Blood&Guilty   作:メラニン

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説明回というか、繋ぎ回ですね。


本格戦闘は次回からになると思います(予定)


では、どうぞ!


天使炎上編XII

 

絃神島の某ネットカフェにて。本土から離れていると言っても、最先端の技術の粋が集まっているのが魔族特区である。そして、住民はその恩恵を真っ先に受ける事が可能である。例えば現在、派手派手しいギャル風の少女と、長いポニテが目立つスラリとした少女に、ツンツン髪にヘッドフォンを首に提げた少年が居る、小さなネットカフェにおいてもそれは例外ではない。

 

 

島内に幾つか存在するネットカフェといえど、絃神島内では次から次に新機種が出るため、比較的新しいコンピュータが備え付けられているし、通信速度に関しては本土よりも速い。なので快適なネット環境が、絃神島では当たり前のように手に入るのだ。今回はそれにプラスして、少年に外付けのHDを買いに行かせて、さらに処理速度を上げているのだが………

 

 

「…………あった。古城達が映ってる監視カメラ映像。あの姫柊ちゃんって子と一緒みたいね。それと……確かこの人、東條さん?だっけ?確か、アンカーブロックの一件では保安部でサボってたわね」

 

 

「………何やってんだ、あの人は」

 

 

「どうしたのよ、矢瀬基樹?知ってるの?」

 

 

「あー……まぁ、家柄上特区警備隊(アイランド・ガード)の面々と顔を合わせることも多いしな」

 

 

「ま、基樹の場合そーよね。んー、けどダメね。古城のバカが何処に行ったのかは書かれてないわ」

 

 

浅葱はキーボードを叩き、次々と人工島管理公社のデータベース上にある監視カメラ映像を開示していく。決して公社のセキュリティが緩い訳ではない。そんじょそこらのハッカーでは、ここまでの侵入は不可能である。ただ、この藍羽浅葱という少女の電子戦能力が異常なのだ。

 

 

『お嬢、コッチに桜満の兄ちゃんのデータもあったぜ?いのり嬢ちゃんも一緒だ』

 

 

ポコンと、ディスプレイ上にヌイグルミ型のアバターが表示され、合成音声を駆使して話しかけてくる。浅葱は新たに表示されたフォルダをクリックし、動画ファイルを開く。そこに映っていたのは、集といのりに話し掛ける黒い革ジャケット姿の男性だった。

 

 

「「………胡散臭い」」

 

 

少女2名の率直な感想がそれであった。やはり、彼女達は中々に容赦がない。

 

 

「多分、この胡散臭い男の口車にでも乗って、連れ去られたのね。まったく、桜満君がしっかりしないで、誰がいのりさんを守るのよ」

 

 

「まったくだわ。桜満集にとって、楪いのりは大切な存在の筈でしょ?なのに、こんな胡散臭そうな男に騙されてどうすんのよ。警戒心が足りなさ過ぎるわ」

 

 

「ま、まぁまぁ、集の奴もそこまでバカじゃねえ。多分、予期せぬ事態ってのに、巻き込まれたんじゃねえか?」

 

 

「それでも、桜満君がしっかりしないでどうすんのよ」

 

 

「まったくだわ。女の子1人守れないなんて、男としてどうかと思うわ」

 

 

本人が居ないところで、言いたい放題である。本人としては、精一杯やっているつもりでも、存外他人からの評価は厳しいというのは、世の常である。基樹は密かに、心の中でホロリと涙を流した。

 

 

「…………けど、コッチもダメね。この後2人がどこへ連れてかれたのか、分かんないわ」

 

 

「お手上げって事?」

 

 

「まさか。こうなったら、この男が所属するっていうメイガス・クラフトって会社を徹底的にクラッキングしてやるわよ。モグワイ」

 

 

『へいへい』

 

 

モグワイは心底面倒くさそうに、作業に取り掛かる。再び高速でキーボードを叩く浅葱の姿を見て、紗矢華は内心舌を巻いていた。

 

 

「………藍羽浅葱、あなた本当に一体何者よ」

 

 

「ただの女子高生よ」

 

 

「ただの女子高生が公社のデータベースをハッキングして、さらに企業のクラッキングまでするなんて常識じゃ考えられないんだけど」

 

 

「けど、本当にただの女子高生よ。ま、でも今回は凪沙ちゃんも心配してるみたいだから、本気くらい出すわよ」

 

 

「凪沙って、さっき貴女と一緒にいた、暁古城の妹の暁凪沙のこと?」

 

 

因みに、件の凪沙は部活前の時間に学校を抜け出して、浅葱を案内していたので、今は学園へと戻って部活中である。

 

 

「ええ、そうよ。古城が時たま居なくなるってのは、慣れてるみたいだけど、桜満君が居なくなるっていう方には、まだ免疫無いみたいだしね」

 

 

「………もしかして」

 

 

「まぁ、アンタも女なら分かるでしょ?そういう事よ。だから、今回は本気でやってあげるわよ。けど、本当に行き先を見付けた後は任せて平気なの?」

 

 

「そこは問題無いわ。私の伝手で沿岸警備隊(コースト・ガード)の手を回すから」

 

 

「………アンタも十分『ただの女子高生』じゃないわよ」

 

 

「あら、そう?」

 

 

「そうよ」

 

 

「「ふーん……」」

 

 

奇しくも2人の声が重なる。それは、次のセリフも同様であった。

 

 

「ところで、アンタと古城ってどういう関係?」

「ところで、貴女と暁古城ってどういう関係?」

 

 

後日、同室に居た基樹曰く、この2人と一緒にいると、なぜか胃がキリキリと痛んだという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇっくしゅ!!……ズズ………風邪か?」

 

 

「先輩……不死である真祖は基本的に病気になんかかかりません」

 

 

雪菜の冷静な突っ込みに古城は頬を掻く。元が人間である分、その勘違いは仕方がない気もするのだが……

 

 

「お初にお目にかかりますね、第四真祖。私はアルディギア王国王女、ラ・フォリア・リハヴァインと申します」

 

 

『金魚鉢』と呼称されるメイガス・クラフト所有の無人島では、場違いな黄金の救命ポッド内で国際交流が行われていた。

 

 

メンツは前述の通り、一国の王女。さらに世界最強の吸血鬼である第四真祖、その監視役である日本政府特務機関である獅子王機関から派遣された剣巫に、異世界人2名、特区警備隊の隊員1名。と、この様に誰1人として一般人と呼べる存在が居なかった。どこからどこまでを『一般人』と定義するのかにもよるが、彼らに関しては間違いなく『一般人』というグルーピングはできないだろう。

 

 

「えっと………は、初めまして?でいいのか?」

 

 

古城は目の前の少女に対してタジタジである。『王族』という人種に会う事自体初めてな彼にとって、何が無礼に当たるか分からないため、緊張のしっ放しなのである。

 

 

(な、なぁ、桜満!何で、ここに一国の王女様が居んだよ!?)

 

 

(いや、だから道すがら説明したよ。飛行船が墜落して、彼女だけ助かったんだって)

 

 

(聞きたいのはそういう事じゃなくてだな)

 

 

「まったく、古城も集も女性の前で密談とはいけませんよ?」

 

 

「「す、すみません……」」

 

 

集も古城も、目の前の少女には頭が上がらない様である。アルディギア王国は、この世界において名の知れた国家である。それは、高度な魔道技巧技術の保持や、独自の魔術体系を占有している事による、軍事力の強大さによるところが大きい。と言っても、その力を無闇矢鱈と振り回す訳でもなく、あくまで抑止力として保持しているだけである。各国との外交も比較的良好であり、日本とも外交を結んでいる。

 

 

だが、やはりその強大な軍事力というものが見え隠れしてしまう。故に、集も古城も警戒心を解けきれないのだ。

 

 

「ふふ、噂の第四真祖がどういう方か気になっていましたが、他の真祖の方々とは一線を画している様ですね」

 

 

「………まぁ、元が一般人だからな」

 

 

「皮肉に聞こえたのなら謝ります。……ですが、その様ですね。伝え聞いていた通りです。邪悪な方で無い様で安心しました。他の噂では、何人もの女性を侍らせる好色家と言われていましたから」

 

 

「ちょっと、待て!誰だ、そんな事言ったの!?」

 

 

「ディミトリエ・ヴァトラーです。国交があるのですよ」

 

 

「……あの野郎」

 

 

古城はギリと歯を食い縛る。彼にとって、そんな自覚が無いため、甚だ遺憾なのだろう。と言っても、雪菜を始めとした、他のメンツはどこか納得した様な表情であった。だがここでは、深く突っ込まない事にする。

 

 

「そして、貴女が獅子王の剣巫ですね?」

 

 

「はい。お初にお目にかかります、王女殿下。日本政府特務機関である獅子王機関所属の剣巫、姫柊雪菜です」

 

 

「いけませんよ、雪菜」

 

 

「……何か、お気に触りましたか?」

 

 

「そうではありません。ここは正式な外交の席では無いのです。せめて、他国の友人からは名前で呼ばれたいのです」

 

 

「で、ですが――」

 

 

「集もいのりも了承してくれましたよ?『殿下』も『王女』も聞き飽きました。ね、雪菜?お願いします」

 

 

「………分かりました。では、ご尊名で呼ばせていただきます、ラ・フォリア」

 

 

「はい、お願いします。ところで、これは集やいのりにも聞いたのですが、貴女は古城とはどこまで進んだのですか?」

 

 

「………はい?」

「……は?」

 

 

集といのりは苦い顔をする。自分たちが受けた攻撃をこの2人も受けるのか、と嘆いているのだが止める気も起きなかった。それで、矛先がこちらへ再び向けば、堪ったものではない。

 

 

「確か、貴女は第四真祖の『妃』候補なのでしょう?」

 

 

「は、はい!!?」

 

 

「は、はあぁぁああ!!?」

 

 

「先ほどの、集といのりの結婚式のお話も面白かったのですが、是非お2人のお話も聞かせてくださいな」

 

 

ラ・フォリアはウキウキした表情で質問を迫る。どうにも、この王女殿下は人一倍こういった話に飢えているのだろう。まぁ、彼女の身の上ならば仕方がない事にも思えるのだが。

 

 

「な、なななな何を言ってるんですか!!わ、私はあくまで先輩の監視役です!き、ききき『妃』だなんて!そ、そんなモノになるつもりはありませんから!」

 

 

「あら、そうなのですか?これは、いい事を聞きました」

 

 

ラ・フォリアは相変わらずといった表情で和かに微笑む。その表情だけ見れば、大抵の男共はやられそうであるが、如何せん相手は唐変木である。会話の意味にすら気付いていない。気付いているのは、先程から若者の会話を楽しそうに聞いている、特区警備隊の隊員くらいであろう。

 

 

「そ、それよりも!…………さっき、桜満から大体の事情は聞いた。ラ・フォリア、あんた叶瀬を迎えに来たらしいな。それと、叶瀬が王族って、どういう事だ?」

 

 

「…………ここから先の話は他言無用とお約束できますか?」

 

 

「あぁ、もちろん」

 

 

「………まずは叶瀬夏音の生い立ちから話さねばなりませんね。彼女は前国王――つまり私の祖父と当時侍女であった女性との間に産まれた子です」

 

 

「ま、待った待った!えっと……なんだ、つまり叶瀬はラ・フォリアから見たら、えーーと……」

 

 

「血縁上、夏音はラ・フォリアの叔母?」

 

 

「えぇ、その通りです、いのり。これはつい最近発覚した事なのです。今まで王室はこの事を知りませんでした。ですから、未だに王室内は混乱の最中にあります」

 

 

「けど、叶瀬さんを迎えに来る必要があったの?それこそ叶瀬さんを迎えに来たら、王室自らのスキャンダルを認めちゃう事になるんじゃ……」

 

 

「言われてみれば、桜満の言う通りだな……」

 

 

「先輩……」

 

 

古城は元来、こういった話は苦手である。今でも付いていくのが精一杯であるが、それを雪菜に呆れられ苦い顔で頬を掻く。

 

 

「えぇ、集の言う通りです。王室内でもその意見が出たので、彼女を王家に迎え入れるのに反対の意見もありました。しかし、彼女の後見人の名前を聞いて、全員の意見がまとまりました。彼女の現在の後見人――叶瀬賢生の名を聞いて」

 

 

「………なぜ、叶瀬賢生なんですか?夏音さんと彼に何か――」

 

 

「叶瀬賢生――元アルディギア王宮魔導技師。その才覚は若くして、並み居る研究者を圧倒し、それを見込まれアルディギア王宮お付きの魔導技師となった。だが、約15年ほど前に王宮を離れ、姿を眩ませていた。その魔導の秘奥は王族を触媒にするものが多く、幾つかは禁呪にも指定されている、と。………なるほどな。だから南宮攻魔官がメインで動いてたのか」

 

 

「………さすがは、日本でも名のうての攻魔師付きの特区警備隊(アイランド・ガード)ですね。情報がお早いようで」

 

 

「えぇ、まぁ。たはは」

 

 

「そちらの東條さんの仰る通り、叶瀬賢生は王族を霊媒とした魔導の秘奥を多く会得しています。……少し話は変わりますが数年前、叶瀬夏音のいた修道院で火事が起きた事は知っていますか?」

 

 

「ああ、それなら見たぜ。確かその時の火事で助かったのが、叶瀬だけだったって話もな。……………まさか、その火事って」

 

 

古城の中でカチリと何かが当て嵌まり、今までの話が繋がった。修道院はほぼ全焼という規模の火災がそもそも起こる事自体珍しい事だし、生き残りが1人だけというのも、おかしな話なのだ。古城は何となくの事件の全容を頭の中に思い浮かべ、ギリと歯を食い縛る。それは、普段激情を表に出さない集も同様であった。

 

 

「えぇ、あの火事は自然発生したものではないでしょう。叶瀬賢生が叶瀬夏音を霊媒として、魔導実験を行ったのが原因でしょうね。アルディギア王家の血を引く女子は高い霊媒資質を兼ね備えていますから、その規模も甚大なものとなったのでしょう」

 

 

「………自分の娘を実験台にしてやがるのか……!」

 

 

「ですから、我々王室は叶瀬夏音を一刻も早く保護するという結論に至りました。そして前国王である祖父の名代として、私が訪日するという事と相成ったのです。………恥ずかしながら、飛行船は堕とされてしまいましたが」

 

 

そこまでが一先ずの事情説明であった。ラ・フォリアは一旦、テーブルの上に置かれている紅茶を手に取り口にする。ラ・フォリアがカップをソーサーに戻したところで、古城が再び口火を切る。

 

 

「………話は分かった。とにかく、叶瀬を助けるんなら俺も何が出来るか分かんねえけど、手は貸そうと思う」

 

 

「古城に同じく、かな」

 

 

「私もです。叶瀬賢生の行為は立派な魔導犯罪です。獅子王機関に所属する剣巫としても見過ごせません」

 

 

「けど今、この島は抜け出せない」

 

 

「まぁ、そこは俺の仲間に期待するしか無えなぁ……」

 

 

「……………いえ、その必要は無くなるかもしれませんよ」

 

 

「「「え?」」」

 

 

雪菜の急な発言に、男性陣は揃って疑問の声を上げる。声には出さないが、いのりとラ・フォリアも疑問の表情を浮かべる。が、集といのりは表情が変わる。彼らも島に上陸した魔族の魔力を感知したのだろう。

 

 

「島に来てから念のために放っておいた式神が反応しました。おそらく、反応から見ても魔族が2体混じっています」

 

 

「なるほどな。じゃあ、そいつらが乗ってきたであろう船を奪取すれば、この島を抜け出せるわけだな」

 

 

「まぁ、他からリモートでコントロールされてないかを確認はしますけど。そこは東條さんにお願いできますか?」

 

 

「おう、任しとけ。と言っても、先に乗り込んできたっていう魔族の対処が厄介だな……俺は後方からの援護に徹するが、それでいいか?」

 

 

「はい、装備から見てもそれが妥当でしょう。あと一応、ラ・フォリアの護衛をお願いできますか?」

 

 

「了ー解」

 

 

「じゃあ、いのりもラ・フォリアさんと一緒に後方に――」

 

 

「いいえ、私は前線で戦います」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

再び男性陣は声を上げる。しかし、今度は驚きの声である。王族自らが出てきて戦うというのは、彼らにとってリスクが大きいという事はキッチリ理解している証拠だろう。

 

 

「何を驚いているのですか?先ほども申しましたが、アルディギアの王族の女子は例外なく、高い霊媒としての資質を備えているのです。それは、私とて例外ではありません」

 

 

「えぇっと、つまり獅子王機関の剣巫とかみたく、戦えるって事か?」

 

 

「はい、もちろんですよ。武器もしっかり、祖父の書斎からお借りした物が有りますから」

 

 

「『祖父』からじゃなくて、『祖父の書斎』からなの?」

 

 

「集、そこは目を瞑るのが、正しい判断ですよ?」

 

 

「はい……」

 

 

和かに微笑むラ・フォリアの笑顔(脅迫)に、集は勝てなかった様である。これ以上細かい指摘をすれば、どうなるか分かった物ではないので止めておく事にした様で、集はそれ以上はツッコマなかった。

 

 

「じゃあ、いのりは東條さんと後方――」

 

 

「私も行く」

 

 

「け、けど、いのり。相手は魔族なんだし……」

 

 

「黒死皇派の訓練を見た事が有るから、魔族がどのくらい動けるのかは知ってる。それに……イヤな予感がするから」

 

 

「イヤな予感?」

 

 

集の問いに、いのりはコクリと頷く。表情は真剣身を帯びており、若干心配そうに曇らせている。

 

 

「何か……何か違うものも感じるから」

 

 

「……分かった。でも、僕から離れないこと。いいね、ぃのり?」

 

 

「ん、分かった」

 

 

集は心配そうに見つめ、いのりは何かが嬉しいのか、先程までの曇った表情は何処かへ飛んでいった様だ。そんな2人のやり取りを見ていた他4名は、和んだ様な表情に変わっていた。

 

 

「な、何?古城も、東條さんも控えめに言っても、気持ち悪いよ?」

 

 

「「失礼だな、オイ!」」

 

 

「で、お2人の結婚式はいつ何処で開きましょうか?アルディギア王国全土を挙げてお祝いしますよ?」

 

 

「なんでその話に戻るの!?」

 

 

「………コホン!!」

 

 

雪菜がワザと大きく咳払いし、注目を集める。まったくもって、まとまりが無いチームである。

 

 

「もうその辺にして下さい、先輩方。敵が来てるんですから。…………桜満先輩、式には是非呼んでくださいね」

 

 

「姫柊さんまで!?」

 

 

「……まぁ、桜満先輩の場合だと、いのりさんと……ちゃんの、花嫁が両手に2人の結婚式になり兼ねないですけど」

 

 

「………え?」

 

 

「……すみません、忘れてください。………そこに関しては私ももしかすると人の事を言えるか分からなくなりそうですし……では、行きますよ!」

 

 

雪菜はそう言うと、一足先に立ち上がり先導していった。

 

 

「……じゃ、俺も行こうかね。あぁ、そうだ、桜満君。この前、エコーが置いてった伝言を今言っとくわ」

 

 

なぜこのタイミングでと、集は疑問符を浮かべるが、そんなの御構い無しに、東條は中指を挙げて他の指を折り畳む。相手を侮辱、ないしは卑下する際に使うハンドサインである。(※知らない人…………と言うか知ってる人であってもやってはいけません)

 

 

「F◯ck youーー!!……精々、後ろ弾に気を付けな……じゃあ、お先」

 

 

「な、なんで…?」

 

 

そこで、ポンと集の肩に手が置かれる。ラ・フォリアだ。なぜか顔をキラキラと光らせて、ウキウキしているが……

 

 

「集、日本の言葉に『英雄色を好む』とありますが、程々にしないと、背中を刺されますよ?」

 

 

「………いのり、行こうか」

 

 

「………ん」

 

 

どこか不機嫌そうになった、いのりを連れて集は雪菜の後を追って行った。

 

 

「ふふふ、本当に面白い方々ですね。今後とも良しなにしたいものです。………如何なさいましたか、古城?」

 

 

「………ん?いや、スマン。少しボウっとしてた。最近、どうにも耳の調子が悪いみたいでな」

 

 

「あら、そうなのですか?お大事になさって下さいね?では、我々も行きましょう」

 

 

「あぁ、そうだな」

 

 

吸血鬼というのは、身体能力がズバ抜けて高い。それは、五感も同様であり、古城も例外では無い。吸血鬼の力をフル活用していない時であっても、その恩恵は僅かばかりではあるが発動している。そんな彼が当然、『彼女の名』を聞き逃す訳が無い。

 

 

因みに、彼は現在体調が悪いというわけでも無い。つまるところ、現実逃避中である。少なくとも今はやる事があるだけ幸いだろう。余計なイザコザを発生させている場合では無いのである。

 

 

とにもかくにも、古城もラ・フォリアも他の人物達に従い、敵のいる戦場へと赴くのであった。

 

 

 

 




いつまでもグダグダやってる訳にもいかないので、今回は展開がちょっと無理矢理になりました・・・


古城のシス――ゲフンゲフン!具合に関しては、面白いのでこのままにしておこうかと思います。

まぁ、結婚式云々カンヌンに関しましては、おふざけでやってます。要望があれば、IFの話としてどこかで・・・か・・・・・・か・・・・・・描こうか、なぁ~・・・


程度の考えです。




ではでは、また次回!

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