Blood&Guilty   作:メラニン

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・・・やっちまった。急転直下。


今回は短めです。


では、どうぞ!


戦王の使者編XV

「いのりーーーー!!!」

 

 

集は『女王(マレカ)』のコックピットを斬り裂き、遂に彼女を見つけた。コックピットに固定されているのか、少し苦しい表情をしながらも、彼女は眠っていた。だが、『女王(マレカ)』の周囲の瘴気が晴れた事により、『女王(マレカ)』は外敵を排除しようと暴れ始めようとする。

 

 

「っ、やっぱり、まだ動くのか!」

 

 

「これを使え、桜満集!」

 

 

上空から声が聞こえ、そちらへと視線を向ければ、何処かで見覚えのあるスマホが、集目掛けて飛んできた。それをキャッチすると、集は改めて上を見る。そこには日傘をさして、こちらを見下ろす小柄な担任教師の姿があった。

 

 

「その中にあるのは、ナラクヴェーラの停止コマンドだ!そいつでナラクヴェーラは自壊する!さっさと、それを放り込め!」

 

 

『早くしな、桜満の兄ちゃん。でないと、せっかく開いた突破口が塞がっちまうぜ?』

 

 

これまた聞き覚えのある合成音声が、自分の持つスマホから聞こえた。それに従い、集はスマホを放り込む。

 

 

「うあっ!」

 

 

グラリとバランスを崩した『女王』から、集は足を滑らせ落下する。が、地面へとぶつかる前に、那月の魔法陣が展開され、事無きを得た。そして、集はすぐ隣に立つ那月を見上げると、礼を言う。

 

 

「ありがとうございました、南宮先生」

 

 

「構わん。それにしても、貴様も無茶な事をやるものだな……」

 

 

「あはは………」

 

 

「桜満ー、無事かー!?」

 

 

背後からは古城たちが駆けてきた。3人が3人とも、服装などはボロボロではあるが、大して大きな怪我はしていない様だ。というよりも、実はその原因の大部分は古城の放った眷獣による二次被害の部分が大きかったりするのだが、彼の傍にいる少女二人は、言っても仕方がないと、半分あきらめていた。

 

 

「うん、僕は大丈夫だよ。っと、そうだった!いのり!」

 

 

古城へと手を振って返すと、集は目の前で横たわる巨大な古代兵器の残骸に乗っかり、彼女のいる筈の場所を目指す。集の付けた斬り裂いた跡は未だに残っており、その跡の隙間からは彼女の顔が見えた。集は未だに具現化していたハサミの柄で石化した外装部分を叩き、崩していく。いのりを固定している拘束具も砕き、集はいのりを抱え上げる。

 

 

集の腕の中で、いのりは未だに眠っており、起きる気配はない。だが、その穏やかな表情を見て、集は膝をついた。安心した事で、力が抜けたのだろう。無理もない筈である。集はいのりを抱きしめ、その目からは安堵による涙が浮かぶ。

 

 

「……よかった……いのり………無事で…よかった………………」

 

 

切れ切れにそう口にする集の頬には涙が伝い、『女王(マレカ)』であった残骸へと滴り落ちる。

 

 

その様子を、古城、雪菜、紗矢華、那月は優しげに見守った。ようやく、再会できた2人なのだ。少しは彼らだけの時間を作ってやろうと思うのは、当たり前の心情だろう。

 

 

そして、集たちの方からは目を離し、今回の一件の首謀者であるガルドシュへと視線を向ける。

 

 

「さて、貴様には幾つか吐いてもらいたい情報もある。いいな?」

 

 

「ハハ、いい気なものだな、『空隙の魔女』よ」

 

 

「黙れ、ネコ風情が。貴様の罪状は上げればキリが無いぞ?精々法廷で裁かれる事だな。良くて終身刑だろうがな」

 

 

 

 

 

 

「法廷?終身刑?クク……ハーハハハハハ!!まだだ!まだ、私は負けてなどおらんよ!」

 

 

「何を言っている。捕まって、気でも触れたか?」

 

 

「いや?私は至って平静を保っているさ。…………フフ、まだ終わっていないという事だ、『空隙の魔女』よ」

 

 

「……貴様何を企んで――」

 

 

那月が言い終わるよりも早く、雪菜が叫ぶ。雪菜の剣巫としての特性である、先詠みの霊視である。その能力が警鐘を鳴らすのだ。最悪の未来を雪菜へと見せたのだ。普通に考えればあり得ない。今だけは、こんな未来を見せた己の能力を恨んだ。せめて、間違いであって欲しいと、これ程に願った事はない。こんな事などあってはならないと、その未来を頭で否定する。だが……

 

 

「桜満先輩!いのりさんから――」

 

 

雪菜は叫ぶ。彼女だけが見た未来を危惧して。

 

 

だが、もう既に遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集は何が起きたのか分からなかった。いや、正確には分かりたくなかったのかもしれない。幻でも見ているのだと、そう思いたいし、そう感じていたかった。

 

 

まず、左脇腹辺りに鈍い熱さが走った。そして、その熱さの後、ジクリと痛みが広がってきた。それはどんどん同心円状に広がっているようで、遂には背中にも達し、次はそこが熱くなった。よく注意して感じてみると、どうやら自分の身体の中に何かがあり、それは左脇腹を貫通し、自分の後ろの方へと突き出ているのだろう。

 

 

患部を見てみれば、何かが自分を貫いているのだ。今自分が抱き締めていた彼女の細い腕の手の甲から、薄紫色をした結晶が鋭く伸びており、それが自分を貫通しているのだ。

 

 

「………え?」

 

 

集の口から漏れ出したのは只々、間の抜けた疑問の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は苦しんでいた。自分の中に別のナニカがいるのだ。それに抗い、必死にもがいていた。闇の中を泳ぎ、少しも進まない事を恨めしく思いながらも、それでも進むしか無かった。さっき彼女は確かに彼の顔を見たのだ。それを目指して必死に進む。ただただ、がむしゃらに。

 

 

そんな中、右手に何か温かい物が触れた。闇で見えないが、おそらく液体状の何かなのだろう。それを手繰り寄せるようにして、彼女は意識を浮上させる。

 

 

遂には、彼女は目を開き、自分の捉えている視界が目に入る。だが、どうにもオカシイ。手が、足が、首が、指が、身体の全てが言う事を聞かないのだ。自分の動かしたい方向に動かず、勝手に動く。ただそれでも、彼女の視界は彼の顔を捉えていた。

 

 

だが、その表情はまるで信じられない物でも見る様な目だ。どこかに絶望が宿っている様にも見える。その困惑した表情は、彼女にも伝染する。背筋に嫌な汗が吹き出し、そして彼女の視界は下へ下へと勝手に動いていく。

 

 

今度は彼女が絶望をする番であった。自分のその手が、その手から伸びた薄紫色の結晶が、彼を貫いていたのだから。自分の意識を引っ張り上げた温かい液体状の何かは、彼の血液だったのだ。

 

 

もしかしたら、彼女は起きるべきではなかったのかもしれない。少なくとも今は。今という、この最悪な時だけは……

 

 

もし、これが作為的なものならば、ソレはとてつもなく、冷酷で、残忍なのだろう……

 

 

しかし、彼女の目に映ったものは事実なのだ。どうしようもないほど、現実なのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「a………あ………い…………あアahーーーーー!!」

 

 

 

 

 




・・・・・・描写大丈夫ですかね?


さて、まだまだ、いのりは救い出せていません。


ちょい強引ですが、集にはまだ無茶をしてもらいましょう。頑張れ、集!


それはそれとして、質問コーナー!

質問の中に「男の血や輸血パックではダメなのか?」といった要旨の質問を頂きました。

どっかで多分書いたと思いますが、吸血鬼の吸血衝動は性欲なわけですね。つまり、それだと古城はガチの変態になりなす。輸血パックに欲情してるってことですから(笑)

ご質問ありがとうございました


ではでは、また次回!

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