Blood&Guilty   作:メラニン

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お久しぶりです!お待たせして申し訳ございません!


色々とこの一か月は忙しく・・・

定期更新はムズそうですが、次からは(なるべく)長い事間隔が空かないように頑張ります!


では、どうぞ!


罪の王冠編Ⅴ

一旦は東條に背中を押され転倒した古城と集であったが、東條が獣人に噛み砕かれる寸前で2人同時に助けに入った。集は寒川谷尋のヴォイドであるハサミを右手に持ち一閃し、古城は僅かに電撃を纏った状態で同時に2人の攻撃が当たった。

 

 

獣人を退けた2人は東條に駆け寄り、呼吸している事を確認する。2人は東條の呼吸を確認すると、目を見合わせて安堵のため息を吐いた。

 

 

「ふぅ………ひとまず無事だな。意識を失っているだけみたいだ。一応止血し直しとくか」

 

 

古城は一旦、東條の腕に巻かれた包帯代わりのパーカーを外して再び巻き直す。

 

 

 

「うん、一応出血はマシになったね」

 

 

「ああ、一旦はこれでいいか。…………っしょっと。さすがに重いな……ん?」

 

 

古城は東條を背負って立ち上がる。古城が重いと感じるのも当たり前だろう。彼は今、先ほど東條を助けた時の力を使ってはいないのだ。つまり現状彼の身体能力は世間一般の普通の男子高校生と変わらない。そして、歩を進め始めようとしたが、何かが落ちる音がして足下を見る。すると、見覚えのない黒いUSBメモリが落ちていた。それを両手の空いていない古城の代わりに集が拾い上げるが、中身の確認は今はできる訳も無いし、している場合でも無い。今は一刻も早く怪我人を運ばなければならないのだから。そう思い直して集はポケットにしまう。

 

「まぁ、このUSBは後で確認するとして。それよりも古城、さっきのって……」

 

 

「あー…………まぁ、見られたんなら隠しても意味無いか。だけど、黙っててくれよ?特に凪沙にはな」

 

 

「もちろん他言するつもりは無いけど……」

 

 

「悪いな。ま、見て分かったと思うが、俺も普通の人間じゃ無いんだよ。ってか、人間じゃ無い」

 

 

「………は?」

 

 

集は古城の最後の発言に対して首を傾げる。どこから見ても人間の容姿をした彼が自らを人間では無いというのだ。

 

 

「俺は元人間なんだ。で、実は今は吸血鬼なんだよ」

 

 

「え、ええぇぇぇ!?だ、だって、えと……そうだ!魔族登録証!あの腕輪をしてないじゃないか!?」

 

 

古城は若干苦笑いをしながら視線を逸らし、言葉を発した。

 

 

「あー、はっはっは………説明すると長くなるからざっくり説明するとだな、別に生れながら吸血鬼だった訳じゃないんだ。今年の春くらいにこの体になっちまったんだ。まぁ、そんな訳で俺が魔族になったってのは周りには隠してるんだよ。だからこそ、特に凪沙には黙ってて欲しいんだ」

 

 

「………何で特に凪沙さん?」

 

 

「あいつは極度の魔族恐怖症でな。さっき、あいつが取り乱しただろ?」

 

 

「そうか。あれはそういう理由でああなったのか」

 

 

「ま、そういう事だ。だからこそ、俺は吸血鬼になったって事を悟られる訳にはいかないんだ」

 

 

「………その事を知ってるのは?」

 

 

「さっき黒いゴスロリ着た小っこいのが来ただろう?あの人は南宮那月(みなみや なつき)。表向きは教師をやっていて、裏の顔は攻魔官(こうまかん)………っと、攻魔官っていうのは魔族を取り締まる警察みたいなもんだと思ってくれりゃいい。それ以外にはほとんど知られていないはずだ」

 

 

集はしばらく考え込んだ。これで、さきほど矢瀬が言った『監視』の必要性が分かったのだ。通常この島では魔族であれば魔族登録証をしているのが普通なはずだ。しかし、この少年はそれをしていない。ここ3日でこの古城という少年がどういう少年なのかは集は段々とだが分かってきたつもりだ。だから、この少年がその吸血鬼の力を使って何か行動を起こすとは考えにくい。しかし、人外の力を持っているならば念には念をという事なのだろうと納得する。『監視』というのはつまりはそういう事だ。

 

しかし、矢瀬は他にも『制御』、『協力』と言ってきた。『協力』というのはまだ分かる。実際に今も行動を共にし、この状況を脱しようとしているのだから。だが、いまいちピンと来ないのは『制御』の方だ。先ほど古城が見せた身体能力は確かに一般人からすれば脅威だ。だが、集には今のところ古城が力を制御し切れていないとは思えなかった。集がこう考えたのは、古城の中に潜む存在を知らないため仕方がないのだが。

 

 

「まぁ、分かったよ。とにかくそれよりも今は東條さんを少しでも早く運ぼう。出血は今は一応治ってるけど、早めに治療した方がいい」

 

 

「ああ、そうだな――っと、こういう時に限ってコレだ」

 

 

古城は何かに気付いたように足を止めて、側にあった建物の残骸と思しき瓦礫に身を隠す。集もそれに習って同様に身を隠して、顔を少し覗かせるようにして遠方を確認する。

 

 

「………どれだけ居るのかな?」

 

 

「…………俺に聞くなよ。ひぃ、ふぅ、みぃ……あーヤメだ。気が滅入って眠くなりそうだ」

 

 

古城がウンザリする様に息を吐く。それもそうだろう。彼らの先には正気を保っては居ないであろう獣人が群れとなって徘徊しているのだ。しかし、彼らの目的は獣人の群れの向こうに存在する一本道だ。つまり必然的にあの獣人の群れを何とかしない限り、安全圏へ逃れる事は出来ないのだ。

 

 

「どうにかして、なるべく戦わずに抜けられれば良いんだけど」

 

 

「東條さんも居るから確かにな。そういや、桜満のヴォイド……だっけか?ヴォイドの中に使えそうなのは無えのかよ?」

 

 

「そんなに都合の良いもの無いよ。本当は空でも飛べれば良いけど、今は無理だし………そういう古城はどうなの?吸血鬼なんだから飛べないの?」

 

 

「ンなモン無理だ!吸血鬼って言ってもコウモリじゃないんだぞ」

 

 

「えっと、じゃあ眷獣って言うんだっけ?眷獣に使えそうなのは?」

 

 

集が口にした眷獣とは吸血鬼が内に飼う力の塊である獣の事だ。吸血鬼の個体により宿す眷獣は様々だが、強大な力を持っているというのには変わり無い。集自信は眷獣については矢瀬から説明は受けていたのだ。

 

 

「残念ながら、俺の言う事を素直に聞く眷獣はゼロだ」

 

 

「…………じゃあ、古城は常人より運動能力がズバ抜けた一般人って認識でいい?」

 

 

「何か失礼な物言いな気もするが、そういう事なんだろうな」

 

 

「うっ……」

 

 

古城の背に居る東條が呻き声を漏らす。いくら止血をしたとしても、怪我人であることには変わり無いのだ。早めに処置を施さなければ手遅れになると、集も古城も思い直した。

 

 

「はぁ………しょうがねえ。ちっと荒っぽいが、強行突破しか無いみてえだな」

 

 

「そうだね。とにかくあの一本道を抜け無いと。僕がヴォイドの力と身体能力で先行するから、古城はその後ろを付いて来て」

 

 

「ああ、分かった」

 

 

 

2人はこれから行う事を示し合わせると、通りへと姿を現した。その瞬間に集はハサミを具現化し、瞳が赤く変わる。古城も自分の口内を軽く噛み切り、血を飲む事で吸血鬼特有の身体能力が発揮され、集と同じように瞳が赤くなる。

 

 

「行くよ!」

 

 

「おう!」

 

 

集の合図と共に2人は同時に走り出した。早速気付いた獣人が2人目掛けて突っ込んできた。集はまずその1人をすれ違いざまに後頭部に向かってハサミの柄で一撃を叩き込んだ。常人の力ならば、その程度では獣人を大人しくさせるのは不可能であろうが、身体能力の上がった集の一撃は獣人の意識を刈り取るのには十分過ぎる威力だった。『サルト』で運動性が上がっているとはいえ、打たれ強さまで上がっている訳では無いようだと、集は確信し2人目、3人目と襲い来る獣人の意識を刈り取りながら、駆け抜けていく。

 

 

「へぇ、スゲえな。コレなら早目に抜けられそうだ。頼むぞ、桜満」

 

 

「簡単に言ってくれるよ。これでもそれなりには疲れるんだけど」

 

 

古城は苦笑いを溢しつつも、集の能力には舌を巻いた。人間である彼が魔族の意識を刈り取っていくのだから当然だ。少なくとも今の自分には難しいだろうと考えた故にそう感じる。古城の場合であれば意識を刈り取るだけでは済まない可能性があるのだから。

 

 

そして、ようやく集と古城は目的の一本道の橋の入り口に辿り着く。集の奮戦もあって、全員がほぼ無傷で済んだ。集のみ、少し獣人の爪が掠ったりして切り傷を負ってはいるが、それも軽度のものだ。

 

 

「古城は東條さんを背負って先に行って!僕が殿をつとめるから!」

 

 

「ああ、分かった!もう少しの辛抱だぞ、東條さん」

 

 

「うぅ……」

 

 

古城の励ましに呻き声で東條も答える。出血自体は多少治まっているが、決して止まった訳ではないため、予断の許さない状況である事には変わりがない。それを集も古城も理解しているため、橋の上を陸上選手顔負けの速度で走る。当然古城は背中にいる東條に負担がかからない様に細心の注意を払いつつ、集は追ってくる獣人を殿として撃退しつつ進む。そして、100mほどの橋はすぐに渡りきった。

追ってくる獣人もゼロになり、橋を渡りきったところで集と古城は大きく溜息を吐いて、腰を下ろした。

 

 

 

「ぜぇ、ぜぇ………は、はははは」

 

 

「はぁ、はぁ………ふ…はははは」

 

 

座り込んだ少年2人は顔を見合わせた後、声を上げて笑った。普通の高校生であればこんな経験はできないだろう。それに、大の大人を抱えてあの状況を切り抜けたのだ。その達成感とも言える感覚を2人は共有したのだ。お互いの健闘を讃える意味でも溢れた笑いだった。

 

 

「はぁ〜……意外とやろうと思えばできるモンだなぁ」

 

 

「はは、僕もここまでほぼ無傷で来れるとは思わなかったよ。それよりも、東條さんは平気?」

 

 

「ああ、今のところしっかり息はある。けど、早く医者に見せねえと」

 

 

古城はそう言うとスクッと立ち上がる。集もそれに習い、立ち上がり東條の顔を覗き込む。それと同時に腕の出血も確認し、無事を確認する。無事とは言い難いが、顔色は先ほどよりも良い。出血が治まっているおかげだろう。

 

 

「ここから安全な地域まではどのくらいなの?」

 

 

「そうだなー、取り敢えず島の中心を目指すにしても、矢瀬が居るであろう次の駅まで行けば何とかなるだろ。こっから大体1kmとちょいだな」

 

 

「急げば10分かからな――古城、下がって!!」

 

 

二人が進み始めて、ビルの間の道を進み始めた時だった。集は咄嗟に古城を突き飛ばし、自身も後方へ跳んだ。その瞬間、集達のいた場所には氷麗が降り注いだ。氷麗(つらら)の雨が止んだ後、上空を見ると人の姿を視認できた。いや、姿形が人の様相なだけで人ではない。それはこの世界に来たばかりの集にも分かる事だった。なぜなら――

 

 

「あれが……眷獣」

 

 

そう、上空にいる存在は一目で人外の存在である吸血鬼であると分かるのだ。その証である意思持つ魔力の塊――眷獣を従えているのだから。

 

 

「ちっ、勘のいいガキだな。今のは完璧不意打ちだったんだけどなあ゛!?」

 

 

ホスト風なスーツに金髪を逆立てた空中の存在は不機嫌そうに言う。空中に浮いている訳ではなく、ビルの屋上から氷柱を伸ばし、それに乗っているようだ。そして主人の感情が伝播してか、彼の傍に座す眷獣も牙を剥く。眷獣は見た目はヒグマの容姿に、体のあちこちから青い魔力が噴出し、周囲の大気を凍らせていた。集は初めて見た眷獣の存在に鳥肌が立った。

 

 

「……何者だ、テメエ!?何で、俺たちを狙う!」

 

 

古城は牙を剥いて怒りの視線を向ける。今し方下手をすれば殺されていた――いや、古城に関しては死にはしないだろうが、彼の背中にいる怪我人は別だろう。古城の怒りも、もっぱらそっちにあった。

 

 

「お前その目……はっ、同族かよ、悪い悪い。その背中に居る奴を庇うもんだから特区警備隊(アイランド・ガード)の連中のお仲間と思っちまった。ま、そっちの武器?を持った方は違うみたいだがな」

 

 

「そんな事はどうだっていいんだよ。今質問してるのは俺だぞ?」

 

 

「ちっ、礼儀の知らねえガキだな………まぁいい、単刀直入に聞こう。お前らそいつの荷物にUSBメモリが入ってなかったか?」

 

 

集と古城はなるべくバレない様に最低限の動きで目線だけ合わせてアイコンタクトを取る。そう、おそらくこの吸血鬼が言っているのは古城が東條を背負ったときに落ちた物だ。しかし、特区警備隊(アイランド・ガード)が落とした物を魔族が欲しがるという事は、この吸血鬼は恐らくロクな吸血鬼ではないのだと、集も古城も感じ取ったのだ。そんな相手に素直に真実を話す訳にはいかない。

 

 

「さぁな?俺たちは負傷者を運んでいるだけだぜ?アッチの地獄みたいな暴走する獣人だらけの場所から移動してきたんだ。そんなモンに意識を向けてる暇なんか無かった」

 

 

「おいおい、年長者に嘘はダメだろ。そんなんで騙せると思ったか?」

 

 

「くっ……」

 

 

「古城っ!!」

 

 

古城は一瞬悔しそうな表情を浮かべた瞬間、集は古城の名前を呼んだ。集は気付いたのだ。この吸血鬼の目的を。しかし、既にそれは遅かった。

 

 

「はははははっ!おいおい、ブラフってのは一回張ったら、張り続けなきゃ意味ないだろう?その辺はやっぱガキか」

 

 

「え……あっ!」

 

 

「『あっ!』じゃないよ、古城。はぁ………古城って詐欺に引っ掛かるタイプだよね。しかも、その後の反応も、さ……」

 

 

「…………すまん」

 

 

古城はバツが悪そうに顰めっ面をし、分かっていた集はため息を吐いた。

 

 

「はははは……くっくくく………い、いや、悪い悪い。あまりに間抜け過ぎて笑い過ぎた……ふぅ〜、で?話を本題に戻そう。メモリは何処にある?」

 

 

これ以上古城に喋らせたらどこからボロが出るか分からないと思った集は古城に代わって慎重に言葉を選んで話し始める。

 

 

「……確かに僕らはそのメモリが何処に在るのか知っています。けど、いきなり襲撃してきた貴方を簡単に信用はできません。あなたの素性を聞かせてもらっても?」

 

 

「はっ、んな事する必要なんざ無えよ。素性を答えたところで協力するとは思えねえしな。それに、仮にお前らが持ってたとしても、特区警備隊(アイランド・ガード)を背負ってるお前らが俺に協力するとは思えねえしな。やっぱ、コッチの方が手っ取り早いか。やれ、霜皇(そうおう)!」

 

 

「避けろ、古城!」

 

 

再び上空からの氷麗の雨を集と古城は跳ぶようにして避ける。だが、古城の方は逃げる速度がやはり遅かった。それも仕方がないだろう。背中には大の大人が居るのだから。それを察して集は古城の前に躍り出る!

 

 

「はあぁぁぁ!」

 

 

集は降り注ぐ氷麗をハサミで斬り払う。一撃二撃三撃目そこからもさらに次々降り注ぐ氷麗の雨を払うが、当然全て防げるわけではない。防御が行き届きにくい足下に少しずつだが被弾し始める。多少掠ったために、集の足からは鮮血が漏れ出す。

 

 

「ぐっ」

 

 

「はぁーはっはっは!おらおら、どうした!?防戦一方かよっ!」

 

 

「……仕方がない。出来るか分からないけど!」

 

 

「桜満!?」

 

 

集はハサミを持った右手とは反対の左手を右腕にかざし、意識を集中する。コツは暁深森に探ってもらった時に掴んでいたのだ。あとは同じ要領で探るだけだ。深森は時間が解決すると言った。そして、今は整理している状態だと。ならば、少しでも時間が経った今なら新しいヴォイドが発現できるのでは、と集は考えたのだ。当然コレは賭けだ。意識を集中している間は若干なりとも防御が手薄になる。

そして、その隙を相手が見逃す筈が無かった。

 

 

「はっ!諦めちまったのかぁ?なら、遠慮はしねえぜっ!霜皇(そうおう)!」

 

 

『グオォォォ!』

 

 

「ぐ………間に合――」

 

 

「桜満っ!!」

 

 

咆哮を上げて、ヒグマの姿をした眷獣は魔力をより一層滾らせ、氷麗の物量を増やし攻撃を集中する。そして、轟音を上げて氷麗が集中し、吸血鬼の居る方からは集たちの姿が確認できないほどの氷麗が殺到し、ついに集たちの居た場所は氷麗を形作っていた氷で覆われた。

 

 

 

それを見た吸血鬼は満足そうに両手を広げて声を上げて笑った。

 

 

「はぁーはははっ!ガキ相手にやり過ぎちまったか?さて、メモリを探すか。霜皇、降りるぞ」

 

 

吸血鬼の足元にはビルの壁伝いに氷柱が飛び出し、階段のようになる。そこを一歩ずつ吸血鬼は降りていく。これだけの物量攻撃を行ったのだ。集の持っていた小さい武器では防ぎ切れないのは火を見るよりも明らかだった。そして地面に辿り着き、巨大な氷塊状態になった氷麗の前に立つ。

 

 

「さてと、霜皇(そうおう)。こいつを退か――」

 

 

吸血鬼が言い切るより前に、目の前の氷塊が音を立てて崩れ去り、次の瞬間には少年の拳が吸血鬼の体にめりこんでいた。

 

 

「やっと、降りて来やがったな!!」

 

 

「ぐ……くあっ!!?」

 

 

そう、飛び出して来たのは吸血鬼が殺したと思った暁古城だった!そして飛び出して急襲を仕掛け、吸血鬼をビルの壁まで吹き飛ばす!そして、古城もこれで終わらない。吸血鬼の厄介さは、眷獣もさることながら、その化け物じみた再生能力に由来する耐久力の高さだ。それを自身も吸血鬼である古城は把握しているからこそ、一撃で終わらせない!

 

 

「まだだあっ!!」

 

 

古城は僅かばかりの魔力を血と共に纏わせた拳でさらに追撃を行う。顔面、鳩尾、ボディブロー、ライト、レフト、アッパーと一発一発が当たるたびにゴッと鈍い音を立てながら連撃を繰り出す。だが、吸血鬼の方もやられてばかりではない。

 

 

「……っ……ぃ…つまでも……調子に乗んなあぁぁぁ!!」

 

 

「うおっ!………ちっ、やっぱ厄介だな、吸血鬼ってのは」

 

 

吸血鬼の方は眷獣を操って、古城の足下から氷柱を出現させて距離を取った。古城もそれを避けるようにして後退する。だが、今ので仕留めきれなかったのを古城は苦虫を噛み潰したような顔をして悔しがる。後退した古城の隣に集が立つ。

 

 

「……古城がそれを言うの?古城だって吸血鬼なんでしょ?」

 

 

「いや、まあそうなんだが……ってか、桜満、それ何だ?」

 

 

古城は集の持っていた手毬の様な球体を指差して疑問をぶつける。

 

 

「これ?これは――」

 

 

集が手毬を少しいじると、氷塊を崩して6枚の花弁の様なものが集の周りに集まり、右腕に一纏まりになって、まるでバックラーの様な形を取った。

 

 

「『盾』だよ。この球体で操作して防御するんだ。さっきの飛んでくる氷麗もこれで防いだんだ。正直賭けに近かったけどね」

 

 

「そっか。じゃあ、桜満が今度は東條さんのガードを頼む。さて、一応アンタの目的を聞いておきたいんだが………何であのUSBメモリを狙う?」

 

 

「馬鹿か、お前は?んなもん言われて教える奴が居るのかよ?」

 

 

古城にやられた腹部を抑えつつ立ち上がった吸血鬼は古城の事を睨みながら悪態を突くように返す。

 

 

「………古城、きっとそれはこの人が『サルト』の流通に関わっているからだよ」

 

 

集の指摘に吸血鬼の表情がピクリと動く。集もそれを見逃さなかった。そして言葉を続ける。

 

 

「中身を確認したわけじゃ無いけど、あの増設人工島(サブフロート)からは一般人全員の避難が完了していた。魔族も含めてね。だからあそこに居るのは僕や古城みたいに偶然取り残された人か特区警備隊(アイランド・ガード)の人たちだけだ。

そして、この2種類の人たちが取る行動はそれぞれ決まっている筈なんだ。普通は前者なら増設人工島(サブフロート)からの避難。そして後者であれば暴徒と化した獣人の鎮圧のどちらかの筈だ。けど、その人の行動はそのどちらでもない。USBメモリを探すっていう、この状況だと不自然な行動だ。つまり、その人は一般人でも、特区警備隊(アイランド・ガード)でもない。

それ以外であのに居たのは『サルト』を使用した魔族か、流通の関係者だ。多分その人がメモリを欲しがるのも、それが関係してるんだと思う」

 

 

「なるほどな。じゃあ、お前があの惨状を引き起こした張本人って訳だ!」

 

 

古城は凶暴そうに牙を剥いて敵意を露わにする。一般人を巻き込み、人死にを出しているこの吸血鬼を古城が許せる訳がなかった。

 

 

「………はっ、本当に勘のいいガキだな。確かに俺は『サルト』の流通を取り仕切っていた1人だ。だがなぁ、お前の推理も一つ間違いがある。お前の言うそのメモリと『サルト』は関係無えよ」

 

 

「それは、中身を見れば分かることです」

 

 

「ちっ、っとーに厄介なガキだな!」

 

 

『グルル……』

 

 

吸血鬼の眷獣も集の事は気に入らないとばかりに、吸血鬼同様に牙を剥き威嚇するように低く唸る。

 

 

「おい、お前の相手は俺だ!」

 

 

「だったら、お前から殺ってやるよ!」

 

 

「やってみろ!こっから先は第四真相(オレ)戦争(ケンカ)だ!」

 

 

そして、魔力を纏った古城は吸血鬼を相手に突っ込んだ。

 

 

 

 




はーい、ってな感じで中途半端なところで切ってしまいました。スンマセン・・・

出てきたモb--吸血鬼の眷獣は<そうおう>と読みます。原作で出てきたのが灼帝であいたからね。それの流れを汲んだといいますか・・・

そして出てきた新たなヴォイドは供奉院亞里沙のヴォイドである『盾』です。また次回も出します。


では、次回またお会いしましょう!

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