【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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ヴァリアー編を書いていれば日付が変わっていたw
すみませんw


後半、小話作品(ちょい甘)

リクエスト。
『優の日常』
一周年企画でもあります。でもなんの一周年?(忘れてしまったw)


自覚

 優は雲雀の看病をしていたので10日ぶりに学校に来ていた。ちなみに雲雀は朝早くから出て行ったらしく一人である。

 

 ふわぁとあくびをし、思わず優は周りを確認する。雲雀がいれば、面倒なことになるからだ。

 

 看病している間に、雲雀に体力をあげて昼寝を毎日していると拒否されたのだ。それからは優が寝る前にするという条件で許可を得たが、朝から眠そうな顔をしていると今度は睨まれる。寝起きが悪いだけなのに……と思いながら優は毎回謝る羽目になったのだ。

 

 雲雀に見つからず教室に入ると視線が集まる。久しぶりに出席したからと理由がわかってるので優はあまり気にしなかった。哀れ、心配していた男子達。

 

「優!」

「ツナ君、おはよ!」

 

 もう筋肉痛は大丈夫なのかなと心配しているとツナの動きが遅い。慌てて優は駆け寄る。

 

「大丈夫? 無理しないでね。雲雀先輩から聞いて知ってるから」

「ヒ、ヒバリさんに何を聞いたの……?」

「みんなが怪我したって」

 

 優の言葉にツナはホッと息を吐いた。

 

「ごめんね。お見舞いに行きたかったけど、出来なかったんだ」

「そうだ! オレ、さっき聞いたんだけど優もずっと休んでたんだって!? 何かあったの!?」

 

 もちろん優のことが好きな男子達に詰め寄られてツナは知った。京子と黒川は知っていたが、黒川が本人に聞く度胸もないくせにと呆れたような視線を送られたので男子達は理由を知らないままだったのだ。そもそも度胸があれば、優にもっとアピールしている。

 

「雲雀先輩の看病してたの。病院に行かずに私の家で治すって言ったから付きっ切りでいたの」

 

 盗み聞きしていた男子達は羨ましいと嘆く。

 

 当然のように気付かない優は雲雀が病院に行ってくれれば、もっと楽だったのにと考えていた。看病の間、食材の買出しもさせてくれないので、草壁に持ってきてもらい優は申し訳なく何度も謝ったからだ。

 

「……あの人、優の家に連れて行ったんだ」

「あの人ってフードかぶった人?」

「優は会ってるんだ! あの人の顔をみた?」

 

 優は自分の顔は鏡を見ないと見れないよねと心の中で言い訳しながら、首を横に振った。

 

「そっか……。オレ、ちゃんとお礼言えなかったんだ……」

「ツナ君の気持ちは伝わってると思うよ」

 

 優がふふっと笑えば、ツナもつられて笑った。

 

「よぉツナ! 風早!」

「おはようございます! 10代目! あと、風早も」

 

 獄寺のついでの挨拶にも気にすることはなく、優は2人に返事をかえす。そして2人の様子を見て、雲雀もだが怪我の治りが早すぎると思った。

 

(身体のつくりはどうなってるの? 絶対におかしい……)

 

 無傷だった優に彼らも思われたくはないだろう。

 

「ん?」

「どうしたの?」

「ごめん、電話だ」

 

 ケイタイの振動に気付き、ツナ達との会話を中断し優は電話に出た。相手の名は言っていないが、想像ついてるので誰も優に文句を言わない。

 

 電話を切った優は首を傾げながら言った。

 

「ちょっと応接室行ってくるね」

「珍しいね」

 

 HRが始まる前から呼び出されることは滅多にないので、ツナも疑問に思ったようだ。

 

「ね。とりあえず行ってくるよ」

 

 ツナ達に見送られながら優は教室を出たのだった。

 

 

 

 失礼しまーすと慣れた手つきで優は応接室に入っていく。

 

「やぁきたね」

「はい。朝起きたらいなくてビックリしましたよー」

「用事があってね」

 

 10日も休めば当然かと思った優は、それもそうですねと軽く答えた。

 

「君、これにサインしてくれる?」

「んー……風紀委員の契約書?」

 

 なんで?と優は紙を見て首を傾げた。優が強いとバレるようなことを雲雀がさせるとは思えなかった。

 

「君は僕と付き合ってるからね」

「はぁ……?」

 

 想像すらしていなかったらしく、生返事をする優。雲雀は溜息を吐くしかない。

 

「……さっさと書いて」

「あ、はい」

 

 強引に話を進め、優がサインしたのを見て雲雀は満足するように頷いた。

 

「これつけてね。もう戻っていいよ」

「はい。失礼しました」

 

 ふわふわしたような足取りの優を見て、雲雀は改めてわかりやすいと思ったのだった。

 

 

 

 

 ボケーッとしながら優は教室に戻ってきた。

 

「優、おかえり。早かったね」

「…………」

 

 ツナは首を傾げた。今までツナの言葉を優は無視したことがあっただろうか。

 

「優? あれ? これって風紀委員の……」

 

 優の手に風紀委員の腕章があることにツナは気付く。どうして優が?と疑問に思い、まだボーっとしている優に声をかける。

 

「優!!」

「……ぁ、ごめん」

 

 やっと優はツナの言葉に耳を傾けた。

 

「どうしたの? 風紀委員の腕章を持ってるし……」

「…………うわああああ! どうしよーー!! ツナ君!!!」

「うわああ!? いてででで!」

 

 雲雀の言葉の意味を理解した途端、ツナが筋肉痛が残ってることをすっかり忘れ、優はツナの肩をつかみ前後に揺さぶった。

 

 慌てて獄寺と山本が優を止める。珍しい光景なので、教室の視線が集まった。

 

「ご、ごめん!! ツナ君!!」

「だ、大丈夫だよ……。何があったの……?」

 

 あまり大丈夫ではなかったが、ツナは優の話を聞くことにした。優が混乱しているのは誰の目にも明らかなのだ。なので、続いて獄寺と山本も優に声をかけていた。

 

「…………い」

 

 しかし優からかえってきた言葉はあまりにも小さな声だった。

 

「え? なんて?」

「はっきり言いやがれ!!」

「わりぃ、もう一回頼む」

 

 ゴクリと喉を鳴らし、優はもう1度言った。

 

「つ……付き合ってたみたい……」

 

 3人は優の手元にある腕章に目を向ける。

 

「…………」

 

 シーンっと教室が静まった。ありえなくはないとは思っていたが、誰もついてこれないのだ。

 

「優、詳しく話しなさい!!」

 

 教室の中で1番復活が早かったのは黒川だった。

 

「はなぁ……」

 

 半泣きになりながら優は黒川に助けを求めた。

 

「休んでる間に何があったのよ!?」

 

 黒川から見れば、じれったい2人だった。きっかけがなければ、進展しなかっただろうと判断したのだ。しかしかえってきたのは「わからない……」という優の鈍感っぷりを発揮した言葉である。仕方なく黒川は質問攻めにすることにした。このままでは優が自覚しない。

 

「好きって言われたの!?」

 

 必死に首を横に振る。

 

「付き合おうとかは!?」

「さっき呆れたように過去形で言われたの。いつからなんだろう……」

 

 情けないような顔をしていた優だったが、黒川の顔を見て思い出したようでポンっと手を叩いた。

 

「心当たりがあったのね……」

 

 ホッと息を吐く黒川。鈍い優がきっかけもなく付き合えばついていけないと思っていたのだ。

 

「うん。あのキスってそういう意味だったんだねー」

 

 納得したように優は何度も頷いているが、爆弾発言でしかなかった。

 

 ガシャンと物を落とす者もいれば、微動だにしない者もいる。明らかに教室の雰囲気がおかしいので優は首をかしげて言った。

 

「みんな、どうしたの?」

「……あんたが原因よ!!」

 

 復活した黒川がツッコミしたが、優は不思議そうな顔をするだけだった。

 

 

 

 

 1日もたてば、学校は落ち着き、優が雲雀の彼女ということが全校生徒に知れ渡った。

 

 しかし当の本人は付き合っている実感があまりなかった。当日は午後に呼び出され書類整理をしただけで、それ以外は何もなかったからだ。雲雀が優に気をつかい、自覚する時間を与えているとは考え付かないらしい。

 

 そして自分に自信がない優は、斜め方向に進んでいく。

 

(書類させるための口実だったのかな? ……だよね。雲雀先輩が私なんかと付き合うわけないよねー。違う意味の付き合うだったんだ……)

 

 はぁと溜息を吐く。

 

「どうしたの?」

 

 雲雀に声をかけられ慌てて優は顔をあげる。今日は朝一から応接室に呼び出され、書類整理中だったのだ。

 

「凄い量だなーと……頑張りますね」

「そう」

 

 いつもと変わらない雲雀の様子を見て、ガックリと優は肩を落とした。

 

 少しスピードが落ちたこともあり、昼休みの時間までに整理が終わらなかったので、優は雲雀にご飯の許可を貰うことにした。

 

「ご飯食べたいです」

「屋上、行く?」

 

 不思議に思いながらも、優は雲雀が行ってしまったので慌てて弁当を持ってついていく。屋上に行くと雲雀が座っていたので、優は雲雀の近くに座り弁当を広げる。

 

「……僕のは?」

「へ?」

「僕の分は?」

 

 ジッと手元を見る。何も言われてないので当然一人分しか用意していない。

 

「……ど、どうぞ」

 

 周りの目がなければ自分のために料理しない優だが、食い意地は張っている。雲雀に弁当を差し出しているが、弁当から視線が一向に外れない。

 

「……僕は何か買って食べるよ。少し待ってて」

「い、いいですよ! 私が何か買って食べますし……」

「待ってて」

 

 雲雀が行ってしまったので優は大人しく待つ。その間にこれからのことを考える。

 

(今度から弁当もいるのかなー? でもいらない時は? パンに厭きてる子にでもあげよっか)

 

 優は気付いていないが、雲雀がおぼこれを狙うものにチャンスを与えるつもりはない。

 

 ご飯が終わると、雲雀のお昼寝タイムである。優は雲雀の頭を撫でながら時間を過ごす。雲雀が起きれば書類に戻ることになるだろう。

 

(あれ? もしかして私って授業を受けれないの?)

 

 風紀委員は受けてないことを思い出し、優はガーンとショックを受ける。このままではツナ達と過ごす時間がなくなってしまう。

 

 雲雀が目を覚めた途端、優は雲雀に詰め寄った。

 

「私ってもう授業受けれないんですか……?」

「……書類がない日はいいよ。ある日も終わればいい」

 

 仕方ないという風に雲雀は許可を出した。やり過ぎて逃げられたら元も子もない。

 

 よしっとやる気を出した優を見て複雑な気分になったが、神と一緒で雲雀も優に甘かった。

 

 

 

 何度か書類整理を手伝ったことがある優だったが、やはりわからないところはある。質問するなどをしていると結局放課後までかかってしまった。

 

「終わった?」

「はい!」

 

 説明してくれたのは雲雀だったので、優は付き合ってくれた雲雀に笑顔で頷いた。

 

「じゃぁ行くよ」

 

 また昼寝なのだろうかと思いながら優は雲雀の後を追いかけていった。大人しくついていくと優は首を傾げた。雲雀が外に出たからだ。

 

(んー、私は見回りはしなくていいはずなのになー)

 

 雲雀と一緒の時は別と勝手に判断し、優はトコトコと歩く。ただ歩くだけの優は、キョロキョロと周りを見渡しヒマをつぶす。

 

(おお! この時期なのに白菜が安い!)

 

 ジーッと野菜に釘付けになる優。

 

「なにかあるの?」

「な、何もありませんよ!」

 

 流石に見回り中に白菜を買いたいとは言えなかったので、優は必死に首を振った。

 

「そう」

 

 誤魔化したことがバレなかったとホッと息を吐いた優だが、当然雲雀は気付いている。優の誤魔化し方で深く聞く必要がないと判断しただけだ。読まれすぎだ。

 

「お寿司は好き?」

「へ? あ、はい」

 

 いきなりの質問で優はよくわからないまま返事をする。雲雀と違い、優は雲雀の考えが全くわかっていない。戦闘についてはわかるのだが恋愛系はさっぱりである。

 

 しばらくすると雲雀は店の中に入っていった。

 

(あれ? ここって山本君の家? 何かあるのかな?)

 

 邪魔をしてはいけないと優はこっそりと中を覗けば、カウンターに座っている雲雀の視線とあった。

 

「はやく座りなよ」

 

 雲雀が隣の椅子を引いたので、優は慌てて腰をかける。チラッと雲雀の様子をうかがうと視線がメニューを見ている。

 

「あ、あの……雲雀先輩……」

「なに」

「私、あまりお金を持ってきてないので……」

 

 情けないような声を出しながら優は席を立とうとするので、雲雀は手を掴んだ。

 

「いい。僕が奢るから」

「えええ!? そんなの悪いですよ!!」

 

 必死に首を振る優を見て、雲雀は少し考えて言った。

 

「気にしなくていい。明日から昼食も頼んだしね」

 

 無条件じゃないと知り、恐る恐る腰を下ろす優。

 

「じゃぁ……今日はお言葉に甘えますね?」

 

 いつになったら素直に甘えるようになるのかと思いながらも、雲雀は頷いたのだった。

 

 

 

 

 ふぅと満足な息を出しながら優は店を出た。遠慮する気だったのだが、雲雀が優の分も一緒に頼むので食べることになるのだ。さらに雲雀は優がわさびを苦手としていると知っていたらしく、わさび抜きで注文するのでつい食べてしまったのだ。

 

「今日は奢っていただきありがとうございました」

「……問題ないよ」

 

 しっかりと優が頭を下げるのをみて、雲雀はなんとも言えない気持ちになる。

 

「では、私はこれで……」

「どこ行くの?」

「へ? あ、まだ見回りがあるんですね。すみませんでした」

 

 お寿司の美味しさですっかり忘れていた優は謝った後に誤魔化すように笑った。

 

「……僕はデートのつもりだったんだけど」

「へぇ。そうだったんですかー」

 

 まるで他人事のように返事をする優に雲雀は溜息を吐いた。

 

「ええええ!? 私とですか!?」

 

 遅い。

 

「だから家まで送るよ」

 

 真っ赤な顔になりながら歩く優を見て、鈍いとは知っていたがここまで酷いのかと今度は優に気付かれないように雲雀は溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 家まで送ってもらった優は、もう1度雲雀にしっかりと頭を下げる。

 

「今日はありがとうございました」

「……入りなよ」

 

 複雑な気分で雲雀は優に家に入るように促す。

 

「あ、はい。おやすみなさい」

「おやすみ」

 

 扉がしまったのを確認し、雲雀は悩み始めた。あまりにも優が自覚するのが遅いからだ。このままでは一向に進まない。

 

「あれ? 雲雀先輩?」

 

 今から出かけようとする優の格好をみて、雲雀は僅かに眉間に皺を寄せた。

 

「どこに行くの?」

「ちょっと買い物に……」

 

 浮かれていた優だが、1人になると落ち着き白菜のことを思い出したのである。

 

「はぁ。僕も一緒に行くよ」

 

 もう遅い時間だ。わざわざ家まで送った意味がない。

 

「え!? ダメですよ!!」

「どうして?」

 

 優は頭の中で、白菜を持ってる優の前に雲雀が歩いてる姿を想像したのである。それだけは優の中で許されなかったので必死に拒否する。

 

「行くのをやめますので、気にしないでください」

「早くいいなよ」

「急いでほしいものじゃないんです。だから明日の放課後に行きますよ」

 

 明日は白菜の安売りはしてないけど……と心の中で言いながら。

 

「……わかった。その代わり夜遅くに出かける場合は僕も一緒に行くから声をかけること」

「えええ!?」

「優」

「は、はい! わかりました!」

 

 強い口調で名前を呼ばれ、思わず優は返事をする。しかし数秒後違和感に気付く。

 

「雲雀先輩……さっき……」

「……おやすみ、優」

 

 真っ赤な顔で頷く姿を見て、これで自覚しそうだと雲雀が判断した瞬間だった。

 


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