Blood&Guilty   作:メラニン

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・・・本当に、一体何話になるんだ、この章・・・


描いてて終わりが見えづらい・・・


さて、今回から結構ガチな戦闘回です。


では、どうぞ!


戦王の使者編XIII

 

人工増設島(サブフロート)から離れた洋上のメガヨットの甲板にて、南宮那月は舌打ちをし、忌々しそうに今しがた逃した古代兵器を睨み付けていた。

 

 

「流石は外道だな。仲間であっても容赦なく打つとはな」

 

 

彼女の側には気絶した浅葱が横たわっていた。あの瞬間、那月は浅葱だけ連れて甲板へと一気に転移したのだ。すると、いきなり浅葱の手の中にあるスマホが鳴り、画面にはヌイグルミをツギハギにした人形型のアバターが表示された。

 

 

『ありゃ、何だ。そこに居るのは先生さんだけか。お嬢は気絶しちまったのか』

 

 

「何の様だ?私は今機嫌が悪い。大した用でなければ、今すぐ貴様を海の底に沈めるぞ?」

 

 

『おー、コエーコエー。折角5()5()()()の制御コマンドを渡そうと思ったのによ、けけっ』

 

 

「……何?」

 

 

『さぁ、どうする?使うかい?』

 

 

那月はモグワイの態度にイラっとしながらも、浅葱の手からスマホをむしり取る。

 

 

「………効果は確かなんだろうな?」

 

 

『おいおい、電子の女帝の仕事を疑うのかい?』

 

 

「フン、気に食わん奴だ」

 

 

『けけっ』

 

 

次の瞬間には、常夏の太陽が照りつける甲板の上からは誰も居なくなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイランド・イーストの人工増設島(サブフロート)人工島(ギガフロート)側から臨む人物がいた。潮風に金髪を靡かせ、瞳の奥の碧眼には闘気が宿っている。そして、その彼の背後から近付く人物たちがいた。先頭に立つ人物だけが女性であり、それに追随するように、褐色の肌をした少年と、屈強そうな邦人男性、白人男性が立っていた。少年の方は、青年の危険な香りを直感で感じたのか、自らの武器の安全装置を外す。

 

 

「ふゥ、まったく、君のような人間もここに来るとは、やはり特異点が多く集まると、何かが起きるようだネ。僕としては心躍るんだけどサ」

 

 

ヴァトラーはどこか嬉しそうな声を上げる。そして、背後の先頭に立つ人物が口を開く。

 

 

「これはこれは、お久しぶりです、アルデアル公。如何ですか?楽しんで頂けているでしょうか?フフーフ♪」

 

 

「ハハ!そうだネ、見世物としては中々に楽しめるものだ。まァ、直接参加できればもっと嬉しいんだけどネ。………君だろう?今回、実質特区警備隊(アイランド・ガード)に指示を出していた上に、古城たちが渡ったのを確認し、人工増設島(サブフロート)人工島(ギガフロート)を切り離したのは?お陰で、僕の出る幕が無かったヨ。折角、彼から古城の事を頼まれていたのに」

 

 

「さて、何のことでしょう?」

 

 

「フフフ、そういう事にしておくサ。さて、我が愛しの第四真祖と、『ジョーカー』はどう出るのか。ここからユックリ眺めさせて貰うとしようじゃないカ」

 

 

ヴァトラーはただ人工増設島の上空に新たに出現した緋色の眷獣と、『オシアナス・グレイブ』の外壁を壊し出てきた古代兵器だけを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………アンタ、本当に傍迷惑な事しかしないのね」

 

 

紗矢華は今しがた登ってきた、新たなクレーターを振り返り、呆れた様にコレを作り出した元凶を、若干蔑む様な目で見る。そして、その元凶とされる少年は疲れた様な顔で抗議する。

 

 

「仕方ねーだろ。文句なら今も、騒音撒き散らしてるアイツに言ってくれ」

 

 

古城は上を見上げると、そこにはようやく霊媒を得た事で喜ぶ様にしている緋色の双角獣(バイコーン)が鎮座していた。体自体が振動で出来ているその眷獣は周囲に高周波を撒き散らしながら実体化しているのだ。故に、実体化しているだけで周囲に騒音を撒き散らす傍迷惑な存在と化している。

 

 

「はぁ……まぁ、いいわ。それよりもお客さんみたいよ?」

 

 

「客?」

 

 

古城が疑問符を浮かべるよりも早く、赫々と光るソレは新たな眷獣へと直撃する。濛々と煙が立ち上るが、そこから出てきた眷獣は健在だった。それもそうだろう、かの眷獣は体全体が振動で出来ている。さらに、目醒めたばかりとはいえ、第四真祖の眷獣である。そこら辺の古代兵器ではキズ一つ付ける事は出来ないだろう。

 

 

「……さっきの奴と形が違うな。あれが指揮官機って奴か?」

 

 

「多分そうよ。ほら、あそこ首の付け根みたいなトコに、ラスボスが立ってるわよ」

 

 

「何で外なんだ?確かアレは有人機の筈なんだが……」

 

 

「知らないわよ。とにかく、このままヤラレっ放しってのは第四真祖としてどうなの?」

 

 

紗矢華の物言いに呼応したのか、緋色の双角獣(バイコーン)の眷獣はまるで攻撃命令を急かす様に、古城に向けて鼻を鳴らす。それを古城も確認し一つ息を吐くと、右手を翳し腕が赤黒く染まり、赤い幾何学模様が走る。

 

 

「ったく、分かってるっての。――『焔光の夜伯(カレイド・ブラッド)』の血脈を継ぎし者、暁古城が汝の枷を解き放つ!疾く在れ、9番目の眷獣!『双角の深緋(アルナスル・ミニウム)』!」

 

 

待っていたと言わんばかりに、『双角の深緋(アルナスル・ミニウム)』は双角を響かせ、強烈な高周波をぶつけようと上空から空を蹴り、戦場を駆け抜ける。そして、巨大な高周波の塊がナラクヴェーラの女王を襲おうとする。

 

 

だが、ナラクヴェーラの女王に掴まる様にして乗っているガルドシュは不敵に笑った。古城が警戒するが、その不安の正体を目の当たりにして、古城の脳内は一気に掻き乱される。

 

 

「………何でそこに居るんだ、桜満!!」

 

 

そう、『双角の深緋(アルナスル・ミニウム)』の直撃を防いだ者が居たのだ。巨大な盾を展開し、『双角の深緋(アルナスル・ミニウム)』の攻撃を正面から弾いて見せたのだ。

 

 

「桜満集!?な、何で向こう側に居るのよ!?」

 

 

「俺が知るか!………おい、桜満!何をやってんだ!?」

 

 

集は聞こえていないのか、古城たちの方へは見向きもせず、ガルドシュと話し始める。古城は一旦『双角の深緋』の実体化を解くと、集たちの話を拾うために耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集は古城の攻撃を防ぐと、自分の背後にいるガルドシュと対峙する。集の足には『エアスケーター』が装備されており、宙を浮遊しガルドシュと同じ目線に居る。集は嫌な予感がし、『オシアナス・グレイブ』から一気に飛んできたのだ。そして、その予感に従い、古城の攻撃を防ぎ、今に至るというわけだ。古城には後で説明するとして、今はこちらの方が重要であった。

 

 

「クリストフ・ガルドシュ…今その機体には誰が乗っているんですか?」

 

 

 

「…………」

 

 

ガルドシュは沈黙で答える。それで十分だろう。だが、集はそれでも、その真実だけは認めたくなかった。

 

 

「答えろ!一体誰が乗っているんだ!?」

 

 

「大変心苦しいが、おそらく君が想定する中でも最悪のケースとだけ言っておこう。――やれ、歌姫(ディーヴァ)。いや……『女王(マレカ)』」

 

 

歌姫(ディーヴァ)って……そ、それじゃあ――ぐあっ!!」

 

 

集は『女王(マレカ)』と呼ばれた機体の脚の内の一本による一撃を横から受ける。何とか『あらゆるものを弾く盾』で防御するが、相手の生み出す運動エネルギーの方が大きかったのだろう。衝撃を消しきれず、ガルドシュの居る反対方向へと吹き飛ばされる。

 

 

だが、その途中で集を受け止める人物がいた。集と壁の間に入り、その人物がクッションになる事で集自身のダメージは皆無で済んだ。

 

 

「がっ……は……!」

 

 

「こ、古城!?」

 

 

「ち、しぶといな。撃て」

 

 

ガルドシュは己の乗る機体に――正確に言えばそれを操る、パイロットへと指示を出すと、操縦席に座るその人物はその通りにパネルを操作し、古代兵器に装備されている『火を吹く槍』と呼称される炎槍を解き放つ。そして、その炎の槍は真っ直ぐ彼らを貫こうとするが、槍は弾かれた。

 

 

集と古城の前には、その絹糸のような髪を後ろで一本にまとめた少女が、銀の長剣による空間断裂の防御を発生させ、槍の直撃を防いだのだ。

 

 

「まったく、これだから男共ってのは………暁古城、桜満集、2人とも無事?」

 

 

「ぐ…う………すまん、煌坂。助かった………おい、桜満、大丈夫か?」

 

 

「……ごめん、助かったよ、古城」

 

 

「まぁ、それは良いんだが、何で俺の攻撃を防いだんだ?」

 

 

「………多分、あの機体に乗っているのは………いのりなんだ」

 

 

「な、何でそれが攻撃して来るんだよ!?その楪いのりって子は、桜満の知り合いなんだろ!?」

 

 

「………分からない。けど、多分普通の状態なんじゃ無いと思う」

 

 

「それは多分正解よ、桜満集」

 

 

紗矢華は長剣を構えたまま、前を向き警戒している。火の槍を放って以降、『女王(マレカ)』は沈黙しており、まるで何かを待っている様だ。しかし、古城たちにとって状況を整理する為には、またと無いチャンスだった。

 

 

「人を操る呪術なんてザラに有るんだし、別に呪術じゃなくても、科学的に人を操る事は可能よ。もし、その子が正気で無いのなら、その線が濃厚じゃ無いかしら?」

 

 

「お、おい、煌坂」

 

 

「いいんだ、古城。……えっと確か煌坂さんだっけ?ありがとう、教えてくれて。けど、いのりが自分の意思で攻撃して来てないって分かっただけ、ありがたいよ」

 

 

「いいわよ、別に。その子の事、雪菜も気にしてたみたいだしね。あのポンコツを壊すついでに、キッチリ救ってあげるわよ!」

 

 

紗矢華は、改めてガルドシュを睨みつける。が、その威勢を嘲笑うかの様に、周囲には巨大な物体が這い上がる様にして現れた。ガルドシュはこれを待っていたのだろう。最低でも6体のナラクヴェーラが彼らを囲んでいたのだ。

 

 

「………なるほどな。俺らが話してる間に仕掛けて来なかったのは、こういうわけか」

 

 

「そういう事だ、第四真祖。さて、どうする?」

 

 

ガルドシュは指示を出し、それに従いナラクヴェーラが一斉に火を噴く。集と紗矢華はほぼ同時に動き、紗矢華は前方を、集は後方をそれぞれ守る。だが、さらにその外から跳んできた一機がいた。それは、古城たちの真上へと差し掛かり、頭頂部の発射口が赤熱し始める。

 

 

「しまっ――!」

 

 

これが敵の狙いだったのだろう。守りの手が一手足りない。ガルドシュは初めからこれが狙いだったのだ。ガルドシュはこれで決まったと思い、ニヤリと口角を釣り上げる。だが、その通りにはならなかった。それは、別方向から飛び出してきた小さな影が原因だ。

 

 

「『雪霞狼』!」

 

 

その小さな影は銀の機槍の矛先を、空中に躍り出たナラクヴェーラに叩きつけ、一気に突き飛ばしたのだ。そして、その後は重力に従い鮮やかに着地する。

 

 

「無事ですか、先輩方、紗矢華さん!」

 

 

「姫ら――」

 

 

「雪菜ーー!!」

 

 

「わっ、さ、紗矢華さん!?」

 

 

紗矢華は雪菜が着地するなり、飛び付いた。相変わらずの豹変ぶりに、集も古城も若干呆れ気味である。

 

 

「あぁ、雪菜、雪菜!大丈夫?怪我してない?テロリスト共から変な事されなかった?」

 

 

「あ、あの、紗矢華さん!今はこんな事してる場合では……」

 

 

「雪菜、あの『空隙の魔女』に無理難題吹っかけられなかった?無茶はしてない?」

 

 

「あの、紗矢華さん、本当に……………………………………その傷」

 

 

紗矢華は雪菜に近付き過ぎていた為に、せっかく隠していた首筋の赤い斑点のような傷跡が、雪菜に露見してしまった。その目敏さは、彼女が剣巫であるが故なのか、それともその胸の内にある感情が原因なのかは定かではないのだが……紗矢華もそれに気付き、雪菜からバッと離れる。首筋を押さえ、雪菜に見られた事で一気に顔が真っ赤になり、その整った表情が羞恥でワナワナと歪む。

 

 

「あ、え、えと……ゆ、雪菜、違うのよ?こ、これはね、えっと…………………ふ、不可抗力と言うかね、何と言うかその…」

 

 

「新しい眷獣を見て、まさかとは思いましたが………先輩?紗矢華さんの血を吸ったんですね?」

 

 

雪菜はまるでゴミでも見るような目で古城を見る。古城は何か言い訳を考えている様子ではあるのだが、うまい考えが浮かばないようで、しどろもどろしている。

 

 

「はぁ………けど、いいですよ。先輩から目を離してしまった私にも責任はありますので」

 

 

「い、いいのか?」

 

 

「無理矢理に紗矢華さんから吸ったんでは無いんですよね?なら、結構です。その程度には先輩の事を信用してますから。………それに今は、楪いのりさんを助けるのが先決ですから」

 

 

「ハハハハハ!さすがは、獅子王機関の剣巫だ。肝が座っている。だが、どうする?君らはこの機体を攻撃できないだろう?」

 

 

ガルドシュは敵意を剥き出しにして、『雪霞狼』を構える雪菜を嘲笑う。だが、その笑い声や態度を吹き飛ばすような暴風がガルドシュを襲う。辛うじて飛ばされないように、ガルドシュは指揮官機である『女王(マレカ)』にしがみ付き、事なきを得た。

 

 

ガルドシュが視線を前へと向けると、全身に稲妻と振動を纏った古城が右手を翳していた。眷獣を一部実体化し、『女王(マレカ)』の隣にいた二機のナラクヴェーラを、ガルドシュの後方へと吹き飛ばしたのだ。力の片鱗でもこの威力を発揮するあたり、流石は第四真祖という事なのだろう。

 

 

だが、ナラクヴェーラの方も負けてはいない。彼らも曲がりなりに、神が創造した神創兵器なのだ。吹き飛ばされはしても、破損箇所は元素変換で修復してしまっている。

 

 

「………流石は第四真祖。だが、ナラクヴェーラも負けてはいない!好きなだけ撃ってこい!こいつらは何度でも修復し、貴様らと戦うぞ!」

 

 

「だったら、修復できなくなるまで、何度だって吹き飛ばしてやる!ここから先は第四真祖(オレ)戦争(ケンカ)だ!」

 

 

古城は開戦の狼煙とばかりに、再び前方へと高周波による衝撃と、雷撃による攻撃を解き放つ。だが、その合間を縫ってナラクヴェーラの火の槍が飛んでくる。攻撃に集中していた古城は対応しきれない。

 

 

だが、そちらには古城が対応する必要は無いのだ。それを古城も分かっている。だからこそ、防御をする素振りすら見せない。なぜなら、火の槍は銀の機槍に一閃され、霧散したのだから。

 

 

「いいえ、先輩。私たちの聖戦(ケンカ)です!」

 

 

古城の右には雪菜が『雪霞狼』を構える雪菜が立つ。そして――

 

 

「今回ばかりは、罪の王(ボク)決戦(ケンカ)でもある!」

 

 

彼らと並ぶ様にして、集が『女王(マレカ)』と対峙した。

 

 

 

 







はぁ゛ーーーー・・・・・・・・


相変わらず、戦闘描写って難しい。


因みに、最後の集の口上は勝手に作りました。ほら、王様が戦う場合って、総力戦だとかそういう重要な、決戦とも言える場合が殆どじゃないですか?と言うわけでこういった口上にしました・・・


ではでは、また次回!

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