Blood&Guilty   作:メラニン

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・・・あれ?ガルドシュも殲教師に続き、外道化が進行してるような・・・


・・・・・・うん、派手に(?)やられてもらいましょう。(いずれ)


では、どうぞ!


戦王の使者編VII

 

絃神島、アイランド・サウスとアイランド・イーストの境界近辺。今日も今日とて、絃神島は快晴である。常夏の島特有の蒸し暑さが肌にまとわり付くような空気を保っていた。そして、その暑さはビルの上から立ち昇る炎の所為で尚更であった。

 

 

突如としてビルの屋上が爆発し、火の手が上がったのだ。そして、その際に発生した破片が落下する。しかし、落下先が川であったのが救いだろう。幸い通行人に怪我人は出なかった。だが当然そんな派手な爆発だ。周囲は騒然としており、駆けつけた特区警備隊(アイランド・ガード)が避難作業や誘導を行っている。

 

 

 

そして、その遥か上空を3つの影が通り過ぎた。それに気付き、上を見た者も数名いたが、太陽の強烈な光に遮られハッキリと視認は出来なかった。ただ1つ、分かった事がある。3つの内の1つの影、それは明らかに人の形ではなく、もっと巨大な何かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「基樹、跳んで!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

ヴァトラーの眷銃の攻撃を集は他の建物へ飛び移る事で回避した。基樹も若干反応が遅れたが同様に跳び無事なようである。そして、ヴァトラーは眷獣を召喚したまま後を追う。ビルからビルへ、時にヴァトラーが行ってくる攻撃を避けつつ集と基樹は逃げる。

 

 

「おいおいおいおいおいおい!俺は過適応能力者(ハイパー・アダプター)ってだけで、身体は普通なんだぞ!?それが、何で真祖に近いって言われてる奴の攻撃を受けなきゃならないんだ!?」

 

 

基樹はビルへ飛び移りつつ器用に泣き言を漏らす。それはそうだろう。基樹の言った通り、彼は身体の耐久力は常人のそれだ。さらに、彼の能力は直接的な戦闘には向かない。そんな基樹が圧倒的な力を持つ存在に追われれば、彼でなくとも泣き言や文句の1つも言いたくなるだろう。

 

 

一方、共に逃げる集は、ヴァトラーには目もくれず、いのりが乗せられたヘリだけを目で追っていた。

 

 

「ヘリがっ!……………基樹、ここは僕が引き受けるから、ヘリだけを追って!」

 

 

「まぁ、それが適材適所だな……俺がお前と一緒に追っかけられてるのは可笑しいしな。奴さんの狙いもお前みたいだし」

 

 

基樹はチラリと後ろを追ってくる金髪碧眼の青年を見る。そこには、相変わらず眷獣に猛威を振るわせ、嬉々とした笑みを浮かべるヴァトラーの姿があった。

 

 

「基樹………頼んだよ」

 

 

「ああ、任せとけ!!必ず、お姫様と再開させてやるよ!じゃあな!!」

 

 

そう言った瞬間から基樹は進行方向を変更する。気流を操り、集とは別の建物の屋上へ。だが、ヴァトラーもそこで止まってしまった。これは、集も基樹も想定外だった。ヴァトラーはそのまま集だけを追うと思っていたからだ。

 

 

「ふむ、さっき言ったと思うけど、まだ行かれると困るんだ」

 

 

そして、ヴァトラーの眷獣は視線を集ではなく、基樹へと向ける。

 

 

「まァ、精々死なないでくれヨ?――『徳叉迦(タクシャカ)』」

 

 

そう言うと、再びヴァトラーの眷獣が瞳を光らせる。先ほど炸裂させた爆発と炎を再び発生させるつもりなのだろう。そして、背中に何かを感じた基樹は、肩越しに視線だけ後ろへ向ける。だが、その時には既にヴァトラーの眷獣は攻撃に入っていた。

 

 

 

「まずっ――」

 

 

ドォオンという派手な爆発音と共に、基樹の姿は煙で見えなくなる。それを見てヴァトラーはニヤリと笑う。いや、厳密に言えば、その煙の中の存在を感じ取って、だろうか。

 

 

「ハハ!ようやく戦ってくれるかい?」

 

 

煙が晴れ、出てきたのは6枚の盾が円形に広がったものだった。供奉院亞里沙(くほういん ありさ)のヴォイド、『あらゆるものを弾く盾』である。

 

 

「すまねえ、集!」

 

 

「いいから、行って!」

 

 

「ああ!」

 

 

盾が小さくなり、そこから出てきた集は、基樹を行かせると、再びヴァトラーと対峙する。

 

 

「へェ、それが昨日言ってた盾、か。あらゆるものを弾く、とは大それた名とは思ったケド、強ち間違ってもいないようだネ。僕の眷獣の攻撃を弾いたんだから」

 

 

「………その割に楽しそうですね。自分の眷獣の攻撃が通じなかったのに」

 

 

「それは悲観すべきような事かな?むしろ、喜ぼうじゃないカ!!僕の攻撃にも耐え得る君に出会えた事を!そんな君とこうして渡り合える事を!………………正直僕は退屈しているんだよ、今の世界に」

 

 

あれだけ嬉々としていたヴァトラーが、最後の方だけ悲観にくれた様な、表情をした。集はそれに対して警戒心を解いてはいないが、驚いていた。だが、同時に考えた。ヴァトラーの言う『退屈』という単語が引っ掛かったのだ。

 

 

「………あなたの行動原理は、すべてその『退屈』を紛らせるため、ですか?」

 

 

「それ以外に何がある?永く生きられる我々にとって、死と隣り合わせの戦争こそ、生きている事を実感できる!…………フフ、吸血鬼とは皮肉な生き物だろウ?」

 

 

どこか、自虐めいたヴァトラーの言葉に集は俯向く。

 

 

「だから、君が僕を楽しませてくれ!!」

 

 

ヴァトラーはそう言うと、眷獣による攻撃を再び集へと浴びせ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩海学園からやや離れた公道で、一台のタクシーが渋滞に捕まっていた。中には学生が3人乗り込んでおり、真ん中にその中でも一番躰の小さい少女が座っている。ようやく、タクシーが進みカーブに差し掛かる。左折した為、遠心力により当然全員が右へと身体が僅かに移動する。そして、一番左側 に座っている少年が隣の少女の方へと、身体を倒した瞬間――

 

 

「ちょっと、暁古城!私の雪菜に近付くんじゃないわよ!っていうか、アンタは走って行きなさいよ!そんくらい余裕でしょ!?」

 

 

「仕方ねーだろ!車がカーブしたら、その分身体が動くんだから!それに、姫柊には触れてねえだろ!?」

 

 

「そう言って、偶然を装って雪菜に接触するつもりなのね、そーなのね!?何ていやらしい!」

 

 

「何でそうなる!?そんな事誰も一言だって言ってねえだろうが!」

 

 

「あの、お2人共黙って下さい。運転手さん、次の信号は直進して下さい」

 

 

相変わらずといった調子で、言い合う古城と紗矢華に、雪菜は内心では溜息を吐く。これならば、自分だけで来て、この2人は再び屋上で反省させておくべきだったのかもしれない、と思いつつも、状況が状況なだけに、それは無理である事を雪菜も承知している。

 

 

楪いのりを追って桜満集が飛び出してしまったのだ。一応は彼も監視対象であるが故に、対象のロストは雪菜にとって緊急事態であった。因みに凪沙はアスタルテに頼み、保健室で寝かせてきている。

 

 

そして、ココ・へクマティアルを名乗る女性から送られてきた情報を頼りに、件の黒いバンを追いかけ、今の状況なのである。だが、タクシーは再び渋滞に捕まってしまう。さすがに進まない事に古城がイラつき始め、車内の空気も若干悪くなる。それを察してか運転手が無線で入ってきた事情説明を入れる。

 

 

「あーー………お客さん、ダメだこりゃ。何でもこの先、魔族が暴れたとか何とかで、避難勧告が出てるらしい。だから、この渋滞も抜けられるかどうか…」

 

 

「魔族……すいません、その魔族とは獣人ですか?」

 

 

「獣人?いや、そこまでは分からないが……」

 

 

「そうですか……あの、ではここで十分です。お会計お願いできますか?」

 

 

「あいよ。910円ね」

 

 

「だそうよ、暁古城?」

 

 

「俺が払うのかよ!?」

 

 

古城は文句を言うが、彼もそれ以上は反論しなかった。ここには自分の後輩もいるのだ。彼女の性格上、ここで出し渋れば自分が払うと言いだす。さすがにそれは年長者として恥ずかしいという思いがあったのだろう。結局は古城が払う事と相成った。

 

 

降車して車線の先を見ると、なるほど確かに進むのは無理なようだ。車列が遥か前方まで続き、渋滞が何処から始まっているのか分かったものではない。

 

 

「こりゃあ、降りて正解だったな。あのまま乗ってても進まなかっただろうし」

 

 

「ええ、そうですね。それにしても桜満先輩がああいった行動に出るとは思いませんでした」

 

 

「………仕方ねえんだろうな。桜満にとってそれだけ大事な存在だったんだろ。だから、俺も――」

 

 

「分かってます、先輩。私たちも助けに向かいましょう」

 

 

いつの間にやら若干2人の世界を形成している古城と雪菜。だが、それを快く思わない人物が当然1人いる。

 

 

「ちょっと、暁古城!なに私の雪菜と親しそうに話してんのよ!?」

 

 

「あ、あの、ちょ、紗矢華さん!?」

 

 

そう、雪菜が命な紗矢華である。紗矢華は雪菜を背に庇うようにして、古城から離そうとする。そして、十分離したところで雪菜へ振り返り、年長者として雪菜を諭す様にして、言葉をかける。

 

 

「いい、雪菜?いくら任務とはいえ、あんないやらしい変態真祖に近付いちゃダメよ?今は私が居るからいいけど、ああいう男に限って2人きりになった時なんか、襲ってくるんだから」

 

 

「………た、確かにそうなのかもしれませんね。………以前血を吸われた時もそう言えば……」

 

 

「あ、あのー、姫柊さん?それ以上はちょっと……」

 

 

紗矢華の発言に思い当たる節があり、確かにそうなのかも、と雪菜が納得しかけている。さらに、ポロっと溢した最後の一言は紗矢華を怒り狂わせるには十分過ぎる威力があった。それを察してか、古城も出来ればそれ以上は口を開かないように促そうとするが、既に遅い。

 

 

「ち、血を吸う!!?ゆ、雪菜の……ち、血を……!ゆ、雪菜!?い、いい一体何処から血を吸われたの!?痕とか残ってないの!?平気なの!?」

 

 

「え、えっと、痕は平気です。ほら」

 

 

そう言って雪菜は首筋を紗矢華に見せる。だが、それにより紗矢華は眩暈を覚えてフラつく。なにやらブツブツと、雪菜の首筋から…わ、私にだってあまり触らせてくれた事ないのに………などと若干危ない事を呟いている。

 

 

そして、紗矢華がゆらりと古城へと振り返る。古城はこの時ほど恐怖というものを覚えた事はなかった。それは紗矢華の放つ殺気と表情が原因だ。なるほど、さすがは舞威姫を名乗るだけはある。この殺気は呪詛や暗殺を専門とする彼女だからこそ出せるものなのだろう。そして紗矢華は背負っていた楽器ケースへと手を伸ばす。

 

 

「ふ……ふふふ…やっぱり、あなたは生かしておけないわ……」

 

 

「ま、待て!落ち着け、煌坂!その、血を吸ったと言ってもだな、あの時は眷獣を制御下に置くためだけであって、別に特殊な意図は――」

 

 

「どちらにせよ、やった事には変わりないのよね?……こんな愛らしい雪菜の首筋に牙を立てるなんて………万死に値するわ」

 

 

「た、頼むから落ち着いてくれ!後で事情は説明する!い、今はこんな事してる場合じゃないだろ!姫柊からも言ってくれ!」

 

 

古城は雪菜へと助け舟を望むが、雪菜本人はどこか不機嫌そうな表情だ。

 

 

「………そうですか。眷獣を制御下に置くため『だけ』ですか。そうですか。………後でその事情説明とやらで、先輩がどういう事情を説明してくれるのか、非常に楽しみですね」

 

 

「え、あのーー………姫柊さん?」

 

 

「はぁ………紗矢華さん、一旦落ち着いてください。今は暁先輩について議論をしている場合ではありません」

 

 

「雪菜がそう言うなら………けど、覚悟しておきなさいよ、暁古城!!」

 

 

「はぁ、もう分かったから。で、結局発信器の行方はどうなってんだ?」

 

 

「ちょっと待ってください、えっと……」

 

 

そう言われ雪菜は古城の携帯画面を開き、情報を確認する。タクシーの運転手に案内をする役目が雪菜であった関係上、未だに雪菜が古城の携帯を所持しているのだ。と言っても、雪菜自身は若干機会音痴の気があるので、一連の動作を見ても決して早いとは言えないが。そんな四苦八苦する雪菜を歓迎するのは――

 

 

「……悪戦苦闘する雪菜も可愛い」

 

 

相変わらずブレる気配すら見せない紗矢華であった。

 

 

「分かりました。ここから、少し離れたヘリポートみたいです」

 

 

「ヘリポート……って、明らかに陸路で逃亡してねえじゃねえか!」

 

 

「確かに敵はおそらく、ヘリで逃亡しているものと判断できます。ですが見つけ出すのも多分容易です。ですよね、紗矢華さん?」

 

 

「ええ、分かってるわ、雪菜」

 

 

古城が疑問符を浮かべていると、紗矢華はスカートのポケットから何やら呪詛と思しきものが書かれた札を出してきた。計6枚の札を宙へ放つと、それらは形を変え小鳥の姿へと容姿を変えた。そして、それを操り上空へと羽ばたかせ、紗矢華自身はそれらの式神と視覚を共有するため、目を閉じ意識を式神に集中させる。

 

 

「式神ってやつか」

 

 

「はい、紗矢華さんが得意とするのは呪詛と暗殺。あれらの式神は呪詛に分類されますから」

 

 

「なるほどな。空から目ぼしいヘリを見つけようって事か」

 

 

「そういう事です」

 

 

雪菜は古城の指摘に首肯する。あとは紗矢華がヘリを見つける事ができれば、行動を開始できる。程なくして、紗矢華は閉じていた目を開ける。それは捜索が終わった事を意味していた。

 

 

「見付けたわ。というか、既に小規模だけど特区警備隊(アイランド・ガード)が戦闘を始めてる。時間がないから、移動しながら状況を説明するわ。こっちよ!」

 

 

紗矢華が先導し、古城と雪菜を導く。彼らは未だに渋滞を続ける車列を尻目に、アイランド・イースト方面へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藍羽浅葱は薄暗い一室へ放り込まれていた。周囲には様々な荷物がうず高く積まれており、おそらく普段は倉庫として機能しているのであろう事を想像させる。

 

 

「………はぁ〜〜、まさかこんな強引な招待受けるなんて思いもしなかったわー……」

 

 

浅葱はどこか自虐的な溜息を漏らすと、もう一度周囲を見渡し状況を確認する。見たところ窓などはないし、正面の扉も浅葱の電子戦能力を警戒してだろうか、ご丁寧に電子ロックではなく、アナログ式のタイプになっていた。

 

 

つまり密室である。いくら泣こうが喚こうが、助けは期待できない。

 

 

「ったく、何でこんな目に遭ってんだろ、私?」

 

 

「それは君が有名人だから、と答えておこう、ミス・エンプレス」

 

 

ガチャリと扉が開き、保健室で浅葱らを連れ去ったリーダー格と思しき男が入ってくる。歴戦の軍人という言葉がピッタリの身なりであり、普通の人間なら気圧されているだろう。だが、浅葱は違った。怯えるどころか、ようやく来たのかとでも言わんばかりに1つ息を吐く。

 

 

「……その仰々しい名前やめてくんない?勝手にどっかの誰かが付けただけで、私はそのセンスゼロな名前嫌いなのよ」

 

 

「ククッ、それは失礼をした。では、ミス・アイバ。単刀直入に君へと依頼したい」

 

 

「テロリスト相手に私が商談に乗ると思った?思ってたのなら、お生憎様ね。テロリスト相手にするほど腐ってないわ」

 

 

「たとえ、自分が殺されかけたとしても、か?」

 

 

ガルドシュはそう言うと、腰のホルスターに差してあった銃を引き抜き、銃口を浅葱の正面に持ってくる。だが、それでも浅葱は臆する事は無かった。むしろ、ガルドシュのその行動も一笑してみせた。

 

 

「………いい加減こんな茶番やめたら?私を連れ去ったのは私が必要だったからでしょ?この行動も私を試すためなのかしら?」

 

 

「くっ、クハハハハ!!なるほど、どうやら我々の君の認識を上方修正する必要がありそうだ。確かにここで君を殺してしまうのは簡単だが、それでは目的を達成できないのも事実。失礼した」

 

 

ガルドシュは銃をホルスターへと仕舞い、改めて浅葱を見据える。

 

 

「さて、確かに君を殺すつもりはないが、君は我らへの協力を拒めないのではないかな?」

 

 

「は?そんな事――」

 

 

「ナラクヴェーラ」

 

 

「っ!」

 

 

浅葱はガルドシュの口からその単語が出てきた事で全てを理解した。昨夜浅葱の元へと送られてきたメール、そしてそれに添付されていたファイル。その中にあった古代兵器であるナラクヴェーラという存在。全てが浅葱の頭の中で繋がったのだ。

 

 

「どうやら、気付いたようだな。そう、あれを所有しているのは我ら黒死皇派だ。そして、その起動キーは君が解いてくれた。そう、起動キーは、な」

 

 

浅葱はこの時ほど、己の行動を悔いた事はない。昨日は古城と共にいる時間が長かったため、彼女自身浮かれていたのだ。その衝動のまま、上機嫌でメール内のファイルを解いてしまった。それを思い出し、浅葱は唇をギリッと噛む。

 

 

「………なるほどね。まんまと私を利用してくれたわけ」

 

 

「何とでも。さて、協力してくれる気になったかね?」

 

 

ガルドシュは口角を上げる。それに対して浅葱はガルドシュの事を睨みつけた。このまま起動だけされてしまっても、制御する術がないのだ。そうなってしまえば、絃神島は瞬く間に焦土と化すだろう。浅葱は選択を迫られたのだ。

 

 

「………分かったわ」

 

 

「…………この数瞬、君は様々な事を考えたのだろう。その聡明さには私も舌を捲く思いだ。では付いて来たまえ。作業場へ案内を――」

 

 

「待ちなさい。1つ質問よ」

 

 

「何かね?」

 

 

「あの娘……あなた達が歌姫(ディーヴァ)って呼んでた娘の事よ。あの娘が何であんた達に協力してたの!?」

 

 

「なに、利害が一致していただけだ。彼女もそうでなければ、我々に協力はしなかっただろう」

 

 

「………利害が一致して『いた』、ね。今は違うのかしら?」

 

 

「奇しくも、彼女は目的を達成してしまったようだ。まさか、あそこに彼女が言っていた『シュウ』という人物が居るとは思いもしなかったがね。しかもそれが、まさか噂になっている『ジョーカー』と同一人物だとは……やれやれ、こういった言葉はテロリストとしては使いたくはないのだが、私も珍しく『運命』という言葉を信じたくなった」

 

 

「…………商談の続きよ」

 

 

「む?」

 

 

「制御コマンドはあんた達の望み通りにしてあげる。けど、これが終わったら、あの子を自由にしてあげなさい!」

 

 

「くっ、ハハハハハ!なるほど、君が引き受けた理由の1つはそれか!やはり君は『ジョーカー』の縁者でもあったか!ますます、運命という言葉を信じたくなった!くくく………」

 

 

愉快そうに笑うガルドシュを浅葱は不機嫌そうに睨む。それを察しガルドシュも笑うのを止め、浅葱を見下ろす。

 

 

「いいだろう。君との約束通り、これが終われば彼女を『自由』にしよう。これで商談は成立でいいかね?」

 

 

「………それでいいわ。案内しなさい」

 

 

ガルドシュは通路を進み、浅葱を誘導する。浅葱は不安を抱えつつも、その場は進むしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 




さて、この章も7話まで来たが、この章一体何話になるんだろう・・・


実は今のところ、決まってません。書いている内に、アレもコレもと追加したりしてるので。・・・これが更新遅れる原因ですよねー・・・サーセン


まぁ、挫けず頑張ろうと思います。


ではでは、また次回!



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