【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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黒曜編は話が変わってるかも?
バトル描写の残念さは相変わらずですがw
まぁこの話はそこまでバトル描写に凝る気はないです。
クラスメイトKの方がまだ頑張ってますね。


黒曜編
救出


 優は首を傾げながら家を出た。雲雀が週末に呼び出しも家に1度も来ることもなかった。1日だけならまだしも、2日連続で何もないというのは本当に久しぶりである。

 

「優、おはよ!」

 

 鍵を閉め学校に行こうとしたところで声をかけられ、優は周りを見渡す。予想通り、声の主はツナだった。

 

「ツナ君、おはよ! リボーン君も!」

「ちゃおッス」

 

 優とツナは笑いあう。お互いに朝から会えてほんわかしたのだ。だが、それをブチ壊すように外の空気がピリピリしていた。

 

「なんか変?」

「優は知らないんだ。この土日で並盛中の風紀委員がやられたんだって。何人だったっけ?」

「7人だぞ」

 

 サッと優は顔を青ざめる。黒曜編が始まったと気付いたからだ。

 

「優?」

「あ……」

「優は風紀委員の顔見知りが多いからな。無理もねーな」

 

 青い顔をしたまま優は頷く。黒曜編が始まるからとは言えない。

 

「問題ないよ」

「雲雀先輩!!」

 

 泣きそうな顔で優は雲雀に駆け寄った。

 

「……大丈夫だから」

 

 この顔をさせたくなくて、何も話さずに週末に終わらせるつもりだった。だが、結局間に合わず知られてしまった。

 

「心配しなくていい。すぐに終わらせるから」

「ヒバリさん、やっぱこえーっ!」

「うるさいよ」

 

 ツナに言ったわけじゃないと雲雀はイラついた。が、ほんの少し優の顔色が良くなったので咬み殺さなかった。

 

「君はしばらく学校休んで」

「え?」

「ヒバリの言うとおりだぞ。優は巻き込まれる可能性は0じゃねーからな」

「それで優の家に寄るぞって言ったの!?」

 

 優は驚いた。風紀委員しかやられていない現状で巻き込まれるとは考えていなかったのだ。……雲雀の弱点として狙われる可能性は考えつかないらしい。

 

 大丈夫と優が声をかけようとしたところで雲雀のケイタイが鳴り響く。ほんの少しだが、電話をとった雲雀の表情が変わったことに優は気付く。

 

「雲雀先輩?」

「……笹川了平、やられたよ」

「お兄さんは風紀委員じゃないのにーー!?」

 

 ツナが叫ぶのも無理はない。不良同士のケンカと思われていた事件が、この瞬間から無差別事件になったのだから。

 

「えっ?」

 

 腕を掴まれたことに驚く優を無視し、雲雀は鍵をまわし優の家に入る。玄関に入り、鍵を閉めたところで雲雀が優に向かって言った。

 

「風紀委員を派遣させたいところだけど、まだ危険かもしれない。だから君は大人しく家の中に居ること。少しでも違和感を覚えれば、すぐに連絡して」

「オレらが優のことを見てやってもいいぞ」

 

 僅かに眉間に皺を寄せながら雲雀はリボーンを見た。家に入れたつもりはなかったのだ。だが、リボーンの提案は悪くない。雲雀が戦いたいと思うほどリボーンは強い。

 

「待ってます! 雲雀先輩の帰りをここで待ってます!」

「……敵の手掛かりは掴んだ。すぐに終わらせるから待ってて」

 

 そういって雲雀が扉を開けると、ゴンっと音が響く。

 

「いってぇー……」

「ツナ君、大丈夫!?」

 

 扉の前に外に放り出されたままのツナが居たのだ。雲雀は呆れたような視線を送ったものの、時間が惜しいので咬み殺さずツナの横を通り過ぎたのだった。

 

「本当に良いのか? 優」

 

 雲雀が去って、もう1度リボーンは優に確認した。

 

「大丈夫。雨戸をしめて閉じこもってれば、多少は時間が稼げると思うしね。変だと思ったらリボーン君にも連絡するよ」

「そうか。ツナ、了平の様子を見に行くぞ」

「う、うん。優、ちゃんと戸締りしてね!」

「わかってるよー」

 

 ツナ達を見送った優はさっそく雨戸を閉める。そして、すべてが終わったのを確認したところで息を吐いた。

 

『忘れ物するなよ』

「ありがとう」

 

 止めようとしない神に優は礼を言った。もっとも止められても止まる気はなかったが。行かなければ1人になった意味が無い。

 

 神に用意してもらった服をきる。どこでもすぐに着れるようにと、膝下まである紺のロングコートでおしゃぶりと同じ色のラインが入っているが柄はない。ズボンもそのまま着れるようにと大きめで、色は白である。少し目立つよう色にも思えるが、コートのおかげでそこまで目立つことは無い。白の理由は黒一色はどうしても神が許せなかったらしい。靴は黒のブーツ。ちなみに持ち運べる時ように折りたためるスニーカータイプもある。そして深いフードは口元近くまで隠れてるのでかなり怪しくみえる。

 

 この服に神が詰め込んだ機能で大きなものは3つ。1つはフードをかぶっているが、優は問題なく見える。体格を隠すための幻覚作用。そして優の意思で声がかわる。

 

 もちろん死ぬ気の炎に強い素材で、水や火にも強い素材を使っている。快適に過ごせるようにと優の体温に合わせて温度が調節される。このように細かくあげればキリがないほどハイスペックな代物である。

 

 着替え終わり、刀を持った優は、天井にある窓へと向かう。一見では開閉式とわからないようになっていて、僅かに突起しているボタンを押すと、10秒だけ自動で開く。戻る時は外にも同じようなボタンがあるので、リボーンが来るまでは風で押して空から落ちるように入るのが優のお気に入りだった。

 

 ボタンを押す前に優は風で周りの様子を確認する。家の屋根付近にも幻覚作用があるが、優は毎回している。神を信用していないというより、気配を読むことに慣れるためにしているのだ。

 

 タイミングをはかり、外に出る。そのまま屋根を伝って優は黒曜ランドへ向かったのだった。

 

 

 

(……雲雀先輩)

 

 無事でいてと願いながら、優は走る。いつもとはまるで違う動きだ。だが、その足が止まる。

 

(草壁さん!?)

 

 視力のいい優は草壁が城島犬に襲われているところが見えたのだ。優は軽く舌打ちして草壁のところへ向かった。日ごろから世話になってる草壁を見捨てることは出来ない。草壁でなくても襲われてるところを見てしまったのなら、優は見捨てることは出来ないだろう。それほど優は甘い。

 

 犬の背後に飛び掛り、刀を振り下ろす。だが、交わされる。このままでは草壁にあたってしまうので、優はピタリと動きを止めた。

 

(避けられるとは思わなかったなぁ)

 

 反省しながら驚いてる草壁を放置し、優は犬に向き直った。

 

「……お前、何者だびょん」

 

 ジリジリと下がりながらも、犬は優の動きを見逃さないように見ていた。野生のカンで優の強さに気付き、恐怖心から犬は優からの一撃から逃れることが出来たのだ。次はない。今回は運が良かっただけだ。

 

“……時間が惜しい”

 

 優は呟いた。服の効果でいつもと違う声で。

 

「チーターチャンネル!!」

 

 悪寒を感じた犬は逃げ出した。このままではやられる。

 

 逆刃刀を鞘に戻す。背後から襲って倒すことも出来たが、優にそんな趣味はないので見逃したのだ。甘すぎるが、それが優だ。

 

「礼を言う。だが、怪しい奴を見逃すわけには行かない」

“……悪い、雲雀恭弥が心配なんだ”

 

 軽く手をあげてから、優は走り出す。雲雀のことを心配し叫んでる草壁に謝りながら。

 

 予定外のことが起きたので、優は空を飛ぶことにした。最初からすれば良かったかもしれないが、昼に飛び立つのは目立つのだ。高い建物から飛んでいかなければならなかった。

 

(神様に頼んで買ってもらおうかな)

『買ってもいいが、優の姿で出入りするなら結局は一緒だぞ』

 

 コソコソと飛び出すことになるのは変わりないと神に言われ、優は無駄遣いになると判断した。そもそも一軒家じゃなければ、住人付き合いもある。フロアや棟ごと買い取れば、それはそれで目立つ。結局は優がストレスを感じないギリギリの広さの今の家が1番だった。

 

(神様って私の性格をよくわかってるね)

『当然だろ』

 

 空気を軽くするような神の自信っぷりに優は僅かに表情を緩めてビルを駆け上がり屋上から飛んだ。

 

 

 

 黒曜ランドの屋上に降り立った優は、風で人の気配を探す。至る所に呼吸をしている気配を感じるが、動いている気配は一箇所しかない。

 

 その場所へ優は窓を割りながら突撃した。雲雀から自分に向けさせるために。

 

「おや? 新たな訪問者ですね」

 

 倒れている雲雀を庇うようにたった優を見ても、骸は動じず問いかけた。城島犬と違い、何を考えてるのかわからない態度である。

 

「クフフフ どなたでしょうか?」

 

 口を開こうとした時、僅かに風が変わったので刀を抜き、飛んできた弾を叩き落した。

 

「ほぉ」

(ほぉ……じゃないし! 狙いが雲雀先輩とか最低!! それに桜の幻術……!)

 

 心の中で文句をいいながらも、頭の隅では戦闘では当然だと思った。そして銃使いが原作にいなかったはずと冷静に状況を分析していた。

 

(狙撃手の腕がいい。ここと違う建物からなのに防がなければ雲雀先輩に当たってたよ)

「……誰?」

 

 ピクリと反応する。その傷で意識を失ってない雲雀のプライドの高さに改めて優は感心した。

 

“状況が悪い。いったん出直すぞ”

「僕に命令しないで」

 

 はぁと軽く溜息を吐き、背負うために雲雀の腕に触れる。動かせば身体に響くかもしれないが、仕方がない。

 

“後で僕を咬み殺せばいい”

 

 この言葉だけで抵抗しなくなったことに疑問を覚えたが、状況が状況だ。相手がこのスキを見逃すわけがなく、弾が飛んでくる。優は雲雀から手を離し、再び弾を落とす。

 

 あまりにも多い弾の鬱陶しさに、優は強風を発生させ狙いを狂わせる。しかしそれが合図になったのか、骸が優に向かって駆け出した。

 

“……横抱きとおんぶ、どっちがいい? 僕はおんぶがいいんだが”

「逃がしませんよ」

 

 あくまで余裕の態度を取り続ける優に、骸は雲雀には使わなかった武器……三叉槍をふるった。

 

 連続に響く金属音。雲雀を気にしながらも一撃も食らわないその腕に骸は一歩引いた。

 

「あなたが並盛中ケンカの強さランキング1位の秘密君ですね。もう少し被害を出さなければ、出てこないと思ってました」

 

 そういって骸は笑った。ギリっと優は歯を食いしばる。

 

「おや? ボンゴレ10代目は随分と甘ちゃんですね」

“僕はボンゴレ10代目ではないぞ。まぁボンゴレ10代目が甘いのは否定しないが”

 

 ツナの顔を思い浮かべ、優は軽く息を吐く。少し冷静になれた。

 

「……どちらにしても、僕はあなたの体がほしい。僕が有効活用してあげますよ」

 

 骸の目の数字が変わり、火柱の幻覚が優を襲う。だが、優は何もなかったように平然と雲雀のもとへ向かう。そして軽く骸が目を見張ってる間に、優は雲雀恭弥を背負った。雲雀からの抵抗はない。

 

“じゃぁな”

 

 逃げ出す際に優の視界にフゥ太が入る。

 

(ごめん、私じゃ無理なんだ)

 

 自分ではフゥ太の心に響かない。ツナじゃなければならない。優は悔しい思いをしながらフゥ太を置いていった。……十分優の声でも届くのに。

 

 優は自分に自信がなかった。

 

 

 

 

 

 

 追手の気配はなく、優は軽く息を吐いた。

 

“あー、場所は病院でいいか?”

「君の家でいい」

 

 足を動かしながらも、優は雲雀の様子をうかがった。

 

「隠しても無駄だよ。僕が触れても嫌悪感を抱かないのは、風早優だけだ」

 

 ピタリと足が止まる。

 

(神様ー、幻覚効果って本当にあるのー?)

『効いてるぞ。だが、雲雀は目で見えていることよりも自分の感覚を優先しているんだ』

(つまり感覚タイプには効きづらいってこと?)

『一流の術士でさえ惑わせるものだから、余程の変わり者だけだぞ』

 

 はぁと溜息を吐く。その余程の変わり者に雲雀は入るらしい。

 

「雲雀先輩には敵わないなぁ……。追手はなさそうですが、ここで治療するのは危険なのでもうちょっと我慢してくださいね」

「問題ないよ」

 

 優は自分の家に向かったのだった。


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