Blood&Guilty   作:メラニン

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今回は後日談です。


うん、人の思惑って怖い・・・


では、どうぞ!


聖者の右腕編XIII

 

「はぁ゛〜〜………」

 

 

彩海学園高等部1年B組の教室。今日は土曜日であり、授業も午前で終わっていた。通常生徒は既に帰宅した昼下がりである。暁古城は昼食を摂る事も許されず、一番前の席でひたすらペンを走らせていた。目の前にはまさに傲岸不遜といった態度の黒いゴスロリ服に身を包んだ担任教師が、優雅にアンティークのティーカップと思しき物で紅茶に舌鼓していた。

 

 

なぜ、この様な事になっているのか?それは、先日の事件がやや関係していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーストーンゲートの最下層にて、暁古城、姫柊雪菜、桜満集の3人は気を失っている人工生命体(ホムンクルス)の少女を囲んで頭を抱えていた。

 

 

「………えーーと、この子って助ける事できないのかな?」

 

 

という、集の一言がこの状況の原因だった。集自身一応は眷獣の召喚の対価に何が必要かは知っている。膨大な魔力と生命力――つまりは寿命だ。このアスタルテという気絶している少女は眷獣を植え付けられているため、元々寿命が短くなっている。さらに、先ほどの戦闘で眷獣をギリギリまで酷使していたのだ。そうなると、この少女の寿命は保ってあと数日あれば良い方だろう。もしかすれば、今日の命すら保たないかもしれない。

 

 

そう考えた集は何とか救えないかと、2人に持ちかけたのだ。

 

 

「確かに、眷獣を用いて魔族を襲撃していたとはいえ、この子自身は純粋なままで、命令を遂行していたに過ぎませんから、このまま見捨てるというのは気が引けますけど……」

 

 

暗に雪菜は救ったとしても、普通の生活が送れない事は確実だと言いたいのだ。調整器から離れる事は出来なくなるかもしれないし、そもそも一応は犯罪に一部加担していたのだ。そうなると、何かしらの監視などは着くだろう。それを思い、雪菜は渋い顔をする。だが、それでも集は退かなかった。

 

 

「うーーん、それは分かるんだけど、そこを何とか……ほら、深森さん――は、ダメか……」

 

 

集は言い掛けた言葉を最後までは言わなかった。明からさまに古城が嫌そうな顔をしたからだ。それに、こういった珍しいタイプの人工生命体を深森に渡しでもした場合――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『んふふー♪へぇーー、アスタルテちゃんって言うのねぇ。じゃあ、早速アスタルテちゃんにはこの服を着てもらいましょう♪』

 

 

『……これは、なんですか?』

 

 

『これは、病院で女性が着る伝統服よ!他にも着てもらいたい物が………ほら!こんなにたくさん!』

 

 

『…………………』

 

 

『んふふー、そんなに警戒しなくても、大丈夫よ、アスタルテちゃん♪優しくしてア・ゲ・ル♪』

 

 

『………っ!』

 

 

『ぐふ………ぐふふふふふふ!良いではないかー、良いではないかー♪ぐふふふふふふ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

などという危険な行為に走りかねない自分の母親を古城は脳内に思い描き、余計に渋い顔をする。古城は、仕方ないか、と呟き雪菜と集に先に謝罪する。

 

 

「あー……すまん、先に謝っとく。特に姫柊は本当に悪いと思ってる」

 

 

「ん?どうしたの、古城?」

 

 

「あの、先輩。頭大じょ――」

 

 

雪菜は発しかけた言葉を最後までは言う事は無かった。それは、急に古城が雪菜を自分の腕の中に抱き締めたからだ。最初、数秒は思考が真っ白になり、何が起こっているのか分からないといった雪菜だったが、ここに集が居ることを思い出し、必死に暴れ出す。

 

 

「あ、あの、ちょっと、先輩!お、桜満先輩だって居――ひぅ!」

 

 

無理矢理抱き締められた仔猫の様に、雪菜は両手で押し退けようとするが、暴れれば暴れるほど、古城の腕に力が入り、雪菜の身体は古城に押し付けられる。胸の膨らみの形が変わるくらい、古城の身体と密着する。さらに、互いに足が絡み、腰に回された手で古城の身体にさらに密着させられる。雪菜は今の表情を見られまいと、必死に紅潮した顔を古城の胸に埋める。だが、それに対して追撃とばかりに、古城は雪菜のうなじの方へと顔を持って行き、呼吸が直接当たって髪を揺らし、それが耳にも掛かる。顔を古城の胸に埋めているため、古城の心音が直に聞こえ、どんどん加速していくのが分かる。だが、それは雪菜も同様であり、自分でも分かるくらい心音が加速していく。最早どちらの心臓の音なのか分からないくらい――身体という境界線が無くなってしまったと思う様に雪菜が錯覚するほど、古城は力強く雪菜を抱き締めた。

 

 

「あ………あの、先輩…本当に……もう……………」

 

 

先ほどの戦闘の影響もあり、雪菜が足に力が入らなくなり始め、今にもへたり込みそうになる所で、古城は雪菜から離れた。

 

 

「あ…」

 

 

その時、もの寂しそうに小さく声を出してしまった事で雪菜は余計に羞恥心で顔を赤くする。

 

 

「よし、これでイケそうだ」

 

 

「……へ?」

 

 

雪菜から離れた古城は、アスタルテの方へと近付き抱え上げると、その小さな首筋に自分の牙を突き立てた。

 

 

「んっ……」

 

 

痛みに小さな声を上げ硬直した後、アスタルテは再び、くてんと脱力した。

 

 

「うし、これで問題ないだろ。おい、桜満?何やってんだ?おーーい?」

 

 

古城は一旦アスタルテに羽織っていたパーカーを上から掛けると、後ろを向いて全力で耳を塞いでいる集の肩を叩いた。

 

 

「お、終わった?」

 

 

「ん?ああ、この子はもう平気だ。眷獣を俺の制御下に置いたからな。これで眷獣に支払わないといけない寿命の代償は、無限の寿命を持つ俺が肩代わり出来るって訳だ。ってか、何でそんな頑なに耳を塞いで後ろを向いてたんだよ?」

 

 

「え、あーー………それが分からないのか……」

 

 

実は集は、先ほど古城が雪菜を抱き締め始めた瞬間から、自分は巻き込まれない様にと、後ろを向いて先ほどの体勢を取っていたのだ。それに対して、古城はその無頓着さでまったく気付いていなかった。己の背後に壊れたとはいえ、降魔の力を宿した武器を持った少女(修羅)が立っている事を。

 

 

それが原因で集は冷や汗が止まらなかった。そして、修羅と化した雪菜がニッコリ笑いながら集に話しかける。

 

 

「…………桜満先輩はその子を運んで先に行って下さいますか?」

 

 

「は、はい!今すぐにでも!!」

 

 

集はアスタルテを抱き抱えると、先ほどの戦闘の疲れは何処へ行ったのかという速度で、脱兎のごとく出て行った。置き去りにされた古城はポカンとしていたが、雪菜の言葉で平静に戻される。

 

 

「さて、先輩。先ほどの私への行為についての説明をお願いできますか?」

 

 

「あ、ああ。えっと、吸血衝動を起こすのにもその……い、イロイロと準備があるんだよ!」

 

 

「……確か、元も子もない言い方をすれば性欲、でしたよね?」

 

 

「………はい、そうです」

 

 

「つまり、さっき私への行為は、あのアスタルテという子の血を吸う為だったと?」

 

 

「そ、そうだな。うん、まぁその通りだ……あの、姫柊さん?」

 

 

肩をワナワナと震わせる雪菜を見て、さすがの古城も焦り始める。このままここに居れば、自分が被害を受けるであろう事が予想できてしまうからだ。

 

 

「そうですか。つまり、私は当て馬にされたと。そうですか」

 

 

「い、いや、当て馬なんて事は……アリマセンヨ?」

 

 

視線を逸らして話す古城に対して、遂に雪菜の堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「先輩なんか……先輩なんかこの島と一緒に海に沈めば良かったんですっ!バカーーー!!」

 

 

「ちょ、その槍はヤメ――あぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があって既に3日が経過していた。雪菜は雪霞狼が壊れた事から、監視役の任を解かれ、帰還させられると思っていたが、修理された雪霞狼が送り付けられてきた事から任務は継続という事になった。

 

 

だが、肝心の古城は初の眷獣の行使により、魔力が欠乏した状態が続き、ほぼ丸3日勉学に身が入らなかった。その為、小テストや課題、授業が軒並み酷い事になっており、その皺寄せが今日一挙に押し寄せたという事だ。

 

 

「………zzz」

 

 

「寝るなっ!暁古城!」

 

 

「いでっ!?」

 

 

ウツラウツラとしていた古城に担任教師である南宮那月の扇子による制裁が加えられ、古城は無理矢理意識を睡眠の中から引き戻される。

 

 

「貴様のためにわざわざ残ってやっているのだ。その感謝の意を結果で示せ」

 

 

「………んな、理不尽な」

 

 

「何か言ったか?」

 

 

「いえ、別に」

 

 

古城は溜息を吐く。確かに絃神島の沈没を防いだとはいえ、本職は高校生なのだ。その本分は勉学である。それを思うと那月の行動も頷けてしまうので、古城はペンを走らせ続ける。

 

 

そして、小一時間ほどでようやく全ての課題と小テストの再試が終了した。

 

 

「………ふむ、まぁいいだろう。これに懲りたら、もう二度とこういった事を起こさんようにな」

 

 

「………善処します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

那月による補修も終わり、古城は待ち合わせをしていた人物たちの元へと向かう。待ち合わせ場所は学園の食堂だ。そして、向こうの方が古城を見つけ、声を掛けてくる。

 

 

「古城、こっち。席取ってあるよ」

 

 

「おう、サンキュー」

 

 

「お疲れ様です、先輩」

 

 

「ああ、悪いな、待たせちまって」

 

 

古城の事を待っていたのは、後輩である姫柊雪菜と、級友であり戦友の桜満集だ。集は先日の怪我がまだ残っているため、頭に包帯を巻いている。古城は雪菜の隣に座り、集と向き合う形になる。

 

 

「はぁ、腹減った……」

 

 

「はは、そう言うと思ったよ。はい、これ。さっき凪沙さんから古城の弁当だって預かったよ」

 

 

「お、そうか。なんか悪いな、桜満。で、凪沙は?」

 

 

「凪沙ちゃんなら先ほどチア部の部室に忘れ物を取ってくると言って、走って行きました」

 

 

「相変わらず、忙しいやつだな。っと、ようやく飯にありつける。いただきます、と」

 

 

古城が弁当の蓋を開け食べ始め、集と雪菜は自販機で購入した缶ジュースを飲みながら暫く雑談していたが、古城が言い出し辛そうに雪菜に聞き始める。

 

 

「そういや、姫柊。その……どうだった?」

 

 

「どうって……あ、ああ、そうでした!えっと、検査の結果は陰性でした」

 

 

その言葉に古城はホッと胸を撫で下ろす。

 

 

「よ、良かった。姫柊をその……『血の従者』にしちまったんじゃねえか……って気が気じゃなくてよ」

 

 

古城が言う『血の従者』とは吸血鬼が身体の一部を与えて作り出す、1代限りの擬似吸血鬼の事である。その体の一部には唾液や血液なども含まれるため、吸血行為の際に唾液が侵入したり、月齢などの条件が重なる事でも『血の従者』になり得るのだ。

 

 

「あの時は月齢も計算しましたけど、比較的安全な日だって分かってましたから」

 

 

「あ、あとそうだ。傷とか残って無いか?」

 

 

「あ、はい。ちょっと血が出ただけで、最初は少し痛かったですけど、そんなに苦しくも無かったですし、跡になる事も無さそうです」

 

 

2人が進める会話に、集ただ1人だけが焦っていた。この会話を何故もっと早く止めなかったのかと激しく後悔した。位置的にも、巻き込まれかねない。何故なら、集は古城の背後に青筋を浮かべて怒ってらっしゃる人物の姿を見てしまったからだ。

 

 

「あの、2人とも。出来ればその話は、もっと別のところで――」

 

 

「へぇ〜〜………その転校生ちゃんと、どんな事をしたのかしらぁ?」

 

 

その怒気を孕んだ声に古城がギクリと身を竦ませ、ゆっくり背後に立つ人物に振り向く。

 

 

「よ、よぉ、浅葱。お、お前帰ったんじゃ?」

 

 

「何よ?私が帰ってなきゃ、迷惑だった?あー、そりゃそうよねぇ。だって、そこの子に痛い思いさせた様な内容の話だったもんねぇ?」

 

 

「………あのー、浅葱さん?どこら辺から聞いてらっしゃいました?」

 

 

「転校生ちゃんが検査の結果、陰性だったって所からよ」

 

 

「…………………」

 

 

古城は顔を顰め、集は顔を覆った。ああ、これは長くなる上に面倒な事になる。絶対になる、と集は思わずにいられなかった。だが、不幸というのは重なるものらしく、先ほどの会話の内容を聞いていた人物がもう1人。

 

 

「古城君?雪菜ちゃんに何をしたのかな?ねぇ、何をシたのかな?」

 

 

「な、凪沙まで……」

 

 

「集さん!」

 

 

「は、はい!」

 

 

そして、否応なく集は巻き込まれた。

 

 

「2人に何があったか知ってる!?と言うか、話の輪の中に居たんだから、知ってるんだよね!?2人に何があったの!?」

 

 

「え、えっと……そのぅ、何と言ったらいいか……ナ、ナニモナカッタヨ?」

 

 

集が顔を逸らしながら言ったその言葉を浅葱と凪沙は別の意味で受け取ったらしく、余計にヒートアップする。

 

 

「ちょっと、古城君!集さんが言えない様な事をシたの!?」

 

 

「やめろ、凪沙!その言い方のニュアンスは何かが違う!」

 

 

「話を逸らさないで、古城!と言うか、さっき陰性だったどうのこうのって言ってたじゃない!アンタ責任取る気あるの!?」

 

 

「待て!だから誤解だ!桜満と姫柊からもなんか言ってく――」

 

 

『1年B組の桜満集。今すぐ私の執務室へ来い』

 

 

古城が援軍を求めた視線の先の戦友は、明らかに助かったというような顔をする。その表情から、古城はコイツ逃げる気だと確信する。何とか引き留められないかと画策するが……

 

 

「ゴメン、古城!南宮先生からの呼び出しだから行かないと!大丈夫、古城ならどんな苦難だって乗り越えられるよ!それに多分死ぬ事は無いし、平気だろうし!じゃ!」

 

 

集は一刻も早くその場を戦線離脱したいという思いから、古城へ向けて一瞬サムズアップすると、一目散に駆け出した。

 

 

「う、裏切り者おぉぉ!」

 

 

「古城!」

「古城君!」

 

 

「………はぁ、勘弁してくれ」

 

 

古城は天井を仰いでポツリ呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩海学園の校舎の中でも一際隅の教室。普通の生徒なら立ち寄りもしない様な教室の窓辺に1羽の鴉が止まっていた。そして、教室内には髪を逆立て、ヘッドホンを首から下げた男子生徒が窓際に寄り掛かっている。この教室の利点は校門のある側を一望出来る事だ。つまりこの教室は今この場に居る男子生徒にとって任務を遂行する上で格好の場所なのだ。

 

 

「にしても、獅子王機関もヒドイ事をするもんだな。どうせ、あの子には真意を聞かせずに送り込んだんだろ?」

 

 

少年は1人であるのに、誰かが居るように話し掛ける。パッと見、ただのイタイ学生に思われるかもしれないが、そうではなかった。その言葉に返しをする声があった。

 

 

『随分と意地の悪い事を言いますね?我々としてはこれで良かったと思っていますよ?』

 

 

そう、窓辺に止まっている鴉からの声だ。当然鴉が喋っているのではない。この鴉は通信用の式神だ。

 

 

「ったく、第四真祖の覚醒をそっちが速めてどうするよ?」

 

 

『制御の効かない力とは恐ろしいものです。ですが――』

 

 

「制御さえ出来れば、コッチの思うがままってか?」

 

 

『まぁ、そこまでは言いませんが。ですが折角、血の伴侶になり得る者を送り込んだのです。何かしらのリアクションは欲しいところですね。それに、近々そちらはジョーカーを()()()()得る腹積りの様ですし』

 

 

「さすがに耳が早いな」

 

 

『ええ、それが仕事ですから。しかし、何時までも手元にジョーカーが居るとは思わない方がいいですよ?道化というのは、何時の間にか舞台を荒らし回りますから』

 

 

「………俺にはそんなタチの悪いピエロにゃ、思えねえんだけどなぁ」

 

 

『はぁ…まぁ、いいでしょう。こちらは一先ず第四真祖が先走らないでくれれば、それで今は構いませんからね。ジョーカーの取り合いには興味もないですし、参加しませんよ』

 

 

その通信を最後に鴉は式神のヒトガタの紙に戻り、その紙も四散するようにバラバラになった。

 

 

「…………はぁ、ったく。つくづく集も古城も人気者だな」

 

 

苦笑いを零した彼は、教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南宮那月の執務室。校舎の最上階に位置し、絃神島を一望出来るほどのパノラマが臨める部屋でもある。集は部屋に入るなり、そういった景色よりも真っ先に目に入った人物がいた。藍色の髪をした少女アスタルテだ。何故かメイド服を着用してはいるのだが………

 

 

「放送から3分24秒、桜満集の入室を確認。お久しぶりです」

 

 

「え、う、うん、久しぶり。えっと、アスタルテ…さん?」

 

 

「アスタルテで結構です。それよりも此方へ。南宮教官がお待ちです」

 

 

集は促されるまま執務用のデスクの前に設置された高級そうなソファに腰を掛けた。そして、執務用のデスクに腰掛けた那月と向き合う格好になる。

 

 

「さて、桜満。取り敢えず3日前の件はよくやったと言っておこう」

 

 

「………もしかして、一部始終見てたりとか?」

 

 

「私もそんなに暇じゃない。ああいった時に便乗して何かしらの行動を起こす輩が居るからな。それの牽制をしていた。と言っても、東條に付けてあった術式を通しても見ていたし、殲教師とそこのアスタルテとの戦闘も少しは見ていた」

 

 

「………なら、手助けしてくれても」

 

 

「教え子の成長を妨害する様な野暮はしないさ」

 

 

「うーーん…………分かりました。それで聞きたい事が――」

 

 

「どうぞ」

 

 

「ありがとう――じゃなくって!」

 

 

紅茶の入ったカップを運んできたアスタルテから何の違和感もなく集は受け取るが、聞きたい事を思い出し、那月に食い気味に質問をする。

 

 

「……何かダメでしたか?」

 

 

「あ、い、いやいや!紅茶はいいんだけど、と言うかありがとう。で、そっちじゃなくて!南宮先生、何でアスタルテがここに!?」

 

 

「三年間の保護監察処分というやつだ。一応の実行犯であるアスタルテを野放しにしてはおけまい?そこで、国家降魔官であり教育者である、私の肩書きが活きてくる訳だ。さて、ではお前を呼び出した本題に入るとしよう」

 

 

那月の雰囲気が先ほどと少し変わり、集は身構え、体に力が入る。

 

 

「そう警戒するな。大した事ではないからな。――桜満集、私の下に来い」

 

 

 

 

ここは魔族特区、東京の遥か南洋上に浮かぶ絃神島。常夏のこの島に新たな喧騒が迫っていた。

 

 

 

 

 




さて、色んな交錯し始めました。一応注意書きしておくと、那月は集を利用する気は毛頭ありません。まぁ、キャラ的にそれをやらせたくないんですよねー。


で、次回は少し本編につながる話をしようかと思います。どういう話かは、まぁご想像にお任せします。


さて、では次回も乞うご期待(?)

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