【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
起きれば、テントの中だったので優は首をひねる。外の気配を探ると3人しかない。そのうち2人は激しく動いてるので、3人は雲雀とディーノとロマーリオだろう。
ポフっとフードをかぶり優は外に出た。
「おはよう」
「おはようございます」
「……恭弥。いや、なんでもねぇ」
あまりの反応の速さにディーノは苦笑いするしかなかった。
「もう起きて大丈夫なのか?」
「はい。眠り足りなかっただけですしね」
「そうか」
優はテントをどうすればいいのかと悩んでいるとロマーリオがやってきた。
「まだ使うからそのままでいいぜ」
「わかりましたー」
良かったと優は息を吐く。優のためだけに用意をさせてしまったなら申し訳ない気持ちでいっぱいだったのだ。もちろん常にディーノの側に居るロマーリオが優の考えに気付かないわけがなく、そのように言っただけである。
「あの、私を移動させて大丈夫でした?」
「オレらじゃ起こしそうだったんで、頼んだ」
ロマーリオの視線は雲雀に向いていたので、優は納得した。雲雀なら触れても大丈夫かもしれない、と。
「いろいろありがとうございます」
「気にする必要はないぜ。ファミリーだろ?」
優は笑顔で頷いた。マフィアという意味なのに嫌な気持ちにならなかったのだ。
「顔洗ってきます!」
「ああ。向こうに川があったはずだ」
少しは改善してそうだとロマーリオは思ったのだった。
雲雀とディーノの戦いを見る。起きたら話すと言っていたが、雲雀の邪魔をするのは悪い。次の機会になりそうだ。
ヒマな優は今日の試合のことを考える。やはりランボを試合に出したくない。しかしリボーンが言っていたこともある。
(10年後のランボ君に降参させれば何とかなるかなぁ)
敵わないとランボが認めれば、レヴィの自尊心を保つことは出来るはずだ。
『今日の試合は見ない方がいいんじゃないか?』
(あ、神様。んー行くよ。もしもの時は私が手を出すよ。そうすれば、ツナ君のリングは取られないし、チェルベッロのことだから、何とかして私にリングを渡そうとすると思うんだよね)
『たまには俺のアドバイスも聞けよ……』
(だって後悔しそうなんだもん)
『そうかもしれないが、辛いだろ?』
(私よりランボ君の方が辛いよ)
『……わかった』
(ありがとう、神様!)
相変わらず優に甘い神は折れた。ワガママを言っても神ならば絶対に許してくれると優はわかっているのだ。
「雲雀先輩」
「なに」
「お願いがあるんですけど……」
雲雀とディーノはピタリと手を止める。優が素直にお願いするのは珍しいからだ。
「あ、続けてくれていいですよ?」
優に言われたので2人は続けたが、気持ちが入ってない。若干、首を傾げながらも優は口を開いた。
「今日、寝る前に顔を出してもいいですか?」
「問題ないよ」
やった!と喜び、優は昼食を作りに家に戻った。次に来る時はいつもの姿で来ようと思いながら。
優が去った後、雲雀は僅かに眉間に皺を寄せた。さっきのは優のワガママである。何に困ってるのかわからないのだ。一方、ディーノは次の対戦をリボーンから聞いていた。ランボが戦うことになるので終わった後に雲雀の顔を見たかったのだろと気付いた。
ディーノは日程が進むことに危機感を覚えた。優や雲雀の番がいつ来るかわからない。本当に時間が残されていない。そろそろ雲雀を折れさせたいが、もっと強くなってもらわなければならない気持ちもある。
「恭弥」
ディーノが動きを止めて言ったので、雲雀も止めた。
「この前の条件に追加だ。お前が勝ったらあいつが持ってるリングについて話すぜ」
「それって一緒のことだよね」
勝っても負けても同じではないのかと雲雀は言いたいのだ。
「オレが預かってるお前のリングと違って、あいつのリングはほぼ何もわかっていない。オレだってたいして知ってるわけじゃないが、何も知らないよりはいいはずだ」
ディーノの言い分はわかるが、結局雲雀がリングについて聞くことになるのは変わりない。素直に納得できるはずがない。
「先に1つ教えとくぜ。オレのところに入っても、あのリングを持つならあいつは世界中のマフィアから注目される」
ずっと封印されていたものが解けたのだ。その守護者が注目されるのは当然だ。ディーノの予想では10代目であるツナよりも注目度が高いだろう。だが、自分に対して危機管理能力が低い優は気付いていない可能性が高い。だからこそ雲雀は知らなければならない。
「……どういうこと」
「正体を暴こうって考える奴がいるってことだ」
雲雀から放たれる殺気にディーノの口角があがる。底が見えない。
「あれは僕の獲物だ。……誰にも邪魔はさせない」
例えそれが優が頼るディーノであっても……。隠された言葉を正確に読み取ったディーノは、向かってきた雲雀を迎え撃った。
優はギリギリに学校へ向かった。ベルに絡まれる時間は短い方がいいからだ。ぴょんぴょんと優は跳び上がり、屋上まで駆け上がる。周りを見渡すとどうやら勝負が始まるところだったようだ。
「あ!!」
優は僅かに首を傾げた。姿を見せるとなぜかツナが嬉しそうな顔をしたからだ。
「おめーが無事なのか心配だったんだぞ」
“……そうなのか”
喜んでいいのかわからなく、複雑な気持ちで優は試合に目を向けた。
雷が落ち、ランボが感電する。無事と知っていたが、優は飛び出すところだった。
「介入すれば、失格とします」
軽く舌打ちをした。動こうとした優に対して言ったのだろう。そしてチェルベッロが優に釘を刺している間に、ランボがレヴィの攻撃を食らってしまった。
はっきり言って、この段階でまだ優が動かないのは奇跡に近い。優は子どもに弱いのだから。
ドカンという音と共に、ランボが10年後のランボと入れ替わる。
「やれやれ。ギョウザが最後の晩餐になるとは……」
“ランボ、棄権しろ!”
優の発言に視線が集まる。
「おい! 勝手なこと抜かすんじゃねー!」
“10年後のランボでも実力に差がありすぎるんだ!”
獄寺は虚をつかれた。どんなにケンカを売っても見向きもしなかった相手が、初めて言い返してきたからだ。
“君は負けを認めても大丈夫だ! 僕が何とかする!
「……嫌です」
ポツリと呟いた言葉に視線が優から10年後ランボに移る。
「あなたに無茶させるとわかっているのに、棄権なんて出来ません!」
今度は優が虚をつかれた。ランボと遊んでる時に何度か入れ替わり10年後のランボと会ったことがあった。だが、優にとって、10年後であってもランボは子どもだった。
優は今はっきりと認識したのだ。ランボはもう子どもじゃないと。
「若きボンゴレ」
「えっ? な、なに?」
「あの人のことを守ってください。オレでは守られる対象になってしまうのです」
「でも、オレも……」
「頼みます」
10年後のランボはツナの言葉を遮る。そしてレヴィと向き合った。
「……あの人が敵わないというなら、そうなのでしょう。だったら、オレは未来にかけます」
ドカンと自身に向け、10年バズーカを放った。自らの意思で、ランボは使ったのだ。
現れた20年後のランボは雰囲気がまるで違う。優の考えに探りをいれていたヴァリアーもこれには驚いた。
「あなた達に会えるとは……懐かしい……なんて懐かしい面々……」
ツナ達を見て言っていた20年後のランボだが、優を見た瞬間ハッとしたように頭を下げた。20年後のランボに頭を下げられる理由がわからないので優は不思議でしかない。声をかけようと思ったが、ランボはレヴィと向き合ってしまった。
「容赦しない。あの人がいる前で無様な姿を見せれない」
「ほざけ」
レヴィは返事と共に傘を開いた。そして避雷針にも雷が落ちる。20年後のランボに直撃したが、余裕を持って電流を地面に流した。ツナ達がホッとしているが、優は不安でしかない。多少のズレはあったが、原作のタイミングと似ている。
それでも優は声をかけれなかった。戦ってる姿が、雲雀の姿とかぶるのだ。この戦いは止めてはいけない。10年後ランボの覚悟を無駄にしてしまう。
ポンっと肩に手を置かれ、優は力を抜く。振り返らなくてもわかる。家光が抑えろと言っているのだろう。
“……わかってる。彼はもう子どもじゃない”
「父さん! と、1位の人?」
ツナに言われても気にした風もなく、家光は優から離れ、ツナ達のところへ行く。本当にツナ達に何も話す気はないようだ。
ランボが大技を放ったことで、全員の意識がそちらに向く。完成されたエレットゥリコ・コルナータ。身体能力が高い優であっても当たれば大ダメージを受けるだろう。距離をとって戦うしかないが、避雷針がなくとも雷を呼べるランボは20年後ならば遠距離系の技を持っているかもしれない。20年後のランボは厄介な相手だろう。
知っていても目の前で見ると20年後のランボの成長に優は思わず感動する。しかし、それは突如終わる。
「ぐぴゃあああ!!!」
最初の一発から5分がたったのだ。
動くなくなったランボにレヴィが足を下ろそうとした。が、一歩距離をとった。濃厚な怒気を感じたからだ。
「1位の人……?」
ツナが思わず確認するほど優は怒気を放っていた。ビリビリとした空気の中、チェルベッロが優の前に立つ。
「お待ちください! あなた様が行動したのか、我々では判別できません!」
“……君は僕の何を知っている”
チェルベッロはビクッとした。優の怒気に当たったからだ。
“僕のことを知っているなら、怒らせない方がいいということもわかってるはずだ。僕が何を望んでいるか、君ならわかるんじゃないのか?”
「レヴィ、殺れ」
発した人物を優は思いっきり睨んだ。チェルベッロを脅して雷戦を終わらせようとしたのに。
「……御意」
レヴィがランボに近づく。今から何が起こるのか、優は想像してしまった。怒気が殺気に変わる。
「XANXUS様、いけません! あの方が暴走すれば、誰も止めることは出来ません!!」
「それがどうした」
XANXUSは笑った。優をわざと怒らせているのだから。正確に言えば、甘い考えを捨てさせようとしているのだ。
「まずい!」
家光は優を止めようと動いた。チェルベッロの叫び方からして、暴走すれば優は戻れなくなると判断したからだ。当然、リボーンも止めようと動く。家光に性格を報告したのはリボーンである。まだ人を傷つけることも躊躇している段階だとリボーンが気付かないわけがない。暴走と言ったものが何かわからないが、止めるべきということはわかる。
しかし、その2人が止める前に猛スピードで1人の男が優の前に現れた。反射的に優は風を纏った手で殴りつける。誰も自身に近づかせないという拒絶からの行動だった。
大ダメージを受けるだろう優の一撃を何事もなかったように受け止め、男は言った。
「落ち着け」
声にしたが、聞こえていないとわかっていたので頭にも響かせた。ハッとしたように優は顔をあげる。男は口に指をあて、シーッという仕草をした。優がいつものように呼ぼうとしたからだ。
“どうして……”
この場に居るはずのない人物だ。だが、優を止めた男は軽い口調で答えた。
「弟子の暴走を防ぐのは師匠と相場が決まってるだろ?」
神の言葉で危うく感情に任せて風を操るところだったことに気付く。自分が何をしようとしていたのかを理解し、ガタガタと震え出す。
「そっちは何とかしろ。俺はこいつにしか手助け出来ない」
返事を待たず、神は優をつれて移動した。
突然現れた人物にツナ達は呆気にとられていた。そしてある程度以上の実力があるの者は、威力が篭っていたであろう攻撃を軽くいなした腕に気付く。
「ああ!?」
ツナは叫んだ。突然現れた人物に意識を取られていたが、レヴィがランボにとどめを刺そうとしていたところだった。底知れぬ殺気に動きが鈍っていたが、レヴィはボスであるXANXUSの命令に忠実に実行する。
「行かなきゃ!」
リボーンは止めず、ツナを後押しするように死ぬ気弾を撃ったのだった。
まさかの神降臨(笑)
冗談はここまでにして……
タグに入るほど、神は重要キャラです。