲雀の気持ちがわかった優はクスクスと笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 優は試合開始時間になってもツナ達の前に現れなかった。その理由はB校舎に侵入していたからだ。

 

(やっぱり水中は相性が良くないなー)

 

 風を操り水中でも空気を確保しているが、集中力がいつもより必要だった。水の中に留めておくのが大変なのだ。

 

 それでも優は潜り続けた。鮫を倒し、スクアーロを死んだように偽装するために。

 

(あ、鮫が出てきた。ごめんね……)

 

 殺傷が好きではないが、優は人を襲う動物にまで甘くはなれない。斬ると決めていた。鮫は優には目をくれず、血の臭いに反応し移動する。

 

 鮫が柱を叩き始めたので、この上に2人がいるのだろうと優は推測した。優は風で確保している空気を限界まで吸い込み、残りを逆刃刀に纏わせる。鮫がキバを見せ、上にいる人物を噛み付こうとする直前に優はその柱を斬った。

 

(やっぱりスクアーロさんだったか……)

 

 優は一瞬だけ目を向けたが、鮫に視線を戻す。噛み付こうとした瞬間に柱が崩れ食べ損ねて怒っているように見える。しかし気にした風もなく、優は逆刃刀を振るった。逆刃刀に纏っていた風が解き放たれ、優の振るった速度で放たれた風は飛ぶ斬撃になる。

 

 振るった瞬間に斬ったと確信した優はスクアーロのもとへ行く。このままでは溺死してしまう。なんとかしなければと思い、口に含んでる空気を分けようとしたところで優に悪寒が走る。

 

 ――僕以外にその場所を許せば、君に何をするか僕でもわからないから。

 

 雲雀の言葉を思い出し、人命救助でも許してくれないと思った優は慌てて地上で風を操り空気を水中に沈める。ちなみに今までで1番風を操るのに集中していた。

 

 スクアーロのために集めた空気を少しもらった優は、いつあがれば問題ないのだろうかと考える。鮫に噛み付かれていないので原作よりは重症ではないだろうが、峰を返していてても斬れることがある。優とは違い、山本はそこまで余裕がなかっただろう。斬れてなかったとしても骨が折れたり、内臓が傷ついてる可能性がある。早く病院に連れて行くべきである。……骨が折れた程度でスクアーロが起きられないとは思えない。

 

 優が悩んでいると、保護スーツをきた人物達がやってきた。ディーノの部下が原作で助けていたはずなのでその人達だろう。指で合図を送られたので、優はついて行ったのだった。

 

 プハッと息を吐く。スクアーロを優先していたので、本当に息が上がってしまったのだ。

 

「おい、大丈夫か?」

“……問題、ない。それより彼だ”

「ああ。手配はしている」

 

 待っている間に、優は触診しながらも体力を渡し続けたのだった。

 


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