東方狂宴録   作:赤城@54100

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ご都合展開とかなんとか。

いちおう理由はあったりしますが、勘違いものですしな部分も大きい話です。
こんな話はちょいちょいあります、そんな小説です。


第十話『俺と初依頼と人形遣いと』

 トントントン、とリズミカルにネギを刻んでいき、それを終えたら鍋に入れて火を付け、完成するまでの間は食卓を整える。

 今俺は朝食の準備をしているところだ。昨日はあの後味噌汁の材料と出来合いのオカズ、白米を購入して食べて早めに寝た。で、朝食はその残りにネギの味噌汁。

 ……手抜きとか言うな、朝の短い時間に作るのは大変なんだから。そもそも俺は料理がロクに出来ないし。

 

「っと、火を止めねば……」

 

 危うく沸騰しかけだった味噌汁の火を止め、鍋から移し運ぶ。

 

「いただきます」

 

 ただの挨拶もワラキアボイスのせいでシュールになっている。まぁ流石に慣れたけど。

 もそもそ食べながら今日の授業はどうするか考える。コピー機があればプリントを使ったりも出来るんだが生憎と無い、やはり外と比べると科学レベルが低いのが悩みの種だな……。黒板はあるから普通にやっておくか。

 

「……ごちそうさま」

 

 大して悩まなかった思考を終了し、再度シュールに感じる挨拶をする。食器を片付けたら皿を洗い置いておく。

 終わったら準備の確認をする。服良し、荷物良し、頭の回転良し……うんOKだ。

 

「行ってきます」

 

 誰も居ないが言い、家を出た。

 

 

 

 …………………………

 ……………

 ………

 

 

 

 そして何事も無く授業は終了、今日は宿題忘れによる頭突きの被害者二名が出ただけだ。ちなみに生きてはいる、川を渡ろうとしたら胸が大きいお姉さんに追い返されたらしいけど。

 ……いや普通に死にかけてないか?

 

「ズェピア、なんだその危ないものを見るような目は」

「気のせいだよ」

 

 慧音を見てたらバレた、視線が怖いっす。

 

「…………まぁそれは置いておこう。君に渡すものもあるしな」

「なんだね?」

「コレだ」

 

 生き延びた俺は慧音から札を受け取った。

 なんだコレ? スペルカード用のとは違うみたいだけど……。

 

「それは通信符と言ってな、対になっている符と連絡がとれるんだ」

 

 ……あ、一昨日に約束したアレか? 成る程、解決策を用意してくれたわけだ。変な目で見たりしてごめんなさい、いや真面目に。

 

「フム、つまり授業を出来ない時はコレで連絡すればいいのだね?」

「そういうことだ。霊力……お前の場合は魔力だが、それに少し注げば繋がる。連絡が来たときも同様だ」

「成る程……」

 

 何かの漫画に似たようなアイテムがあったな、アレは連絡する相手が自由に選べたけど。

 でもまぁ、とりあえず慧音との連絡手段は確保したわけだからコレで安心して体調を崩……れる気がしねぇ。吸血鬼で、しかもワラキアだからなぁ……常に健康体な気がする。使うときは急用が出来たときぐらいになりそうだ。

 

「それじゃ私はそろそろ帰るよ」

「あぁ、次は明後日に頼む」

「了解した」

 

 次に出る日を聞いてから帰路に着く。ちなみに時間はまだ午前中、俺の担当時間を終えただけだ。

 ……本当は残って手伝いをしたかったんだが、慧音に「自分の仕事があるんだから帰ったほうがいい」と言われて残るのをやめた。正直最初は邪魔なのかと思ったけど、口振りから本当に心配してくれてるんだと分かったので色んな意味で安心した。

 

「さて、今日はどうするか……」

 

 午後からは時間があるわけだが、やることまであるわけじゃない。

 ……霊夢のところに行って空を飛ぶ稽古をつけてもらうかな? もしくは里の菓子屋を適当に見て回るのもいいかも、菓子好きだし。

 

「……一先ず家に帰るとしよう」

 

 時間はまだ午前、昼食にはやや早いからとりあえず家に帰ることにした。

 

 

「邪魔してるぜ」

「帰りたまえ」

「予想してたぜ」

「……帰るつもりは無いのだね?」

「当然!!」

「…………茶を淹れよう」

 

 魔理沙in我が家、もう前に妹紅がやったよそれは。だがまぁ、今は妹紅の時とは違い寝起きじゃないからもてなす余裕がある。……もてなすとは言っても茶ぐらいしかないんだが。

 

「あぁいや、今回はそういうつもりじゃないんだ」

「む……? どういうことだね?」

「伝言を頼まれたんだ、私は人里に用があったからな。そのついでだ」

「伝言?」

 

 伝言……誰だ? 魔理沙だからアリスあたりかな? しかし用が無いよな……。

 

「アリスからの伝言だ」

 

 まさかの予想的中かよ。

 

「なんでも少し話したいことがあるらしいぜ、多分小難しい話だろうけどな」

「フム、時間の指定はあったかね?」

「夕方頃が良いらしい、コレはアリスの描いた地図だ」

 

 魔理沙から地図を受け取り見る。……魔法の森まで人里から最も近く、且つ安全な入口とそこからのルートが事細かに書かれている。図も綺麗だから非常に見易い……凄いなコレは、最早才能だ。

 

「じゃ、私はそろそろ行くぜ。急ぎの用があるからな」

「む、すまなかったね。次に来るときはゆっくりしていくといい」

 

 何故か目を見開いて此方を見る魔理沙。……何か変なこと言ったか?

 

「ズェピア……早くもデレか?」

「カット!!」

「危な!?」

 

 攻撃を回避して素早く飛んでいった魔理沙。

 ……てか出来たよ、バッドニュース出せたよ。でも魔力減ったっぽいな、なんか少しダルい……効率良く使えるよう練習するか。

 

「あの、すみません」

「む?」

 

 おや、玄関開けっ放しだったか。

 その開けっ放しの玄関から申し訳なさそうに声をかけてくる……お婆さん?

 

「ここは何でも屋さんと聞いて来たのですが……」

 

 ……依頼か!?

 

 

 

 …………………………

 ……………

 ………

 

 

 

 さて、話を聞いてみたところあのお婆さんは薬屋みたいなことをしているとかで薬草が必需品らしい。だがその薬草が採れる森に最近それなりに強い妖怪が住み着いたそうな。

 場所的に薬草以外は人間にとっては必要無いから退魔師も積極的には働かない、依頼しようにも実力のある人は難しい依頼で出払っているから依頼を出来ないような実力の人しか残っていない。

 

 で、そんな状況で俺の話を聞いた。『阿礼乙女を中堅妖怪から容易く救いだした男性が何でも屋を始めた』という話を。恐らくコレを広めたのは阿求の家の人だろう、ちゃんと広めてくれるとはありがたい……そんなに容易くは無かったけど。

 まぁとにかく、流石に半信半疑の様子ではあったが背に腹は変えられなかったのだろう、俺に依頼したわけだ。場所には例の如く地図を貰って向かう。

 

「魔法の森に近いな……」

 

 コレは歩きながら気がついたことだが、位置的に魔法の森からやや人里に近い場所だった。その環境が薬草の生えやすい、そして妖怪の住みやすい森にしているのだろう。

 今まで住み着かなかったのは人里に近く、退魔師に狙われる危険性が高かったからと考えると…住み着いた妖怪は腕に自信があるのか余程の馬鹿か……。

 どちらにしても警戒するに越したことはないけど……ん?

 

「■■■■■■!!」

「……もう少し空気を読みたまえ」

 

 振り抜かれる腕……というか爪を避けながら言う。

 入口で待ち伏せてるとかなんだよ! 見た目は気持ち悪い狼みたいだし、少しビビっただろうが!!

 

「■■■!!」

 

 また大振りの一撃、しかし軽く回避する。

 初日に戦った妖怪に比べ遅い、当たれば凄まじいかもしれないが……こう遅いと当たりようがない。

 

「■■■■■■■!!」

「………………」

 

 …………いや、違う、違うぞ? コレは相手が前より遅いとか、そういうのじゃない。

 

「■■■■■■!!」

 

 また回避……やはり、遅く感じるが前の妖怪と速度に大差は無い。

 動体視力が上がった……か? しかし何故突然……。

 

「……カット!!」

「■■!?」

 

 バッドニュースを放ち妖怪に当てると、かなり効いたらしく苦しそうに叫び絶命した。ダメージはかなり高いようだ、しかも魔理沙に放った時に比べ魔力消費も僅かだが少ない。

 

「楽ではあるが……しかし……」

 

 腑に落ちない、あまりにも急すぎる。

 もしかしたら、無自覚なだけで徐々に身体能力を引き出せるようになっているのか? しかし修行も無しに?

 

「いや、一つ可能性はあるか……?」

 

 確か、精神は肉体に引かれると言う。ならば魂も同じではないだろうか?

 一般人だった俺の魂が肉体、即ちワラキア寄りになりだしている、この理論なら身体能力……さらに悪性情報を扱えるようになったのも分かる。

 ……でもなぁ、突拍子が無さすぎるし別に変わったという感じは無い。良くも悪くも今まで通りだ。

 

「結局、答えは出ず……か」

 

 仕方ない、頑張って魔術関連の書物を集めるか。読めば何か分かるだろうし、少なくとも無駄にはならない。

 ……そうだ、アリスに借りてみよう。恐らく、かなり難しいだろうが……駄目で元々だ、とりあえず時間もちょうどいいし行くとしよう。

 

 

 

 …………………………

 ……………

 ………

 

 

 

「……ここか?」

 

 今度は魔理沙から受け取った地図を片手に歩いてきた。

 目の前には一つの家、二人程度なら追加で住めそうなサイズだ。そして俺の居た世界にもあったような見た目、そのせいでインターホンを探してしまった。当然無いのでノックをしてみる。

 

 コンコンコンッ

 

 待つこと数秒、ガチャッと扉が開いた。

 

「……あら、本当に来たの」

「いきなりそれかね?」

「シャンハーイ!」

 

 飛び込んできた上海を抱き止める……なんだこの可愛さ。

 

「入って、紅茶を淹れるわ」

「失礼する」

 

 家に入り、リビングであろう部屋に通される。所々に人形があるのはご愛嬌というやつか。

 上海に椅子に座るよう促され、アリスはゴソゴソと何かを取り出している。

 

「甘いもの……クッキーは食べるかしら?」

「ありがたく頂こう」

 

 どうやら取り出したのはクッキーだったらしく、目の前に置かれる。可愛らしい皿に入ったクッキーを一枚手に取る。

 

「……ふむ、美味しいね。甘味がちょうどいい」

「そう? それならよかった、紅茶には何を入れる?」

「何も入れずに頼む。……このクッキーは君が?」

「えぇ、手作りよ。お菓子作りは趣味の一つだから……はい、貴方の紅茶」

「ありがとう」

 

 紅茶を一口、これも美味いな……。

 膝の上に座る上海を撫でていると視界の端を何かが横切った。

 

「今のは?」

「あぁ、蓬莱よ。上海と違って人見知りが激しいの」

「ホラーイ……」

 

 小さな声を出しながら、ソファーの影から此方を伺う可愛らしい人形。成る程、あれがそうか……。

 

「シャンハーイ?」

「ホラーイ」

「シャンハーイ!」

「ホラーイ?」

「シャンハーイ」

「ホラーイ!」

 

 解読難易度Sってかオイ。モールス信号の何十倍難しいんだよ。

 自信は無いが……上海は俺が危なくないと説明して、蓬莱は最初は疑わしげだったけど最終的には納得した……かな? いやまったく自信は無いけど、蓬莱が来てるし多分合ってるはず。

 

「蓬莱が簡単に近付くようになるなんて……」

「シャンハーイ!」

「ホラーイ」

 

 驚いてるアリスを尻目に俺を登りだす上海と膝に座る蓬莱。ちょ、上海痛い痛い毛が抜けるマジで抜けるぅ!?

 

「シャンハーイ」

 

 登りきり頭に陣取る上海、昨日も最初に会ったときには確か頭に陣取ったなぁ……。

 

「……そうだ、貴方を呼んだ理由を説明してなかったわね」

 

 力が抜けたような声を出すアリス、いやこの状況は決して俺は悪くない。悪いのは可愛らしいこの人形達で……言っとくが俺に変な趣味は無いからな、ただ本当に可愛らしいんだ。

 

「聞きたいことがあったのよ。本来なら私が出向くべきなんだけど、貴方は何でも屋を営んでいると聞いたから……」

「成る程、私とすれ違いかねないから呼んだと。それは構わない、私も君に頼みたいことがあったからね」

「私に頼みたいこと?」

 

 会って二日目でしかない自分に頼みがあるとは思わなかったのだろう、アリスは首を傾げている。

 えぇい、人形が可愛いのは主が可愛いからか!? 俺の精神力が色んな意味でガリガリと削られてく……!

 

「あぁ、魔術に関する本を貸してほしい」

「魔術……? 魔法じゃないの?」

 

 疑問符が浮かびっぱなしのアリス。そうだ、東方では魔術じゃなくて魔法って言うんだったな。完全に忘れてた。

 

「……私の居た世界では魔法というのは奇跡と呼ぶべき代物でね、魔術ぐらいしか私には使えないのだよ」

 

 とりあえず設定を思い出しながら話す。

 むーん、無印のメルブラはあまりやりこまなかったから途中で間違えないか不安だ……。

 

「奇跡? 貴方の居た世界ではどう区別されてるの?」

「そうだね……分かりやすく言うなれば、魔術とは常識的な現象を非常識な手段で引き起こすことで、魔法とは非常識な現象を非常識な手段で引き起こすことだ。まぁ一部例外もあるが、大概はこの分け方で当てはまる」

 

 

 この理論は合ってるはずだ。魔術はトンデモっぽいけど超高熱や零下百度なんてのは科学で再現出来る。人形を操るのも、別にただ操るだけなら普通の糸を使えば出来るし……。

 

「へぇ……でもそれだけじゃ分かりにくいわね……」

「フム、では魔法について少し説明してみようか。私の世界における魔法とは五つしか存在しない」

「五つ?」

「そう、五つだ。それぞれ第一魔法から第五魔法と呼ばれ、平行世界の運営や魂の物質化等まさに常識を馬鹿にしたようなものばかりだ」

「……確かに馬鹿にしてるわね」

 

 うん、俺も思う。でも他の作品、具体的には直死の魔眼のほうが異常だと思う。

 

「そして魔法を扱うには資格がいる」

「資格?」

「そう、アカシックレコードに至るという……限りなく不可能に近い資格だ」

「アカシックレコード!?それって……根源とか呼ばれてる……」

 

 あれ? 知ってるの? ……まぁ、魔法使いなら知っててもおかしくは無いか。

 

「その通り、根源と呼ばれるモノだ。至る手段は人によって違うが……どの手段にしても大概は至れずに終わる」

「……それはつまり、死ぬと……いうこと?」

「正解だ、花丸をあげよう」

「いらないわよ」

 

 ジョークだよジョーク、真面目な話しかしてなかったから緊張をほぐそうとね? だからジト目で見ないで、いい加減何かに目覚めそう。

 此方を見るのを止めて紅茶を飲み、アリスは口を開いた。

 

「まぁ……とりあえず貴方は挑まなかったわけね、ここに居るし魔法は使えないし」

「それはどうだろうね?」

 

 久々に暴走かマイマウス。

 ゴメンねアリス、困惑するだろうけど俺は悪くないんだ。たまに暴走するこの口が悪いんだ。

 

「散り去った花がそこで枯れ果てるとは限らないように、終わりを迎えた何かがそこで潰えるとは限らない。消滅し霧散した何かが二度と形を成さぬとは限らない」

「何を言って……」

 

 コクリと、一口紅茶を飲む。ニヤリと、口を歪ませる。

 

「総からく戯れ言にして狂言、だよ」

「戯れ言……? 狂言……?」

「そう深く考えることはない。君ではまだまだ至れぬし、そも至らせる腹積もりは無い……所詮はそんな戯れに吐いた狂言だ」

 

 何が言いたいんだよ結局…小難しい言い回ししやがって……。

 …………お、体が動かせる。

 

「……貴方、随分と複雑な言い回しを好むのね」

「あぁすまないね、こればっかりは性分で直しようが無いんだ。それに……答えは全ては教えないほうが好きでね、考えた人なりの答えが聞けて面白い。何より、考えることは大切だろう?」

 

 口調はまだアレな感じだな……しかも謝罪しようとしただけなのに変なのがプラスされたし、いや同意はするけどさ。

 

「本当によく分からないわね、貴方は」

「よく言われる、しかし錬金術師とは偏屈者で変わり者ばかりだから仕方ない」

「錬金術師?」

「君の考える錬金術師とは違うと思うがね、私は昔そうだった」

「……心底、本当に分からないわ」

「簡単に分かってはつまらないだろう?」

 

 間違いなく今の表情はニヤついてる、もしくはそれに近い表情になってる。だって口の端上がってるもの、アリスため息ついてるもの。

 

「まぁいいわ、魔法……貴方で言うところの魔術に関する本ならそこの本棚に入ってるから」

「貸してくれるのかね?」

「えぇ、ただし貸すだけよ。どこかの白黒みたいに一生とか言うのも禁止ね」

「……白黒、ね」

「白黒よ」

 

 魔理沙……どの幻想郷でもお前はお前だな……。

 ……なんか、安心した自分が凄い嫌だ。

 

「しかし君の聞きたいことはいいのかね?」

「それなら大丈夫よ、聞いても無駄って分かったから」

 

 聞いても無駄? どういうことさ?

 

「ズェピア、自分の纏ってるマントに関して分かっていることを言ってみて」

「コレについてかね?…一晩置いとけば汚れやボロが直っている便利なマントといったところか」

「主婦みたいな意見ね」

 

 アリスのダイレクトアタック! 俺のライフに3999のダメージ!!

 ……いや普通に傷ついたんだが、悲しすぎて涙も出ない。

 

「それにはかなり複雑な術式が編み込んであるわ、それこそ大魔法使いと呼ばれる者が編み込んだと言っても過言ではない程の術式がね」

「術式……? コレに、かね?」

「そう。簡単に見ても障壁の類いが何種類か、後は貴方の言った修復機能ね、それもかなり高レベルの」

「……本当に簡単に見たのかね?」

「簡単に見てそれだけ分かるくらいに強力ってことよ」

 

 なんつーか……現時点では曖昧だけどややチート気味に聞こえるなぁ……。事実結構なものなんだろうし。

 

「大体の機能はそれぐらいでしょうけど、細かい性能は分からないわ。よく調べることね」

「君が教えてはくれないのかね?」

「充分すぎるほど教えたわ。それに……」

「それに……?」

 

 微かに笑みを浮かべ、アリスは言った。

 

 ―――考えることは大切なのでしょう?

 

「……成る程、ね。いや実にその通りだよ」

 

 クククッと、笑いを溢しながら本棚に向かう。

 とりあえず、編み込む術式に関する記述のありそうな本を手に取る。……殆ど人形に関係した本だから探すのに少しばかり手間がかかったのは余談だ。

 

「……さて、私は帰るとするよ。つい長居してしまった」

「あら? 晩御飯は食べていかないの?」

 

 …………はい?

 

「さっきから上海達に下準備させてるんだけど…これだと余っちゃうわね。あの子達頑張ってるのに……」

 

 居ないと思ったらそういうことか!!

 しかし今までと違い、二人きりというのはやはり少しばかり拙いような気が……いや、上海と蓬莱居るし二人きりではないのか? でもなぁ……

 

「あの子達悲しむでしょうね……」

「喜んで馳走になろう」

 

 OK、晩御飯はアリス宅で頂こう。

 …何? 二人きりは拙いんじゃないのかって? 馬鹿を言うな! 上海と蓬莱が悲しむんだぞ、そんなの許せるか!? 否、断じて否!!

 それに了承したらアリスも笑顔になったし!! 「腕によりをかけて作るわ!」なんて言いながら居なくなったんだよ? コレはお前さん、わくわくしながら待つしかあるまいよ?

 

「そこに座って待ってて、出来たら持ってくから!」

 

 ほら、楽しそう。

 とりあえず俺は言われた通り座って待つことにした。さっき手に取った本を読みながら。

 

 

 

 晩御飯は美味しいシチューがメインの洋風な献立だった、上海と蓬莱が引っ付いて食べにくかったけど。

 本? 全く内容分かりませんでしたよ? やはりと言うべきか魔法関連の本に付き物の特別な言語で書かれていたので、食後にアリスに語訳を教えてもらい言語は理解出来た……と思う。

 

 その後、一人と二体に見送られながら無事に帰路に就いた。ポストに入っていたよく分からない新聞はまた隅に置いた、どこかの鴉天狗の不幸が加速してる気もするが気にしないことにする。

 ……あ、明日依頼の報酬貰いに行かなきゃ。




アリスがあっさり気を許したように見えるのには理由があります。
普通に高評価なのと、それに合わせてちゃんと。ただ都合上秘密になりますのでご容赦ください。

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