【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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小話作品(ちょい甘)

リクエスト内容。
『ホワイトデー』


ホワイトデー 1

 ケイタイの画面を見て、優は眉を寄せる。無視することは出来ないので、ふぅと気合を入れてから電話に出た。

 

『ちゃおッス』

「もしもーし。どうしたの?」

 

 いったい何の用だろうか。

 

『ランボが優に会いたいってウゼーんだ。ツナん家に来てくれねーか?』

「すぐ行くね。ランボ君に何して遊びたいか考えといてって伝えといてくれる?」

『わかったぞ』

 

 可愛いランボのために優は慌てて出かける準備をしたのだった。

 

 

 

 

 チャイムを鳴らすと、ドタバタと音が聞こえた後に扉が開く。

 

「優!? どうしたの?」

 

 首をひねる。ランボではなく、ツナが出たからだ。

 

「さっきリボーン君から電話があって、ランボ君が私に会いたいって言ってるって聞いたんだけど……」

 

 返事しながらも嫌な予感がする。

 

「今、ランボは母さんと買い物に行ってるはずだけど……」

「あれー? そうなんだー」

 

 嵌められたようだ。

 

「よっツナ! 風早!」

「10代目ーーー!! 右腕のオレが来たからにはもう安心スよ!」

 

 聞こえてくる声に、嫌な予感しかない。

 

「え!? みんな、どうしたの?」

「小僧に呼ばれてなっ」

「リボーンさんから聞きましたよ。10代目がピンチと!!」

 

 ピンチならば、呼び鈴を聞いてのこのこと出てくるわけがない。

 

「ツナ君、リボーン君はどこか知らない?」

 

 2人に何も無いと説明しているツナに向かって優は笑顔で問いかけた。ツナを騙せるほどの完璧な作り笑顔である。

 

「え? リボーン? リボーンならオレと一緒に部屋に居たけど……」

「ちゃおッス」

「こんにちは、リボーン君。今日はどうしてみんなを集めたのかな?」

 

 凄腕の殺し屋と呼ばれるリボーンは優の笑顔の意味に気付く。納得できる説明をしてねと言っていることに。

 

「お前ら忘れたのか? 今日はホワイトデーだぞ。優からチョコをもらったんだ。今日返さないとダメだぞ」

 

 集めた理由は理解できた。が、優は何か返してほしくてしたわけじゃない。

 

「私は別n……!?」

 

 強制的に黙らされ、優は目を見開いた。口を塞がれたのに、全く反応出来なかった。リボーンが強いと肌で感じた。汗が流れてることがはっきりとわかる。

 

『その感覚は忘れるな。咄嗟の判断の時に役に立つ』

(うん、わかった)

 

 普段は優を甘やかす神だが、戦い方を教えている時は厳しい。厳しいと言っても丁寧に優しく教えている。ただ出来ないことは言わない。だから優は素直に返事をするのだ。

 

「優! 優!? 大丈夫!?」

「あ、ごめん。ビックリしちゃった」

「ごめん、優! リボーン!!!」

「ツナ君、大丈夫だよ。ビックリしただけだから」

 

 優がツナをなだめてる間にボンゴレ的ホワイトデー大会の開催が決まった。

 

 

 

 

(何を考えてるんだか……)

 

 用意された席に座りながらも優はリボーンの思惑を見抜こうとしていた。優を喜ばせればいいという簡単なルール。点数は優がつけ、最下位は優のパシリになる。

 

 はっきり言って意味のない罰ゲームだ。優は1人だけを最下位にすることはしない。リボーンはそれをわかっているはずだ。

 

 ニヤリとリボーンは笑った。すると、優も笑った。

 

 水面下で勝負が始まった瞬間だった。僅かな情報で掴んでみろとケンカを売られ、優は乗ったのだ。

 

 何事もなかったように優はツナ達の様子をうかがう。急に集められたのだから、用意してるわけがない。巻き込まれたツナ達が不憫でしかなかった。

 

(イーピンちゃんがいないな。もうお返しをもらったからかな?)

 

 お礼にチャーハンを作ってもらったことを思い出し、口の中で涎が溢れた優だった。地味に食い意地がはっている。

 

「じゃ僕からするね! 優姉、何でも言って! ランキングするよ!」

「ず、ずるい……」

 

 ツナの言葉に優は苦笑いするしかない。

 

「みんなから聞いてるよー。凄いんだってね」

 

 うーん……と悩みながら、神に話しかける。

 

(神様ー、これって大丈夫?)

『ああ。内容は吟味している』

(ありがとー)

 

 実は並盛中のケンカ強さランキングの1位をヒミツにしたことで、リボーンがヒミツの正体に探ろうと、細かく設定したランキングを作ったのだ。だが、それは失敗に終わる。優の正体を探るような内容のものは神が手を回し、ランキング星への通信を妨害したからだ。そのことを優は聞いていたので、全て有耶無耶になるのか神に確認したのだった。

 

「私が将来、何になりたいって思ってるのかベスト3だけでいいから教えて欲しいかな」

「将来になってることをランキングしないの?」

「それだと未来がわかって面白くないからね。それに何になってるか想像できるし」

「そうなの!?」

 

 優は笑顔で頷いて言った。

 

「もう決まってるんだ」

 

 ツナが継がなくても優はマフィアになることから逃げれない。否、マフィアの勢力図が変わるので、争いが起きる前に入らなければならない。優をめぐって無駄な血が流れる。なりたくもないのに、ならなくてはいけない。

 

 バッと手を握られ、優は首をひねる。

 

「どうしたの? ツナ君」

「え? ……えええええ!! ご、ごめん! 優!!」

 

 自分の行動に驚き、アワアワしてるツナを見て優は笑った。誰にも気付かれないようにしたつもりだが、ツナにはバレたらしい。無意識の行動なので、ボンゴレの超直感かもしれない。

 

「変な、ツナ君」

「ごめん、優」

 

 いつものように笑いあう。まだ大丈夫。

 

「ツナ兄、僕の番なのにー!!」

 

 膨れたフゥ太を見て、ツナと優は揃って謝った。

 

「じゃぁいくよ!」

 

 ブツブツ呟き始めると、ふわふわと重力によって浮かびだす。

 

「……なんか凄いね」

「そういえば、優は初めて見るんだよね」

「うん。噂は聞いていたんだけどねー」

 

 風ではない力で浮く不思議な感覚に、優は目を輝かせた。

 

「ランキング……第3位は、ツナ君が……」

「え!? オレ?」

「ボンゴレ10代目を継いだ時、ファミリー入り支える、だね」

「な、なんでーーー!?」

 

 ツナは驚きの声をあげ、優は感心していた。まさかマフィア関連の内容がランキングに入るとは想像もしていなかった。優はチラッと横目でツナの顔を見る。

 

(ツナ君だからなんだろうねー)

 

 納得して視線を外すと、リボーンの目が光っていることに気付き、苦笑いした。

 

「右腕はオレだからな!」

「右腕はオレなっ!」

 

 この2人は優が入っても反対しないらしい。せっかくなので話にのる。

 

「私は右腕に興味ないよー」

「優は頭がいいし参謀だな」

「それいいかもね」

 

 反対しているツナを尻目に、盛り上がる。ちゃっかり勧誘したリボーンは優があっさり返事したことに驚いた。なので、優はリボーンの顔を見て言った。

 

「ツナ君が継いだらね」

 

 継いだと確定するまでは入らないと釘をさした。

 

「何言ってんのーーー!?」

「第2位は……」

 

 ツナの叫びもむなしく、フゥ太の言葉に耳を傾け始める。

 

「雲雀先輩の役にたつ」

「え!? そうなの!?」

 

 驚いた声をあげながら、つい雨が降っていないかを確認する優。

 

 晴天だ。

 

「私、大丈夫かなぁ」

 

 ちょっと自分の頭が心配になった。

 

「第1位は……お嫁さん、だね」

 

 スッと重力がなくなり、座った優は気まずげに目を逸らす。至って普通のような反応ばかりで恥ずかしいのだ。

 

「……フ、フゥ太君10点ね」

「わーい」

 

 優は満点をとり、ピョンピョンと飛び跳ねながら喜んでるフゥ太をみて癒されることにした。

 

「次は誰だ?」

 

 見かねてリボーンが話を進める。紳士でもあるリボーンは、その件でこれ以上優を困らせる気はなかった。

 

「ランボさんだもんね!」

「お前、用意してるの!?」

「ランボさんはえらいもんねー。お前らとは違うもんね」

 

 バーカという風な目を向けられ、獄寺はついランボの頭を殴る。

 

「グピャ!? うわあああ!」

「ランボ君!? 痛かったよね、大丈夫?」

 

 慌ててランボを膝の上にのせ、優はランボの頭を撫でる。すると、グスッと泣きながらランボが優の腰に抱きついた。鼻水がついたが、優は気にしない。ランボの面倒をみていれば、よくあることだ。ツナが慌ててティッシュや濡れたタオルを持ってきてくれるとわかっているのもある。

 

 2人係でランボを落ち着かせ、ホッと息を吐く。だが、落ち着くとあっかんべーとランボが獄寺にむかってするので、獄寺がイライラし始める。それでも殴らないのは以前の優に尻餅をつかせたことを覚えているからだ。

 

 ツナと優は揃って溜息を吐く。もう少し仲良くしてほしい。

 

「えーと、ランボ君は何を考えてくれたの?」

 

 空気をかえるために優はランボに話しかける。

 

「ランボさんはねー、とっておきの物をあげるもんね」

「ん? なにかなー?」

 

 ゴソゴソと髪の中を探り始めるランボに優は笑ってしまう。頭を撫でているからよくわかる。本当にいろんな物が入ってるのだ。

 

「ほい、あげるー」

 

 ランボが差し出した手の中には飴玉があった。

 

「いいの? ランボ君の大好きなものだよ?」

「これ2つ入ってるもんね! 1つは優」

「全部あげねぇのかよ!」

 

 仲の良いのか悪いのか、ランボの言葉に獄寺が真っ先にツッコミした。

 

「じゃぁこっちもらうね」

 

 優はランボの意見を聞かずに選んだ。なぜなら、片方からはミントの匂いがしたからだ。1人で食べれないから開けなかったのだ。恐らく同じのを持っていて、もう苦い経験をした後だろう。

 

 ランボがショックを受けることなく、もう1つの飴を食べ始めたので正解だったようだ。

 

「美味しいね、ランボ君」

 

 話しかけるとキラキラした目を向けたので、優は笑った。

 

「ランボ君も10点!」

 

 10点を得れたことでまたも獄寺を挑発したので、優は苦笑いしながら頭を撫で落ち着かせた。

 

「優は採点が甘すぎる……」

 

 ツナの呟きに、優はまた笑った。

 


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