【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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晴戦

 獄寺が怒っているので、優は場所を移動し過ごしていた。しかしツナがきたので再び姿を現す。

 

「1位の人!」

 

 再び優はずっこけそうになる。並中で1位と言っていないので問題はないといえばないが、微妙なものは微妙である。

 

 獄寺がダイナマイトを持ってるので、軽く溜息を吐いてから話しかける。

 

“リボーン、ちょっといいか?”

「わかったぞ」

「1位の人、どうしたの?」

 

 リボーンを呼んだはずなのに、ツナも気になったらしい。正体を隠した人物でも気にしない態度には癒されるが、肝心なことを忘れている。優はガシガシとフードの上から頭をかいて言った。

 

“別に聞いてもいいが、君は僕と話すのは怖くないのか?”

 

 顔色が悪くなったツナを見て、優は溜息を吐いた。予想通り忘れていたようだ。リボーンは覚えていて何度も話しているとわかっていたから、進んでツナに話しかけずリボーンに確認するようにしていたのに……。

 

「それで何のようだ?」

“……あーそうだ。君ならわかっていると思うが、チェルベッロには気をつけろよ。何か別の目的で動いてる可能性が高そうだ。ヴァリアーにカマをかけたが、盗聴器を仕掛けられていることに気付いてなかった。この近くにあるのは壊したが、他にもあると思ったほうがいい”

「わかったぞ。おめーはなんであいつらと知り合いなんだ? 暗殺部隊とお前は程遠いぞ」

“凄腕とは気付いていたが、暗殺部隊とは知らなかったんだ”

「なるほどな」

 

 正確には原作で知っていたが、言えるわけもない。しかし今の解答は優の本心でもある。泊まった時に彼らは一度も武器類を優に見せなかった。暗殺部隊と判断する要素が1つもなかったのだ。ルッスーリアが料理していたのも優が緊張しないように気遣っていたからだろう。……ただの趣味の可能性もあるが。

 

 チェルベッロが現れ、晴の特設リングへ移動しながらも優とリボーンは話していた。

 

「おめーは何が目的だと思ったんだ」

“今のところ盗聴器を仕掛けた最有力は僕の正体”

「他にねーか……」

 

 それ以外に審判をしているのにわざわざ盗み聞きする必要がないだろう。チェロベッロではなく他の人物が仕掛けている可能性もあるが、ここに優が来ると知っているのは限られた人物だけだ。

 

「心当たりはあんのか?」

“あの言い回しかないな”

 

 リボーンは考え込むような仕草をした。これは優の何を示しているのかわからなかったからではない。示しているのはわかるが、優の言い回しに引っかかりを覚えたのだろう。

 

「……おめーは相応しいという言葉に心当たりがあるんだな」

 

 正解にたどり着いたリボーンに優は笑った。

 

“封印が解けた心当たりがあるからなぁ”

 

 その言葉に反応したのか、リボーンは優の顔を見た。が、優はその場から逃げるように飛びのいた。

 

「極限に逃げるとはなぜだ!」

 

 リボーンから逃げたわけではなく、円陣から逃げたのである。団結という意味での必要性はわかっているが、嫌なものは嫌なのだ。

 

 優を捕まえれないと判断したのか、了平は怒りながらもツナ達と円陣をした。終わった後にずるいというような目でツナに見られたが気づかなかったことにした。

 

 特設リングに了平が入り、ハーフボンゴレリングの確認も終わり、ついに試合が始まった。

 

 パッと照明がつき周りが見えなくなる。

 

(あー忘れてた……)

 

 忘れてしまったものは仕方がないと優は息を吐く。

 

「オレのサングラスを貸してやる」

 

 フードをかぶってるが、咄嗟に手で遮ったので声をかけたのだろう。

 

“彼らを優先してやってくれ。僕は目が見えなくても困ることがないんだ”

 

 強がりではなく風で調べればいいだけなので、本当に問題ないのだ。もっとも操れる風が制限されたので、見えることに越したことはないが。

 

 リボーンも本当の戦闘スタイルに関係していると判断したようで、優には渡さずツナ達に貸しにいった。

 

 試合を風で観察する。やはりサングラスをしているかしていないかでは不公平である。ルッスーリアは嫌いではないが、了平のために口を開いた。

 

“怖がるな。ここは君がよく知っているリングだぞ”

 

 声が聞こえたのか、闇雲に殴っていた了平は動きを止めて構えた。

 

“難しいことは考えなくていい、ただ感じろ”

 

 了平は頭でつかって戦うタイプではない。このタイプは考え始めたらどつぼにはまる。優の言葉が聞いたのか、了平はルッスーリアを捉えた。

 

「すごい! あたった!」

 

 ツナの感動する声が聞こえたが、優はダメだと思った。ルッスーリアは左足に埋め込まれている鋼鉄にあたったのだから。避けれないと判断し、そこで受けることにしたのだろう。

 

「い、1位の人!」

“ここから僕に出来ることはした。後は彼があれを破れるかだ”

「……っ! お兄さん!!!」

 

 そういったものの、優は少しでも暑さから逃れるように風を流した。チェルベッロから視線を感じていたが、優は知らぬ顔をした。それにどちらかを贔屓しているわけではない。そもそも自然に発生した風か優が操った風かどうか証明することはできないだろう。

 

 捉えてはいるが、鋼鉄を破ることが出来ず了平はついに倒れた。

 

「立て、コラ!」

 

 コロネロの言葉で了平は起き上がった。優はというと風で戦況がわかるので、コロネロをジッと見ていた。優の視線に気付いたのか、コロネロは一瞬だけ優を見たが特設リングに戻す。一方、ジッと見ていた優は何を考えていたかというと……。

 

(か、かわいい……!)

 

 同じアルコバレーノとしてとかではなく、ただ煩悩に突き動かされてコロネロを見ていたのだった。

 

 ちなみにマーモンをガン見しないのは、距離が遠いからだ。つまりマーモンを見るなら、近くにいるリボーンの方をガン見する方を優は選ぶというくだらない理由だった。

 

「お兄ちゃん……?」

 

 ハッと京子の声で我に返った優はコロネロから視線を外しリングに目を向ける。照明が割れていなかったので慌てて目を閉じる。まだだったかと思いながら、チラっと視線を向けるとコロネロが京子にサングラスを渡していた。どうやら京子は声で反応し、了平と気付いたらしい。

 

 そして京子に負けないと宣言した了平は技を放った。すると、ルッスーリアの左足にある鋼鉄が砕ける。

 

(……照明割れてないのに、勝っちゃった)

 

 若干気まずくなった優は目を逸らす。そこまでのポテンシャルを了平が持っていて良かったが、優のアドバイスのせいで了平が負けていたかもしれない。

 

(それでも目の当たりすれば言っちゃうと思うけどね)

 

 家光から頼まれたこともあり、優は出来る範囲のことはするつもりだ。

 

 ドンっと音と共に、ルッスーリアが倒れる。見ていて気分のいいものではない。

 

「たった今ルッスーリアは戦闘不能とみなされました。よって晴れのリング争奪戦は笹川良平の勝利です」

“チェルベッロ! 勝敗が決まったなら僕の好きにするぞ!”

 

 飛び上がった優は、風を刀に纏って柵を斬る。鉄を斬ったことに驚く声があがったが、優は無視をし特設リングの中央に飛び降りた。

 

「む?」

“あー、そうか”

 

 了平は見えていないのだ。チェルベッロは声をかけて近づいていたのだから大丈夫だったのだろう。すると、照明が消えた。チェルベッロが消したらしい。

 

「おお! やっと目を開けれるぞ!」

“悪いが、重傷者を先に診るぞ”

「お、おう?」

 

 了平がよくわかってないと気付いていたが、優はルッスーリアの怪我を診ることを優先した。

 

“動くなよ。リングだけではなく僕を賭けた勝負でもあるんだ”

「生意気な!」

「そうだ! 俺が風の守護者なんだ!」

“見習いなのに、随分偉そうだ”

 

 優の言葉を聞いたベルは笑っていった。

 

「オレの勘が言ってるぜ。こいつじゃねぇよ。ぜってぇあっちって」

「どちらにしても、今彼に手を出すとルール上面倒なことになるかもしれないね」

 

 スクアーロだけは何も言わなかった。徐々にだが、己の中で優が正解かもしれないと傾き始めているのだ。だからといって、ベルのように言い切ることは出来ない。沈黙を貫くしかなかった。

 

 ヴァリアー内でもめている間に、優はルッスーリアの応急処置を終えた。スッと立ち上がり優は了平に向き合う。

 

“悪い、待たせた。君は怪我よりも熱中症の心配をしたほうがいい。勝手に触るぞ”

「ん? おお! 体が楽になったぞ!?」

“僕の体力をあげたんだ。怪我が治るわけじゃないから気をつけろよ”

「極限、助かったぞ!」

 

 気にするなという意味で手をあげ、優は跳び上がり特設リングから出た。チェルベッロに話を進めていいという意味で。

 

 察したのか何事もなかったようにチェルベッロは話を進めた。そして次のカードは原作通り雷だった。

 

(ランボ君か……)

 

 はっきりと内容を思い出し、優は顔をゆがめた。試合に出したくない。

 

 

 

 試合が終わり獄寺達は帰ったが、優はまだ帰れなかった。

 

 はぁと溜息を吐いていると、リボーンがレヴィのことを話しているのを聞いてしまった。出さないという選択肢はあまり意味がないようだ。

 

「うししっ」

 

 去ったと見せかけてベルだけ残っていたことに優は気付いていた。真っ直ぐ優に近づいてくるのでやっぱりか……と思ってるとツナがひぃと悲鳴をあげる。この場にはもう優とツナとリボーン、そして眠っているランボしかいない。門外顧問がいなくなったから出てきたのだろう。

 

“……なんだ?”

「ボスに紹介しよーと思って」

 

 優はフードの上から頭を押さえた。悪気がないのが、また厄介である。

 

“僕はいやだぞ。殺されたくない”

「ぜってぇ問題ねぇって」

“根拠は?”

「王子の勘」

 

 優は脱力した。それだけで自信満々になるベルの気持ちを理解できそうにない。

 

“……今日は眠いからまた今度な”

「そういって逃げる気じゃん」

 

 鋭い。

 

 チラっと視線を向ける。このままではツナが帰れないだろう。

 

“はぁ、わかった。行けばいいんだろ?”

「うしししっ」

 

 肩を落としながらベルについていこうとした時、ツナが叫んだ。

 

「い、1位の人!!」

“何とかするから心配するな”

「本当に大丈夫なのか?」

 

 リボーンにも声をかけられたので、優は少し考えてから口を開いた。

 

“心当たりがあるって言ったろ? 詳しいルールが発表されていない今、僕に危害を加えることは出来ない”

「……わかったぞ」

 

 ヒラヒラと手を振りながら、優はベルの後についていったのだった。

 


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