東方狂宴録   作:赤城@54100

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一気に投稿するとサーバーに負荷がとかあるそうなので、まずは一話だけ。
夜に二話目を投稿します。


第一話『俺と巫女と幻想入りと』

 その昔、アインシュタインは言った。

 

 ———『常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう』

 

 それを今、俺は身を持って思い知らされている。何故ならば、今の俺の現状が俺の知る常識とはかけ離れた状態だからだ。

 どんな状態かを一言で簡単に説明すると

 

 

 

「ここは何処だ?」

 

 

 

 ……まぁ、そういうことである。

 俺は自分の部屋のベッドに潜り、そして就寝という至って普通な一日の終わりかたをしたはずだった。なのにだ、なのに俺の現状はそんな終わりかたからは考えられない状態にある。

 

 まず、自分の周囲には木々……所謂森と呼ばれるような場所に居る。

 例えば、自分が夢遊病等を患っていればいきなり森に立っていてもあまりおかしくはない……はず。だが残念ながら、自分の家がある地域は都会とは言えないが、いくらなんでも大自然が残るほどでは無い。つまり、夢遊病だとかで来れる範囲を超えているということだ。

 

 次に自分。目を覚ました瞬間に立っていたから中々分からなかったが、視界がいつもより高い。

 それに服も寝る前に来ていたジャージではなく正装……というかコスプレみたいな格好になっていた。紫色をした高そうな服に黒いマント、チラチラと見える自分の前髪は何故か金髪。

 

 ————金髪? はて、確か自分の髪は日本人によくある純粋な黒だ。

 

「これは厄介だな……」

 

 厄介だ、厄介すぎる。しかも今気づいたが、声まで変わってる。

 思考も至って冷静―――と言っていいのか少し微妙だが―――だ、こんなのありえない。いつもの自分なら叫び声の一つや二つを上げていることだろう。

 ……もしや?

 

「これは、転生だとか憑依と呼ばれる現象か?」

 

 口から出た言葉のニュアンスが少々違うのはこの際無視する。それよりも現状の確認が最優先だ。

 転生ならどんな世界なのか、憑依なら誰にでどんな世界なのか、というか何故こんなにいきなりなのかが分からないのが厳しすぎる。

 

 普段は割と普通な学生をしているが、二次創作だとかの小説もよく読む。そういった系統だと神様がミスして殺したから謝られた後チート能力に足して格好良くなり転生だったりがテンプレなのだが……俺にはそれが無い、いやあっても困るが、ミスなんてもんで死にたくない。

 無論、二次創作だとかを読みながら「俺も魔法使ってみたいなぁ」とか「遊○王の主人公とかとデュエルしてみたい」とかは多少なりに思ったさ。だがこんないきなりは嫌すぎる。

 世界は不明で能力不明、分かるのは服装と髪が金髪だということくらいだ。

 

 ……あ、でも金髪ならある程度は期待できるな。金髪だったら大概のキャラは男なら美少年か美青年で、女なら美少女か美女が王道だ。これならば期待できる、強さも美があるキャラにはデフォ率が高いからな。

 

 

 

 ———閑話休題———

 

 

 

 とりあえず歩くとしよう。立ち止まってるのはマズいからな、よく怪物とかが現れたりす

 

「―――■■■■■■■!!」

 

 るって……ハハッ、いきなりかよ。いきなりの登場かよちくせう。一瞬萎縮しちゃったよ、体硬直したよ。

 

「と、無駄に考えてる場合では無いな」

 

 口調は冷静すぎるぐらいだが、精神的にはかなりヤバい。せめて能力が分かってから来てほしかった……いや来ないのが一番ですけどね?

 とか考えつつ走りだすが、ここで予想外な出来事が。

 

「む……この瞬発力は……?」

 

 速い、ありえないぐらいに速い。オリンピックの選手なんかにも余裕で勝てるタイムが出せそうな速さだ。

 

「成る程、身体能力は強化されているようだな」

 

 呟きながら走り続ける。自分の速さを知った今、全力ではないが充分な速さを保っている。後ろを向いても化け物の姿は無い。

 

「……フム、撒いたか?」

 

 確証は無いが、十中八九そうだろう。相手もかなりの速度が出るであろうが、此方には及ぶまい。とりあえず情けない形ではあるが、身の安全は確保できた。

 ……そして、次の問題が発生した。

 

「……面倒ね」

 

 ならば見逃してほしいぜガール。

 

「でも、まぁ仕事だから仕方ないか……」

 

 何故かため息をつかれた……。

 俺の目の前には紅と白で色が構成された巫女服をきた少女が立っている。頭には大きなリボンをつけ、何故か巫女服の腋のところは生地がない。

 まぁ、およそここまで言えば誰だか分かるだろう。……そう、彼女だ。

 

「博麗、霊夢……」

「私のこと知ってるの? なら話が早いわね」

 

 間違いない、間違いないようが無い。

 紅白の巫女服に身を包み、背丈はやや小さくダルそうな表情、極めつけはあのお札!! …………お札?

 

「さっさと祓わせてもらうわよ」

「待て、何故祓われねばならない? そもそもここは何処だ?」

 

 なんかヤバそうなので止めつつ、意識を逸らすために質問する。これなら外来人として認識してもらえるだろう。

 

「え? まさかアンタ、外から来たばっかりなの?」

「あぁ、そうだが?」

「じゃ、悪かったわね。久々に妖怪退治の依頼があったから張り切ってたのよ」

 

 わーお、妖怪退治の依頼なんか入るんだ。そりゃ、数少ない収入チャンスだから張り切るよな。

 

「でも、ならなんで私の名前知ってるのよ?」

 

 ……………………ヤベェェェェ! この上無くヤベェ!!

 どうする、どうやって切り抜ける!? 今こそ輝け俺の口八丁!!

 

「私の固有技能で情報を得たのだよ」

 

 俺の口ィィィ!?

 輝きゼロじゃん! まだ赤ちゃんの涎まみれの口のほうが輝いとるわ!!

 

「へぇ、珍しい能力ね」

 

 ……………………よくやった俺の口! 輝いてるぜ俺の口!!

 思った通りに喋らないのは慣れないし嫌だけど最高だぜ!!

 

「まぁ、能力とは少し違うのだが…納得してもらえたなら幸いだ」

 

 しかし、考えてみれば結構危なかったな。俺は相手のことをゲームで知ってても相手にとっては初めて見る相手なんだし……気を付けなくては。

 

「でも、まだ外に妖怪擬きが居たのね」

「いや、私は人間だが?」

 

 俺の言葉に怪訝そうな表情をする霊夢……なんでさ?

 

「貴方、人間じゃないでしょ?」

「いや、だから」

「そんな分かりやすい嘘、なんでつくのよ?」

「ま、待ってくれないか?」

 

 今、とんでもない爆弾発言が飛び出したような気がするぞ?

 

「すまないが、先程の言葉もう一度言ってはくれないか?」

「そんな分かりやすい嘘、なんで「その一つ前だ」……貴方、人間じゃないでしょ?」

「…………」

 

 絶句という表現が正しいだろう。人間じゃない、そう断言されたのだから当然だ。

 困惑しつつもとりあえず聞く。

 

「私は、人間じゃない……?」

「えぇ、間違いなく。かといって、雑多に居るような妖怪でも無いみたいだけど」

 

 ここで、一つの仮説に辿り着いた。

 男で、人間ではなく、金髪であり、服装はマントに高そうな服の高身長、発する声はとあるゲームで聞いたことのある声。

 ……恐らく多数のキャラが存在するのだろうが、声に関しては被ることは無いだろう。そもそも条件に当てはまるキャラを俺は一人しか知らない。

 

「……すまないが、どこかに湖か川は無いかね?」

「小さな湖だったら、すぐそこにあるわよ」

 

 霊夢の指差すほうを向くと、確かに湖が見えた。すぐに走り出し、覗き込む。

 

「……なんということだ」

 

 落ち着いた声しか出ないのが悔しい……。

 顔は間違いなく美形。目は閉じているように見えるが、それさえもプラスに働いている。あぁ、それは嬉しいさ。だが、これは無いだろう?

 

 

 

 

 完全に外見がワラキアだ……。

 

 

 

 

 ……どうなるんだ、俺?




ワラキア好きが増えますように、その気持ちで書いています。

そんなことよりお蕎麦食べたい。

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