【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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向かない性格 1

 遅くなったと嘆きながら黒曜ランドについた優は、状況を見て再び嘆いた。ランチアがもう倒されていたからだ。

 

 それでも無事とは言いきれはしないが、原作とほぼ変わりない様子にホッとする。そしてツナ達が建物に入るのを見て、優は屋上から行こうと思った時だった。ツナに向けられた僅かな殺気に優は反応する。

 

(建物に入るところを狙ってずっと待機してたの!?)

 

 殺気から狙撃手の方角はわかるが、風を使って調べている間にツナに弾があたってしまう。風で逸らすことも考えたが、正確に叩き落さなければツナ以外に当たってしまう可能性もある。弾を落とすほどの強風はすぐには作れない。優の能力は風を生み出すのではなく、自然にある風を集めて操るので量が多ければ多いほどタイムラグが起きるからだ。

 

 優はツナに向かって駆け出した。これが1番手っ取り早い。

 

 ザッと地面と靴のすれる音と共に金属音が鳴る。

 

「え……?」

 

 ツナは何が起きたのかはわからず、ただ突如目の前に現れた人物を見つめる。

 

「てめぇ、何者だ!?」

 

 獄寺も驚いたが、すぐにツナを庇うように立ちダイナマイトを構える。ビアンキも獄寺に続いた。唯一この事態に驚かなかったリボーンが口を開く。

 

「やっぱり来たな」

“……君が彼を助けないからだろ”

 

 もしリボーンがツナを助けるような動きをしていれば、優は何もしなかった。リボーンが殺気に気づかないはずがない。さらに今も狙撃は止んでいない。優が叩き落さなければ、ツナは当たってしまうだろう。だから優はリボーンに文句を言ったのだ。

 

「獄寺君、ビアンキ、この人は大丈夫だよ。ヒバリさんを助けてくれたみたいだし、獄寺君の怪我も診てくれたんだ!」

「なっ!? こいつが……!?」

 

 リボーンの態度とツナの言葉を聞いたビアンキは警戒を解く。そして渋々だが、獄寺もダイナマイトを持つ手を下ろした。

 

“君達では相性が悪い。こっちは僕に任せて行けばいい”

「てめぇだって、良くねぇだろ! 任せておけるかよ!!」

 

 獄寺の言葉を聞き、優は久しぶりに本気でケンカを売られたなーとのんきに思った。

 

“僕は銃使いに負ける気がしない。……アルコバレーノである君にも”

「リボーンにケンカ売ってるーー!?」

“相性の問題だ。それに勝てるとは言ってない”

 

 風で弾の軌道はそらすことが出来る。風が強すぎれば、リボーンは銃を使うことは出来ないだろう。だが、リボーンは銃を使わなくても強い。近距離戦になれば歩が悪いだろう。そのため距離を保ちさえすれば、負けることは無いと優は分析したのだ。

 

「黙って聞いてりゃふざけたことばかり抜かしやがって!」

「強ちウソとはいいきれねーぞ。こいつは並盛中ケンカの強さランキングで1位だからな」

「えーー!? この人がヒバリさんより強い人なのーー!? ……あ。そういえば、屋根の上を走ってたかも……」

 

 ツナの言葉を聞き、実力は上かもしれないが、雲雀には勝てない気がすると優は思った。

 

“……そういうことだ。もう敵の居場所は特定し終わったから、さっさと行ってほしい。君達が行かないと僕は動けない”

 

 なんてことない風に言ってるが、狙撃手を見つけるのは簡単なことではない。弾の角度と方角である程度は見当がつくのは可能だが、完全に特定するのは難しい。

 

“ヒントはここまで”

 

 小さな声。殺し屋であるリボーンにしか聞こえないほどの小さな声で、優は言った。

 

「……お前ら、行くぞ」

 

 正体へのヒントはここまで、本当の戦闘スタイルのヒントはここまでという2つの意味を込めて言ったことにリボーンは気付いたようだ。

 

「あの、ありがとう!」

 

 気にしないでという意味で刀を持っていない方の手で軽く振る。ツナ達が完全に建物に入ったことを風で確認し、優は敵に向かって走り出した。

 

 わざわざ優が敵の方へ向かったのは、憑依弾のことを考えてだ。もし骸に憑依されてしまえば、確実に面倒になるのでロープでしっかりと縛らなければならない。ただ倒すだけならば、風を操って石でもぶつけるだけでいい。

 

(でも石は痛いよね。痛くないように気絶させないと……)

 

 優はとことん争いに向いていない性格だった。

 

 

 

 

 雲雀は優とすれ違うように、黒曜ランドにやってきた。2度目なので迷いもなく骸がいる場所へ進んでいく。その途中で倒れている獄寺が目に入る。

 

「おめー……なんでここに……」

 

 少し前に雲雀は優の家に居たのを映像で知っていたので、獄寺は驚いた。雲雀は獄寺の疑問を無視し、声をかける。

 

「僕は早くこの件を終わらせたいんだ。そこの2匹、僕にくれる?」

「……好きにしやがれ」

 

 トンファーを構えたと同時に雲雀の肩に乗っていた鳥が羽ばたく。手懐けたというより、バースに報告するように訓練されていたので、方向が一緒になった雲雀に着いてきて勝手に懐いたのだ。

 

「つぇぇ……」

 

 思わず獄寺が呟くのも無理もない。骨が折れてると言っても原作より少ない。さらに優から体力を渡されている。桜クラ病に罹っておらず、急いでる雲雀は強かった。

 

 手間取ることなく、2人を倒した雲雀は獄寺に視線を向けた。

 

「君に聞きたいことがあるんだけど」

「……条件がある」

「なに」

「オレを10代目のところまで連れて行け!」

 

 軽く溜息を吐き、雲雀は質問した。

 

「深くフードかぶった人、どこに居るの?」

「けっ! てめぇもあのやろーに文句あるのかよ」

 

 僅かに眉間に皺をよせ、雲雀は「はやく答えなよ」と続きを促した。

 

「外で戦ってるはずだ」

「……そう」

 

 チラっと外に視線を向けてから、雲雀は獄寺の肩を担いだ。心配ではあるが、主犯格の男と優を会わせたくない気持ちの方が強かった。

 

 

 

 

 

 

 一直線に突っ込んでくる優に疑問を覚えたのだろう。優が着く前に狙撃手が移動し始めた。

 

(減点。逃げながら撃つべきだよ)

 

 迷いのない優の動きに違和感を覚えたなら、もう捕捉されていると考えるべきだ。捕捉されている中、移動しても意味はない。

 

 そもそも優からすれば銃以外の武器を持っていないのが不思議でしかない。移動して逃げるほど遠距離に徹底しているならば、接近戦に持ち込まれれば後がなくなる。手榴弾のようなものを用意しているべきだ。

 

(今までは一発で終わらせたんだろうなぁ)

 

 骸と一緒に脱獄したのだろうが、この狙撃手は戦闘の経験がないのだろう。銃の腕がいいのなら、手榴弾のようなものをくくりつけ敵が近づいてきた場合に撃つだけでも違ってくるからだ。不意打ちのような一方的な展開しか経験がないことがわかる。

 

(……やりにくい)

 

 優は降参してくれないかなと本気で願った。

 

 風でしっかりと狙撃手を捕捉していた優は、移動中に襲い気絶させた。あっさりしたものである。だが、神との修行しなければ、優は銃に向かっていくのを怖がっただろう。勝つことは出来ただろうが、苦戦したはずだ。

 

(神様、ありがとう)

『サポートは俺の役目だぞ』

(それでもありがとう)

 

 返事がなかったので、神が困ったように頭をかいてる姿を想像し、神のおかげで少し肩の力を抜くことが出来た。それでも笑えるほどの余裕はなかった。まだ終わってない。

 

(次はあっちだ……!)

 

 優は急いでツナ達がいる場所へ走り出した。


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