ブラック・ブレット〜天目指す獅子〜   作:追憶の英雄

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神を目指した者たち
序章 敗戦


少年はひび割れた道路の片隅に膝を抱えて座り込み、道行く人を見ていた。

 

少年は、なぜこうなったのかを思い返していた。

 

それは、突然やってきた。

 

ーーウイルス性の寄生生物「ガストレア」

 

数日のあいだに少年の地域はガストレアに進行された。

 

人々は、絶望する暇もなく死んでいった。

 

残った人間は少年を含む数人だけだった。

 

残った人間は、生き延びるためにあらゆる手段をとったが

 

ガストレアの餌食になるか餓死するかだった。

 

少年もそんな人間のなかの一人だった。

 

そして、現在少年はガストレアの難を逃れ拾われた天童家から逃げた。

 

そんなとき、突然咆哮が響き渡った。

 

ガストレアだ!

 

少年は、本能的に察した。

 

そして、頭に警鐘が鳴った。

 

逃げろ!

 

と、しかし・・・

 

それは明確なる姿を現した。

 

大きく恐竜のようにみえる赤みのかかった翼、半円形に張り出した大きな二つの深い赤色の目・・・

 

鳥と昆虫の複合因子(ダブルファクター)

 

それをおってくるようにやってきた鉄の塊ーー自衛隊の支援戦闘機が空対空ミサイル(AAM)を切り離した。

 

ジェットエンジンに点火したスパローミサイルは空中で身を捻ろうとする巨大生物の横っ腹に激突、空中に火焔の華を咲かせる。

 

巨大生物は、軌道を変えながら少年の視界一杯に落ちてきた。

 

しかし、決定打にかけたのか巨大生物は苦しみながらも起き上がった。

 

「まだ、生きていたか・・・しぶとい。」

 

聞き覚えのある声に少年が顔をあげると一人の少年が刀を抜き構えていた。

 

「・・・陽炎義兄さんーー?」

 

天童家の長男、天童陽炎(てんどうかげろう)だった。

 

「わかっておるな?陽炎よ」

 

威厳のある声で陽炎に確認をしたのは齢六十に達しているのにも関わらずがっしりとした肉体の男性だった。

 

「ああ。わかってる・・・」

 

陽炎は、それに返事をすると天童式抜刀術『虚空真海の構え』を取った。

 

『虚空真海の構え』ーー陽炎がつかう攻の型の一つで免許皆伝の際に編み出したものだった。

 

「一撃で、決める!」

 

陽炎のその言葉の通り、刀を一閃させるとガストレアは地に伏せた。

 

「世話のかかる、義弟(おとうと)だ・・・。」

 

陽炎は、刀を鞘に納めるとため息をついた。

 

「死にたくなければ、生きろ蓮太郎・・・陽炎。」

 

男性はそう言うと歩いていった。

 

「たく、相変わらずだなぁ・・・」

 

陽炎は、頭をポリポリと掻くと男性のあとを追っかけていった。

 

そして、少年もーー

 

それから、二ヶ月後・・・

 

日本は事実上の敗北宣言を国民に行い、各地の『モノリス』を閉じ自律防御の構えを取る。

 

日本に続くように世界の列強国が『一時措置』としてモノリスを閉鎖。

 

日本は国土の大半を侵略され、大量の死亡者とそれに数十倍する行方不明者をだした。

 

そうして、二〇二一年、人類はガストレアに敗北した。

 

ーーそれから、十年。


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