Blood&Guilty   作:メラニン

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まさか、この章が20話までいくとは・・・


まぁ、キリがいいですね。


今回は、いつものように(?)後日談です。


では、どうぞ!


戦王の使者編XX

絃神島の広範囲に優しい歌声が響き終わったなか、人工増設島(サブフロート)の様子を覗き見る一団があった。

 

 

1人はプラチナブロンドの長髪を靡かせた若い白人女性であり、常夏の太陽の下、うすら笑いを浮かべている。そして、その隣に居るのは金髪碧眼の白スーツの青年だ。さらに、その人物を挟んで、ヘッドフォンを首から提げた茶髪のツンツン頭の少年がいた。

 

 

年齢、人種、種族、ありとあらゆるものがバラバラの組み合わせであり、彼らが一堂に介するのは珍しい事である。

 

 

「ふゥ~~ん、あの結晶は彼女の歌に反応するみたいだネ。今回ナラクヴェーラを停めたのはそれを使ったからか。ハハハ、中々面白い力だネ。あれが『2枚目』か」

 

 

「………出来ればこの事は――」

 

 

「ハハ、分かっているさ。こんな獲物をジジイ共に譲る訳がないだろウ?今回の僕はテロリスト共に船を占拠され、退避していた臆病者サ。ジジイ共からしたら、コッチのクダラナイ情報の方が喜ぶだろうサ。その辺りは、あのジジイ共の無能さに感謝だよネ」

 

 

面白そうに笑うヴァトラーとは対照的に、ココの方は若干ゲンナリしていた。因みに彼女の私兵である、ヨナとエコーは今は居ない。特区警備隊(アイランド・ガード)への応援という事で、席を外してもらっているのだ。東條も同様である。でなければ、矢瀬がここに来れなかったからという理由でもあるのだが。

 

 

「で?ココさんはどーしたんすか?さっきから、落ち込んでますけど」

 

 

「それは、嫌味かい、矢瀬少年?これが落ち込まずにいれると思う?せっかく、商品にしようと思ってたのに、全部パァにされちゃったんだから」

 

 

「いやいや、あんな危険なモン停止した方が世の為っスよ」

 

 

「本当にそう思ってる?」

 

 

「………そりゃ、まぁ」

 

 

「はぁ~~………日本人ってのはコレだから。今全世界で起きている小競り合いで、1日に何人が死んでいて、さらに、その小競り合いがどれだけの頻度で起きているか、知ってるかい?」

 

 

「………」

 

 

「まぁ、そうだろうね。私の商品はそりゃ………使われない方がいいけども、場合によってはクズ鉄にも、抑止力にもなり得る。抑止力が増えれば、こんなクダラナイ諍いもなくなると思わない?」

 

 

「だが、恐怖政治っスよね、それじゃあ」

 

 

「おや、恐怖政治じゃ悪いのかい?実際に、各『夜の帝国(ドミニオン)』は恐怖政治をやってるトコだって少なくない。それじゃいけないの?ねぇ、アルデアル公?」

 

 

「フフフ、さぁね。僕は政治なんかに興味はないんだ」

 

 

 

「ま、ちょっと話がズレたね。今はお姫様救出できてよかったでしょ?フフーフ♪」

 

 

ココはそれ以上は語る事は無いとでも言わんばかりに、視線を人工増設島(サブフロート)へと戻す。矢瀬もそれに倣うが、視線はそのままに口を開く。

 

 

「なぁ、ココさん。1つだけ聞いときたい。あんたは何の為に武器商人なんかやってんだ?」

 

 

その問いに、ココは口角を吊り上げる。矢瀬はその表情を見てはいないが、その表情はどこか薄っぺらい貼り付けた様な表情だった。

 

 

「世界平和のために」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MAR付属の総合病院の一室にて、集は目覚めた。人工増設島(サブフロート)での一件から既に丸一日が経過しており、集はその間ずっと眠っていたのだ。

 

 

ナラクヴェーラを停止させた後、集は結晶のステージ上で倒れたのだ。腹部には風穴も空いていたわけだし、連戦に継ぐ連戦で体力も限界だったのだろう。そもそも、彼自身が体育会系ではないのだ。古城ほど体力がある訳ではない。

 

 

窓から差し込む日差しと、吹き込む潮風に目を細めつつ暫くボウっとする。そうしていると、不意に病室の扉が開いた。外からは見慣れた少女が入ってくる。手に花を挿した花瓶を持っており、手に水滴が付いている事から、おそらく水を替えにでも行っていたのだろう。

 

 

誰かの服を借りたのだろうか?若干サイズの小さい、薄いコバルトブルーのTシャツに、ストライプの入ったミニスカートという簡素な格好で彼女は現れた。

 

 

集は彼女と目が合い、自然にフッと微笑む。それは、彼女も一緒だった。

 

 

「おはよう、集」

 

 

「うん、おはよう、いのり…………もう歩いて平気なの?」

 

 

集の問いかけにコクリと頷くと、いのりは花瓶をベッドの横に立て掛けて、脇に置いてあった丸椅子に腰掛ける。

 

 

「私はどこも怪我は無かったもの。検査でも問題無かったから」

 

 

「そっか………良かった」

 

 

「………それよりも、集は平気?」

 

 

「ん、何が?」

 

 

「………私が刺した傷……」

 

 

いのりは、俯きながら答える。そう、集の倒れた原因というのが、戦いの終わった後に緊張の糸が切れたというのと、腹部からの出血によって体内の血液が減った事による意識の低迷だった。だが、そこはこの島でも有数の大企業であるMARの医療施設である。完治とまではいかないまでも、傷はしっかり縫合され塞がっており、回復の兆しが見えていた。

 

 

「大丈夫、もう痛みもあまり無いし。それよりも、いのりは?」

 

 

「私?」

 

 

「うん、ナラクヴェーラの意識は確かにあの時消したけど、洗脳されてた訳だし」

 

 

「平気。………むしろ、好調なくらい。…………でも、少し不安になる」

 

 

「不安?」

 

 

俯いたいのりに、集は首を傾げる。

 

 

「………何だか、夢…みたいで。私は消えた筈だったのに………集?」

 

 

いのりは疑問の声を上げる。その原因は、いのりが膝上で握りしめていた手に、集が自分の手を重ねてきたからだ。一瞬、いのりの心臓は撥ねるようにして、大きく鼓動を刻む。

 

 

「それはこっちのセリフだよ、いのり。僕もまだ夢を見てるみたいなんだ。こんな風にまた、いのりと話せるなんて。……でもこうして、いのりに触れていて、ちゃんと君の暖かさを感じられる。だから、これは夢じゃないんだって、そう思える」

 

 

「………集」

 

 

「……いのり」

 

 

2人は改めて互いの手の指と指とを絡める。互いの存在を離したくなどないから、互いが互いの体温を感じていられるから。視線がぶつかると、2人して赤くなる辺りは、まだ初々しいだろう。だが、それでも2人は互いが互いを離したくなくて、手は繋いだままだ。そして、もう一度視線が合う――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜満ー、起きてるかー?」

 

 

「ちょ、先輩!!せめてノックくらいはして下さい!ここは病室なんですよ!?」

 

 

「そうだよ、古城君!だから、この前だって雪菜ちゃんに吹き飛ばされたんでしょ!」

 

 

「うーい、桜満ー、見舞いに来たぞー?」

 

 

「桜満君、起きてるー?あ、そうだ、基樹。フルーツ忘れたわ。あとで買ってきて」

 

 

ドアが開くと、ガヤガヤと大所帯の集団が入って来たでは無いか。病室にいた集と、いのりも流石に急いで手を離し、何も無かった体を装う。

 

 

集は若干なりとも、このタイミングを作り出した神を恨まずにはいられなかった。彼も一応は男なのだ。それが、意中の相手との空気をぶち壊されれば、腹も立つというもの。いのりは、彼女が今まで生まれてきて初めてと言えるほど、心臓の拍動が早鐘の様にバクバクと鳴っていた。彼女は頬を染め上げ、心臓を押さえつける様に、手で胸を押さえる。

 

 

「お、楪も来てたのか。って、桜満も目が覚めたんだな?」

 

 

「桜満先輩、おはようございます。ご気分如何ですか?」

 

 

「えーーと………と、取り敢えず、おはよう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは絃神島。『焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)』と『罪の王』が存在する魔族特区。そして、『罪の王』の『妃』たる彼女がいる島である。

 

 

 

 

 






惜しい!あともうちょいだったのに!(笑)


さてさて、前半ではややきな臭い事になってましたね。あれが如何なっていくのかも、今後楽しんで頂ければと思います。


さて、次回からは天使炎上編のスタートです!


次回更新は年明けですね。



ではでは、読者諸兄の方々!本年は本作にお付き合いいただき、誠にありがとうございました!来年も、本作をお楽しみいただければ、幸いです!


よいお年を!!!




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