Blood&Guilty   作:メラニン

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ストブラのOVA見ました。色々と笑えましたね。総じて面白かったです。


さて、今回も今回であまり話が進みません。・・・まずいよなァー、何とかしないと・・・


それはさておき、ではぞうぞ!


戦王の使者編IX

 

集は焦っていた。アイランド・イーストの東端に設置されている人工増設島(サブフロート)で爆発が起き、火の手が上がったからだ。ヘリの飛んで行った方角とも合致しており、状況から考えてもあそこに黒死皇派が居るのだろう。そして、彼自身にとって掛け替えのない存在である、いのりも。

 

 

それを思い、集は自らの足を覆っている『エアスケーター』に力を籠める。

 

 

そして、その隣を涼しい顔で並走している人物がいた。

 

 

「やれやれ、速いなァ、君は」

 

 

先程まで戦闘を繰り広げていたディミトリエ・ヴァトラーである。火の手が上がった途端にヴァトラーは攻撃を止め、現場へと向かおうと提案したのだ。当然集は警戒する。だが、集の警戒を他所に、ヴァトラーは内心ではナラクヴェーラへの関心しか無かった。彼の行動原理は、要は退屈しのぎであり、その最たるものが戦闘であるに過ぎない。であるならば、ナラクヴェーラが戦闘を起こしている場所へと向かうのは当然だろう。

 

 

「………なんで僕との戦闘を中断したんですか?」

 

 

「ハハ、おかしな事を聞くね、君は。故意にではないとはいえ、彼らを運んだのは僕だ。ならば、事態の解決へと乗り出すのは当然の責務じゃないカ!」

 

 

相変わらずの演技掛かった喋り方に、集は嘘くささしか感じなかった。だが、次の言葉を言う時のヴァトラーの様子はそうでは無かった。柔和な態度であるが、その目の奥には凶暴な闘気が宿っていた。

 

 

「まァ、それに君と本気でやり合うには時期尚早だと思って、ネ?」

 

 

集はそれを横目で確認すると、視線を再び前へと向けて一気に絃神島の空を翔け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイランド・イーストに隣接する人工増設島(サブフロート)への連絡橋付近にて、暁古城、姫柊雪菜、煌坂紗矢華の3名は立ち往生していた。人工増設島(サブフロート)へと繋がる連絡橋付近は軒並み通行規制が掛かっていたのだ。特区警備隊(アイランド・ガード)が既に戦闘を開始しており、周囲も緊張状態になっている事から、そこを通るのは困難と考えられる。が、若干止まる気配のない2人がいた。

 

 

「通行規制ですか…………ですが、状況が状況ですから仕方ありませんね」

 

 

「ええ、そうね、雪菜。特区警備隊(アイランド・ガード)には少し悪いけど眠っててもらいましょ」

 

 

「待て待て待て!!何をするつもりだ、お前ら!?」

 

 

古城はそれぞれ獅子王機関の秘奥兵器を取り出そうとする少女2名を必死に止める。

 

 

「大丈夫です、先輩。私1人だと無理かもしれませんが、今は紗矢華さんがいます。紗矢華さんの呪詛があれば、特区警備隊(アイランド・ガード)の人たちの記憶にも残らないので証拠も残りません。大丈夫です」

 

 

「何が大丈夫なんだ!?」

 

 

「何よ、暁古城!私の呪詛が信用できないって言うの!?安心なさい、キッチリ消す記憶は事件前後だけにするから。全てを消すつもりはないわ」

 

 

「だからその行動自体を止めろ!って言うか、何気に恐ろしいこと言ってんじゃねえ!!」

 

 

古城は、そういえば獅子王機関と警察組織は仲が悪いという事実を思い出した。まさか、ここにまでそれが影響しているのか、と疑いつつも、とにかく2人の暴走を必死に止める。こんなところで、前科が付いて仕舞えばたまったものではないのだ。

 

 

 

「………はぁ、とにかく人工増設島(サブフロート)に渡れればいいんだろ?だったら俺に考えがある。コッチだ」

 

 

そう言って古城は、通行規制が行われている連絡橋から離れた位置へと移動していく。雪菜と紗矢華の2人も少し訝しみながらも、古城へと着いて行く。そして、移動した先は人工島(ギガフロート)人工増設島(サブフロート)を海で隔てた場所だった。

 

 

古城はそこに立って、ジッと対岸である人工増設島(サブフロート)側を見る。

 

 

「……ざっと7、8mってとこか?」

 

 

人工増設島(サブフロート)までのおおよその距離を目算で測った古城は徐ろにストレッチを始める。

 

 

「ちょっと、暁古城!あんた、考えがあるって言ってたわよね!?ここ何もないじゃない!」

 

 

紗矢華は古城を思いっきり怒鳴りつけるが、この一ヶ月近く彼を監視してきた雪菜は一抹の不安を覚える。これから古城がやろうとしている行動を何となく予想してしまったのだろう。

そして、その予想に確証を持たせるかのように、古城の瞳は焔光の輝きを持つ。

 

 

「あ、あの、先輩?嫌な予感しかしな――きゃあっ!?」

 

 

「な、ななな!?何して――わわっ!?」

 

 

「っと。2人いけるか?……まぁ、多分大丈夫だろ」

 

 

古城は雪菜と紗矢華をそれぞれ、右腕と左腕で抱え上げた。手の部分で膝裏を持ち、腕全体で体を支えている。言うなれば、腕に人を座らせている様な状態だ。故に、雪菜も紗矢華もバランスが崩れ、古城の頭にしがみ付いた。

 

 

「せ、先輩!?や、やろうとしている事は分かりますけど、これは無茶だと思うんですけど!思うんですけど!」

 

 

「え、え!?どうなるの!?どうなるの、私!?ってか、離しなさいよ、暁古城!」

 

 

紗矢華がジタバタと古城の腕の上で暴れ始め、ポカポカと古城の頭を殴る。それに古城は苦心しつつ、人工島の淵から助走をつける為に距離をとる。

 

 

「だぁーー!大人しく掴まってろ!舌を噛むぞ!?…………っし、行くか!」

 

 

自分の腕の上にいる少女たちの制止を無視して、古城は駈け出す。吸血鬼としての身体能力をフル活用しているので、そのスピードはその辺のアスリートの比ではない。この状況で手を離せばそちらの方が酷くなることに少女たちも気付いていた。だからこそ、雪菜と紗矢華の2人は意を決して古城の頭や首に腕を回し、ピッタリと体を密着させる。当然そんな状態であるので、古城の顔の横には女性特有のふくらみが直に当たり、一瞬吸血衝動が起き掛けるが、口内を軽く噛み自らの血を摂取することで耐え抜く。

 

 

「っ……、うおおぉぉ!!」

 

 

古城は気合の入る声と共に一気に跳躍した。彼が昔プレーしていたバスケの跳躍と同じ要領だ。当然その飛距離は通常の人間の比ではない。

 

 

落ちれば海へと真っ逆さまである状況だが、古城は何とか緩やかな弧を描き、人工増設島へと飛び移ることには成功した。が――

 

 

「っと……とと、お、落ち――お?」

 

 

若干、距離が足りなかったのか、古城の足はやや人工増設島の淵の外――即ち海の上に出ていた。古城の上にいた雪菜、紗矢華は急いで古城から降り、落ち掛ける古城の腕を掴む。雪菜は右腕を、紗矢華は一瞬躊躇ったが、左腕をそれぞれ掴み、古城は何とか海へと落ちる事態だけは避けられた。

 

 

「まったく、世話が焼けますね、先輩」

 

 

「本当よ、まったく」

 

 

「ああ、すまん――っとぉ!?」

 

 

「え、きゃぁ!?」

 

 

「ちょっ……!?」

 

 

雪菜と紗矢華は古城を引き上げる為に、古城の腕を一気に引っ張るが、2人がかりで強く引っ張った為に、勢いが強すぎ古城は前のめりに倒れた。…………雪菜と紗矢華を下敷きにして。

 

 

 

「つつ………すまん、2人とm――っ!!」

 

 

古城は自らの置かれた状況を冷静に――そう、なるべく冷静に整理する。

 

 

今古城は雪菜と紗矢華の2人に助けられたまでは良い。問題はその2人を故意ではないとはいえ、押し倒してしまっている事だ。否、本当の問題は自分の手を置いている位置だ。先ほどまで自分の顔に押し当てられていたその感触を、古城は今度は手で直接感じてしまっている。

 

 

雪菜の未だに成長途中、と言ってもしっかりと、女性らしくなり始めたそれには右手が当てられ、紗矢華の服の上から見た以上の大きさのそれには左手が当てられている。いや、当てられているというよりは、鷲掴みにしている状態と言った方がいいだろう。

 

 

煌坂って着瘦せするタイプだったんだな、とか。煌坂の方がやっぱり姫柊よりも大きいんだな、などと本人たちにバレたら殺されそうな事を思い浮かべ、古城が現実逃避している間に、古城の下にいる少女たちも自分の置かれている状況を理解し始める。

 

 

「な、なななな、何やってんのよ、暁古城!?」

 

 

「わ、悪い!わ、ワザとじゃ――」

 

 

「いいから退きなさいよっ!!」

 

 

次の瞬間にはパァンという破裂音が辺りに響いた。古城は突き飛ばされ、尻餅をつく。

 

 

「いってぇ!!」

 

 

「当たり前よ!わ、私のだけじゃなく………よ、よりにもよって雪菜の……雪菜のを触るなんて!」

 

 

「だから、ワザとじゃ――」

 

 

「………先輩?私は別に言い訳をして欲しい訳じゃないんですけど」

 

 

「すいませんでした」

 

 

古城は雪菜の視線に耐え切れず、その場で頭をさげる。正座でそれを行っているので、奇しくも土下座をしている格好だ。

 

 

「ついでに聞いておきたいんですけど、先輩…………先ほどまで私の胸を触っている間、何か失礼な事を考えませんでしたか?」

 

 

雪菜の言葉に、古城は頭を下げたまま、一瞬体が強張る。当然、雪菜がそれを見逃すはずがなかった。

 

 

「………思ってたんですね?」

 

 

「い、いやいや!べ、別に思ってなんかねえって!」

 

 

「どうせ、私より紗矢華さんの方が大きいだとか、そんな事なんでしょうね」

 

 

「エスパーか、お前は!?」

 

 

「………やっぱり、そうなんですね」

 

 

「え………あっ」

 

 

カマをかけられた事に古城はようやくそこで気付いた。古城は何とか取り繕うと急いで口を開く。だが、焦った古城の口から漏れた言葉は悪手だった。

 

 

「い、いや、でも姫柊だって、一応Cはあるんだし、それだけあれば立派――」

 

 

「っ!!最低ですっ!」

 

 

「ぶっ!?」

 

 

雪菜は少し涙目になりつつ、古城に対して制裁を加える。先ほどの紗矢華の時よりも、よっぽど大きな音が響き、古城の両頬にはくっきりと紅葉のように赤い手形が残った。

 

 

 

「なんだ、暁。今度は舞威姫か?つくづく、貴様は獅子王機関に気に入られているな」

 

 

ヒリヒリと痛む頬を摩りつつ、背後からの声に振り返ると、そこにはフリルの付いた日傘をさした那月が立っていた。そして古城が振り向いた瞬間、古城の両頬にある赤い手形を見て、吹き出した。

 

 

「ぷっ………くくく……なんだ、また事故を装って女を襲ったのか?程々にしないと、しょっ引くぞ?……くく」

 

 

「おぉい!誤解を招くような事を教師が言うな!!それに装ってねえ!純然たる事故だ!」

 

 

「まぁ、精々通報はされるなよ?私としても、教え子が犯罪者になるのは望むところではないからな」

 

 

「だから、やましい事は無えんだって!」

 

 

「分かった分かった。さて、丁度良いところに剣巫が居るな。少し借りるぞ。いいな、暁?」

 

 

那月の言葉に雪菜は自分を指差し、疑問符を浮かべる。獅子王機関と国家攻魔官である那月は互いが商売敵である為に、折り合いが悪い。その那月が自分を指名したのだ。当然そういった事情が分かっているからこそ、雪菜は疑問符を浮かべたのだ。

 

 

「あの、何で私なのでしょうか?」

 

 

「貴様が七式突撃攻魔機槍(シュネーヴァルツァー)を持っているからだ。連中の潜伏先を掴んだはいいが、場所が外交的にも呪術的にも厄介でな」

 

 

「潜伏先が分かったのか!?」

 

 

「なんだ、貴様らは分からないまま、ここに来たのか?」

 

 

「うっ……」

 

 

那月に言われ、自分たちの考えの浅さを、今更ながらに古城は痛感し呻き声をもらし、雪菜と紗矢華は目をそらす。

 

 

「はぁ………まぁいい。外交上の問題は、私の国家攻魔官と獅子王機関の肩書きがあれば、強制捜査権限が使えるから大丈夫だとして、問題は呪術結界だ。連中、ご丁寧に直接空間魔術で船内に侵入出来ないよう結界を張ってあってな。そこで――」

 

 

「『雪霞狼』、ですね」

 

 

「そういう事だ」

 

 

「ん?待てよ、那月ちゃん。今、船内って――いってぇ!!」

 

 

古城は未だ両頬の痛みが引かぬ内に、今度は額へと一撃が加えられた。こちらも、ご丁寧に赤い跡が残るように、何時もよりも強く、閉じた扇子で打ちつけられた。

 

 

「まったく、こんな時であっても、貴様は学習せんな。いい加減私の呼び方を改めろ。………まぁ、いい。とにかく、奴らが居るのは貴様らが招待された、蛇遣いの船の中だ」

 

 

「船って…『オシアナス・グレイブ』か!?」

 

 

「名前など知らん。とにかく、周囲には結界を張られている。それを斬り裂け、姫柊雪菜」

 

 

「……分かりました」

 

 

「雪菜が行くなら、私も――」

 

 

紗矢華が続きを言う前に、那月は割り込むようにして、言葉を重ねた。

 

 

「暁と獅子王機関のポニテはここで待機だ」

 

 

「「ええぇ!!?」」

 

 

そして出された言葉に古城と紗矢華は、揃って声を上げる。古城は屋上で急に襲ってきた紗矢華と2人きりなど、また攻撃される心配があるので、それは避けたいのだ。紗矢華は紗矢華で、自分の妹(分)である雪菜と仲良くする古城と共に居るなど願い下げだ。さらに、他にもある理由から、古城の事は避けたいのだ。不平を言う2人に那月は大きな溜息を吐く。それは本当に大きな溜息だ。生徒である古城もここまで大きな溜息を吐く那月は初めて見たのだ。

 

 

「はぁ~~~~~…………………………非常に癪だが、私の知り合いのウェポンディーラーの勘は恐ろし過ぎるほど当たるのでな。貴様たちは保険の意味でも、ここに残れ」

 

 

「いやいやいや!訳が分かんねえよ!何だよ、ウェポンディーラーって!?もしかして、アレか?保健室で桜満たちを助けたっていう……」

 

 

「ちっ……あいつめ、急に居なくなったと思えば、そんな所に……まぁいい。そうだ、そいつの事だ。だからこそ、待機だ」

 

 

「んな事言ったって、浅葱が――」

 

 

「しつこいぞ、暁。私がみすみす生徒を助け損なうとでも思っているのか?」

 

 

「そ、そうは思わねえけども……」

 

 

集といい、古城といい、今日は珍しく生徒が食い下がるのを那月は内心で微笑ましく思っていた。だが、コレはコレ、ソレはソレだ。

 

 

「むしろ、貴様が行く方が被害が増加しかねん。人質を取られた時の対処、室内における狭域戦闘、多対一の立ち回り、敵拠点の制圧方法、潜入時の注意etc……貴様にそれら全てができるか?」

 

 

「うっ……」

 

 

「そういう事だ。それに、コッチの剣巫1人いれば十分だろう」

 

 

「はい、問題ありません」

 

 

「というわけだ。それに下手をすれば、こっちの方が大規模な戦闘になりかねん。一応、東條をネコ共に差し向けてはいるが……」

 

 

「東條さんを?何で、東條さんが出てくんだよ?」

 

 

「何でもない、コッチの話だ。では、行くぞ、姫柊雪菜」

 

 

「はい。あ、ちょっと、待ってください」

 

 

「なんだ、早くしろ」

 

 

雪菜は断りを1つ入れると、古城と紗矢華へと近付く。

 

 

「雪菜…!」

 

 

「あ、紗矢華さんは悪いですけど、少し離れていて下さい。先輩に話があるので」

 

 

雪菜が近付いてきて、パァッと明るくなった紗矢華であったが、その直後雪菜の口から出た思いもしなかった言葉に、紗矢華はその場で膝をつき項垂れる。

 

 

「と言うわけで、少しいいですか、先輩?」

 

 

「お、おう……」

 

 

古城はなるべく背後を振り返らないようにした。もし今振り返りでもしたら、多分自分は無事ではいれないからだ。その証拠に何やら呪詛のような言葉が、ブツブツと背後から聞こえてきていた。必死に古城はそれをシャットアウトして、雪菜に耳を貸す。

 

 

「あの、先輩。実は紗矢華さんの事なんですが――――――――――――」

 

 

「…………え?」

 

 

古城は雪菜の言った事に驚き、思わず聞き返した。

 

 

「だからといって、屋上の事は紗矢華さんが発端だというのも、事実です。だから、先輩が紗矢華さんを嫌ってしまっても仕方ないかもしれませんけど、あまり怖がらせないであげて下さい」

 

 

「………分かった。ま、心配するなよ、姫柊。姫柊も浅葱の事頼むな………あと、できれば」

 

 

「分かっています。私も桜満先輩にはお世話になっていますから」

 

 

2人はそれだけ言葉を交わし、雪菜は那月の元へ向かう。そして、くるりと向き直る。

 

 

「それでは行ってきます。先輩も紗矢華さんも気を付けて下さい…………紗矢華さん、この事件が終わったら、久しぶりに話しましょう」

 

 

「雪菜……うん!絶対よ!?」

 

 

そう言うと、那月は魔法陣を展開しその場から消えた。テロリストの巣窟と化した『オシアナス・グレイブ』へと向かったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銃声と爆音が遠くで響く人工増設島(サブフロート)にポツネンと取り残された、古城、紗矢華の2人であったが暫くすると、古城の方が沈黙に耐えられなくなり所在なさげに、口を開く。

 

 

「………さて、待機っつっても、何をすればいいんだか」

 

 

「………要は予備戦力なんでしょ?ここでは絶賛テロリストと特区警備隊(アイランド・ガード)が戦闘中。少なくとも『今は』私達の出番はないわよ。だからこそ待機なんでしょ?必要になるのは特区警備隊(アイランド・ガード)が対応しきれないようなケースが出てきた時よ。そんな事も分からないの?真祖のくせに」

 

 

「そこで、真祖であるないは関係ないだろ。問題はその特区警備隊が対応しきれないようなケースが何――そうか………対応仕切れないケース……それにアレも確か『兵器』って……」

 

 

暫く考え込んだ後、古城の中で何かがカチリと当て嵌まったかのような音がした。点と点が繋がり、線になって見えてきたのだ。

 

 

「何よ、さっきからブツブツと」

 

 

「マズイ…………煌坂!」

 

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

 

古城が急に近づいてきた事で、紗矢華は上ずった声を上げる。それに自分でも気付いた紗矢華は顔を赤くし、古城に抗議しようとするが……

 

 

「な……きゅ、急に近付かないでよ!び、ビックリするでしょ!!」

 

 

「あ、ああ、そうだよな、すまん。い、いや、そんな事よりマズイ!今すぐ、特区警備隊(アイランド・ガード)の連中を避難させねえと!」

 

 

「何でよ?まだ、特区警備隊が対応仕切れないほどじゃないでしょ?それに、私達が行ったところで、聞く耳持たないわよ」

 

 

「それでも、何とかしねえと!このままじゃ、全員餌食にな――」

 

 

古城が言いかけたところで、カッと空が光ったのかと思うほど、周囲は大量の光に覆われた。次の瞬間、古城と紗矢華を襲ったのは、生暖かい熱気を帯びた爆風だった。

 

 

「な、何!?今の!?」

 

 

「………やっぱりか。連中が浅葱を連れ去ったのは、そういう話か」

 

 

「ちょ、ちょっと!何1人で納得してんのよ!?」

 

 

「………ナラクヴェーラだ」

 

 

それだけ言うと古城は駆け出した。紗矢華もそれを追う。2人は先ほどの爆発の発信源へと、足を向けた。

 

 

 

 




はぁ、ようやくナラクヴェーラ起動できた。で、次回は多分ようやくナラクヴェーラとの戦闘です。いのりが戦線に参加するのはもうちょい後ですね。


ではでは!

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