【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
目をこする。まだ寝ぼけているのだろうか。だが、念のためにリビングのソファーに座ってる人物に優は声をかけた。
「……おはようございます?」
「やあ」
雲雀本人で間違っていないようだ。合い鍵があるのでいつでも入れることはわかっているが、朝から来たことは今までなかった。
優は目をこすりながらもいつから雲雀が来たのだろうと考える。起こされなかったので、来たばかりなのだろうか。
「……うわあああああ!」
「なに」
「ちょっとこっちを向かないでください!! 着替えてきます!!」
雲雀にパジャマ姿を見られて、優は慌てて寝室に引き返す。
「うぅぅぅぅ……」
(寝起きとか恥ずかしいよーーー。ってか、おしゃぶり見えてたし! まぁ袋に入ってたけど……)
嘆きながらも着替え終えれば、次は顔を洗ってないことに気付く。
「……どうしよう」
悩んだ末、デフォルメされた恐竜の人形で顔を隠して扉を開ける。そーっと移動するが、雲雀が気付かないわけがない。近づいてくる雲雀に気付いているが、気付いていないフリをするべきが悩んでるうちに、雲雀が優に手を伸ばす。
「やっ、見ないでください!!」
あからさまに怪しい行動をしていたため、雲雀は優が持っていた人形を取ったのである。
「どうして?」
「……か、顔を洗ってないから……」
「はぁ」
大きな溜息を付いてしまうほど、雲雀にとって至極どうでもいいことだった。
だが、両手で隠しきれていない隙間から、優の顔が真っ赤になってることがわかる。
「……向こうで座ってるから、さっさと済ませてきなよ」
「あ、ありがとう……」
雲雀が離れていく気配を感じ、優は洗面所へ駆け込んだのだった。
朝ご飯を終えても雲雀が出て行かないので、妙に落ち着かない優はソファーの上に置かれていた恐竜の人形に手を伸ばす。膝の上に置き、ぎゅうぎゅうと後ろから抱きしめながら雲雀を見る。
(この世界に私が来て1番の異変ってやっぱり雲雀先輩だよね。体育祭の時に笑ったのは見間違いかもしれないけど、雲雀先輩の雰囲気が柔らかいのは間違いないよね。だってソファーで寝ちゃったのに、起きたとき何も言わなかったもん。それに、学ランかけてくれてたし)
実は次の日に黒川に詰め寄られたぐらいで、特に騒動も無く終わったと思ってる優は、コソコソする必要がなくなったとしか考えていなかった。そのため、体育祭はいい思い出になっていた。
「なに?」
「なんでもないです」
誤魔化すようにえへへと笑ってると気付いたが、雲雀は深く突っ込まないことにした。
家にあった本を雲雀が読み始めたので、優は動き出す。1人暮らしなのでやることは多い。
「あ、雲雀先輩。お昼食べていきます?」
「食べる」
冷蔵庫の中身を確認しながら優は何を作るのかを考える。雲雀は希望を言わないので困る。結局、余ってるご飯をどうにかしたいのでオムライスに決めた。
仕込みが終わる頃、雲雀のケイタイが鳴り響く。
(うわー、せっかく準備したのに出かけるかも。先に仕込みするんじゃなかったなぁ……)
はぁと軽く溜息を吐き、まだ炒めてないだけ良かったと冷蔵庫になおす。
「出かけるよ」
「はぁい。行ってらっしゃーい」
予想してたので優はすぐに言葉を返した。
「何言ってるの? 君も行くよ」
「へ?」
優の疑問を他所に雲雀は玄関に向かって歩き出したので、優は慌てて追いかけるのだった。
外に出ると雲雀がバイクのキーをまわしエンジンをかけていた。
「あの、法律……」
「僕がここの法律だよ」
(いや、違うだろ)
すぐさま心の中でツッコミを入れる優。
「何か文句あるの?」
「いえ、ありません!」
ピシッと敬礼する優を見て雲雀は溜息を吐く。
「君のためにヘルメット用意したんだから」
ポフッとかぶせられ、優は目を見開く。その間に雲雀はカバーを降ろし、あご紐を締める。
「え? え?」
「早く乗りなよ」
優が気付いた時には、雲雀はもうバイクに跨っていた。慌てて乗ったのはいいが、雲雀の腰に手をまわすのは躊躇われ、学ランを掴む。
「それじゃ落ちる」
「えーと……。では、失礼します」
風のおかげで落ちないと言えない優は、結局雲雀の腰を掴むことにした。
「……はぁ。行くよ」
「は、はい。うわぁ!?」
あまりのスピードに驚き、気付けば雲雀の腰に手をまわしていたのだった。
初めは怖がっていた優だったが、次第に上機嫌になっていた。
「すごい、すごいです! 風が気持ち良かったです!」
バイクが止まると、雲雀に報告し始める優。
「……わかったから。少し待ってて」
「あ、はい。すみません……」
自分が興奮してることに気付いた優は、気まずそうに目を逸らす。すると、沢田と書かれている表札が目に入る。
「え? ツナ君の家!?」
驚いている間に雲雀が外壁を掴み、登って行く。
(危ないなー。まぁ雲雀先輩なら問題ないか。……じゃなくて、ツナ君と雲雀先輩の絡みだったら原作だよね? なんだろう?)
ポンっと思い出したように手を叩く。やはり雲雀が登場する話の覚えは良い。
(仮死状態になる人の話だ! 原作ではツナ君視点だからわからなかったなぁ)
ふんふんと頷いてると、雲雀が戻ってくる。窓からツナの顔が見えたので優は手を振る。
「ツナくーん!」
「優!?」
「大丈夫ーー?」
雲雀が変わったとは思っているが、咬み殺すことはやめないだろうという妙な信頼感があった。
一方、ツナはツナで初めて人を殺してしまったと勘違いしてるのもあり、優の言った意味が正しく伝わらなく口ごもる。すると、獄寺がツナを押しのくように顔を出す。
「果てろ!!」
落ちてくるダイナマイトを見て、つい神との修行のように風を使って火を消す。
「あ」
「ゆ、優!?」
思わずあげた声は、ツナの焦る声でかき消される。そして優の視界が真っ黒になる。
(ビックリしたー。雲雀先輩の学ランかぁ)
雲雀の背中を見ながら優は心の中で呟く。
「?」
火がついていないことに気付いた雲雀は、変だと思いながらも念のためにダイナマイトを二階の部屋へ返す。やはり爆発しない。
「……まぁいい。行くよ」
「あ、はい」
原作と違う結果になり心配になったが、雲雀に言われたので優はバイクに跨った。
「もう帰るんですよね?」
「どこか行くかい?」
「へ?」
すぐツナにメール出来るかの確認のために聞けば、思わぬ方向へ進む。
結果、バイクで海まで行き、しばらくの間眺めてから帰ったため、遅めの昼食をとることになった。