Blood&Guilty   作:メラニン

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さて、みなさんこんにちは(?)


ようやく、原作の本編スタートですね。


では、どうぞ!


聖者の右腕
聖者の右腕編Ⅰ


 

鬱蒼と茂る森林を背景に位置する神社の境内を篝火が赤々と照らし、その奥の拝殿には月光だ差し込んでいる。その拝殿の中央に座り緊張した面持ちの少女が居た。

年の頃は中学生くらいだろうか。髪はショートヘアで切り揃えており、この神社の近隣に存在する有名な神道系の女子校の中等部の制服を着用している。幼さはまだ残るものの、その意志の強そうな凛とした眼差しは大人のそれと比べても何ら遜色がない。そして、その眼差しは目の前の一点を見つめていた。

 

その一点とは彼女の正面に座する3名の内の中央に居る人物だ。拝殿の奥は御簾が掛けられており、顔を見る事は出来ない。彼らは獅子王機関(ししおうきかん)の『三聖』と呼ばれる高名な霊能者や魔術師だ。つまり、今拝殿の中央に座っている少女の遥か上の存在だ。彼女の緊張の原因はそれであった。そして、中央に位置する人物が口を開く。

 

 

 

「今日はよく来てくれました。一応名乗ってもらってよろしいですか?」

 

 

「はい、姫柊雪菜(ひめらぎ ゆきな)です」

 

 

「まずは急な招集に感謝しますよ、姫柊雪菜」

 

 

「いえ……」

 

 

姫柊雪菜と呼ばれた彼女は会話が進んだ事で、少し緊張が和らぎ始めた。それを察してか、『三聖』の内の1人が声を発する。

 

 

「では、前置きは無しにして早速本題に入りましょう。これを」

 

 

そう言って御簾の下から一枚の写真が床を滑って姫柊雪菜の元に届く。それを拾い上げてみると、写真に写っていたのは色素の薄い髪をして、白いパーカーを着用し、どこか気怠そうにした少年だった。その写真を見て彼女は眉をひそめる。

 

 

「あの、これは?」

 

 

「貴女の好みには合いそうですか?」

 

 

「好み、は?え、えっと、どういう事ですか?」

 

 

「そのままの意味ですよ。格好いいだとか、顔が好みだとか。異性としてどう思うのか、とか。それとも、逆に好感は覚えないですか?」

 

 

微笑みながらそう言う目上の存在に僅かながら反感を覚える。

 

 

「ふふ、別に生理的に受け付けないとかでは無いみたいですね」

 

 

「あの………さっきから訳が分からないのですが」

 

 

「………貴女は真祖についての知識はどの程度ありますか?」

 

 

いきなりの質問に少し狼狽えるが、一度咳払いをして語り始める。攻魔師であればほぼ必ずと言っていいほど当たり前の事なのだ。即ち、彼女も見習いの域をまだ出ない身ではあるものの攻魔師である。

 

 

「最も旧くから存在し絶大な魔力を保有する上、強力な眷獣を複数体使役する。その力は災害にも匹敵する最強の吸血鬼。そして、現状確認されている3人の真祖――第一真祖である『忘却の戦王(ロストウォーロード)』、第二真祖の『滅びの瞳(フォーゲイザー)』、第三真祖『混沌の皇女(ケイオスブライド)』によって世界のバランスが取れている、ですか?」

 

 

「そう、その通りです。そのバランスが在ってこその聖域条約が締結されたのであり、これを脅かす事はそれ即ち世界の滅亡にも繋がりかねません。そして、それを脅かしかねない存在が確認されたとすれば?」

 

 

「ま、まさか!聖域条約が破られるなんて事――」

 

 

「ええ、通常であれば無いはずでしょう。吸血鬼は人間社会に溶け込んで生きる事を好みます。しかし、それはあくまで恒常的に平和が維持されているのならば、という条件下でのみです。そして、聖域条約を――真祖達のパワーバランスを崩しかねない存在が確認されました」

 

 

「………第四真祖、ですか?」

 

 

彼女の発言に、「ほう」という感嘆の声が何処からか漏れる。世間では第四真祖の存在は都市伝説程度にしか語られていないのだ。それを知っていたのだから、見習いとはいえ優秀だという判断材料になったのだろう。

 

 

「ええ、その第四真祖の存在が確認されました」

 

 

「……一体何処で?」

 

 

「東京都絃神市の魔族特区、通称『絃神島(いとがみじま)』です」

 

 

「に、日本なんですか!?」

 

 

「そして、貴女に渡した写真がそうです」

 

 

「え、え?で、ですが、この人――」

 

 

「彼は絃神市の私立彩海学園高等部1年B組、出席番号1番。名前は暁古城」

 

 

「……第四真祖が高校生?」

 

 

「ええ、そうです。現状、獅子王機関で穏便に彼に接触できる唯一の人物が貴女です。……優秀な剣巫である貴女の事です。もう分かりますね?獅子王機関『三聖』の名において命じます。姫柊雪菜、第四真祖に接触し、動向を監視。そして危険と判断した場合、これの抹殺を行いなさい」

 

 

重大な任務を言い渡された彼女は一瞬頭が真っ白になる。それもそうだろう。彼女は確かに優秀な剣巫であるが、それはあくまで各種訓練の成績や模擬戦の上でだ。つまり実戦は未経験なのだ。で、あるにも関わらず、いきなり世界のバランスを崩しかねない様な化け物じみた存在を相手にした重大な任務を与えられれば、困惑するのも仕方が無いだろう。

 

 

「で、ですが、私の様に未熟な剣巫(けんなぎ)でなくとも、もっと優秀な――」

 

 

「先ほど言った筈です。穏便に接触し監視出来るのは貴女だけだと。それは、貴女がこれに適合したからでもあります」

 

 

そう言うと、後ろに控えていたお付きの人物が銀色のケースを音も立てず、姫柊雪菜の前に置いた。それを開けると出てきたのは、機械的なフォルムをした槍だった。穂先は柄に収納されているが、刻まれた刻印から、それが何なのかすぐに分かった。

 

 

七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)……獅子王機関の秘奥兵器、ですか?」

 

 

「ええ、その通りです。銘は『雪霞狼(せっかろう)』と言います。分かっているとは思いますが、『神格振動波駆動術式』、即ち魔力無効化の術式が組み込まれた唯一の武器の1つです。それを貴女に託します。やってくれますね?」

 

 

既に姫柊雪菜には退路が無かった。そもそも彼女自身、獅子王機関の一員なのだ。その長老とも言うべき存在から直接言い渡された任務ならば断る事などできる筈もないのだ。それを思い、ゆっくり首肯する。

 

 

「はい。確かにそのお役目、お引き受け致します」

 

 

「そう、それは良かったです。それと、これが最後になるのですが……」

 

 

そして、再び先ほどの写真同様に別の写真を渡される。しかし、そこに写っていたのはブレて辛うじて顔の分かる写真だ。茶髪に一房だけ若干色素が抜けた様な髪が混じっている少年だった。

 

 

「この人は?」

 

 

写真を受け取った姫柊雪菜は首を傾げる。なぜ、こんな写真を?と。

 

 

「先日、先ほど話した第四真祖の暴走によって絃神島が沈みかけた事件がありました。知っていますか?」

 

 

「いえ……」

 

 

「まぁ、表向きは地震で処理されましたからね。しかし、その事件の真相は第四真祖の魔力の暴走です。そして、その時行動を共にしていたのが、その少年です」

 

 

「………つまり、この人が暴走を止めた、という事ですか?」

 

 

「状況から考えればそうなるでしょう。しかし、それを見た者は居ないそうです。当然周囲の監視カメラは魔力の奔流で全て破壊され、監視衛星からの映像も同様に魔力に遮られ、写っていなかったそうです。つまり、どうやって止めたのか。それが分からないのです」

 

 

「………彼も吸血鬼なんですか?」

 

 

「いえ、検査結果は列記とした人間だそうです」

 

 

「そ、そんな!真祖の暴走を止められる人間なんて……」

 

 

「ええ、ですから暁古城を監視する際は彼がネックとなってくるでしょうね。…………くれぐれも気を付けて下さい」

 

 

「はい………あの、この人の名前は?」

 

 

「桜満集、というそうです」

 

 

姫柊雪菜は手元にある2枚の写真を改めて見直し、力強く握りしめた。

 

 

「暁古城と、桜満集……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9月2日。絃神島は相変わらず暑さが厳しかった。太平洋上に浮かぶ人工島であるのだから、それは仕方ないのだが、それでも不満を口にせずにいられないのは人の性だろう。私立彩海学園高等部、1年B組の教室に居る暁古城もそれは普通の人間と同様だった。

 

 

「あ、暑い。焼ける、干からびる、死ぬ……」

 

 

窓際に近い席である暁古城にとっては地獄の様だった。第四真祖といえども、種族としては吸血鬼である為、その特性上日光は苦手なのだ。現在は学校の予鈴が鳴り、生徒全員が席に着いている状態だ。

そして、今日も今日とて暑苦しそうな黒いゴスロリ服に身を包んだ担任がやって来た。幼女にも間違えられる様な体型の南宮那月だ。

 

 

「喜べ、貴様ら。夏休み明け早々に転校生がウチのクラスにやって来る」

 

 

入ってきて早々の担任教師の言葉にクラスにどよめきが起こる。

 

 

「いいぞ、入って来い」

 

 

ガラガラと扉を開けて入って来たのは暁古城、矢瀬基樹、藍羽浅葱は既に見知った顔だった。だが、事情を知らなかった古城と浅葱のみ驚きの声を上げる。

 

 

「「あーー!!」」

 

 

「うるさいぞ、暁古城、藍羽浅葱」

 

 

クラス中でクスクスと笑い声が上がり、浅葱は気恥ずかしそうに俯いて、古城は気まずそうに窓の外を見る。

 

 

「えっと………今日からこのクラスでお世話になる桜満集です。島外から来たばかりで分からない事も多いですが、よろしくお願いします」

 

 

頭を下げる集に今度は幾つか質問が飛ぶ。

 

 

「趣味は、なんですかぁ?」

「島外って何処からか来たの?」

「今はどこら辺に住んでるの?」

 

 

などなど幾つか飛んできた為一瞬困惑し那月の方を見たが、本人は溜息を吐きつつも、答えてやれと小さく言うと、集はそれに従い答えていく。

 

 

「えっと、東京から来ました。住んでるのは古城の家の隣です。趣味は………映像研究、です」

 

 

「映像研究って何すんの?」

 

 

「えっと映像作品……例えば映画とかドラマの映像を見てそれに使われている技術とかを研究するんだ」

 

 

「それって、音楽とかはやらないの?」

 

 

その質問に集は一瞬ぐっと息を呑む。今の一言で思い出してしまったのだ。楪いのりの歌を。だが、動揺を抑えて集は答える。

 

 

「……音楽自体はあまりやらないけど、ミュージックビデオとかなら」

 

 

「もういいだろう?後は昼休みにでも聞け。ほら、さっさと授業に移るぞ。桜満集、お前は矢瀬の隣だ」

 

 

そして、夏休み明けの最初の授業が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業も終わり、昼休み。集は本来高校2年生だったので、高校1年の内容は復習と変わりがなく、楽に進めていた。しかし、実質高校2年生として勉強したのは半年ほどだった。だからこそ、合間を縫っては本来、自分がやっていた筈の学習内容を勉強していた。要は内職である。各教科の問題集は早速貰った給料で購入していた。その為、集のカバンは注意深く見ると若干分厚く見えていたが、幸いにもそれを指摘してくる人物は居なかった。

 

それよりも、今問題なのは彼を取り巻く人数だ。ほぼクラス中の生徒が集まり、その中には古城と浅葱も居た。

 

 

「お前、ここ数日何処行ってたんだよ?心配したぞ?」

 

 

実は古城と浅葱が驚いたのには理由があった。学校が始まる3日前から集との連絡が取れなくなっていたのだ。それを心配した2人は島中を探し回ったのだが、矢瀬のすぐに帰って来るという言葉を信じて集の捜索は打ち切られていたのだ。

 

 

「えっと、南宮先生に勉強がどのくらい進んでるのか見られて、他にも手続きの書類だとか、後は東條さんの所にお見舞いに行ったら特区警備隊(アイランド・ガード)の人が来て、その人達の飲み会に巻き込まれてたりしてた……」

 

 

「………言われてみれば、桜満君の目の下薄っすらクマがあるわね」

 

 

浅葱が覗き込むようにしながら集の表情を確認すると、確かにクマが出来ていた。

 

 

「……そういや、俺東條さんの見舞いに行ってなかった」

 

 

「うん……古城の分も見舞いして行けって言われて大変だったよ」

 

 

「あ、あははは!わ、悪い……」

 

 

ジト目で見る集の視線を躱しつつ謝罪する古城。

 

 

「ねぇねぇ、ところで話を聞いてる感じ、桜満君って暁や浅葱と前から知り合いみたいだけど、何で知り合ったの?あ、私は築島倫。よろしくね」

 

 

「よろしく、築島さん。えっと、初めてこの島に辿り着いたのって殆ど事故みたいなものだったんだ。それで、食糧事情に困ってるところを古城に拾われて……」

 

 

「へぇ〜……なるほどねぇ。暁は転校生を餌付けして知り合ったのか」

 

 

「違う!そもそも、食事をさせてやってたのは凪沙で――」

 

 

「えぇぇ!?凪沙って暁の妹の!?あの暁が妹ちゃんに男が近付くのを許すだなんて……」

 

 

「おい!それどういう意味だ!?」

 

 

古城は築島倫が驚きながらした指摘に噛み付くように反論した。築島倫に同意する様にクラスの同級生達はうんうんと、首を縦に振る。

 

 

「え、だって、暁って若干シスコンっぽい気があるじゃん?」

 

 

「誰がシスコンだ、誰が!」

 

 

「じゃあ、妹ちゃんが急に『私今日からこの人とお付き合いするから』って言って男連れて来たら――」

 

 

「許さん!」

 

 

「ほら、やっぱり」

 

 

「いや、当たり前だろ?凪沙の奴はまだ中学3年なんだぞ?男女交際なんて早いだろ」

 

 

古城の指摘に同級生達は溜息を吐く。シスコンである以上にこの男は考えが若干なりとも古いのだ。昭和くらいに。

 

 

「はぁ……暁、今どき小学生から付き合ってる子だっているよ?そういうの含めて経験だと思うけど?」

 

 

「しょ、小学生から!?………だが、他所は他所。うちはうちだ」

 

 

その古城の言葉に再び同級生たちは溜息を吐く。ならば、一体何時からなら良いのか?そして、お前自身は如何なのだと、同級生達は喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。

 

 

「はぁ、まぁ暁の事は放っとくとして、そろそろお昼ご飯にしようよ。そうだ浅葱、校内の案内も兼ねて屋上行かない?」

 

 

「いいわよ。ほら、古城、基樹行くわよ」

 

 

「「へいへい」」

 

 

先行する女子2名を集、古城、矢瀬の3人がそれを追う。彼らの言う屋上とは彩海学園に設置された屋上庭園の事だ。スペースの関係上、庭園と呼べる要素全てを屋上に持って来て屋上庭園として、生徒に開放しているのだ。普段は利用者が少ないが、今日は集の案内という事で、一行はここで昼食をとる事に。屋上庭園と言うだけあって、色取り取りの花が咲き、プランターにはハーブと思しき物も植えられている。余談だが、このハーブは彼らの担任が職権乱用で無理矢理置いた物である。本人曰く、ハーブティーに使うハーブは自分で育てた物が一番信用できる、との事だ。だが、その管理も大概人任せになっていることが多い。

 

 

 

 

 

「ふーん。東京って言っても、研究施設に居たんだ。けど、どこか悪そうな所なんか無くない?」

 

 

昼食も食べ終わった頃、彼らは再び雑談に花を咲かせていた。

 

 

「ああ、それは今人工皮膚で隠してるから」

 

 

集は右腕をヒラヒラと振ってみせる。そう、彼が言った様に、現在彼の腕は人工皮膚で覆われ結晶状の腕が露出しない様になっている。だからこそ、クラスにもスグに溶け込めたのだ。

 

 

「え、何?もしかしてその下はグログロしてます、とか?」

 

 

「ちょっと、お倫!」

 

 

「ごめん、冗談だって。桜満君もごめんね」

 

 

「ううん、大丈夫だよ。気にしないで、築島さん」

 

 

倫は舌を出してイタズラっぽく謝るが、それを尚のこと浅葱が小突いて注意する。それに対して反撃とばかりに倫が浅葱に若干悪意の含んだ質問をする。

 

 

「それはそうと、浅葱はこの夏はナニカ無かったの?」

 

 

「な、何かって何よ?」

 

 

「えー、それは一夏の体験みたいな。ねぇ、矢瀬君?」

 

 

「そうですねぇ、築島さん。その辺、詳しく聞いておきたいですなぁ」

 

 

ゲヘヘと少しゲスい笑みを浮かべつつ、浅葱を問いただそうとする。今浅葱の目には2人の背中には蝙蝠のような羽と、頭からは2本の角が生えているようにしか見えなかった。これに、先端の尖った尻尾でもあれば完璧に古いイメージの、某種族とマッチするだろう。

 

 

「な、何も無いわよ!ちょっと、古城あんたからも――って、何やってんの?」

 

 

「ん?おお、桜満が持ってたから見せてもらってたんだよ。凄えぞ、ほら。えっと……何て言うんだっけか、これ?ええっと……はしご?」

 

 

古城の手には赤い毛糸でできた紐を指に通して見事な一段ばしごを作っていた。

 

 

「わ、懐かしい。それって綾取り?もうやり方ちょっとしか覚えてはないけど」

 

 

浅葱が近付いて古城の手元の綾取りを観察する。

 

 

「へぇ、意外……でも無いか。集なら手先が器用そうだし、出来てもおかしくないか」

 

 

「まぁ、僕も別にずっと前からやり方を知ってた訳じゃなくて、割と最近出来るようになったんだけどね」

 

 

「ふーん。なぁ桜満、他には無いのか?」

 

 

「ああ、うん。じゃあ一段ばしごが出来るようになったんなら、二段ばしごかな?えっと、やり方は――あ」

 

 

そこで集は何かを思い出したように、一瞬浅葱を見ると口を開いた。

 

 

「そこから先は藍羽さんに教えてもらった方が良いんじゃないかな?僕もそこまで多くが出来る訳じゃないし、こういうのって女の子の方がよく知ってるだろうし」

 

 

「言われてみればそうだな。じゃあ、浅葱。教えてもらっていいか?」

 

 

「え!?しょ、しょうがないわねぇ。じゃあ一回それ貸して」

 

 

浅葱は一瞬だけ困惑するが、機嫌良さそうに古城から赤い紐を受け取り教え始める。集は矢瀬と倫の居る隣に移動して、こっちはこっちで会話を始める。集は座るなり、矢瀬と倫にグッと親指を立てて良くやったと、賛辞を贈られた。

 

 

「グッジョブ!グッジョブだよ、桜満君!これで浅葱の恋路が少しは進むかも」

 

 

「ああ、本当にナイスアシストだったな。ああやって少しでも2人の共通の時間を作っていけば上手くいくだろ。………いずれは」

 

 

「確かにぱっと見、あの様子だとカップルでもおかしくは無いと思うんだけど、あの古城だしあまり期待できないというか……」

 

 

「「同感……」」

 

 

集の言う通り確かに古城と浅葱は遠目で見ると、綾取りを理由にイチャついているカップルにしか見えない。だが、指摘された内容の通り、あの古城なのである。古城本人の感覚としてはあくまで、友達として教えてもらっているだけにしか感じていないだろう。元も子もない言い方をすれば、今の所浅葱の一方通行の状態である事には変わりが無い。

 

 

「本当、古城の鈍感さはピカイチだな」

 

 

「その内、暁は知らず知らずの内にフラグ乱立しまくってそれに気付かず、背後から刺されそうだよね」

 

 

「いや、刺されるというか、今ちょうど藍羽さんに突き飛ばされてるけど……」

 

 

浅葱の手から、あやとりを取ろうとした古城が誤って手を掴み、その上近付き過ぎた古城との距離に耐え切れず、浅葱が両手で古城を突き飛ばしたのだ。

その様子を見て、同じく屋上庭園にいた3人は溜息を吐いたのだった。

 




ってな、感じで今回は古城と雪菜は接触させませんでした。次回の予定です。


あとですね・・・・・・


いのりの登場なんですが、予告しとくとこの次の章の登場になります。楽しみにして下さっていた方には申し訳ありません!なるだけ早く進めますのでご容赦を!!


では、次回も見て下さるとうれしいです。ではでは

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