Blood&Guilty   作:メラニン

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・・・あまり話が進まない。


いや、分かっています。少し細々やってるからなんでしょうね。分かってはいるんですけど・・・


まぁ、それはさて置いてどうぞ!


聖者の右腕編Ⅲ

 

アイランド・サウスに存在するマンションの一室である704号室。ここは世界最強の吸血鬼である第四真祖こと暁古城の自宅である。朝に弱い彼はほぼ毎朝妹である暁凪沙に起こしてもらうのが常だ。そして今日も妹に起こしてもらうという、一部の人間からは大変大きな反感を買いそうなイベントが発生していた。ただ一応自宅で起こっている応酬であるため、基本的には他人にバレる事はない。そして、のそのそと起き出し、顔を洗ってリビングに入る。だが、その目はまだ眠たげである。

 

 

「もうー、古城君。いい加減キッチリ起きなよ。古城君がそんなのだと、私が恥ずかしいんだからね!」

 

 

「くぁ〜……んん。ああ、悪いな、凪沙」

 

 

キッチンから小言を言いながら家事全般をこなす暁凪沙は朝食の準備を進めていた。それに対して未だハッキリと目の覚めない暁古城は生返事を返した。

 

 

「ん?そう言えば今日は朝練は無いのか?」

 

 

「うん、今日から数日は無いんだって。だから、久しぶりにのんびりと朝の準備が出来るのだ!」

 

 

Vサインを兄である古城に向けながら屈託の無い笑みを凪沙が浮かべる。それを古城は無視してリモコンを操作し、テレビを点ける。そして、いきなり自分が関わった事件がニュースとして取り上げられており、古城は苦い顔をする。

 

 

「あー、その事件。そう言えばまだ犯人捕まってないんだよねー。うぅ、怖いなぁ」

 

 

「あー……多分平気だろ。学校からは少し離れてるし」

 

 

「けど、白昼堂々と騒動を起こした様な魔族の人なんでしょ!?離れてても、やっぱり怖いよ!」

 

 

ウッ、と古城は呻き声を漏らす。若干なりとも凪沙の言葉が古城に突き刺さったのだ。彼自身、望んでそうなった訳では無いが、今は魔族である事には変わりが無い。何時まで隠し通しておけるのか、それが古城の頭から常に離れてくれないのだ。もし、バレようものなら………

最悪のケースを想像し古城は一瞬身震いする。それを凪沙に悟らせまいと、自分から話題を変える。

 

 

「あ、あぁ、そうだ!そういや、桜満の奴が昨日クラスに転校して来――」

 

 

「ちょっと、古城君!!!何でそれ黙ってたの!?って事は集さん帰って来たの!?」

 

 

「お、おう、その通りだ……だからちょっと離れてくれ」

 

 

「あ、ゴメン。………そっか。集さん帰って来てたんだ」

 

 

凪沙の勢いのある行動に古城は目を白黒させる。凪沙は凪沙の方で安堵の息を吐いていた。集がここ3日ほど姿を消していた期間、彼女も心配していたのだ。一応隣人になった訳ではあるのだし、その心配は当たり前と言えば当たり前だろう。

 

 

「ん?スンスン…………なぁ、凪沙。若干焦げ臭い様な……」

 

 

「あーー!!フライパン!!」

 

 

「おいぃぃ!!」

 

 

こうして、バタバタと慌ただしく準備を進める暁兄妹の様子を隣の部屋のベランダから聞いている人物が居た。言うまでもなく、暁家の隣に住む703号室の桜満集だ。さすがに壁越しでは聞こえにくいが、外のベランダであれば、隔てているのは窓一枚と少しの距離なのでコッチの方が聞こえやすいのだ。それを強化した聴力で外の騒音と聞き分けるのだ。

当然、集もさすがに身体強化しなければ隣の様子など聞こえる訳もないので、常時この様な盗聴の真似事をしている訳では無い。古城の監視のため、登校の時間をなるべく被らせる様に朝のみ行っている。表立って監視しています、などと言える訳でも無いので心苦しいが、こういった行動が必要になったという訳だ。

 

 

「はは……古城は朝から凪沙さんに小言を言われてるみたいだね。っと、向こうが慌ただしくなって来たな……………そろそろ家を出るのか。じゃあ、僕も――」

 

 

集が言い終わるより前に部屋のインターホンが鳴り響く。集はそのまま玄関へ行き、扉を開けた。

 

 

「あ、集さん、おはよう!えっと、それよりも久しぶり、かな?」

 

 

そこに居たのは先ほどまで隣の704号室で兄と騒がしい朝を送っていた凪沙だった。集としては、後から追うようにして合流するつもりだったので急な来訪に一瞬焦るが、すぐに調子を取り戻しなるべく普通に対応する。

 

 

「………おはよう、凪沙さん。えっと……?」

 

 

「あ、急に尋ねちゃってゴメンなさい。集さんって古城君のクラスに転校して来たんだよね?」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

「だったら、丁度いいから一緒に登校しない?あ、そうだ。何でこの数日間居なかったのか教えてよ。って、見た感じまだ準備中だった?あ、だったら古城君も準備中だし丁度いいや。のんびり準備して大丈夫だからね、集さん。古城君って朝弱いから、朝だけは行動が遅いからさ。じゃ、私家に一旦帰って待ってるから、準備できたらインターホン押してね。絶対だよ?また、勝手にどっか行ったらダメだからね!じゃ!」

 

 

ひたすら集は凪沙の言葉攻撃を受けて、それが終わった後もしばらく呆然としてしまった。久々にこれを受けたなぁ、などと感慨に浸りつつも、我に帰った集は早速準備を始めた。集にとっては今の状況は正に渡りに船だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古城が準備を終え、3人で登校をする事になり朝の公道を歩く。彩海学園へは、途中モノレールを利用するため、揃って駅へ向かっている。

 

 

「それにしても、集さんいきなり帰って来てるんだもん。ビックリしたよ」

 

 

人懐こい笑みを浮かべながら、凪沙は子犬がじゃれつく様に隣を歩く少年に話しかける。

 

 

「ゴメンね、凪沙さん。南宮先生や特区警備隊(アイランド・ガード)の人達に飲み会で捕まってて」

 

 

「へぇ、大変だったんだねー………特区警備隊(アイランド・ガード)ってこの前のアイランド・ノースの時の人?」

 

 

「うん、そう。僕も古城もお世話になったからね。だからその人のお見舞いに行ってたりもしたんだ。………まぁ、その後色々と連れ回されたけど」

 

 

「そうだったんだ。けど、何でこんな大事な事を古城君は言い忘れるかな?言ってくれれば、昨日の夜にでも、お帰り会やったのに」

 

 

「だから、その件については謝っただろ!?それに、昨日はその………俺もいろいろあったんだよ」

 

 

「ふーん………いろいろって、何?」

 

 

「そ、そりゃあ、いろいろだよ」

 

 

古城の苦しい言い逃れに凪沙は眉を顰める。そして、古城を見る目が若干冷めた視線に変わる。

 

 

「………妹に言えない様な事なんだ。不潔」

 

 

「なっ!?ち、違う!だから、そんな目で見るな!本当に誓って疚しい事なんかじゃない!」

 

 

「いや!近付かないで!」

 

 

「うっ……」

 

 

妹の思わぬ言葉の暴力が突き刺さり、停止する古城。その様子を見て、苦笑いしつつも集は助け舟を出す。

 

 

「まぁまぁ、凪沙さん。古城は本当に昨日は大変だったんだよ。ほら、ニュースにもなってたけど、昨日の眷獣騒動があったでしょ?あの近くに実は古城も居たんだよ」

 

 

「えぇ!?そ、それって大丈夫だったの、古城君?」

 

 

凪沙は驚嘆の声を上げ古城を心配するが、古城はその話題にギクっと体を一瞬硬直させた。そして、チラリと集の方を確認すると、口パクで『話を合わせて』というのが見えたので、その通りにする。

 

 

「お、おう。い、一応な」

 

 

「まぁ、こんな風に凪沙さんが心配するだろうから言わなかっただけなんじゃないかな?ね、古城?」

 

 

「お、おう………」

 

 

「そんなの当たり前じゃん!心配するに決まってるじゃん!………って、事はもしかして集さんも近くに居たの?」

 

 

「うん、南宮先生に呼び出されてたから、古城と一緒には帰れなかったんだけど、帰りに見つけてね。で、話しかけようとしたら丁度昨日の事件があったんだ。その後は逃げる人波に流されて逸れちゃったんだけどね」

 

 

「そ、そうだったんだ。ゴメンね、古城君。不潔って言っちゃって」

 

 

「あ、ああ、いいんだ別に。説明しなかった俺も悪かったからな」

 

 

咄嗟に考えた口実だったが、集は内心うまくいったと胸を撫で下ろした。そこで、丁度駅に到着し、モノレールに乗り込んだ。そして、再びお喋りである凪沙が話題を振った。

 

 

「そういえば、集さんの転校関連で思い出したんだけど、丁度昨日私のクラスにも転校生が来たよ」

 

 

「凪沙のクラスに?」

 

 

「うん、そう。すっごく綺麗で可愛い子だったよ。早速ファンクラブが出来ちゃうくらい!」

 

 

その凪沙言葉に集は、もしやと集は思い質問する。もしかしたら、昨日の事件に関係した女子生徒では無いのか、と。

 

 

「すごいね、それは。なんて子?」

 

 

「姫柊雪菜ちゃんって子だよ。ショートヘアで清楚って言葉がそのまま当てはまりそうな子だよ。以前は関西の方の学校に居たんだって」

 

 

「へぇ……」

 

 

集は内心ビンゴだと、そう予感した。昨日矢瀬が報告した少女だろうと。髪型の特徴も一致するし、集自身が調べた限りでは獅子王機関の置かれている地は関西の山奥だと聞いている。さらに、獅子王機関の構成員を育成する学校もその場所の近隣にあると聞いていた。断定はできないが恐らくそれで間違い無いだろうと集は考えた。

そうなると、次の問題は彼女の目的だ。今は標的が古城だという事しか分かっていない。古城に近づく詳しい目的。『監視』、『協力』、『制御』を依頼されている集にとって、それこそが今は重要なのだ。

 

 

「どうしたの、集さん?もしかして、興味出た……とか?」

 

 

凪沙が心配そうに顔を覗き込んできたため、集は慌てて取り繕う。

 

 

「い、いや、違うよ。ちょっと、他に考える事があって」

 

 

「へぇ、どんな事?」

 

 

「え、えっと……今日の小テスト」

 

 

「えっ!!?」

 

 

咄嗟に言った集の言葉に反応したのは古城だった。集自身は今さら高校1年のテストなど、大した勉強をせずともある程度の高得点は取れる。だが、凪沙を挟んで座っていた古城の方は違った。その呻き声に妹である凪沙は冷ややかな視線を兄へと送る。

 

 

「古城君?もしかして……」

 

 

「あ、あぁ、そういや、那月ちゃんがそんな事言ってたっけなぁ。あ、あははは……」

 

 

「はぁ……もう、古城君。しっかりしてよ……」

 

 

「…………スマン」

 

 

凪沙に呆れられつつ、古城は謝罪するしか無かった。自分の担任の話を聞き逃したのは自分自身なのだから当たり前と言えば当たり前だ。そして、そんなこんな話している内に3人は彩海学園に到着し、集と古城は高等部へ、凪沙は中等部へ向かった。因みにこの後朝に行われた小テストは古城のみ不合格となり、彼らの小柄な担任教師の怒りを買うことになったのは言うまでも無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ふむ、いいだろう。ギリギリだが合格だ」

 

 

「ふぅ………良かったぜ」

 

 

「まったく、次からはこういう事は無いようにしろ?次は再試だけでは済まさんからな?」

 

 

「……うッス」

 

 

現在は授業も全て終わった放課後である。朝の小テストに不合格だった古城は、ペナルティとして那月に再試を課せられていたのだ。そしてそれも終わり、帰ろうとした時だった。古城が思い出した様に那月に質問を投げかけた。

 

 

「あ、そうだった。なぁ、那月ちゃ――ってぇ!?」

 

 

「教師を"ちゃん"付けで呼ぶな!……で?なんだ、暁古城?先ほどの小テストの質問か?」

 

 

「さ、最後まで言ってねえのに……いや、そうじゃなくって……」

 

 

古城は扇子で叩かれた額を摩りながら、本題に入る。

 

 

「獅子王機関って聞いた事ないか?」

 

 

「……貴様、それを何処で知った?」

 

 

古城の質問に那月が色めき立つ。古城自身は自分を襲撃してきた昨日の襲撃者である姫柊雪菜が所属するという、組織について知りたいだけという軽い気持ちで聞いたのだが、那月の声の変調っぷりに一歩引いた様な姿勢になる。

 

 

「いや、そんな組織があるみたいな事を小耳に挟んだというか……」

 

 

「ふん、まぁいい。奴らは私とは商売敵だ」

 

 

「商売敵?」

 

 

「無論、国家攻魔官としてのな。精々連中には気を付ける事だな、暁古城。貴様が第四真祖であっても本気で殺しにかかって来るぞ。連中はそのために作られたのだからな」

 

 

「……気を付けます」

 

 

「まぁ、気付いた事があったのなら私に連絡しろ。では、私はもう行く。明日も遅刻はして来るなよ?」

 

 

それだけ言うと、那月は教室を出て行った。そして、残された古城は携帯を取り出し、ある人物に電話をかける。

 

 

「あ、俺だ。桜満、今は何処にいる?」

 

 

『今学校の図書室だよ。古城は再試無事に終わった?』

 

 

電話口から聞こえたのは隣人である桜満集だ。ある事を約束していたため、集に学校で待ってもらっていた訳だ。

 

 

「おう、ギリギリだったけどな。じゃあ、一旦合流するか。悪いんだが、一階の渡り廊下まで来てくれ」

 

 

『うん、りょーかい。じゃ、また後で』

 

 

そう言うと古城は電話を切って携帯をポケットの仕舞うと、カバンを肩に掛け西日の差し込み始めた教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩海学園の図書室。絃神島は慢性的な土地不足もあって、その影響は学園の図書室にまで及んでいた。要は本土の学校と比べて、狭いのだ。その小さな図書室の窓からは、若干西に傾いた太陽光が差し込み、クーラーが効いているとはいえ、それが多少なりとも室内の気温上昇に拍車を掛けている原因だろう。外からはグラウンドで各運動部が部活動に励む姿を見る事ができる。殆どの生徒は部活か帰宅した為か、図書室にはそこまで多くの人は居ない。

 

 

そんな中、授業が終わるなり、放課後ずっと本を読んでいる生徒の姿があった。桜満集だ。彼自身の仕事のためにも、ここで時間を潰しているという訳だ。彼にとって、手に取る本全てが異世界の書物であり、未知の物だ。初めは簡単な気持ちで暇潰しをしようと思っていたのだが、これが中々面白い。そこまで熱心な読書家などでは無かった彼ではあるのだが、初めての物が多い彼にとっては充分に楽しめたようだ。だが、そんな楽しい時間もポケットの中で震える携帯で終了となる。着信画面を見ると、自分の監視対象からだった。つまり、ここからは仕事の時間という訳だ。

 

 

『あ、俺だ。桜満、今は何処にいる?』

 

 

「今学校の図書室だよ。古城は再試無事に終わった?」

 

 

『おう、ギリギリだったけどな。じゃあ、一旦合流するか。悪いんだが、一階の渡り廊下まで来てくれ』

 

 

「うん、りょーかい。じゃ、また後で」

 

 

そうして、電話を切って集は読んでいた本を元あった本棚に戻す。机に置いてあった鞄を肩に掛けて、扉を開けて右前方を見ると、見覚えのある顔があった。昨日古城を襲撃したという姫柊雪菜が廊下の角を曲がろうとしていたのだ。察知されないように、自然に歩き廊下を曲がり階段に出る。そして、下へ降りていく姿を確認すると、ある程度の距離を保ちつつ集も階段を降りる。彼女は鞄以外に黒いギターケースも所持していた。おそらく、あの中には昨日写真で見た七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)が入っているのだろうと予測したため、尚の事警戒した。そして、そのまま一階へと降り、あろう事か古城との待ち合わせ場所である渡り廊下に差し掛かっていた。

 

 

咄嗟に集は立ち止まり、廊下の窓から様子を伺えるように携帯をいじる振りをしながら渡り廊下に視線を注いだ。

 

 

 

 

 

 

そして、その渡り廊下では古城が昨日拾った財布に残った匂いにやられて、吸血衝動に襲われていた。

 

 

「マズッ!?ぐ……くそっ、またかよ!?」

 

 

古城は鼻の奥がツンとすると、鼻血が流れてくる。これは古城自身の興奮すると、鼻血が出やすいという体質によるものだ。吸血衝動も取り敢えず誰の物でも構わないので、血を摂取すれば治る。だからこそ、古城はこの体質に救われていた。

 

 

「……はぁー、ホント勘弁して欲しいぜ」

 

 

吸血衝動も治まり、鼻のあたりを拭う古城に話しかける人物がいた。

 

 

「………人の拾った財布で興奮して鼻血ですか?いやらしい」

 

 

「なっ!?」

 

 

冷ややかな調子で姫柊雪菜は話し掛けた。古城は急に現れて、出会い頭に言われた暴言に抗議しようと振り返るが、そこに居たのは目的の人物であったので口を紡ぐ。そして、気まずそうに視線を逸らす。

 

 

「………勘違いだ。俺はこういう体質なんだよ」

 

 

「財布に興奮する体質ですか?」

 

 

「違あぁぁう!………はぁ、もういい。で、これお前のだよな?ほら」

 

 

そう言って古城は財布を差し出す。

 

 

「……無いと思ったらやっぱり、あなたが持っていたんですね」

 

 

「仕方ないだろ。そっちはすぐに立ち去っちまったんだから。それに、彩海学園の制服を着てるんなら、こうやってまた会えると思ったんだよ。警察に届けるより早いだろ?」

 

 

「そう言って会う口実を作るためだったのでは?」

 

 

「そんな事するかっ!」

 

 

どうやら、雪菜の中での古城の信頼は地に落ちているようだ。その原因は昨日の事件の際、古城が彼女のパステルカラーのパンツを不可抗力とはいえ、見てしまったのが原因だったのだが。そして、2人のやり取りを観察していた集はそんな事知ろうはずもなく、なぜこんなにも険悪なムードになっているのかが理解できなかった。そして、このままでは埒があかないと踏んだ彼は思い切って2人に話しかける事にした。

 

 

「古城お待た………取り込み中だった?外そうか?」

 

 

「桜満、いい所に!朝話してた要件はたった今済んだから、もう帰ろうぜ!」

 

 

「桜満?………桜満集!」

 

 

振り返った雪菜はギターケースから七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)は取り出さなかったものの、バックステップを取って距離を取る。

 

 

「えっと……どこかで会ったかな?」

 

 

集はなるべく自然に振舞いながら、内心では若干驚いていた。集の方は矢瀬の報告で姿を知っていたし、凪沙のおかげで名前も知れた。だが、直接会うのは初対面な筈なのに、向こうは自分の事を知っている。という事は、既に集の事は少なくとも獅子王機関にどの程度までかは分からないが、漏れているという訳だ。それだけに優秀であり、また下手をすると厄介な組織なのだろうと集は値踏みする。

 

とにもかくにも、こんな場所で戦闘など始められたら、たまったものでは無いので、集はなるべく相手を刺激しないように注意する。

 

 

「……もしかして、凪沙さんと同じクラスだっていう姫柊雪菜さん?」

 

 

「……はい」

 

 

「そっか。僕は桜満集。ってそっちはもう知ってるんだっけ。古城から聞いたけど、獅子王機関の人なんでしょ?」

 

 

「………暁先輩から既にお話は伺っていた、というわけですか?」

 

 

「うん、まぁ。それに古城の秘密の事も知ってる。それなりに話は通じると思っていいよ。えっと……」

 

 

集が言い淀んだと同時に雪菜の腹の虫が小さく鳴って、集も古城も吹き出す。

 

 

「なっ!?ち、違います!今のは……」

 

 

「そういや、俺も小腹が空いたな。桜満は?」

 

 

「うん、僕も少し」

 

 

古城がフォローを入れると、集もそれに便乗して同意する。

 

 

「ま、お互いに話したい事もあるだろうし、話はどこかに入ってしようぜ」

 

 

そう言って、若干妙な雰囲気の3人組は校門を出た後、近隣に存在するハンバーガーショップに入っていくのだった。

 

 

 




ってな感じで、顔合わせですね。


因みに描写してはいませんが、集は矢瀬への報告を一日三回行っています。朝、昼休み、夜ですね。


ではでは、また次回!

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