Blood&Guilty   作:メラニン

55 / 91
ポケ〇ントレーナーってこんな感じなのかなかぁ?って気分です。PSO2の話ですね。すんません、話を戻します。





今回は・・・・・・浴衣姿の女の子っていいよね!?



っていう事で、本作の時系列は9月の末なんですが、夏祭りですね、はい。


では、どうぞ!


天使炎上編VII

 

アイランド・サウスに存在する私立彩海学園から徒歩で少し進んだところには、鬱蒼とした雑木林が広がっている。その中の小路を彩海学園の高等部と中等部の学生が歩いていた。その中の男子2名は周囲の女子生徒より身長が高い分、頭の上の枝に注意しつつ進んでいた。

 

 

「……整備されてなさ過ぎだろ、この道……あだっ!」

 

 

「あ、ごめん、古城」

 

 

古城より先を進む集が押し退けていた枝であったが、集が押さえていた手を退かせば、当然の如くバネのように跳ね返ってくる。運悪く古城はそれの直撃を受けた。

 

 

「ごめんなさいでした。わざわざお兄さん達に、こんな所まで付いてきて貰ってしまって」

 

 

「え、あ、あぁ、いいんだよ、そこは。叶瀬が気にするところじゃねえよ。まぁ、普段から凪沙の奴と仲良くしてもらってるみたいだしな」

 

 

「そ、そんな…むしろ、凪沙ちゃんには私の方がお世話になっていました」

 

 

なぜ彼らがこんな辺鄙(へんぴ)な場所まで足を運んでいるのかと問われれば、それは銀髪に翡翠の瞳をした少女――叶瀬夏音が世話をしているという捨て猫達の、里親探しを手伝う事になったからだ。

 

 

まずは捨て猫の写真を撮って、紹介ができるようにしておいた方が、引き取り手も増えるのでは?という集の提案から、捨て猫を世話しているという場所まで案内してもらっているのである。そして、話している内に目的の場所が見えてきた。見えてきたのは廃墟と化した修道院だった。

 

 

壁は所々が崩れ、窓という窓は割れている。集は近くに転がっていた黒い物体が視界の隅に写り、近付いてそれを靴で軽く踏みつける。すると、その物体は簡単に崩れて黒い粒子状になって霧散した。

 

 

「火事、か…」

 

 

「……起きてからそれなりに時間が経ってる」

 

 

さらに、いのりが屈んでもう1つあった消し炭を指で小突いて確認した。

 

 

「はい、ここは昔は綺麗な修道院でした。本当は皆さんの事も、ここがまだ綺麗な時にご紹介したかった…でした」

 

 

「……その、なんだ…もしかして叶瀬はここの修道院の…?」

 

 

「はい…」

 

 

古城の問いに対して、夏音の表情が若干暗くなり、古城は雪菜に脇腹を小突かれていた。その事に苦悶の表情を浮かべつつ、古城は患部をさすっていた。古城は何とかこの空気をどうにかしようと、本来の目的に立ち戻る事にする。

 

 

「あー、その何だ……そ、そうだ!ね、猫を早速見せてもらっていいか!?そ、その為に桜満にも来てもらってるんだしさ!な、桜満!」

 

 

「ま、そうだね。じゃあ、早速保護してるっていう猫の写真を撮らせてもらってもいいかな?」

 

 

集はそう言ってカバンの中からケースに入ったカメラを取り出した。この世界において型落ちはしているものの、画質だけで言えば高性能な一眼レフカメラだ。彼の趣味である映像研究が高じて購入したものだ。と言っても、前述の通り型落ちしているので安物と言えば安物ではあるのだが…

 

 

「はい。皆コッチに居ます。案内しますね」

 

 

夏音は全員を修道院内へと導き、既に扉が無い門戸をくぐり中へと入る。正面にはおそらく火事の際に溶解したのであろうキリスト像の残骸が残り、大量にあったのであろう長椅子は乱雑に散らばっており、火事の凄惨さを物語るように黒く焦げているものがほとんどだ。床石もヒビ割れたり歪んでいる上に、その上には窓を構成したのであろうガラス片が散らばっていた。そのガラス片が、一歩踏み出すごとにガラス同士が擦りあい、ジャリと音を立てる。

 

 

そして夏音が真っ直ぐキリスト像だった物の前まで進んでいくと、その下には大きめのダンボール箱が1つ置かれていた。ダンボール箱の底部分は小さな四角い穴が空いており、そこから小さな目が集たちをジッと見ていた。明らさまに警戒している様子である。だが、その中の存在が、夏音の来訪に気付いたのだろう。自らの寝床となっている茶色の箱から、まだ覚束ない足運びでヒョッコリ出てくる。1匹が出てくると、それに続いて、1匹また1匹と続いて表れる。その様子に無類の猫好きである彼女が反応を示す。

 

 

「……ふわぁーー…み、見てください、先輩!猫ですよ!猫ちゃんですよ!」

 

 

「お、おぉ、そうだな。猫だな」

 

 

「わぁ……か、叶瀬さん、触ってみてもいいですか?」

 

 

「はい、どうぞ、雪菜ちゃん」

 

 

夏音が許可を出すなり、雪菜は座り込んで1匹を抱き上げる。仔猫自身も嫌がっていないようで、雪菜にされるがままである。

 

 

「あぁー……、小ちゃくて、柔らかくて、可愛いですぅ……!はぁ…幸せです」

 

 

普段の凛とした彼女は何処へやら。言葉通り幸せを正に体現したような、緩んだ表情で抱えた仔猫を手で撫で、頰ずりし、堪能している。やはり、普段の監視任務というのも、それなりにストレスが溜まるものなのだろう。それを一気に癒している状態である。その変貌ぶりに、古城は嘆息するが、本人が幸せそうなので良しとする。

 

 

「はぁ……本当、あのマンションで飼えるのなら今すぐ持ち帰りたい可愛さです」

 

 

「はは……あのマンション、ペットは厳禁だからな。凪沙の奴もそれで里親を探してた訳だしな」

 

 

一方で集といのりも、この状況は楽しんでいた。

 

 

いのりは屈んで、仔猫に手を差し出すと仔猫は自らの体を預けるように、いのりに甘え始めたのだ。他の1匹もいのりの膝上にピョイと飛び乗ると、そこで丸まってしまった。一瞬困った様な表情を浮かべた彼女だが、優しく微笑むと膝上で丸まる仔猫を撫で始めた。集はそんな光景に見惚れつつも、急いでシャッターを切った。

 

 

「集、撮るのは私じゃない。猫」

 

 

「あ、ご、ごめん、いのり。で、でもほら!いのりが向こうでお世話になったっていう、子供達に送るいい写真になるかなぁ、って」

 

 

「……そういう事なら、撮って?」

 

 

「う、うん」

 

 

当然、集が写真を撮った理由は、南アジアの孤児達の為だけではない。思いっきり自分の衝動が大部分を占めている。が、その事に彼女が気付く筈もなく、仔猫と一緒に被写体になっている。多少の罪悪感があるものの、一回言ってしまった手前、止めるわけにもいかずシャッターを切る。そこで、ふと集はある事を思い付いた。

 

 

「そうだ。後で猫達と集合写真を撮ろうよ」

 

 

「集合写真?何でまた」

 

 

「叶瀬さんが集めてきたこの子達は多分、別々の里親のところに行くだろう?だから、猫も全員揃ってる今撮れば思い出に残るんじゃな――」

 

 

「いいですね、桜満先輩!!撮りましょう、今すぐにでも!あ、現像したものは私にも下さいますか!?」

 

 

集が言い終わるより前に、雪菜が食い気味で言ってきた。彼女の猫好きもよっぽどである。

 

 

「あ、あぁ、うん、もちろん。じゃあ、早速撮ろうか。えっと……いのりと、姫柊さん、叶瀬さんはそれぞれ1匹ずつ猫を持って。で、古城は……はいコレ」

 

 

「……何で俺だけダンボールなんだ?」

 

 

「じゃあ、次に3人は古城の持ってるダンボールに猫達をドンドン入れてって。その間に準備しちゃうから。………えっと、確か小さいけど三脚がどこかに……高さは…………あぁ、その辺の長椅子で調整して斜め上の角度から撮れば…」

 

 

「桜満ー?俺このままかー?ダンボール中の猫がドンドン増えてって、重いんだがー」

 

 

「何、情けない事を言ってるんですか、先輩?このくらい、先輩なら大丈夫ですよね?もし、猫ちゃん達を落とす様な事があれば……」

 

 

「……絶対に落とさねーから、その視線はやめてくれ」

 

 

雪菜は絶対零度の視線を古城へ向ける。いや、その目は絶対零度の目というよりは、獲物を狩る様な目と言った方が良いのかもしれない。古城は背筋を寒くさせながらも、ヒシヒシと両腕に掛かり、増えていく重量に耐えていた。だが、扱っているのは、元気一杯の仔猫である。当然、大人しくしてくれている訳がない。

 

 

「痛っ!?こ、コラ!俺に登ろうとすんな!」

 

 

「古城のこと、登り木と勘違いしてる?」

 

 

「嬉しくねよ、そんな勘違い!あ、コラ!パーカーに爪立てんな!」

 

 

「ご、ごめんなさいでした、お兄さん。この子達元気が良くって…」

 

 

「え、あ、いや!べ、別にそれは叶瀬の所為じゃねえだろ――いってぇ!!……おい、桜満!まだかよ!?」

 

 

「あーはいはい。えっと…こうして…………よし!あとはセルフタイマーで………うん、セット完了。じゃあ、撮るよー?3…2…1…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫の里親探しを開始して3日が経過していた。あれから里親探しはすこぶる順調で、残すところ2匹であった。と言うのも、先日修道院で撮った集合写真をポスターにして『猫の里親になってくださいませんか?』という見出しで一枚のみ、彼らのクラスである1年B組の廊下に掲示したら、里親になってくれるという生徒が続出したのだ。中等部の聖女と呼ばれている叶瀬夏音や、既に噂になっている姫柊雪菜、楪いのりが写っているという事で、あっという間にポスターの存在が知れ渡り、学校中から猫の里親になるという声が上がったのだ。当然、最低限の審査をした上で、それぞれに仔猫を引き渡した。

 

 

因みに余談であるが、ポスターの写真を撮ったのが集だという情報がどこかから漏れたらしく、連日写真を譲って欲しいと言われたが、全て断っていた。

 

 

そして、古城や集達は最後の2匹の引き取り手の元へと猫を連れて行っていた。当然、雪菜や夏音も一緒である。最後の引き取り手は古城と集、いのりのクラスメイトである内田遼という男子学生だった。その隣には付き添いとして現在彼と交際中である棚原夕歩という女子生徒も一緒だった。

 

 

 

「すまんな、内田。助かるぜ」

 

 

「いいって。ウチの家族全員動物好きだしさ」

 

 

「けど、暁や桜満君が中等部の聖女ちゃんと知り合いって、初耳だったわ」

 

 

知り合った時の状況を思い出し、集は苦い顔をする。まさか、古城のシスコ――心配性が発動し、屋上に突入したのが切っ掛けなどと言えるはずもなく、そういった表情をした訳なのだが……

 

 

「えっと、棚原さんは叶瀬さんの事知ってたの?」

 

 

「うん、まぁね。………んーー、2人はあの子について、どのくらい知ってる?」

 

 

棚原夕歩は彼らとは離れた場所でベンチに腰掛け雑談している、いのり、雪菜、そして夏音をチラリと確認する。

 

 

「どのくらいって言われてもな…もしかしなくても、それを聞くのは叶瀬が居たっていう修道院が関係してるのか?」

 

 

「うん、まーね。って事は、2人とも知ってるわけね……」

 

 

「うん、見てきたよ。全焼、とまではいかなくても、大分酷い有り様だったよ」

 

 

「……そっか。やっぱまだあの時のままなんだ」

 

 

彼女は当時の火事のことを思い出したのか、表情が暗くなる。それを見て、集と古城は所在無さげに頬を掻くだけだったが、彼女の交際相手である内田が彼女の背中にそっと手を置くことで、調子を取り戻したようだ。

 

 

「ん、ありがとう、遼」

 

 

「いいよ、夕歩」

 

 

「なぁ、棚原。別に無理して教えてくれなくてもいいぞ?」

 

 

「ううん、折角あの子と仲良くなった2人には知っておいて欲しいんだ。あの子のいた修道院が火事になったのは、さっき言った通りなの。その時、さ………生き残ったのって、あの子1人だけだったんだ」

 

 

「「……っ」」

 

 

「あの修道院の近くって私の家があって、よくあそこの子達と遊んであげてたからさ。だから、あの子の顔を見ると修道院の子達の顔が浮かんじゃって、それ以来疎遠になっちゃってたんだ。別にあの子が悪い訳じゃないのにね。だから、さ……2人は仲良くしてあげてね?」

 

 

 

 

 

内田遼と棚原夕歩は仔猫の入ったダンボールを抱えて、学園を後にした。残された古城と集はなんとも言えない表情で、気まずそうに向き合っていた。

 

 

「……責任重大、だね」

 

 

「はぁ………まったくだ。けどよ、少しでも心の傷?ってのを何とかしてやりたいとは思う」

 

 

「うん、そこには同意する。……けど、古城の場合、それでまた浅葱さんとか姫柊さんとかから嫉妬されて、それのお鉢が僕や基樹に回って来そうなんだよなぁ……」

 

 

「ん?どうした、桜満?なんか言ったか?」

 

 

「別に?ただ、古城もこれから大変だろうなぁ、って」

 

 

「んん??いや、これ以上大変になる様なことねーだろ」

 

 

古城は自らがフラグを立てた事に気付いて居らず、ただ集は気付いてしまった為に、また監視役としての仕事が増えそうだと肩を落とすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、仔猫を全て引き取ってもらって少しの時間が経過し、今は夕方である。アイランド・サウスのマンション703号室で、集はなぜか甚平(じんべい)を着ており、リビングで待機していた。と言うのも猫を引き取ってもらった後、夏音が帰宅し、集たちも帰ろうとしたところで那月に呼び止められたのだ。

 

 

那月曰く、『蛇遣い』が嫌がることをしたい、という訳の分からない理由で、古城と集はそれぞれ指示を受けたのだ。古城がどういった指示を受けたのかは、集の与り知らぬところだが、集が受けた指示は今日開催されるという縁日への参加という事だった。公社からの了承は得ているとの事で、集はそれを承諾した。そういう訳で集は着替え終わり、リビングで待機しているのだ。

 

 

では、彼は何を待っているのか?それは勿論、いのりの着替えである。那月が、参加するならば服装もそれらしくして来る様に、との事で有無を言わさず浴衣と甚平を与えてきたのだ。

 

 

集が着ているのは一般的な、薄い紺色の甚平である。作りが簡易的な為、着替えにはさほど時間を必要としなかった。一方、いのりの方は慣れない浴衣であるのも相まって、着替えに少し苦戦していた。ネットなどで調べつつ、何とか着替えや髪のセットやらを終わらせるのに20分以上掛かっていた。そして、ガチャリといのりの部屋の扉が開き、集は振り返り息を呑む。

 

 

 

「集、お待たせ」

 

 

「あ、う、ううん!ぜ、全然待ってないよ!?」

 

 

「そう?」

 

 

「も、もちろん!」

 

 

いのりは白を基調にした浴衣に身を包んでいた。裾には黒と赤の波模様がアクセントであしらってあり、そこから上へと行くと、淡い色彩で桜の花びらが刺繍されている。また、髪型も普段の二つ留めでなく、後ろで一つに結い上げていた。髪留めも普段のオレンジと赤の物ではなく、桜の花が装飾された簪を使っている。

 

 

「…似合ってない?」

 

 

「う、ううん、全然!!む、むしろ似合いすぎてるというか…………綺麗、だよ」

 

 

集は若干舞い上がっている頭で、今できる精一杯の賛辞を送る。それ程に、今のいのりの姿は素晴らしかったのだろう。

 

 

「ふふっ…嬉しい」

 

 

「あ、う、うん……」

 

 

自然に溢れたいのりの微笑みは、集にとって破壊力バツグンであった。そこは惚れた弱味なのだろうが、今の彼にとってはどうでもいい事である。それよりも、ここまで来ると一つ心配事も出てくる。いのりの容姿は言わずとも知れた美少女である。そんなものは、集自身把握している。それが、めかし込んで夜の祭りを練り歩けば、どうなるかは想像に難くない。

 

 

集は未だに若干トリップしている脳を何とか正常に戻し、静かに気合を入れ直す。ここは、あくまで魔族特区である。大抵の魔族ならば生身の状態の集でも相手取れるが、お隣の第四真祖の様な例もある。気を抜いてはならないだろう。と言っても、いのり自身の戦闘能力もだいぶ高いので、その心配は杞憂な気もするのだが………

 

 

 

「じゃ、じゃあ、行こうか」

 

 

「ん」

 

 

いのりが了承し、2人は玄関の扉を開け外へ出る。集は未だに夏の雰囲気がある、ムワッとした空気に顔を一瞬顰めるが、これからの事を思えばそれは瑣末な問題だ。そう思い、改めて自分の後ろにいる最愛の人物へ振り返り、互いに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイランド・ノースは工場や研究所などが集中している一風変わった地区である。2ヶ月ほど前に、『サルト』絡みの一件が起こった地区でもある。あの一件で起こった破壊の爪痕はほぼ癒え切っていた。その辺は流石は最新鋭の技術が集まる魔族特区である。

 

 

 

そして、叶瀬夏音の住居もこの少し殺風景な地区にある。義理の父親と二人暮らしだが、義父が帰ってくる事は滅多にない。だが、ここ最近は勝手が違っていた。頻繁に義父と顔を合わせる様になっていたのだ。義父に連れられて、研究所まで数日おきに検査という名目で連れ出されるのだが、その間の記憶は朧げである。だが、何か恐ろしい事をしているのだという予感はあった。

 

 

さらに、自分の身体に小さいが変化があったのだ。以前より食欲は減衰し、物を食べても味の感じ方が鈍くなっているのだ。まるで、自分の身体が人間のそれとは大きくかけ離れていっている様な、そんな感覚を味わっていた。だが、彼女は優し過ぎた。自分の身体に起こっている事を義父に聞く事など出来ない。心配をさせたくはないのだ。

 

 

そして、今日も携帯の画面が光る。液晶画面にはメールの着信を報せるものが一件だけ表示されていた。いつもの通りの呼び出しである。

 

 

 

 

夏音はふと、机に飾られ今や宝物になった、3日前に撮った集合写真を見る。

 

 

 

斜め上の角度から撮られた写真であり、全員が全員上を見上げる様に此方に視線を向けている。中心に夏音、その右隣にはクラスメイトの少女、左隣には淡い桜髪の先輩がそれぞれ仔猫を抱いて、此方を見ている。そのさらに外側にはカメラの持ち主であるダークブラウンの髪色の少年が慌てた様子で写真に入っている。セルフタイマーに間に合う様に急いで入った結果がそれであった。

 

 

そして、その反対側にはダンボール箱に沢山の仔猫を入れ、抱えているパーカー姿の少年がいた。ダンボールの中の仔猫が好き勝手に、彼にじゃれ付いて木登りをしている。それに苦心している様な表情で写っており、写真の中のその様子を見て、夏音はふっ、と自然に笑みが溢れた。今の彼女にとっての心の拠り所なのだ。

 

 

 

 

 

写真から目を離さず、そして表情はそのままに、一雫の温かい液体が彼女の頬を伝って落ちていく。

 

 

 

「助けてください……雪菜ちゃん、いのりさん、桜満さん…お兄さん…」

 

 

窓から差し込む月の蒼い光が、床に落ちた雫を照らしていた。

 

 

 

 




夏祭り本チャンまでいかなかった・・・


そして前半と後半の温度差・・・


さて、毎度感想ご指摘ありがとうございます!楽しみながら読ませて頂いております。感謝感謝!


色々と感想が溜まってきたので、再びやります。質問コーナー!


今回は「凪沙の好きな人って・・・?」ってな内容の質問・・・というか疑問ですかね?


これに関しては、ズバリ・・・・・・・・・









次回語ります、はい。すいません・・・


あとは、HCLIの陣営について少し。彼らにはこれから、結構物語の深くまで関わってもらいます!(予定・・・)

その辺は乞うご期待!


ではでは、また次回までしばしお待ちを!

アリーヴェデルチ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。