東方狂宴録   作:赤城@54100

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本編に関わりなんて無い閑話休題的な、そんなお話。

ただズェピアと阿求が甘いっぽい雰囲気を醸し出すだけのような、そんな感じなんだどんな感じなんだってことで一つ。
そんなお話。


第十一話『俺と阿求と甘味処と』

「本当にありがとうございました。コレは少ないですが……」

「依頼されたからには成功させる、それが当然だよ」

 

 つい先程、昨日のお婆さんがお礼を渡しに来た。少ないとは言っているが実際は結構な額、まぁ本当なら命懸けの依頼だから妥当なのかな?

 まったく苦労しなかったから妙な感じだ。

 

「それでは私はこれで……」

「あぁ、それではな」

 

 お婆さんが帰ったのを確認し、マントを脱ぐ。暑いわけではない、調べるためだ。

 アリスに借りた魔道書を片手にマントを見る。昨日アリスが言っていた通りなら、使い方次第ではこのマントさえあれば大概の敵を恐れる必要は無くなる。そのため、自分で調べようとしているわけだ。

 ……しかし

 

「…………まったく読めん」

 

 ガックリと項垂れる。やはりアリスからは基本しか習っていないから字がスラスラと読めない。

 正直英語でさえ躓いていた俺には拷問に近い……が、この体の脳味噌ならいけるはず。ワラキアのスペックならいけるはずだ!!

 

「さて……気合いを入れるとしようか……」

 

 想像するのは常に最強の自分、魔術を容易く扱う自分だ!!

 

 

 

 …………………………

 ……………

 ………

 

 

 

「…………魔術なんて……魔術なんて……」

 

 分かりませんでした……ハハッ、笑えねぇ……。

 つーかあんな文スラスラ読めてたまるかチクショウ! 字も内容も難しすぎて理解するのに時間かかったわ!!

 

「……しかし、まぁ良しとしよう」

 

 即座にクールダウン、理由はこの時間が決して無駄では無かったからだ。

 少し意識を集中させる必要があるものの、魔力を感じれるようになった。コレ割と大きな進歩じゃないか?

 もしワラキアの脳味噌、つまり高速思考が使えなければまだまだ時間がかかっていただろう。ちなみに思考速度は普段の約三倍近く、コチラも何故か性能が上がっていた。

 無論、代償もある。

 

「……糖分が欲しいな。ひたすらに欲しい」

 

 凄い勢いでブドウ糖的なものを消費した気がする。

 現在家にある菓子は煎餅等のしょっぱい系、甘いものは一つも無い。しかし、なんかもう甘いものを誰かが止めだすぐらいに食べたい。

 ……そういや甘味処とかあったな、金も入ったし行ってみるか。依頼人が来てもいいように玄関に張り紙しておこう。依頼はポストに、と。

 

「では行くか」

 

 ポストに入っていた新聞はやはり隅に置き、家を出る。……帰ったら読んでみるかな、暇だし。

 

 

 

 今の時間はだいたい三時前、おやつ時だからか甘味処は何処も客が入り始めてる。

 さて早速何処かに入るか。……でも一人ってなぁ……考えてみると味気無い……。買うだけにして帰るかな?

 

「あ、ズェピアさん」

「む……阿求か、どうしたのかね?」

「体調が良いので散歩していたんです。ズェピアさんは?」

「私は甘味を……ふむ、そうか。この手があるか」

「……?」

 

 急に何かを思い付いたようなことを言う俺に首を傾げる阿求。散歩していたんだし、多分大丈夫だろう。

 

「一緒に甘味処に行かないかね?」

「……え?」

「一緒に甘味処に行かないかね? ……あぁ、代金は勿論私が払おう」

 

 少し付け足してもう一度言う。一人だと寂しいが、二人なら行けるからね。

 しかし顔を真っ赤にして動かなくなった阿求……俺、何かマズイこと言ったか?

 

「甘味処、ですか?」

「うむ」

「私とズェピアさんで、ですか?」

「うむ」

「……ふ、二人で、ですか?」

「うむ」

 

 何故か一つ一つ確認する阿求、本当にどうしたんだ?

 ……流石に二人で、というのは拙いのか?

 

「是非! 喜んでご一緒させて頂きます!!」

「そ、そうかね。では行こう」

「はい♪」

 

 今度はニコニコしながら嬉しそうにしている。やはり女の子は甘いものが好きなんだな、誘って良かった。

 

 

 

 来たのは阿求のオススメのところで、客は多いが割と難なく入れた。案内された席に座り品書きを開く……どれも美味そうだな。

 ……そうだ。

 

「何か食べたいものはあるなら気軽に言いたまえ。遠慮はしなくていい」

 

 品書きを見ながらあれこれ悩んでる阿求に聞きつつ言っておく。遠慮されたら悲しいし。

 

「……じゃあ餡蜜をお願いします」

「分かった、では頼むとしよう」

 

 店員と思われる女性に話しかけ注文する。置かれた茶を啜り、阿求と会話しながら待つ。

 

「ズェピアさんはこういうところはよく来るんですか?」

「来たのは始めてだがね、甘いものは好物なのだよ」

「甘いものが好きなんですか?」

「うむ。最初は脳の回転を補助するために糖分が必要で摂取していたんだが、気がつけば普通に好物になっていた」

「気がつけば……?」

「気がつけば、だよ」

 

 本当に最初はテスト勉強のために摂取してたんだが、気がついたら日常でも普通に食べてたんだよなぁ。夜中に食うチョコは実に美味かった、太るからあまり食べれないけど。

 

「なんか……ズェピアさんって不思議ですね」

「……少しばかり間抜けなのは認めるよ」

「いっ、いえ、間抜けとかそういうのじゃないんです!!」

 

 ガラスソウルの俺が落ち込みだしたら急に慌てだす阿求、なにこの可愛さ。

 

「ただ、その……なんだか可愛いなぁって……。悪い意味とかじゃないんですよ?」

 

 可愛い? 俺が?

 

「何を言っている、可愛いのは君のほうだろう」

「えっ!?」

 

 顔を真っ赤にして俯く、いや真面目に可愛いぞ。

 とりあえず撫でておこう。

 

「あぅ……あぅあぅ……」

 

 …………ハッ! 危ねぇ……あまりの可愛さにお持ち帰りしたくなった。

 クールだ、クールになれ……流石にお持ち帰りは犯罪だから、捕まるから。

 

「お待たせしました、餡蜜二つに団子四つになります」

「あ、あぁ、ありがとう」

 

 ナイス店員、おかげでテンションをギリギリ落ち着けることが出来た。

 ……まだ阿求の機能は停止しっぱなしだけど。

 

「阿求、餡蜜が来たのだが……」

「……………………」

 

 駄目だ、まったく反応が無い。

 ……さてどうするか。

 

「……阿求、口を開けるか?」

「ふぇ……? ……」

 

 ちょっとだけ反応したがすぐに黙り込んでしまった。しかし口を開いたあたりは流石と言うべきか。

 

「このぐらいか……」

 

 スプーンに餡蜜を少し盛り、阿求の口の中に入れる。

 

「むぐ……はっ!?」

 

 お、覚醒した。

 

「あ、あれ? いつのまに餡蜜が?」

「つい先程だよ」

「口の中に何故甘味が?」

「私が食べさせたからだよ」

「食べ……させ……」

 

 ……また停止しやがった!?

 そんなに嫌だったか俺からのあーんは! チクショウ成功するイケメンは滅びろ!!

 

「……………………」

 

 あ、無言のまま動き出した。顔真っ赤だけど大丈夫なのか……?

 スプーンに餡蜜を盛って、俺のほうに……!?

 

「あ、阿求!?」

「あーん、してください」

 

 プルプルと震えながら手を伸ばす阿求、やべぇ鼻から多量の鉄分が溢れ出そう……。

 ……コレは、致し方あるまい。

 

「あー……」

 

 口を開くと、震えながらも此方にスプーンを近付けてくる。とりあえず脳内に永久保存だな。

 

「む……」

「……どう、ですか…?」

 

 なにこの餡蜜、滅茶苦茶美味い。いくらかは食べさせてくれた人補正もあるけど。

 

「実に美味だね、素晴らしい餡蜜だ」

「本当ですか? それはよかったです」

 

 安心したように微笑む、だから俺死んじゃうって。鼻から鉄分流れきって死んじゃうって。

 まぁ流れた分即座に作られてるけど。

 

「では頂こうか」

「あ、はい。…………あ!」

「何かあったかね?」

「い、いえ……」

 

 また顔を赤くしてちびちび食べだす阿求、何かあったか?

 ……しかし、見たことある阿求の顔は赤いのばかりだな。いや可愛いのは可愛いんだが……もう少し普通の顔も見たいなぁ……。

 

「さて、どうするべきか……」

「何がですか…?」

 

 ほんのり赤いままだが少しはマシになったようだ。

 顔が赤くなるのが照れからくるなら、やはり慣れるのが一番かな? でも、慣れるってどうすりゃいいんだ?

 何回も話すとかか?

 

「……まぁいいか。阿求、団子はどうだね? コレも中々に美味だよ?」

「あ、はい頂きます」

 

 うんうん、とりあえず今は普通に食べれてるし大丈夫だろ。

 

 

 

「さて、そろそろ行こうか」

「そうですね……少し食べすぎました……」

「私もだよ……」

 

 少しばかり重たい腹に耐えながら立ち上がる。

 あの後、さらに団子を追加し、さらにおはぎも食べた。美味しかったのは美味しかったんだが流石に苦しい、胸焼けしてないのは奇跡だと思う。

 

「コレで足りるかね?」

「えーと……はい、ちょうどですね。ありがとうございました」

 

 会計を終えてから外に出る。

 時間はだいたい四時頃、夕暮れが近付いてきたな……。

 

「ズェピアさん、今日はごちそうさまでした」

「なに、あのくらいどうということは無い」

 

 律儀に頭を下げながら礼を言う阿求。別に大した値段じゃなかったし、そこまで畏まらなくても……。

 

「おかげでとても楽しい時間がすごせました」

「ふむ、では此方からも礼を言わせてもらうよ。付き合ってくれてありがとう、おかげで甘味を存分に味わうことが出来た」

 

 多少食いすぎなのは否めないが。

 

「な、なんか照れますね……」

「いやいや、本当に感謝しているよ。あまり店についても知らないからね」

 

 ピクリ、と阿求が反応を示した。……何故?

 

「でしたら、また今度案内しましょうか?」

「む……いや、しかし……迷惑なのでは?」

「そんなことありません、ただ散歩するよりずっと有意義ですから!」

「そ、そうかね?」

「そうです!!」

 

 な、なんだこの妙に力強い返事……。

 しかし案内か、確かにしてもらえるならありがたいな。一人で散策するのも良いが二人のほうが楽しいし、案内してもらえる分覚えやすいだろう。

 

「……では、頼めるかね?」

「喜んで!」

 

 にっこり微笑みながら答える、いやどうしよう可愛いぞ。なんかもう、さっきから可愛いばっかり言葉が浮かんでるけど本当に可愛い。

 ……そうだ!

 

「ではその時には、またどこか店に入るとしよう」

「え?」

「せっかく案内してくれるんだ、そのぐらいは当然だ」

 

 しかし、何よりも大きな理由は慣れるため。俺と一緒に何度も出掛ければ赤くならなくなるだろう。うむ、完璧。

 

「……喜んでっ♪」

 

 お、今度は語尾が良い感じに上がった。これは良いことだ、嫌々されるとどうしようもないからね。

 

「ではまた今度。私は依頼でも無い限りは基本的に家に居るから、都合が良い時にいつでも来てくれ」

「はい、では今度を楽しみにしています」

「あぁ、私もだよ」

 

 お辞儀をしてから去っていく阿求を見届け歩き出す。

 今日は甘味をたらふく食べたし、夜は軽めにしておくか等とくだらないことを考えながら。

 

 

「ズェピアさんとデートの約束……これはチャンス、間違いなくチャンスですね!」

 

 対し、とある乙女は色々と考えていた。それはもう、色々と。




こういう山無しオチ無しな話とかがとても楽。
あと突っ走ったラブコメ超書きたい、阿求って可愛いですよね。ね。

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