Blood&Guilty   作:メラニン

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お久しぶりです!いや、ホントに・・・


ここ3か月ほどは冗談抜きで忙しく・・・


さてさて、今回は前回のラ・フォリアからの電話の後からスタートです。スタートなんですが・・・・・・


ただ一言。な、ん、で、こ、う、な、っ、た。





簡潔に説明すると、R-15とR-18の境界に立つといいますか・・・


まぁ、多分大丈夫だと思いますが。表現ちょいちょい暈してるし。


苦手な方はバックをお願いします!



では、どうぞ!




蒼き魔女の迷宮編IV

 

 

アイランド・サウスの暁家の自宅では、電話を一方的に切られた古城が顰めっ面をしてリビングへ入ってくる。顰めっ面の原因は先程急に電話を切ったラ・フォリアであり、また何かに巻き込まれている風な事を示唆していた事から、何かモヤモヤしたものを抱えていた。

 

 

だが、本人は大丈夫と言っていたし、古城は彼女から詳しい場所を聞いていないので、手助けすることは今のところ不可能であろう。それにもし、自分が動くとなれば自らの監視役である少女からまた小言を言われそうである。

 

 

「あ、古城。電話終わった?」

 

 

「ん?まぁな。あれ?他の連中は?」

 

 

「凪沙さんの部屋に入っていったよ。ドレスの衣装はライブで使う様にして、波朧院フェスタを回る様の仮装の衣装合わせをやるってさ」

 

 

そう言って集は凪沙の部屋を指差す。中からはキャイキャイと(かしま)しい声音が響いている。女3人寄れば――という諺がある様に、それが3人以上であれば余計に加速するということだろう。そんな音をBGMに、古城は頬杖をついてお茶請けとして出されている煎餅をバリバリと摘む。

 

 

優麻が土産として持参したものであり、それを凪沙が早速皿に取って出したというわけだ。

 

 

「あぁ、そうだった。ラ・フォリアから伝言だ。あのライブの仮装な、着なきゃダメだってよ」

 

 

古城の言葉に、集は頭を抱えて大きく長い溜息を吐く。

 

 

「スポンサーの相手……間違えたなぁ……」

 

 

「最初の内は良かったんだけどなぁ……」

 

 

そう、現在彼らのスポンサーとなっているのは、アルディギア王国の第一王女なのだ。バンド結成の事をどこからか知ったラ・フォリアが古城経由でスポンサーを名乗り出たのだ。アルディギアとの友好を示す事も出来るため、是非ともと首を突っ込んできたのだ。

 

 

その甲斐あってか、彼らの楽器類は全てアルディギアからの供与された品である。その費用は一国の第一王女のポケットマネーから出資されており、総額からしても1%にも満たない額だろう。国家予算などに関わっているラ・フォリアからすれば、はした金、というわけである。しかし学生である彼らにとっては高額である。それを見越してスポンサーを名乗り出たのだろう。また、これはアルディギアが第四真祖と『ジョーカー』と独自のパイプを持っているとの牽制にもなる。つまり、出資者であるラ・フォリアからしたら、今回の話はかなり利率の良い契約なのだ。

 

 

「………はぁ、期間中はアレでも良いけど、さすがにライブでは勘弁してもらおう」

 

 

「にしたって、着るもんどうすんだ?」

 

 

「………まぁ、何とかするよ」

 

 

「何とかって……」

 

 

「仕方ないだろ?さすがに1人制服って訳にはいかないし」

 

 

「あー………やっぱダメか?」

 

 

「そりゃ、女性陣があんなドレス姿な訳だし」

 

 

「だよなぁー……」

 

 

男性陣2名の溜息が漏れる。今回バンドに参加する少女たちは、校内でも人気が高い美少女なのだ。それが(めか)し込んで参加するとなれば、共に立つ側としては否応なく気を使う。2人はその後も何を着るか相談をし、1つの決着を得て、各人の部屋に戻る事になった。女性陣の衣装合わせはその後も小一時間ほど続いたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイランド・サウス703号室は、立地としては中々に良い物件と言える。最寄駅までは5分程であるし、ベランダも南向きである事から、洗濯物を干すにも、この島特有の高温も相まって然程時間を掛けず乾く。

 

 

ただ1つ、お隣が世界最強の吸血鬼が住むという、見方によっては途轍もないデンジャラスゾーンでもあるのだが。だがそこは、そこに住む住人も所謂『裏側』では勇名を轟かせつつある『罪の王』である。ある意味帳尻が取れているのかもしれない。

 

 

また、人工島管理公社から最新の電化製品ごと贈与されたその部屋は、約3ヶ月という期間でだいぶ生活感が出てきた。家とは人がいれば、住人と同じ速度で時間が経過して行くものである。

 

 

因みに家での2人の役割分担はこうである。集が洗濯、いのりが掃除、そして炊事は2人で一緒にという事になっている。最初は(もっぱ)ら集だけだったのだが、いのりが習い始めたいと言うようになったのだ。最初はピーラーを使った皮むきや、簡単な食材の下ごしらえ。最近では、ようやく実際に焼いたり煮たりといった調理も身に付けてきた。

 

 

初めのうちは、集が過保護なほど面倒を見ていたが、上記の作業に関してはだいぶ様になってきたようである。次のステップは、揚げる調理法と、味付けである。前者は未だに集が、心配だという理由でやらせてもらっていない。後者は簡単なものに関しては、共にしている。ただ一つ。包丁を用いた作業だけはさせないようにと彼は心に決めている様で、これだけに関しては、いのりは包丁すら握ったことがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんな夕食の日常も過ぎ去り、入浴という事となった。今日は、いのりが先に入る事になっている。集はリビングで那月が出した課題をこなしつつ、ふと部屋の隅に鎮座している白い筐体に注視する。

 

 

コンセントに接続されたコンソールに背部をくっ付けて静かにしているそれは、いつもの様な騒がしさはない。昨日メンテナンスから返却された『ひゅーねるMk.28+』である。深森曰く、主な機能の変更はしていないが、2人の生活状況の変化に応じてAIを書き換えたらしいのだ。

 

 

集といのりの2人は、定期的に経口によるウイルスの授受――もっと簡単に言うならばキスによるウイルスの受け渡しを行わねばならず、以前のままのプログラムだと、毎回集が攻撃を受ける羽目になると言う事で、変更したのだ。ひゅーねるが行動するのは2人が新たに身に付けるよう言われた腕輪から、異常な生体情報、もしくは通常値とは異なるゲノムレゾナンスが検知された場合などに自動で起動する。あとは、集たちが任意に何か任せたいことがあれば、それを伝えて家事の手伝いもしてくれる。

 

 

たとえば今日も留守の間の掃除を依頼しており、それをしっかりやり終えた上で、現在のコンソールに鎮座している。大変優秀な働きであり、近々取得したデータを元に一般用として量産化計画も進んでいるらしい。

 

 

そんな時であった。洗面所の方から突如として結晶化特有の、結晶同士が擦れる音と、いのりの小さな悲鳴が響いたのは――

 

 

「いのり!!」

 

 

集はまさか自宅で結晶化が必要になるという事態を想定しておらず、自身の耳が拾ったその音と、悲鳴を前に若干冷静さを欠いていた。扉を開ければ、そこには浴室の入り口の淵を囲うようにして、結晶化が起こっており、いのりは突如として発生したそれの前に唖然としているといった形である。

 

 

「あ……集…」

 

 

「いのり、無事!?何が……」

 

 

そこまで言って、集の視線は若干下へと下がる。いのりは何とか手近のタオルで体前面を覆っているが、手に取ったタオルではサイズ不足であり、若干隠しきれていない。集の視線はそちらへと移動してしまったのだ。

 

 

それに気付いた、いのりが足りない部分は手で覆い隠そうとし、顔を赤く染め上げる。我に返った集は、浴室入り口の方へと近付いて、結晶に触れて異常がないかどうかを確認する。一通り確認し終えた上で、集は視線を逸らしつつ、いのりに問いかける。

 

 

「え、えっと…………な、何があったの?」

 

 

「………出ようとして、入り口に触れたら……」

 

 

「そ………そっか……い、一応、今確認した感じだと、もう何もないみたいなんだけど……」

 

 

「……………ん」

 

 

いのりは小さく頷いて、恐らく羞恥心からか身体を僅かに動かして、居心地が悪そうにしている。相変わらず顔は赤いままであり、耳まで赤くなり始めた。集は未だに顔を必死で逸らして、いのりのほぼ裸体の姿を視界に入れないように必死である。

 

 

「こ、こ、これだと浴室の扉が閉まらないね……」

 

 

「……ん」

 

 

再び、いのりは頷くだけで先程と変わった様子はない。強いて言うならば、全身もほんのりと薄い桃色のように色づき始めた事だろうか?普段は真っ白な傷1つ見当たらない肌に、全体的に赤みが差す。しかし、元の肌の色から然程色濃く赤くなるのではなく、本当に僅かに赤――桃色に近い様な赤みの差し方である。

 

 

タオルをぎゅう、と掴む手や腕、さらにはタオルの不足分を補うために下へと伸びたもう片方。その途中にある腰部や、そのまま理想的な曲線を描いて伸びる足。と、上から少しづつ、少しづつ……上から絵の具を伝せたように、いのりの肌が色を変えていく。

 

 

そして、風呂上がりだからだろう。まだ乾ききっていない髪や身体のそれらの水分を吸ったタオルがピッチリと、いのりの身体に張り付いてしまう。それと合わさって、先ほどのように全身の色が若干変化している。その様にしっかりと、色が変わっていく様をマジマジと見るのは集にとって初めての経験であった。

 

 

以前、トーチカでは薄暗い中での行為ゆえに、いのりの顔以外見えていなかった。だが、今は明るい人工の光にしっかりと照らされて、隠す術がない。

 

 

意中の相手のそういった様子から目を逸らし切るというのは、男にとっては中々に難しい試練である。2人の間に沈黙が流れる。実質的には数秒であっただろう。だが、本人たちにとっては異様に長く感じられていた。集は、いのりのその姿を捉え、いのりは自らほぼ裸体となった姿を晒す。

 

 

互いに気恥ずかしさと気まずさを覚えつつ、先に行動を起こしたのは集であった。向き合っていた状態から、さっと右向け右をして体の方向を変える。

 

 

「ゆ、床とかは後で拭くから気にしなくていいから!じゃ、じゃあ、僕は――」

 

 

集は出て行こうとしたが、いのりは伸ばした手で集の服裾を掴み、集を制止させる。然程強くない力であるのに、集は制止した。最後の砦と言わんばかりに、いのりの手には前面を覆い隠すタオルが握られているが、腕を伸ばした事で隠れていた筈の部分が露わになり、いのりもそれを分かってか、尚の事顔を俯かせて表情を悟られない様にひた隠す。

 

 

「…………」

 

 

いのりは何も喋らない。言葉にしたくとも、出てこないのだろう。それを本人はむず痒く思いつつも、集にとっては効果覿面だった様である。集も一応は男であり、年齢相応の性欲は持っている。ただ、普段は何も無いが如く、その存在を隠蔽しているのだ。

 

 

が、今回に限ってはそれは難しいらしい。

 

 

「――あっ」

 

 

いのりは突如自分の身体にはたらいた力に驚いて、その不意打ちについ声が漏れる。その直後、感じたのは、自らをガッチリと締め付ける万力だった。当然、そんな工具ではなく、その正体はいのりの腰と背中に回された集の腕である。

 

 

集の身体のある方へと、強制的に導かれされるがまま、そのまま抱き締められる。その時、つい緩んだ手から抜け落ちたタオルが静かに床上に落ちて、いのりは一糸纏わぬ姿で、集に抱き締められる形になった。

 

 

「…んっ…………しゅ…ぅ…………いたっ…」

 

 

予想外に強かった力に、いのりは声を上げるが集の耳には届いていないのか、腰に回された手にさらに力が加わる。腕力にものを言わせて形が変わるまで、密着させた胸部が何かを感じ取る。過敏になったそこから感じたのは、大きく拍動する集の心音である。それが、自らのものと重なって、小うるさい音楽の様になる。

 

 

「集、まだ濡れて――んんっ!!?」

 

 

再び不意打ちの様に首筋に走った感覚に、いのりは悲鳴を上げる。集の唇が首筋をゆっくりと這ったのだ。敏感になった場所に与えられた不意打ちに、いのりは余計身体を硬直させて身を小さくする。さらに、互いに乱れた呼吸がそれぞれ首筋と耳元に当たる。集は耳元に当たる吐息と微かな矯声に、脳髄が揺さぶられる様に感じ、全身に力が入る。

 

 

いのりの濡れた髪と耳の間に顔を埋める様にして、いのりの耳をなぞる様に呼吸と唇を這わせる。いのりは、いつの間にか集のシャツを掴んでおり、その手に力が入り目をギュッとキツく閉じる。

 

 

「……いのり」

 

 

「…ぁっ………………だめ……集。…………わた…し…………ふ…っ!!?っぅ!!」

 

 

自分の横にあった筈の集の顔が、いつの間にか目の前に来たのを、いのりは確認することができなかった。それは、先ほどから目をキツく閉じているのが原因である。それ故、再びあびせられた不意打ちの様な次の攻勢を許してしまった。

 

 

いのりは、自らの口内に自分のものでは無い存在が入って来たのを感じ、そこへ来てようやく驚いて目を大きく開けた。だが、近過ぎるゆえに全容は見えない。さらに、集の舌が無理矢理、いのりの閉じた唇に割って入った。集のそれは、驚いて引っ込めていた、いのりの舌の先端に触れて、そこから表面をなぞるようにして、ゆっくりと動く。

 

 

そのまま横へ伝う様にして舌裏へと滑り込まれ舌小帯に触れられ、さらに進み一周して再び表へと戻ってくる。ここまで来ると、いのりも身体の力が抜けて全体的に弛緩し始めてしまう。集の与えてくる快感に身を委ね始め、いのりからも身体ごと押し付ける様にして隙間がなくなってしまう程に密着する。

 

 

「ん……ふっ…!…ぅ」

 

 

いのりは、されるがままの状態であり、集からの攻勢がひたすら続く。頬の裏側や、舌を主に攻められて、まるでマーキングでもするかのように全体を犯していく。そこで、集からの攻勢が一旦止んだように、集の腕の拘束が緩み、いのりの中から集が去るのかと思われた。いのりは若干の残念さと寂しさを感じたが、それは次の瞬間に与えられた次の手で、寂しさだとかは完璧に意識外へと吹き飛んだ。

 

 

「んんんんっ!?……し…ぅ………ふっぅ!」

 

 

再び集のものが一直線に、いのりの方へと侵入した。再び侵入したそれは、いのりの舌を押さえつけて、そして少量ではあるが、何かが流れ込んで来た。自分のものと味の違うそれに対して、驚嘆したいのりは、そのまま喉奥へと勝手に身体が導いて飲み込んでしまう。

 

 

さらに、自らの中へと送り込まれるものから数瞬逃げようとするが、それは自らを再び拘束する腕が許さなかった。腰と頭の後ろに回された手で固定されて逃げ場などない。お互い、口が塞がっているため、鼻での呼吸だけが頼りになり、自ずと呼吸が荒くなる。

 

 

いつの間にか壁に、いのりは自らの背がくっ付いていることに気がつく。集に押されながらここまで来てしまったのだろうと、背中に触れた冷たい壁の感触のお陰で戻って来た意識でそう考える。そして、集もそれ気付いてか、いのりの後頭部と壁に挟まっていた手を抜けさせると、そのままゆっくり、いのりの身体を這っていく。

 

 

その柔らかな濡れた桜髪に触れ、頬を撫でて、首筋の水滴をなぞって、そのまま下へと伸びていく。

 

 

「んんっ!!?……ぷぁ!…………しゅ、う!……んん!」

 

 

急に電気のような感触が身体の中に流れたと、錯覚するほどの刺激に、いのりはつい集と離れる。と言っても、離れたのは唇同士であり、身体は未だに密着したままだ。集の手は、いのりの双丘の片方を覆うように掴んでいた。刺激の正体はこれである。集の指はしっかりと、いのりの胸部に沈み込んでいた。押し返す柔らかな弾力に負けじと、集の指がもう一段階深く沈み込む。

 

 

「んっ……はっ…………ぁっ!」

 

 

いのりが強くなった刺激に熱い息を吐いていると、次に来た刺激に再び小さな悲鳴を上げる。集の手の形が変わり、人差し指と親指で尖端の小さな突起をつまみ上げていた。残りの3本指もガッチリと、いのりを逃さず、深く沈んだり浅くなったりを繰り返し、いのりに刺激を与え続ける。それに耐えられなくなってか、いのりは腰が浮くようにして引けてしまう。

 

 

それを逃さないとばかりに、太腿の間に集の足が割って入ってしまった。刺激を与え続けられ、殊更敏感になった場所へと、直接的な刺激が入り、いのりは開いていた目を閉じて、唇をキツく結んでそのまま小さく声を上げる。そして、波のように押し寄せる刺激に耐え終わった後、荒い息を吐き、呼吸を整えようとする。

 

 

「はっ……はぁ…はぁ…………も、もう…これ、で……」

 

 

「………ごめん、もう少し…」

 

 

「…え?集――んっ!……んんん〜〜〜!」

 

 

再び重ねられた唇に、いのりは驚く。そして、そのまま集に全身を触れられるようにしながら、最終的に集の与えるその全てを受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月30日08:21。

 

 

桜満集は自室のベッドで頭を抱えていた。今日からは、遂に絃神島において最大級とも言えるイベントである波朧院フェスタの一般開催である。天気は快晴で、この日は珍しく窓を開けて入ってくる風に湿気が少ない。

 

 

そんな爽やかな日の朝に、集は沈んでいた。原因は言わずもがな、昨夜の一件である。昨夜、浴室の扉の淵が結晶化するという珍妙な現象から始まった一連の2人の情事は最終的に、いのりの意識喪失という形で幕を閉じた。

 

 

 

 

産まれた時の姿そのままの状態の、いのりをそのままになど出来る訳もなく、集はいのりの身体を拭いた後、抱えてベッドまで運んだのだ。その際、自らの中において本能と理性が戦争を勃発させていたのは言うまでもないだろう。結局のところ軍配は理性側が再び何度目かの勝利を飾り、集は本能のまま恋人を犯すという非業をせずに済んだという訳である。

 

 

それでも、昨夜の一件は自分でも不味かったと思わざるを得ない。まさか、集自身の方から彼女を襲うとは思ってもみなかったのだ。恐らく、ラ・フォリアが寄越したあの悪趣味な狼の被り物に触れた所為(せい)だと思い込んで置くことにする。

 

 

それでも、昨夜の記憶は鮮烈に感覚の残滓と共に残っており、忘れられるようなものでもなかった。不幸中の幸いというか流石に今朝は、いのりは集のベッドに潜り込んでおらず、昨夜の続きが発生するようなことがなく、胸を撫で下ろした。

 

 

何時迄もこんな風にしている訳にはいかず、集は意を決して自室の扉を開ける。幸い、いのりはまだ起きていないのか、物音一つしない。集はせめて朝食を作ろうとキッチンで準備を始める。

 

 

献立は目玉焼きと、ウィンナーを焼いて、さらにサラダを用意する。サラダを簡単に作り終えたところで、いのりの部屋が開いた。しっかりとパジャマを身につけており、体調の不具合も無さそうである。

 

 

「………おはよう、いのり」

 

 

「お、おはよ………」

 

 

お互い気まずさと気恥ずかしさで、視線もロクに合わせられない。

 

 

「か、顔を洗ってくる…」

 

 

「あ、う、うん。もう少しで朝食ができるから」

 

 

いのりは若干急ぎ足で洗面所へ駆け出していく。本心としては、集から積極的に行動されたのは初めてのことだったので嬉しさもあるのだが、自身の裸身を見られ、さらに状況から考えて自らの身体を拭いたのは集である事は予測できた。

 

 

様々なことが頭の中を周り、鏡に映る顔が真っ赤に染まる。風邪も引いていない事から、全身をしっかりと拭いてくれたのだろう。しかし、その為にはタオル越しであっても全身に触れなければならない訳で……

 

 

それを想像してか、より一層顔が紅潮する。

 

 

しかして、このまま昨夜の一件が起こったこの場所に居ては、余計に記憶が蒸し返される為に、いのりはこれ以上ここに居てはならないと1人思い直し、一通り顔を洗い、髪を整えた後、朝食を準備している集の元へと向かう。

 

 

「あ、いのり、顔洗い終わった?そろそろ朝食も出来――ったぁ!?」

 

 

集が振り返ろうとするなり、いのりは集の頭をガッチリと掴んで無理矢理前を向かせる。急な事で集の首には相応のダメージが入っており、驚きと痛みが彼の中で共存する。

 

 

「い、いのり!?痛い痛い!!」

 

 

「………ごめんなさい。でも………」

 

 

集は何となく、いのりの今の表情を想像する。昨夜の一件は自分だけでなく、いのりにも爪痕を残したという事だろう。それを思い、ズキズキと伝わってくる首の痛みは我慢することにする。

 

 

と、そんな時間も終焉を告げる。来客を報せる音が室内に響き渡ったのだ。それを聞いて、いのりは我に返ったように集から反射的に離れ、集の方もビクッと身を硬直させる。いのりは自らが着替えていないことを思い出し、着替えてくると自室へ飛び込んでいった。

 

 

一方の集は残念なような、助かったような複雑な感情の渦中にいたが、未だに鳴り止まぬインターホンに辟易した様に廊下を進む。来客を報せるのであれば一度で鳴らせば済むはずである。そのはずであるのに、未だにインターホンは現在進行形で継続的に鳴り続けている。所謂ピンポンダッシュというやつだ。

 

 

集は玄関扉ののぞき穴から無礼な来訪者の正体を確かめようと片目を近付ける。そこに映ったのは、未だに焦った様子でインターホンを押し続ける仙都木優麻であった。ハロウィンの仮装なのか、昨日のボーイッシュな格好とは打って変わって、黒がベースのミニスカートタイプのドレスを着用していた。これに三角帽子、箒でも持たせれば俗に言う魔女っ娘の完成だろう。

 

 

集は玄関の鍵を開け、昨日訪れた友人の幼馴染へ挨拶を交わす。

 

 

「おはよう、仙都木さ――」

 

 

「桜満!助けてくれ!!」

 

 

ヒシヒシと伝わる彼女の焦燥感、それと同時に漂ってくる独特なトラブルの匂いを察知して、集は小さく溜息を漏らした。

 

 

 

 






うん、古城がお風呂イベ起こしてる間、こうなってましたw


しょうがないね、アレは。久方ぶりの更新なのに、一発目がコレで申し訳ない・・・

補足として、描いてありますがヤッテないですからね?まぁ、身体は『くまなく』拭いたわけですがw(爆散しろ)


さて、次回からは本格的に事件発生です。

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