Blood&Guilty   作:メラニン

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タイトルからお察しできると思いますが、いのり回です。いよいよ登場。


But、本編ではないです。本編の登場はもうちょい先です。

では、どうぞ!


異邦の歌姫
異邦の歌姫編I


南アジア地域に存在する某国にて。その国には遺跡が数多く存在し、『天部』と呼ばれる、亜神種族の遺物と思しきものが多く出土する事で有名である。それらの遺跡の一角に、突如としてドレスの様な服を着た少女が唐突に現れた。弱っている為か、暫く動けないでいたが、少しするとノロノロと起き出して辺りをキョロキョロと確認する。しかし、遺跡内は暗くほぼ一寸先は闇である。少女は立ち上がると、まだフラつく体にムチ打って、壊れた天井から差し込んでいる月明かりを頼りに、その天井の下まで進んでいく。

 

 

月明かりに照らされて、その姿がハッキリと分かる様になる。淡い桜色の髪に、全体的にスレンダーであるが、年相応といった身体つきである。顔立ちはまるで造形品の様に整っている美しい少女だ。またどこか儚げな雰囲気な上に、月明かりに照らされている為、それがより一層際立っており、何処と無く一枚絵の様に見える。

 

 

「ここ…は?わたし…何で生きて………」

 

 

状況が呑み込み切れないといった様子の無表情な少女は、立っているのが限界だったのか、フラつき手を付いた拍子に何かで手を切り、赤い鮮血が指から飛び散る。その原因の突起物の元を目で辿っていく。

 

 

「痛っ……な、何…?」

 

 

薄っすらと照らされたそれは、よく目を凝らすとその姿が露わになる。それは、巨大なロボットの様な何かだった。少女が知っているエンドレイブという機械兵器とも似ておらず、それは巨大ではあるが、明らかに動かない様に見て取れる。年代ものであるように簡単に見て取れたのだ。

 

 

それを確認したところ迄が少女の限界だった。激しい睡魔に襲われ膝を付き、そのまま床に倒れこむ。落ちてくる瞼を必死に上げながら意識を保つが、それも長くは保たないだろう。なんとか自分の置かれている状況を把握しなければならないのだ。気を失っている暇などない――とは思っていても、これ以上は無理だと少女も悟る。仕方なく、少女は鉛の様に重く感じる瞼を閉じた。

 

 

ただ、意識を完全に閉じる直前、子供の様な声を確かに少女は聞き取った。そこまでが少女の本当の限界であり、彼女は意識を完全に闇に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は夢を見る。とても温かで、優しく、儚い夢を見る。夢とは即ち願望である。その夢はまさしく少女が望んだものなのだろう。

 

 

そこには、栗色の髪を2つに止めた可愛らしい少女と、無邪気に笑う短髪の少年、皮肉気味な笑みを浮かべる少年、メガネを掛けていかにも真面目そうな少女に囲まれて、桜の木の下に集まっている。少し離れた所からは車椅子に乗り赤茶色の髪をポニーテールで纏めた少女と、その車椅子を押す、長い黒髪に頭にはネコ耳の付いたヘッドセットを装着した少女が近づいて来る。

 

 

しばらく談笑していると、遅れて2人の少年が遠くから歩いてきた。それを見て、少女は自分の顔に自然と笑みが現れた事に気がつく。少年の内1人は長い金髪に鋭い目付きの少年だ。そして、もう1人は茶髪に、色素の抜けた様な色が一房だけ入った優しげな少年だ。2人は何かを言い合いながらも歩んでくる。決して仲が悪いが為に言い合っている感じではない。時折少年たちの間に起こる笑い声がその証拠だろう。

 

 

少女には、それがどうしようも無く嬉しくて、より一層嬉しさで破顔するのが分かる。

 

 

いつまでも、いつまでも、いつまでも――

 

 

こんな風景が続けば良いと心からそう願う。

 

 

そんな風景が少女の心に温かさを灯していく。決して他人が侵す事の出来ない温かさだ。

 

 

 

この温かさを言葉にすると、一体何と言うのだろう、と少女は首を傾げる。そんな少女の首を傾げた様子を見て、今歩いてきた茶髪の方の少年が、笑った顔を向けながら少女の名を呼ぶ。その声が、呼んでくれた事が、彼女の心の温かさをより一層大きくする。

 

 

少女は思いつく。もし、この温かさを言葉で表すのならば――

 

 

「いのり」

 

 

それは、きっと『幸福』と言うのだろう。

 

 

 

 




すいません、後半は作者の妄想です・・・


いのりが楽しく仲間たちと談笑する姿をどうしても描きたかったんです・・・
あ、話している内容はご想像にお任せします。


では次回にご期待ください。

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