ようやく続きが描けたので投稿します。いやぁ、気分が乗ると一気に書き上げちゃうんですけどねぇ・・・
もうちょい気分屋なところを直すよう頑張ります。
では、どうぞ!
「
第四真祖の眷獣である黄金の獅子と、緋色の双角獣はそれぞれ雄叫びと、嘶きを上げ、雷撃と高周波による破壊を辺り一面に撒き散らしていた。その威力は絶大で、砂浜を覆う氷を砕き、その下の地面まで抉っていた。
「うお!?ったく、真祖ってのは無茶苦茶だな!」
「ちぃ!行きな、出来損ない共!」
『『『Ahhhhhhh!!』』』
奇声にも近い声を上げ、三体の『
「ごめんね!」
『Gy!!?』
『
「いのり、大丈夫!?」
集の問い掛けに、いのりは試しに手を握ってみたり、少し自分の体を見渡してみるが、何も問題ない様でコクリと頷く。
「ん、問題ない。集は?」
「えっと……大丈夫」
「……本当?」
「ちょ…!」
ズイと、いのりは身を乗り出して集に問い詰めるが、集は赤くなって顔を逸らす。いのりも、集が顔を逸らす直前の目線に気付いたのか、自らの口元に手を運び、同様に赤くなる。
「先輩方、何をやってるんですか!戦闘中ですよ!」
雪菜がベアトリスと刃を交えながら器用に目線だけ向けて、場の空気に相応しくない先達を注意する。と言っても、この2人に関してはつい数時間前までは、あの様な行為に及んでいた訳で、若干の仕方無さもあるのかもしれないが。
「悪いが、桜満、楪!そっちの『
「けど、古城!叶瀬さんに古城の攻撃は――」
「大丈夫だ!俺だってバカじゃねえ。ちゃんと対応策はある!」
そう言って、古城はすぐさま夏音の居る場所に少しでも近付こうと、氷塔を駆け上がり始めた。
「ちっ!ロウ、あんたは王女の方を捕まえな!」
「分ぁってるよ。……さて、王女殿下。大人しく捕まっていただけないですかね?」
ロウは何の警戒もなく、ラ・フォリアへと近付く。それは自身が、人間よりも遥かに優れた肉体を持つ獣人である事が起因しているのだろう。獣人の生体の単純な頑強さは、吸血鬼のそれさえも凌駕する。言ってしまえば、全身を超高性能な防弾チョッキで防御している様なモノなのだ。
そして、現在ラ・フォリアがロウへと向けているのは、軍用タイプのフルオート型のハンドガンである。獣人からすれば豆鉄砲にも等しいものだ。当然、ラ・フォリアもそんな事は百も承知である。だが、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。
「ふふ、残念ながら私が大人しく捕まる様な人間に見えますか?」
「へぇ、じゃあ実力行使って事で」
「えぇ、そうですね。実力行使と致しましょう」
砂浜と氷と結晶の大地で、4つの戦いがほぼ同時に始まったのである。
◇
「そら、踊りな、小娘!」
「くっ…!」
雪菜を赤黒く染まった刃が襲う。その刃は意識を持っており、雪菜が避けようとも、突如として軌道を変え、変幻自在に攻撃を行ってくる。だが、雪菜はそれを紙一重で躱していた。
「ったく、チョロチョロと動き回りやがって!いい加減ウザいんだよ!串刺しになっちまいな!『
「な、穂先がさらに…!」
雪菜を今まで追っていた刃は3本であったが、そこからさらに枝分かれをし、さらに二股に分かれて計6本の刃となって雪菜へと襲いかかる。だが、雪菜も伊達に獅子王機関の
剣巫とは戦闘術――取り分け近接格闘と霊視に優れた存在である。故に、刃の下を潜り抜ける
雪菜はこれから眷獣の刃がどう動くのかを先詠みし、時に躱し、時に雪霞狼でいなして、直撃をさせない。
「くそ!くそ!!何で当たらない!」
「はぁ!!」
雪菜は迫ってきていた眷獣の刃を一斉に弾き返し、刃を操っていたベアトリスは眷獣を伝わってきた衝撃を受け、一瞬後ろ側へ僅かに重心がずれる。雪菜にとってはそれで十分だった。その僅かな隙さえあれば、雪菜がベアトリスの元へ接近するのに時間は掛からない。
一気に迫る雪菜を目に納め、ベアトリスは明らかに焦りの表情を浮かべる。自らの身の危険を察知したのだろう。故にベアトリスは自らの懐から、端末を取り出した。『
「死ねぇ!」
「な、それは――」
雪菜がベアトリスの首元に雪霞狼を突き付けた瞬間にそれは起こった。ベアトリスが正に端末のボタンを押そうとした瞬間、遠くで小さな爆音が響き、彼女の手から端末が滑り落ちたのだ。当然、彼女の故意的な行為ではないし、うっかりした行動でもない。
その原因は、彼女の肩から流れる赤い血であった。
「ぐ…ぅ…………ああぁぁぁぁぁ!!」
「こ、これは…!?」
雪菜はほぼ円形状に空いたベアトリスの肩を見て、目を大きく見開き驚いていた。おそらくそれを形成したのは銃弾だろう。それが貫通して風穴を開けたのだ。雪菜は振り返って確認したい衝動を抑え、自らの持つ機槍を、今度こそベアトリスの首元に突き付ける。
「これで終わりです。大人しく投降して下さい」
「………これだからガキは甘いんだよお!!」
「何を――っ!」
下からの急襲に襲われて、雪菜は雪霞狼を手放してしまう。ベアトリスは『蛇紅羅』の穂先の一本を砂浜の下に隠していたのだ。雪菜は自らの師の言葉を思い出し、歯噛みする。
『お前は目に頼り過ぎる』
その言葉が脳裏をよぎる。だが、今は訓練ではなく、実戦なのだ。いちいち狼狽えている暇はない。
「形勢逆転だねぇ!!あんたの次は、この肩をやった臆病者を片付けてやる!」
勝ったと確信した様に、ベアトリスは凶暴な笑みを浮かべる。吸血鬼の動体視力を以ってすれば、集中することで銃弾を躱すのは可能である。現在は飛ぶ方向と飛んでくるかもしれないという事は分かっている。それだけ分かっていれば、ベアトリスも銃弾を躱すのは可能なのだ。
故に勝利を確信するという慢心を作り出した。
「………確かに、雪霞狼を弾かれたのは私の未熟さの所為ですね。師家様に知れたら怒られてしまいそうです」
「はぁ?何を――」
「ですが!」
「っ!?『蛇――』」
「
ベアトリスが『蛇紅羅』を操り複数の刃で、ベアトリスを襲おうとした直後、迫り来る3つの刃を雪菜は掻い潜り、霊力を込めた掌底打ちを腹部へと叩き込んだのだ。グラついたベアトリスに、雪菜は追い打ちを掛ける。
「――
「がっ!?」
ベアトリスの額付近に、雪菜は手を翳して直接霊力を叩き込む。そうすることで、ベアトリスの平衡感覚を麻痺させるだけでなく、体内の魔力の流れを掻き回したのだ。吸血鬼の不死性から来る、損傷の回復は魔力依存によるところが大きい。真祖クラスにでもなれば、その不死性は呪い故に魔力に依存せずとも時間さえあれば回復するが、低位の吸血鬼であれば、真祖のそれは殆ど適用されない。
「ぐっ……がっはごほっ………な、何をした、小娘えぇ……」
「私の霊力を直にあなたの脳に打ち込みました。脳には魔力の流れを制御する機構が備わってますが、それ自体も魔力で機能しています。なので、その流れを掻き乱せば、吸血鬼特有に不死性も弱まります」
「ぐ…く……お、おい!ロウ――な!?」
ベアトリスが振り向いた視線の先に映ったのは、ロウ・キリシマを挟んで、煌々と光る金色の光芒だった。そして、その発生源へと目を下せば、そこには戦陣を吹き荒れる風に、その艶のある銀の髪を靡かせ、古めかしくも
「お、おいおい。何だよ、そりゃ……ヴェルンド・システムの擬似聖剣じゃねえかよ。冗談キツイぜ」
「そんな馬鹿な!ここは絶海の孤島な上に、精霊炉を積んだ母船だって無――」
そこで、ベアトリスは何かに気付いた様に口を噤んで、顔を蒼くする。
「まさか……!」
「えぇ、今は私自身が精霊炉です。……ロウ・キリシマ、ベアトリス・バスラー。あなた方が私の部下を手に掛けた罪、ラ・フォリア・リハヴァインの名において断罪します!」
そうして、光芒の巨剣は振り下ろされた。
◇
一方、少し時間を戻し、集といのりも戦闘を開始していた。相手は『
『Ahhh!』
「集!まず、あの子の動きを止めて!」
「分かった!――来てくれ!」
そう言って、集が新たに発現したのは、先端がカギ状になった鎖だった。集が力を加えずとも、生き物の様に動いている。新たに発現したヴォイド『動く鎖』である。
「行け!」
集の合図と共に、鎖の先端が意志を持った様に伸びていく。『模造天使』は逃げようと必死に中空を右往左往するが、それでも鎖は止まることなく追い掛ける。『模造天使』も途中、神気によって構成された剣を投擲するが、鎖も、それを操っている集にも擦りすらしない。
『『Ahhh!』』
「行かせない!」
いのりは、もう2体の『
一方の、いのりは自身から伸びる薄紫の結晶から構成された、翼で時にガードし、また振るうことで2体を弾き飛ばす。その度に、小さく砕けた結晶が凍り付いた砂浜へと舞い落ちる。
神代の時代でのみ語られる様な、天使同士の戦いは熾烈である一方、どうしようもなく幻想的で、儚げで、そんな美しい光景を創り出していた。
『Ahhh!』
片方の『
『Ahhhhhh!』
「それは…読んで、る!」
いのりは横から急襲してきたもう一体の攻撃を、いのりは空いている翼で弾き突き飛ばす。だが、巨剣を放ってきた方は、既に体勢を立て直し、上空からいのりに飛び掛って来たではないか。いのりは、翼を壁にする様にして侵入を防ぐが、『模造天使』の方も、爪を立ててガードを破ろうとする。
『Ahh!Ahhh!Ahhhhhhhhhhh!』
「う………ダメ!そんな風にしたら、あなたの手が――」
この戦闘中の状況であっても、いのりは相手の事を気に掛けていた。故に、今も爪を立てる『
「悪いけど、大人しくしてて、ね!」
グンと鎖に引っ張られ、爪を立てていた『模造天使』は集の方へ引き寄せられる。その途中には先ほどまで集が捕まえあぐねていた、もう一体の『模造天使』も絡め取られていた。
「今だ、いのり!残りの一体を先に!」
「うん!」
集は鎖に縛られても暴れる『模造天使』の相手をし、いのりはもう一体の方に向けて、一気に駆け出す。先ほど翼に吹き飛ばされた『
『Ahhhh!!Ahh……ぁ…ああぁぁぁ……!』
すれ違いざまに、いのりは『模造天使』の精神をコントロールしている仮面を手の甲から伸びる、その鋭い結晶剣で両断したのだ。
しかし、『模造天使』の術式が消えたわけではない。それでも、精神支配から逃れた『模造天使』には隙ができる。
「これで…!」
いのりは、その一瞬の隙を突いて、『模造天使』の腹部目掛けて結晶剣を突き立てようとする。しかし、当然のように『模造天使』を覆う神気による防御皮膜によって、結晶剣の進行は止まる。いのりは、それを待っていたかのように、もう片手の結晶剣も突き立てる。
「痛くしたら、ごめんなさい」
『A…あ……ぁ…………』
結晶剣を経由して、『模造天使』の神気を術式ごと吸収してしまったのだ。いのりの後方には再び薄紫の結晶が広がる。神気の結晶化を行った為だ。そして、『模造天使』であった被験者のクローンは糸が切れた様に、パタリと倒れた。
いのりは、しゃがみ込んで息があるかを確認し、ホッ小さく息を吐く。多少呼吸に乱れはあるものの、脈も呼吸もしっかりしていた。
「うわっ、と!」
いのりの後方では、鎖特有の金属音が聞こえ、振り返ってみれば足場が悪くとも、必死に逃げようとする『模造天使』を逃さない様に、足を踏ん張っている集の姿があった。2体の『模造天使』は、いのりの危険性が分かったのだろう。あの女は、模造とはいえど天使である我が身を人へと堕とす事が出来る、と。
『
が、その抵抗も突如として終わりを迎えた。あれだけ暴れていた『模造天使』が一気に大人しくなり、逃げようとしなくなったのだ。その反動で、集は思いっきり固い氷原の上に尻餅をつく格好となってしまう。
「いったぁ!」
「大丈夫ですか、桜満先輩!いのりさん!」
駆け寄って来たのは、先ほどメイガス・クラフト社の2名を
「集、平気?」
「う…うん。負傷らしい負傷はしてないよ。痛いのは今打った腰かな…いつつ」
「す、すみません、桜満先輩。止め方が分からなかったので、適当に押してしまって……」
あぁ、そう言えばこの姫柊雪菜という少女は、すこぶる機械音痴だったな、と集は思い出して、嘆息するがスグに立ち上がって、いのりの方へ向き直る。
「いのり、コッチの子達も」
「ん、そのつもり」
いのりは、先ほど同様に残り2体の『模造天使』も人の身へと戻そうと、結晶剣を2体に向ける。それを見ていた雪菜が不思議そうに、いのりと集を見ていた。視線に気付いた集が口を開く。
「ん?何でこんな事するのか、不思議ってところかな、姫柊さん?」
「……はい」
「簡単に言っちゃえば、彼女達はいのりと少し似た境遇だからだよ」
「え!?そ、それは――」
「っと、説明は後だね。古城の援護に行こう!」
雪菜は少しモヤモヤするものを抱えつつも、少年の後を追った。
◇
『Kyryyyy!!』
『模造天使』の昇天の一歩手前まで、侵食が進んでしまった夏音は甲高い悲鳴の様な声を上げ、自らに宿っている神気の不倶戴天の敵である魔力源を見ていた。神気と冷気の嵐の中、その少年はまるで気にも止めない様に、ただジッと夏音を見ていた。
「苦しいか、叶瀬?」
『Kyryyyyyyyyyyy!!』
夏音は再び神気で形成された剣を投擲する。しかし、それは先ほど同様に何かに呑まれる様にして、掻き消されてしまった。自らの感知できない事象を前に、『模造天使』であっても、たじろいていた。
「……教会でお前が世話をしてた捨て猫達。お前は目の前にある小ちゃな命にだって大切に、真剣に向き合ってた。将来はシスターになりたいって、言ってたお前が、こんな事を望むはずがねえよな?」
『Kyyyyryyyyyyyyy!』
夏音は何かに抗う様に空を見上げ、悲鳴を上げる。古城はそれを確認して、夏音を苦しめているであろう『模造天使』の力自体に牙を剥く。
「だから、俺が今そこから引きずり下ろしてやる!」
古城は腕を掲げると、その腕は黒化し、そこに赤いラインが幾何学模様を描いていく。魔力とともに、細かい血が霧の様に立ち昇る。
「――『
次の瞬間、現れたのは巨大な双頭の龍であった。目を赤く光らせ、口からは凶暴そうな牙が覗いていた。身体全体がアクアブルーを基調にした体色であり、胴体からは翼が伸びていた。
「先輩!これは……」
いつの間にか駆け付けていた雪菜を始めとした、戦闘を行っていた顔ぶれがそこには揃っていた。古城は其方を一瞥しただけで、視線を夏音に戻す。
「悪いが、説明は後だ!食らいつくせ!」
宿主の命に従い、双頭の龍は嘶き声を上げながら、夏音の翼へと喰らいつき、もぎ取った。それを見ていた賢生は負傷した腕を抑えながら、信じられないものを見た様な目で、驚きを隠せないでいた。
「ば、馬鹿な…!高次元の場所に居るはずの『模造天使』の翼を…!っ、そうか……『
賢生が口にした『
『Kyyryyyyyy!』
「は…ははは!そうだ!まだ、同じ次元に堕ちただけだ!『模造天使』の神気には何ら影響は無い!『模造天使』の術式は健在なのだからな!」
「じゃあ……術式ごと、壊せばいい?」
いのりは、再び手の甲から結晶剣を伸ばす。賢生の顔は、それを見て青ざめた。そして『模造天使』の本能で、いのりの危険性が分かったらしい夏音は乱雑に神気で形成された武器類の投擲を始める。集が『あらゆるものを弾く盾』を最大展開し、全員がその背後へと隠れる。
「……動けなくなった」
「そりゃ、そうなるだろ!!何考えてんだ、楪!」
「ふふふ、いのりが墓穴を掘るなんて、思ってませんでした。集と何かあったんですか?」
ラ・フォリアの言葉に、いのりはプイとそっぽを向いてしまう。自らの行いを告白している様なものである。
「……何かあったみたいですね。監視役としては、一応聞いておきたいところですが」
「あのー!!?僕も結構一杯一杯なんですけど!!?」
集は降り注ぐ攻撃を、盾で防ぎながら叫ぶ様に後方の女性陣と友人に声を飛ばす。
「あと、10秒だけ耐えてください、桜満先輩!この状況を打開します!」
雪菜は自分よりも年上の彼らに思いついた作戦を提案する。降魔師として、どういった行動に出れば、この状況を打開できるのかを考えた末の結論であった。雪菜の提案を聞いて、各々がコクリと頷く。それを集も確認して、合図を待つ。
「………今です!」
雪菜の合図とともに、ラ・フォリアが飛び出した。それには、いのりも付き添っている。当然、放たれる夏音の神気の剣の投擲は、其方へと集中する。自らの存在を脅かす可能性がある、いのりが其方に居るのだから。
「お願いします、いのり!」
「ん、了解」
いのりは結晶状の翼を前面に展開して、飛来する剣戟を全弾ガードする。そして、それらは全て結晶へと変換され、いのりとラ・フォリアの周囲の氷原を覆っていく。
そして、その隙間からラ・フォリアの呪式銃の銃口が夏音の6枚ある翼を狙っていた。
「ごめんなさい、夏音。許してくださいね?」
そう言うと、ラ・フォリアは引き金を引き、こちらも神気による弾丸を弾き出す。先ほどやってのけた、自らを精霊炉とする方法で。当然、高次元に存在する夏音に命中する筈がない。しかし、それで十分であった。
生物は注意が向いた方向に、意識を集中するという特性がある。つまり、いのりとラ・フォリアの役割は囮と時間稼ぎである。
「獅子の巫女たる高神の剣巫が願い奉る――!破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え!」
集の盾に隠れていた雪菜は祝詞を唱え、右手に持つ己の機槍を投擲する為に構える。霊視を用いて狙いを定め、投げる先の数瞬先を視る。そして、一気に腕を振るい、一直線に雪霞狼を飛ばす。ほぼ完璧に不意打ちの形になった意識外からの銀の槍は、夏音の顔のすぐ側を通り過ぎた。
「外したのか!?」
「違います。これで良いんです。雪霞狼の能力では、いのりさんの様に術式ごと魔力や神気の吸収はできません。ですが――」
『Ky……‼』
『模造天使』となっていた夏音は、一瞬短い悲鳴の様な声を上げるが、スグにその瞼が落ちていく。
「雪霞狼の破魔の力は、術者と術式のパスくらいなら容易に断ち切れます!」
夏音は完璧に瞼を落とし、脱力した様に落下を始める。それを見た瞬間に、古城は視線を一瞬動かす。
「桜満!」
「分かってる!」
言い終わるよりも早く、集は『エアスケーター』を展開させ、夏音目掛けて飛翔する。集は難なく夏音を抱き留めるが、上方からはまだ、襲い来る者があった。
『模造天使』の術式である。宿主を失った術式は、高次から流れ込む神気だけで活動し、その本能に従い再び宿主を求める様に、翼を腕の様に変形し、伸ばし、夏音へ憑りつこうとしているのだ。
「古城!」
「あぁ、分かってるさ!これ以上、好きにさせるかよ!――喰らい尽くせ、『
双頭の龍は、主人の命令を待っていたと言わんばかりに、自らの獲物と定めた神気の塊へと突っ込む。そして、その大きく開いた2つの顎は、『模造天使』の術式を空間ごと一片たりとも残さず、この世から消し去った。
戦闘パート、ちと短かったっすね・・・以降気を付けます。
さて、ようやっとこの章も終わりが見えてきました。そして!
バンド名決定ーー!!!
案を出していただいた方々には感謝感謝です!後日、物語中で発表するんで、乞うご期待です!
さて、次回でようやくこの章も終了!そして・・・?
ではでは、次回もご期待いただければ幸いです!ではでは