剣がすべてを斬り裂くのは間違っているだろうか 作:REDOX
そういえばお気に入り件数が4000越えました。読者の皆様ありがとうございます。でも、これだけ読まれると下手なこと書けねえなと割りとプレッシャーになる現実。
それは夜が更け、オラリオの住民が寝静まった時間帯のこと。一人の女神が宵闇を歩いていた。銀の髪は月明かりに照らされその輝きを魅せる。
彼女が向かったのは一人の鍛冶師の工房だった。音もなくドアを開け、中に侵入した。例え気付かれても、彼女に逆らえる者はいなかっただろう。
「ふふ、これね」
それは部屋の中央、備え付けのテーブルの上に乗っていた。菫色の長細い袋に入ったそれを、彼女は無遠慮に取り出した。
それは一本の刀だった。
鞘は黒、柄巻は新雪のような白。それを見て彼女は一瞬もう一人の少年のことを思い出したが、すぐに意識を切り替えた。
少し刀身を鞘から抜き、覗いた刃紋が夜の月明かりに照らされ妖しく波打つように光るのを眺めた。
「それは……」
「これが何か分かるのオッタル?」
「恐らくは
吸血属性。それは生物の血を啜る武器の総称だ。斬れば斬るほど、殺せば殺すほどその武器の性能はその状態で保たれ続け、時には向上することさえある。
しかし、現在は吸血という非人間的な行為が嫌われ、使われなくなった。それと同時にその属性を付与することのできる鍛冶師もいなくなっていったのはなんら不思議なことではない。
そんな掻い摘んだ説明を受けた女神は微笑んだ。
「アゼルにぴったりね」
彼女が思い出すのは、アゼルの監視を任せている猫人の眷属の報告だ。アゼルの動向を探るため監視をさせていたのだが、尾行を気付かれ問答無用で斬りかかられたという報告だった。
そして、その猫人は苦虫を噛み潰したような表情で最後に一言、僅かだが斬られたと漏らした。その言い方が拗ねた子供のようで可愛らしくついつい頭を撫でてしまった彼女だった。
しかし、内心は歓喜で満ちていた。
尾行に気付かれることは予想の範疇だった。
しかし、まさか彼女が大切に育てた上級冒険者に僅かといえども傷を負わせるとは思ってもいなかった。猫人の眷属、アレン・フローメルはレベル6の冒険者であり【
彼女はアゼルの能力はそれとなく理解していた。格下のレベル1の冒険者がオラリオ最強の冒険者に傷を与えることのできるその能力に恐怖すら抱いた。
しかし、あれはオッタルが何もしていなかったからできたことだと思っていた。今回はアレンが戦い、そして斬られた。確かに強いことは分かっていたが、本気ではなかったとは言えレベル6であるアレン相手に引けを取らない戦闘能力だ。
彼女の中でアゼルに対する愛が深まった。手に入れたいという想いがより一層強くなる。
彼女は部屋で寝ている少女を見る。疲れて寝てしまったのか、彼女は椅子に座りながら静かに寝息をたてていた。静かに近付いて、安らかに眠るその少女の頬を触れ、感じ取る。
「とっても良いわ」
彼女は愛と美の女神だ。
それは、とても初々しい恋心のような愛。それと同時に刃のように鋭い危うさを孕んだ愛。
「彼に惚れるんだもの、こうなるわよね。でも、ごめんなさいねお嬢さん。彼は私のなの」
そう言って女神は刀をオッタルに持たせた。一本の針を取り出し、手を刀の少し露出した刃の上に持って行く。針で肌を少しだけ刺し、一滴の血が流れ刃へと落ちる。
「愛してあげる。だから、すべてを斬り裂いて私の元へと来なさい。これは私から贈るささやかなプレゼント」
それは女神から一人の男に対する贈り物だ。
「この刀に免じて、彼のそばにいさせてあげる。でも、最後は私のものになるから辛いだけよ?」
眠る少女に女神は語りかけた。誰も知らない、誰も聞いていないその言葉には戸惑いなどなかった。彼女は自分の欲しいものはすべて手に入れる、そこには妥協も容赦もない。
「いえ、そうでなくとも、彼の近くにいるのは辛いこと。それでも近くで愛したいというのね。これは貴方の愛の結晶」
再び彼女は少女の頬に触れ、そこから熱が発生する。熱っぽいうめき声が少女の口から漏れる。
「なら私は貴方を祝福しましょう」
そうして彼女はそこから立ち去った。
来た時と同じように足音一つ立てず、静かに彼女は闇の中を歩く。それに付き従う男も巨体にも関わらず卓越した身体操作で足音を消していた。
「なぜなら私は愛と美の女神」
宵闇に消えたその女神の名はフレイヤ。この世界で最も美しい女神の名だ。
しかし女神は知らなかった。その刃に宿る怨念を、そこに思念の集合体がいることを。例え、それが刃に宿った怨念だとしても、彼女は魅了する。すべてのものを愛せるからこそ愛の女神。そのための美。
■■■■
アゼル・バーナム
Lv.1
力:H 199 → G 233
耐久:H 104 → H 179
器用:F 314 → E 402
敏捷:G 243 → F 353
魔力:H 126 → G 201
《魔法》
【
《スキル》
【
【
「上昇値トータル350オーバー……はぁ、なんだって君とベル君揃って問題児なんだい?」
「別に上がって困る物ではないじゃないですか」
結局、昨日はお金を一度ホームに置いていくために戻った所をヘスティア様に捕まりもう一度ダンジョンに行くことは叶わなかった。
「それはそうかもしれないけど……強くなるにつれ危険度も上がるだろう?」
「でも上がれば生き残る確率も上がりますよ」
「……そうなんだよなあ。結局は君たちを信じるしかない、か」
そう言ってヘスティア様は私の背中の上から降りた。彼女もバイトとして働いている身だ、いそいそと出掛ける準備をしている途中に無理言って更新をしてもらった。
現在の時刻は十一時。私はダンジョンに言った疲れで結構な時間寝てしまっていたらしい。
「じゃあ、僕は行くね。危険な事はするんじゃないぞ!」
「はいはい、分かりましたよ」
じゃ、と言ってヘスティア様は地下室から出て行った。ベルは既に朝食を食べてすぐダンジョンへと出掛けた。私は今日の予定をどうするか悩んでいる段階だ。
ダンジョンへ行くのは決定事項なのだが、その前に鈴音さんの所に行き武器ができているか確認するか、ダンジョンの帰りに確認しに行くか悩んでいる。行く前に尋ねて出来ていないと急かしているようで申し訳ない。しかし、もし完成しているとしたら早く振るってみたい。
せめぎ合う感情。勝ったのは後者であった。
「鈴音さーん」
彼女の住む共同住宅の一室にいないことを確認した後、昨日ヘファイストス様に案内してもらった工房へと足を運んだ。ドアをノックして名前を呼んでも彼女は出てこなかったので留守のようだった。
「いないのか。じゃあ、帰りに寄るとしますか」
小さな溜息を吐き振り向いて帰ろうとした。やはり早く新しい武器を試してみたいという気持ちが大きく、彼女になんら非がないのに溜息を吐いてしまった。
「きゃぅ」
しかし振り返る途中に誰かにぶつかった。つま先立ちをして腕を伸ばしていたその人物は押された衝撃で後ろへと倒れかけていた。その事を瞬時に理解し、今朝方更新したばかりの【ステイタス】の効果もありかなりの速さで腕を掴み自分の方へと引き寄せ抱きとめた。
ちなみに倒れると理解したと同時に相手が着物を着た女性であることも確認済みだ。これが男であったら放っておいただろう。
「大丈夫ですか? 鈴音さん」
もちろん女性だったら誰でも抱きとめたりはしない。もしこれがリューさんであれば接触は最低限に抑えて助けたし、知らない女性であってもそうだ。まあ、リューさんが私に押されたくらいで倒れるとは思えないが。
「は、はい」
「で、私の後ろで一体何を?」
胸の中で顔を真っ赤にしている鈴音さんに私は尋ねた。彼女は私の後ろ、しかもかなり接近していた。楽しみ過ぎて周囲への警戒を疎かにしていた私に落ち度がないと言えなくもないが、普通街中で周囲の警戒はしない。
「……驚かそうと思って」
「鈴音さんがそういう事をすることに驚きました」
「ううぅ」
私がからかっていると思ったのか、依然顔を赤くしたまま鈴音さんは私から離れた。驚いたのは本当なのだが。
鈴音さんからは石鹸の清潔な匂いがした。髪も若干湿っているのが分かった。
「お風呂ですか?」
「う、うん」
「じゃあ」
一気に心の中が明るくなる。鍛冶とは常に火の近くにいなければならないので汗もかくし、汚れる。なので作業中に身体を清めるということはしないはずで、そもそも作業中に風呂に入る程余裕もないだろう。
鈴音さんが公衆浴場に行ったということはつまり、作業が終わったということ。
「できたよ」
私が何を言おうとしたのか分かった鈴音さんは鍵を取り出し工房のドアを開けた。私の手を取り工房の中へと導き、一振りの菫色の刀袋に入った刀の前へと連れて行かれる。
「これが」
「うん。アゼルの新しい刀。名前はホトトギス」
「ホトトギス?」
「鳥の名前……と、花の名前。書き方は色々あるけど。い、嫌だった?」
「嫌なわけないじゃないですか」
「よ、よかったぁ」
本当に安心したのか、胸を撫で下ろしながら鈴音さんは微笑んでいた。そうして彼女は袋の中から刀を取り出した。
最初に見えたのは鈴を象った目貫が付いた白と藍色の柄。そのまま引き抜き、赤い下緒の結ばれた黒塗りの鞘が露わになる。ただそこにあるだけで私の目を釘付けにする程の存在感があった。
それを鈴音さんは両の手の平に乗せ私に差し出した。微かに震えている身体に俯いた顔。彼女は緊張していたのか、それとも喜んでいたのか。どちらにしても早く私に握って欲しいという想いが伝わってきた。
「では」
差し出された刀を握る。
今まで握っていた刀の柄紐より断然柔らかい握り心地だった。程良い弾力があり、手に吸い付くようだった。それだけで、彼女がどれ程私のことを考えて刀を打ってくれたのかが垣間見えた気がした。
ならばその中身は? そう思うだけで心が震えた。答えなど分かっていた。
努めてゆっくり刀身を鞘から抜いていく。
真っ直ぐな刃紋が見えた。私の姿を反射し映しだすその刃が美しく、二色に分けられたその刃の中に、私は自分を見た。ただ斬りたいと願っている自分を。
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刀を持っていながら、まるで何も持っていないような感覚に襲われた。振らずとも刀が身体の一部だと感じるほど私の感覚に合っていた。持ち心地、重心の位置、刃の長さ、すべてが合っていた。
「ッ」
刃を見ていると頭の中に様々な光景が流れた。
ただひたすら刀を打ち続ける老人の姿。死に体で完成させた最後の一振りに込められたその願い。そして、すべてを斬る刀。その願いに応えるため、何度も何度も物を、人を斬っていく人々の姿。そして最後には自分すらも斬って死んでいく。
貪欲なまでに斬った人の血を啜り、その想いを溜め込んでいく闇。その闇の中で花が散り、その根本は人々の死体と血で埋まっていた。ただそれだけの世界。
「ど、どう?」
鈴音さんに声を掛けられ我に返る。涙目になりながら私のことを見上げる彼女を見て、自分が今までこの世の物でない光景を見ていた事に気付く。それほどまでに現実味があった。
あんなにも非日常の出来事の光景だったのに、何故か私はそのすべてが現実なのだと理解していた。それは記憶だった、それは誰かの経験だった。この刀に宿った思念は、血を啜りそれを自分の物としてきた。
幾百幾千の人間を斬り、その血と想いを吸収する怨念。ただ一人の男の願いが刀に宿ったことで始まった負の遺産。男のたった一つの願いを叶えるために刀は血を吸った。
『すべてを斬り裂いて』
鈴音さんの声が聞こえた気がした。
「だ、だめだった?」
私が何も答えないのが不安になったのか鈴音さんは私の服を掴みながらもう泣きそうになっていた。目尻には大粒の涙が溜まり、頬に一筋の涙が流れた。
そう、私は願われた。すべてを斬り裂くことを、彼女に望まれた。
納刀して腰に差す。もうこの一振りは私の身体の一部となった。
「ねえ、何か言ってよぉ」
「鈴音さん」
彼女は私の上着を掴み顔を押し当てながら泣きだしてしまった。服を掴んだ手を優しく包み込む。この想いが彼女に伝わることを願って。
「私は生涯この一振りより良い物に出会うことはないでしょう」
何故ならこの一振りには願いが込められている。私を守ってくれるようにでも、私の役に立つようにでもなく。私が最も欲していた願いが。
「それくらい、素晴らしい物です」
「ほんと?」
「はい」
「ほんとにほんと?」
「本当です」
私の答えを聞いた鈴音さんは盛大に泣いた。よっぽど緊張していたのか、私の言葉を聞いた途端彼女は足の力が抜けてしまい地面にへたりこんでしまった。そんな彼女を支えながら椅子に座らせ涙を流す彼女が泣き止むまで一緒にいた。
彼女は純粋に私の進む道を肯定してくれた。それがどうしようもなく嬉しかったのだ。
老師は僅かな失望を見せた。
ヘスティア様は悲しそうな顔をした。
リューさんは私を可哀想な人だと言った。
それでもいいと私は本心から思っていた。しかし、否定されることは辛い。理解して欲しいと思うことはいけないことじゃないだろう。
今までの私はただ斬っていただけだった。そういう生き方しか知らなかったから、私はただすべてを斬っていた。だが今は違う。たくさんの人と出会い、その生き様を垣間見た。ここには数多くの可能性が眠っていることを知った。
友と歩む道、愛に生きる道、力を求める道。そう、なにせここは数多の神が集い、人間たちの可能性を楽しむ世界で最も熱い街なのだから。
それでも、否、だからこそ。私はすべてを斬り裂く、その道を選ぶ。
私は所詮ただの人でしかない。すべてを極めるには脆弱すぎる存在だ。ならば、自分の持つ唯一つの才能を極めよう。その先にある何かを掴もう。
剣を持ち、剣を振り、剣に生きてきた。そんな自分の人生に意味があったのか、自分が積み上げた物がなんだったのか知りたい、知らなければならない。
そのために私は。
「すべてを斬り裂きます」
それは私がそれしか知らないからじゃない。他の道があると知っても私は自らの生き方を変えない。自らの意志で、自らの望みですべてを斬る。例えそれが誰かを悲しませようとも、傷つけようとも私は止まらない。
腰に差した刀から熱を感じた。それが広がり心が震え、腕が疼く。
私は斬りたい。
■■■■
私は走った。鈴音さんの家から飛び出してからずっと走った。高ぶる感情を抑えること無く、街中にいたにも関わらず身体は戦闘態勢に入っていた。上がったばかりの【ステイタス】と未来視を使い、人混みの中を人を縫うようにして走りダンジョンへと向かい、その状態を維持してただ下を目指して走っていた。
「ははは! ははははは!」
笑わずにはいられなかった。
今までどれほど粗末に剣を選んでいたのか理解させられた。私のために調節された刀の重さ、長さ、重心の位置は斬撃を更に鋭く、疾くした。武器としての出来も完璧と言っていいほどだったが、何よりもその刃には熱い想いが宿っていることが私の心を震わせた。炎で鉄を溶かし、槌でそれを打ったその時の熱が今も刃の中で脈打っているようだった。
その鼓動が私に斬れと言う、すべてを斬り裂けと願うのだ。そして、早く辿りつけと私を衝き動かす。
『ガゥ!』
下へ下へと走る私を邪魔するようにヘルハウンドが正面から私に向かって襲い掛かってきた。僅かに身体を横に逸らしながらすれ違いざまに両断。魔石に目を向けることなく私はそのまま走る。
ただ下を、より強い敵を、この武器を振るうに相応しい敵を求めて。
『ヴヴォオオオォ!!』
『キキィ!!』
『グルルッ!』
まるでダンジョンが私が先に行くのを阻止するかのように正面からモンスター達が現れる。壁や天井から産まれたり、曲がり角から私の気配でも察知していたのか走ってきたりと私が未来視を常時発動していなければ不意打ちになりかねない場面がずっと続いている。
しかし、この階層では足りないのだ。
攻撃という攻撃を未来視し最小の動きで避けながら一撃で敵を屠っていく。立ち止まる時間すら勿体無いと感じていた。
この中層にいるモンスターは全員斬ったことがある。だからもっと下へ、まだ見ぬ敵を斬るために私はひたすら走っている。
そして辿り着いた。17階層と18階層を繋ぐ最後の広間。私が18階層に興味がなく終ぞ足を踏み入れることのなかった空間だ。
そこはダンジョンの中だというのに静かだった。つい先程までモンスターと戦っていたというのにこの空間に入った途端モンスターがいなくなっていた。
奥行き200
心がざわざわと騒いで、刀を持つ腕がより一層熱を帯びて疼きだす。これから来るであろうその敵を、私は出現する前から感じ取っていた。ダンジョンという生物の鼓動、何かを憎みながら呪詛のように力強く脈打つ生命の根源。
その時、ダンジョンは確かに私へと敵意を向けていた。その理由は私には分からなかったが、それは今まで受けてきた殺気や敵意とはまったく違うものだった。質で言えばオッタルの漏らした僅かな敵意の方が上回っていた。
しかし、今感じている敵意は全方向から、まるで私を圧殺でもするかのように襲いかかってきた。それが、堪らなく心地よかった。
――ビキ
傷ひとつない滑らかだった壁に亀裂が入る。
――バキッ
その亀裂は徐々に広がり、壁の中からより濃厚な敵意が漏れ出してくる。来る、何かは分からないが、私が今まで見たことも戦ったこともないような何かが来る。
――ズゥン
大きな音と共に壁の向こうから一本の灰褐色の長大な腕が突き出される。それに伴って壁だった岩が床へと落下し土煙が立ち込める。私は、ただその光景を見ていた。
続いてもう一本腕が突き出され、両腕を使い壁に大きな穴を開けた。そこからそれの頭が出てきた。まるで人間のような頭に長い髪。それは巨人だった。
壁から産まれた巨人はそのまま下へと落下し、その巨大な足で地面を踏みしめた。ただ着地しただけで周りに爆風の如き風が吹き荒れ土煙は私へと押し寄せ、そしてさらに後方へと吹き飛ばされた。
晴れた視界の先に私はその巨人を見据えた。体躯は7Mを越える、今まで出会った中でも最大のモンスターだ。その身体は人間とは比べ物にならないほど大きく、太く、頑強に見えた。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!』
ビリビリと空間を震わせるほどの咆哮に晒されながらも私は笑っていた。笑うしかなかった。心が歓喜で満たされていた。背中に刻まれた【ステイタス】が一瞬燃えるような熱さを帯び、身体の奥底から力が湧いた。
「相手にとって」
雄叫びを上げた巨人は私を見下ろした。その目には確かな敵意が宿っていた。私を殺すためにダンジョンが産み落とした一匹の怪物だ。ただ冒険者がいたから倒すではなく、目の前のモンスターは私を明確な敵として見ていた。
「不足なしッ!!」
『オオオオオオオオオオォォォォッ!!!』
巨人は腕を振り下ろし、私は地を蹴って走りだした。
閲覧ありがとうございます。
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ちょっと変更した所と言えば未来予想を未来視に変えた所くらいだと思います。
ゴライアス戦とかやっちゃった感がある。
ちなみに時期的な問題はチェックしたので原作で出てくる所でもちゃんと出てこれます。