スズ・クラネルという少女の物語   作:へたペン

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怪物が出てきてあれこれしようとするお話。


Chapter04『怪物のあり方』

 格上相手との戦闘に加え【英雄願望(アルゴノゥト)】を二回も発動させたベルは疲労しきっていた。

 正直なところいつ倒れてもおかしくない状態だったが、自分よりも弱り切っているスクハの前で倒れる訳にはいかない。

 

「スズの装備を無事回収できました。レフィーヤさん、スクハの様子は?」

「疲弊しきっている様子なので油断はできませんが外傷はありません。スクハさんは私が運びます。ベルさん、この縦穴を一人で抜け出せる体力は残っていますか?」

「なんとかやってみます」

 ベルがそう答えるとレフィーヤは軽く溜息をついた後、「無理して倒れられた方が後に響きます。ベルさんもスズさんも……それにスクハさんも。もっと周りを頼らないとダメですよ」と小さな子供に言い聞かせるような言い方で注意されてしまった。

 

 どうやらベルが立っているのがやっとな状態なことも、強がってそれを隠そうとしていたこともレフィーヤは今のやり取りだけで察してしまったようだ。

 見るからに疲弊しきっているのに加え、ベルの謙虚で優しい性格と噓や隠し事が苦手な正直者なところをレフィーヤは十分知っていたので、「なんとか(、、、、)やってみます」という受け答えだけでベルの限界がもう近いことを確信したのだろう。

 

 まだ余力が残っているレフィーヤはスクハを抱き上げて縦穴をひょいと飛び越えた後、草地にスクハを下ろした後また穴に下りて今度はベルを抱き上げて縦穴から離脱した。

 ベルの理想な種族エルフの美少女であり、優しい冒険者の先輩でもあるレフィーヤに抱き上げられる行為は初心なベルにとって普段なら刺激が強すぎる行為だった。

 しかし今は緊急事態だ。

 抱きしめられている間ずっと密着しているやわらかい胸の感触を意識する暇はなかった。

 

 恥ずかしさはあるが暴れて逃げるなんてことはしない。

 羞恥に顔を染めてもそれを口に出して逃れようとはしない。

 もちろん無言で堪能している訳でもない。

 

 地中の番人(トラップ・モンスター)は倒したが、まだ『闇派閥(イヴィルス)』の残党が残っている。

 今ベルとスクハはまともに動ける状態ではない。

 後衛のレフィーヤでは足手まといを2人も抱えている状態で『闇派閥(イヴィルス)』の残党と遭遇した場合、例え相手がLV2だとしても全員で逃げ伸びることは難しいだろう。

 ベルはそれをしっかりと理解できているから強がりを続けたり羞恥に取り乱して時間を浪費したりはしない。

 普段初心なベルだがこと緊急事態においての頭の切り替えは熟練の冒険者と同等と言っても過言ではないだろう。

 

 

 

 それでも、今できる最善の選択をとったにも関わらず間に合わなかった。

 

 

 

「『千の妖精(サウザンド。エルフ)』……。【ロキ・ファミリア】か!?」

「くそ、【ロキ・ファミリア】まで一緒なのは聞いていないぞ!?」

 大型のローブに口元まで覆う頭巾をした男二人が既に壁側の方からこちらの方に走っている姿が見えた。

 

 派手に地中の番人(トラップ・モンスター)を吹き飛ばしたのですぐに駆けつけて来るのはわかっていたが想定していたよりもずっと早くに『闇派閥(イヴィルス)』の残党が駆けつけてしまったのだ。

 

 気づかれても逃げられるように距離をとって追跡をしていた筈なのに、まるで最初から尾行に気付いていて地中の番人(トラップ・モンスター)の場所まで誘導し、そこから脱出するのを待っていたかのようなタイミングで『闇派閥(イヴィルス)』の残党は現れた。『【ロキ・ファミリア】まで一緒なのは聞いていない』という言葉から察するに、『闇派閥(イヴィルス)』の残党は初めからスクハに追われること前提で事を進めていたのだろう。

 

 『闇派閥(イヴィルス)』の残党を従える『穢れた精霊』は『大精霊アリア』に拘っていた。

 同じ大精霊である『レスクヴァ』の血を引く『レスクヴァの巫女』に拘っても不思議ではない。

 おそらく『穢れた精霊』の反応を餌に『レスクヴァの巫女』をおびき出そうとしたのだとレフィーヤはある程度当たりをつけることはできたが、一番肝心なこの状況を打破する案が思いつかない。

 

 

 初めから待ち伏せをするつもりだったようで既に周りを包囲するように食人花の怪物(モンスター)が配置されているのだ。

 

 

 

 予めアイズ達を呼んでおけばこんなことにはならなかった。

 スクハは『闇派閥(イヴィルス)』の残党の規模を知らないからと援軍を呼ぶかどうかの判断をレフィーヤに一任していたではないか。

 例え『闇派閥(イヴィルス)』の残党を見失うことになったとしてもスクハを止めておけばよかった。

 スクハが追っていた『穢れたモノ』はアイズ達に任せるようもう少し説得していればこんなことにはならなかった。

 勝手に飛び出したスクハが原因の始まりだが、いくらでもこの状態を回避する手段はあったことに今更ながらレフィーヤは後悔する。

 

 

 

 

 

 

「はっはははははっ……!! いいザマじゃねぇか、クソガキ共ぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 そんな中、ベルはどこかで聞いたことのある声を聞いた。

 レフィーヤを見て慌てふためく二人と違い、高笑いをする三人目の男が『闇派閥(イヴィルス)』の残党の後ろから現れゆっくりと近づいて来る。

「天下の【ロキ・ファミリア】の『千の妖精(サウザンド。エルフ)』様ももうお手上げってか。くっくくくく……!! どうだぁ、見下していた相手に見下される気分はよぉ!!」

 ソレはベルとスクハは名前は知らないが面識はある男だった。

 正体を隠す気は初めからないのかそのローブを脱ぎ捨てガラの悪い素顔を見せる。

 後ろで結ぶ小さなポニーテールが特徴的な青年。

 過去リリをサポーターとして雇い、サポーターをしいたげる理解なきごろつき冒険者の一人。

 

「だけどなぁ! 俺の怒りはこの程度じゃおさまらねぇ!! そこに転がるクソ猫には電撃浴びせられたからなぁ。どうせバケモンに食わせるんだからよ、その日が来るまで手足捥ぎ取って遊んでもいいだろぉ? なぁ!? 食わせるのは死体でもいいって話じゃねぇか!! そこのしゃしゃり出たクソ兎には特等席用意してやらぁ!! 無理やりにでもいい思いと悪い思い同時に味あわせてやんよぉ!! あのクソパルゥム含めて楽に死ねると思うなよなぁっ!!」

 

 怒り狂い怒鳴り散らすその男は生前LV1冒険者ゲド。

 彼の【ファミリア】と現場の生き残りであるリリ以外は死んだことすら知られていない程ごく平凡的なモラルのない冒険者の一人だった(、、、)男だ。

 

「【ファミリア】でグルになって俺をハメやがって!! あの【ソーマ・ファミリア】の奴等も許さねぇ!! だけどよぉ、まずはてめぇだクソ猫!! 眼の前でそのご大層な二つ名を持ったエルフ様を滅茶苦茶にしてやる!! 俺の人生を台無しにしたことを悔いて詫びて泣き叫べっ!! まあ謝っても許してやらねぇけどなぁ!! くっくくくく……はっはっはっはっは!!」

 狂ったようにゲドは笑う。

 

 正直なところベルはゲドのことをあまり覚えていない。

 リリを追い掛けていた相手で、リリと出会うきっかけとなり、スクハに問答無用で電撃を浴びせられた男ということ以外何も知らなかった。

 レフィーヤにいたっては顔すら見たことのない相手だ。

 それでも疑問や質問をこの男に投げかけるのは自殺行為だということだけは嫌でも理解させられてしまう。

 

「ゲド、あまり時間を掛けては他の【ロキ・ファミリア】の連中が――――――」

「あぁ? ただの下等生物がこの俺様に指図してんじゃねぇよ。確かに俺は新入りだがよぅ。生まれ変わった俺がたかが下等生物に怯えると思ってんのか?  あぁ? 『剣姫』だろうが『勇者(ブレイバー)』だろうが所詮は下等生物だろうが。それにこちとら『穢れた宝玉』があるんだ。『穢れ』を貯めるにはもってこいの相手だろう?」

「それは地上で―――――」

「指図するなっつってんだろうが、デク人形共っ!!」

 ゲドは仲間であると思われた『闇派閥(イヴィルス)』の残党の一人、エルフの頭を鷲掴みにしてそのまま握力で握りつぶした。

 もう一人の『闇派閥(イヴィルス)』の残党は仲間の頭がトマトのように潰された光景を目のあたりにして「ひぃっ」と悲鳴を漏らしながらその場で腰を抜かしている。

 

 明らかにこのゲドという男は異常だ。

 身体能力もそうだが何よりも精神に異常をきたしている。

 もしもここで「なぜ仲間を殺したのか」「なぜこんな酷いことをするのか」とゲドに質問しようものならそれだけで彼は機嫌を損ね人を殺すだろう。

 人殺しに対して何も感じない怪物。

 むしろそれを楽しむ残虐性を持った怪物。

 悪人を通り越し目の前にいるゲドという男の心は怪物そのものだった。

 

 レフィーヤは何とかベルとスクハだけでも逃がせないかと考えるが何も思いつかない。

 ベルは何とかスクハとレフィーヤだけでも逃げる時間を稼げないかと動揺する心を無理に押し殺して冷静に考えるが、食人花もゲドも自分より格上だ。

 とても満身創痍の状態で時間稼ぎなんてできない。

 それでも『助けたい』『守らないと』とレフィーヤとベルは無駄だと承知の上で覚悟は決まっていた。

 そんな中、スクハがおぼつかない足つきで立ち上がり、震えるスズの体(、、、、、、、)を抑え込み、真っ直ぐとゲドを見上げる。

 

 

 

 

『貴方、どこかで会ったかしら?』

 

 

 

 

 そして弱り切った状態までも隠して、単純に、本当にそう思っているかのように自然な口調を装ってゲドにそう言ったのだ。

 あれだけの悪意をぶつけられた後にこの言葉を投げかけるのは自殺行為としか思えないが挑発としては効果覿面だった。

「このクソ猫がぁあああああぁぁぁぁあああああああぁぁぁっ!!」

 そのたった一言でゲドは怒り狂いスクハに飛びかかっていく。

 

 ゲドの身体能力は圧倒的だった。

 平均【ステイタス】はLV4級。

 『闇派閥(イヴィルス)』の残党の頭をいとも簡単に砕いた筋力はLV5相当の怪物だ。

 そんな怪物の突撃をスクハは防げる訳がない。ベルとレフィーヤにも止める手段はない。

 

 

 

 

 

 それでも速度に特化したLV4冒険者(、、、、、、、、、、、、、)にとっては単純な突撃などただの的に過ぎなかった。

 

 

 

 

 スクハに到達する前にゲドが吹き飛んでいた。

 吹き飛ばされたゲドの体は一回、二回、三回と地面を跳ね、地面に生えた水晶にぶつかることでようやく勢いが殺され停止する。

 ぶつかった水晶はそのあまりの衝撃で粉々に砕け散っていた。

 

「私の友に汚らわしい口を叩くな」

 

 ベルとレフィーヤがスクハを守ろうと構える前に繰り出された疾風の一撃。

 LV4冒険者、元二つ名『疾風のリオン』現『豊饒の女主人』の店員リューがいつの間にかスクハの目の前に立っていたのだ。

 

 ゲドが吹き飛ぶまでベルとレフィーヤはリューが来てくれたことに気付かなかった。

 そのあまりに早い一撃を目で捕えることができなかった。

 それは『闇派閥(イヴィルス)』の残党も同じだ。

 唯一反応できたはずだったゲドはスクハの安い兆発で周りが見えていなかったので、リューがやったことといえはゲドを上回る速度で木刀を叩き込んだだけである。

 

「新種の怪物(モンスター)に加えあの装備……ウィリディスさん、スズとクラネルさんをお願いします」

「は、はい!! 二人は必ず守り切ります!!」

 リューの凛とした声にレフィーヤははっきりとそう答えることができた。

 リューの凄さは一緒にベルとスズの特訓をつけた仲でレフィーヤもよく知っている。

 特訓中【ノア・ヒール】で回復させながらベルを一方的に殴る姿は前衛治療師(ヒーラー)というよりは、むしろ一人で戦える前衛魔法剣士の戦闘スタイルである。

 ダンジョンにおいて【治療師(ヒーラー)】はパーティーの生命線だ。

 例え自衛手段があっても積極的に前に出してもらえる機会なんてないので、一人で前線に出て『平行詠唱』を用いながら戦えるほどの練度になることなんてまずありえない。

 まだレフィーヤはリューが【ノア・ヒール】を使ったところしか見ていないが、魔法剣士の戦闘スタイルである以上必ず攻撃の手札も持っているはずだと確信している。

 

「リューさん! 食人花は打撃が通りにくく斬撃と【魔法】が有効です!! ただし魔力に対して過剰に反応するので注意してください!」

 レフィーヤの『平行詠唱』では10を超える食人花の猛攻を掻い潜り相手を殲滅するのは不可能だが、リューの速度と練度ならばそれが可能なはずだ。

 現にリューは『闇派閥(イヴィルス)』の残党が指示を出しようやく動き出した食人花の触手を木刀で薙ぎ払い、レフィーヤから見て近い順から次々に食人花を吹き飛ばしている。

 この圧倒的な速度なら多少『平行詠唱』で反応が鈍っても大丈夫だと確信が持てる。

「なるほど……反応してくれるのなら守りやすい。ウィリディスさん、助言感謝します」

 その信頼に対してリューは頼りになる返事を返してくれた。

 

 

「【魔法】なんて唱えさせるかよっ!! 下等生物の分際で俺を無視してんじゃねぇぞ、このクソエルフがあああああああああああああああああっ!!」

 だがそれを妨害しようとゲドが怒鳴り散らしながらリューに突撃していった。

「……股関節を砕いたと思ったのですが、まだ動けますか」

「下等生物と違って今の俺はその程度の傷すぐに(なお)んだよっ!! 確かにお前は俺よりはええが、それだけだ!! 無敵の俺と触手の猛攻にいつまで耐えられるか見せてくれよっ!! そのフードに隠れた澄ました顔が歪むとこ見せてくれよ!! なぁっ!!」

 今までの言動からレフィーヤはゲドが極彩色の魔石が胸に埋め込まれた『怪人(クリーチャー)』だと判断する。

 幸いなことにLV4級の『怪人(クリーチャー)』と今まで出会って来た『怪人(クリーチャー)』よりずっと弱い個体だが、それでもリューがゲドよりも優っているのはおそらく速度と魔力、そして技量だけだ。

 十を超える食人花だけならまだしも、リューと同じくLV4級まで相手にしながら『平行詠唱』をするのは自殺行為だ。

 ただでさえ食人花が動きを阻害するように猛攻を繰り出してくるのに『平行詠唱』で動きが鈍れば、リューがゲドより優っている速度という利点が潰れてしまう。

 かといって『平行詠唱』をしなければ食人花はレフィーヤ達にも襲い掛かってくるだろう。

 だからリューは不利になるのを承知で『平行詠唱』をするしかない。

 

 そう思っても仕方がない中、リューは表情一つ崩さずに何一つ気にした様子もなく『平行詠唱』を始める。

 

「【今は遠き森の空。無窮の夜天に(ちりば)む無限の星々】」

「そうだよなぁ、そうするしかないよなぁっ!!」

 詠唱と同時に食人花の触手が、人の頭部を軽々と握りつぶすゲドの拳がリューに迫る。

 

「【愚かな我が声に応じ、今一度星火(せいか)の加護を。汝を見捨てし者に光の慈悲を】」

「中々しぶといな。いいじゃねぇか。くくく……いいぜ、もっと無様に足掻けよっ!!」

 リューは触手の猛攻を木刀と小太刀で、いなし、切り落とし、はね返し、歌いながら大地を疾走してゲドと攻防を続ける。

 攻撃、移動、回避、防御、詠唱の五つの行動を同時にしてのける荒業。

 それなのにリューの歌は一切乱れていない。

 行動も一切乱れず、息も乱さず、それがさも当然のようにゲドをあしらいながら集中力が必要とされる【長詠唱魔法】を歌い続けている。

 

「【来たれ、さすらう風、流浪の旅人(ともがら)】」

「おい、待てよ。なんだよそりゃ!! なんだよそのゴミを見るような目は!?」

 ゲドはここに来て自分の攻撃が一切当たらないことに、リューが一切の焦りを見せないことに取り乱し始める。

 

 レフィーヤもまさかリューがここまで『平行詠唱』を極めている(、、、、、)とは思いもしなかった。

 マジックサークルは展開されていないので【魔導】は持っていないのだろう。

 だがリューはレフィーヤの師でありエルフの王族であるリヴェリアよりも歌い慣れていた。

 【長詠唱魔法】を詠いながら戦闘力を一切落とさずに戦えるリューを例えるなら、LV差を考慮しなかった場合レフィーヤとアイズを合わせ持った性能だ。

 『レスクヴァの里』の住人も大概だが、リューも常識外れの練度を持っていた。

 いったいどれほどの激戦区を潜り抜ければここまで『平行詠唱』を自在に操れるようになるのか想像もつかない。

 それ以上にレフィーヤはなぜここまで練度のある人物がLV4で止まっているかの方が不思議でならなかった。

 

「【空を渡り荒野を駆け、何物(なにもの)より疾く走れ】」

「俺は生まれ変わったんだぞっ!? 速さ以外俺の方がどう見ても上だろ!? なのに何で当たらねぇんだよ!! クソクソクソクソッ!! バカにしやがってバカにしやがってバカにしやがってっ!!」

 単純な【ステイタス】差だけならゲドの言う通り敏捷と魔力が劣っているだけだった。

 だがLV1からいきなりLV4級の『怪人(クリーチャー)』になったゲドと修羅の道を歩んだリューとでは技術の差があり過ぎた。

 それこそこの程度の数の暴力で動きを阻害しても攻撃を当てることすらできない程に踏んだ場数が違ったのだ。

 

 

 

 

 もちろんゲドはレフィーヤ達を盾にしようとも考えた。

 しかし木刀と小太刀による激しい攻撃がそれをさせてくれない。

 

 

 

 

 進むことも引くことも許されない。

 ただ一人残った『闇派閥(イヴィルス)』の残党だけは最初のリューと食人花との攻防を見るやゲドを見限り一人だけ逃げ遂せていた。

 ゲドは自分では絶対に勝てない相手に挑んでしまったことに気づくには、逆鱗に触れてはならない相手と出くわしてしまったのに気付くには、あまりにも遅すぎた。

 

 

 

 

「【ルミナス・ウィンド】!!」

 

 

 

 そしてリューの周りに無数の大光玉が召喚された。

 緑風を纏った大光玉はまるで星屑のごとく無数に煌めき、まるで流星のごとく食人花とゲドに容赦なく降り注いでいく。

 

 おびただしい爆音に食人花の断末魔。

 

 緑風を纏った星屑の煌めきは着弾地点で爆発し食人花を極彩色の魔石ごと爆砕していく。

 激しい流星の後に残ったものは元は食人花だったモノの散り逝く灰と、下半身が吹き飛ばされ無残にも地面に転がるゲドの上半身だけだった。

 

§

 

 『怪人(クリーチャー)』であるゲドは下半身が消し飛んだ程度では死なない。

 しかし精々生命活動を維持するのが精一杯で『怪人(クリーチャー)』特有の自己再生能力が全く間に合っていなかった。

 

「……少々、やり過ぎました」

 

 そうは言っているもののリューは上半身だけになっても生きているゲドに対して思うところはないようだ。

 悲惨な姿になったことに対して同情することも脅威と感じてトドメを刺すこともなく、リューは戦力を無力化したと判断して武器をしまっている。

 要はリューにとってゲドなど、もう少し燃費を考えてもよかった程度の認識でしかなかった。

 

 自己回復が間に合っていないが、徐々にだがゲドは回復している。

 リューはそれに気づいていながらも、例え今すぐ回復して再び襲い掛かっても問題ないかのようにゲドに背を向けてレフィーヤと共に【ノア・ヒール】でベルとスクハの傷を癒し始めていた。

 

 

 ゲドにとってそれは酷く屈辱的だった。

 ようやく特別になれたと思った。

 人より優れた存在になれたと思った。

 

 

 【ソーマ・ファミリア】に騙されて終わったクソみたいな人生だったが、偶然にも条件が揃い(、、、、、)怪人(クリーチャー)』として蘇えることができた。

 復活してからすぐに他の『怪人(クリーチャー)』にスカウトされ、『闇派閥(イヴィルス)』の残党を従える立場となり、未練の欠片もない迷宮都市(オラリオ)を破滅させ、人生を台無しにしようとした憎い【ソーマ・ファミリア】と『白猫』に復讐する機会まで与えられたのだ。

 これでようやく自分は選ばれた人種になれたと思っていたのに、リューにとってゲドは食人花と同等かそれ以下の脅威でしかないようだ。

 許せなかった。

 

 

 自分以外の全てが憎く思えた。

 

 

 ゲドの中の憎悪が膨れる中、自分の体が自分が殺したエルフの死体の近くに吹き飛ばされていることに気付くことができた。

 あの口答えしたエルフの『闇派閥(イヴィルス)』の残党が『穢れた宝珠』を持っていたはずだ。

 元々は迷宮都市(オラリオ)を壊滅させるために地上で使用しようとかき集めた(、、、、、)モノだが、自分より上であろう【ロキ・ファミリア】の精鋭が揃った時にでも使ってやろうとゲドは考えていた。

 

 だからゲドは今ここで『穢れた宝珠』を使うのに何のためらいもない。

 むしろ今使わずにいつ使うのだ。

 偶然にもエルフの死体まで吹き飛ばされた自分はやはり選ばれた人間なんだとゲドは自己満足して笑い、荷物を漁る手間が惜しいとエルフの遺体を包みごと素手で貫き『穢れた宝珠』を取り出した。

 まるで黒い瞳のようにも見える球体の中に小さな闇が灯った『穢れた宝玉』を手に、ゲドは己の望みを願うとそれに応えるかのように『穢れた宝玉』の闇が増大する。

 

 

 

 

 

 ―――――――俺を不幸にした世界(すべて)を壊しやがれ―――――――

 

 

 

 

§

 

「さて、クラネルさん。私の記憶が正しければ、森でさ迷っている貴方達を野営地に送り届けたばかりなので――――――――」

 ベルの治療も終わり、スクハに外傷がないとわかったところでリューがベルに『夜の森は危険』だと言った側からこんな森の奥まで来てしまったのかを追求しようとした時だった。

 

『トドメを刺すから退きなさいッ!!』

 突然スクハがそう叫んだのだ。

 

 

 

『【突き進め。雷鳴の槍代行者たる我は雷精霊(トニトルス)の同胞。

 (イカズチ)の化身、雷の巫女。サンダー・レイ】』

 

 

 

 外傷はないものの今だ立ち上がる力も残っていないスクハの口から紡がれた詠唱が木霊する。

 それは若干詠唱文が異なるもレフィーヤは聞き覚えのある【魔法】、『精霊の分身(デミ・スピリット)』戦で相手に使われたことのある豪雷の大矛【サンダー・レイ】だった。

 

 詠唱と共にスクハの後方、もとい後方にある森の上空に黄金のマジックサークルが出現する。

 そこから無数の雷条がゲドの倒れている方向……否、エルフの男の遺体目掛けて降り注ぎ、降り注ぐ無数の光は『闇派閥(イヴィルス)』の残党が所持していた『火炎石』を起爆させた。

 無数の『火炎石』の爆発は凄まじく、耳に突き刺さるような爆音と共に激しい熱と爆風が辺りの草を燃やし尽くし、地面を抉り、地面に生えている結晶を粉々に砕く。

 その凄まじい爆風に遠くにいながらもスクハの軽い体が宙に舞いそうになったが、リューがすぐさまスクハの腕を掴んでくれたおかげで吹き飛ばされずにすんでいた。

 ベルとレフィーヤも倒れないように足を踏ん張り、目に塵や砕けた結晶が突き刺さらないよう両腕で顔を防ぐが、砕け散る結晶は今だ降り注ぎ続ける【サンダー・レイ】に阻害されてベル達に届くことはなかった。

 

 

 収まる爆炎に豪雷の大矛。

 肉の焼ける嫌な異臭と飛び散った肉片。

 そんな悲惨な爆心地の中心にソレは存在し続けていた。

 

 

 ソレは黒い肉塊だった。

 人型の黒い肉塊の足元がまるで木の根のように地面に寄生しており、焼け焦げ抉れた地面をドクンドクンと脈打つ黒い肉塊で徐々に浸食していっている。

 

 

『――――――憎イ死ネ滅ビロ俺ダケ不幸嫌ダ騙ス嫌イ死ネ憎イ壊レロ誰ガ憎イ消エロ痛イ止メロ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ憎イ憎イ死ネ憎イ―――――』

 

 

 肉塊はもはや憎悪の言葉を意味もなく吐き出していた。

 あれが何だかベルもレフィーヤもリューもわからない。

 それでも、この階層を侵食していく人型の肉塊をこのまま放っておいたら取り返しのつかない事態になることぐらい嫌でも理解させられてしまう。

 

 

 だが『火炎石』の爆発をものともしない肉塊に有効打を与えることができるのだろうか。

 

 

 そんな疑問を抱きながらも最初に動いたのはリューだった。

 木刀と小太刀を構え、『平行詠唱』で【ルミナス・ウィンド】を唱えながら蠢き脈打つ肉塊の人型部分目掛けて疾走する。

 浸食された地面から突如黒い触手が生えて来るが、それに臆することなくそのまま疾風のごとく大地を駆け、地面から生えた無数の触手による攻撃を直進しながらも華麗にかわしながら一機に距離を詰めた。

 

 あと数歩で木刀の間合いというところで、リューはただ直感的に嫌な気配を感じ取りすぐさまその速度を落として後ろに飛びのく。

 すると速度を緩まなければ踏み抜いていたであろう地面から肉塊が盛り上がり、まるで大口を開けたクジラのように宙を泳いで飲み込みまた肉塊へと沈んでいく。

 

 引かなければアレに飲まれていた。

 飲まれればどうなるかはわからないが、少なくともいい結果にはならなかっただろう。

 リューは一足でレフィーヤ達の元まで引いた後、木刀を肉塊に向けると同時に『平行詠唱』は完了している。

「【空を渡り荒野を駆け、何物(なにもの)より疾く走れ。ルミナス・ウィンド】!!」

 再びリューの周りに緑風を纏った大光玉が無数に召喚され、流星のごとく肉塊に降り注いでいくが後から生えた触手は爆砕できても本体だと思われる人型の肉塊は直撃を受けても微動だにしていない。

 相変わらず憎悪の言葉を叫びながら大地の浸食を進めている。

 

 その攻撃力や敏捷性は未知数だ。

 しかしリューが対峙して感じた相手のポテンシャルは最低でもLV6級はある。

 肉塊による大地の浸食が進むにつれて人型の形が徐々に膨らみいびつな形へと変貌し始めていることから、これでいてまだ成長途中ということだろう。

 今のリューやレフィーヤではとても対処しきれる相手ではない。

 

 スクハが何が何でも破壊しようとしていた『穢れたモノ』とはこれのことだったのだとレフィーヤは今更ながら確信することができた。

 幸い肉塊の本体はまだ変異の途中であり、今のところは浸食された地面に近づかなければ攻撃される心配はない。

 逃げるだけならおそらく可能だろう。

 

 

 

 ―――――そう思っていたのに、先ほどの浸食された地面から飛び出した大口の肉塊が、肉塊から飛び出しレフィーヤ達目掛けて大口を開けながら降り注いで来たのだ。

 

 

 

 出現できる箇所は肉塊からだけだが、肉塊に浸食されていない地面へも移動可能。

 全てが常識外れ予想外の怪物。

「ウィリディスさん、スズをお願いします!」

「はいっ!!」

 停止しかけていたレフィーヤの思考がリューの叫びによって呼び戻された。

 スクハは今だまともに動くことはできず、ベルも【ノア・ヒール】と精神回復薬(マジックポーション)で回復してもらっているものの【英雄願望(アルゴノゥト)】二発の反動は大きく、持ち前の敏捷が死んでいるも同然に低下してしまっている。

 このまま何もしなければ二人は確実に大口を開けた肉塊に呑まれてしまうだろう。

 返事をしっかりと返したレフィーヤならもう動いてくれると確信できたリューはベルのサラマンダーウールを勢いよく引き飛び退き、レフィーヤはスクハの体を抱きかかえその後を追う。

 

 大口を開けた肉塊が先ほどまでいた地面に落ちて液体のように溶けながら着弾点を侵食する。

 高いところから落ちたことで跳ねた小さな肉片は地面を侵食することなく、代わりにコボルトやゴブリンといった低級怪物(モンスター)の姿を模り始めた。

 形は冒険者達なら誰しも知っているような低級怪物(モンスター)だが、形を模っているだけでそれは黒い肉塊が動きやすいよう姿を真似ているだけであり全くの別物だった。

 ベルが遭遇した漆黒のコボルトや漆黒のミノタウロスとも違い、黒い肉塊が模っただけの醜い塊が憎悪を吐き出しながら肉片から次々に湧き出て来る。

 

 

 辺りを侵食して領土を広げ、巨大な大口を開けた肉塊を主力に様々な怪物(モンスター)を肉片から生み出す能力。

 原理はわからないが地上でこんな怪物が解き放たれていたら間違いなく迷宮都市(オラリオ)は大打撃を受けていただろう。

 今だ領土を広げるとともに本体は成長し続けていることを考えると、対処が遅れたらこの一匹だけに迷宮都市(オラリオ)を壊滅させられてもおかしくない文字通りの怪物。

 怪物(モンスター)はダンジョンから生まれるという神が認めたルールを捻じ曲げた異常事態(イレギュラー)

 そんな怪物が支離滅裂な憎悪の雄叫びを上げながら、獲物を逃がすまいと生み出した大量の肉片怪物(モンスター)と大口を開けた肉塊を使い本格的な攻撃を開始しようと動き出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【吹き荒れよ(テンペスト)】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その刹那、嵐が巻き起こった。

 森の方からまるで放たれた矢のごとく荒れ狂う嵐のような膨大な風を纏ったアイズが飛び出し、怪物の真上で愛剣『デスペレート』を構える。

 

 一点集中された最大出力の風の大渦が『デスペレート』に付着。

 アイズのほぼ全ての精神力(マインド)が【エアリエル】に装填される。

 それはアイズが飛び出してから1秒も満たない一瞬の出来事。

 それでもその嵐を超える風の大気流による咆哮はその場に居る全てのモノを釘付けにした。

 

「リル・ラフィーガ」

 

 LV6のアイズから繰り出される一撃は、否LV6の【ステイタス】以上の力を発揮する【エアリエル】はまさに圧倒的だった。

 アイズの渾身の一撃が怪物の本体辺りにある肉塊を粉砕しながら突き進み、本体を『穢れた魔石』ごと消し飛ばす。

 本体を失ったことで生み出された肉片の怪物(モンスター)と大口の肉塊、そして浸食していた肉塊が塵となって消えていった。

 

 

「リヴェリア、いたわ!」

「よかった、レフィーヤとアルゴノゥト君はちゃんと無事だよー!」

 アイズに続いてティオナとティオネも森の方から飛び出して来る。

 それだけでは収まらず、リヴェリア、フィン、ガレスと【ロキ・ファミリア】LV6幹部に加え、「たく、手間かけさせやがって」とベートの姿まで見られる。

 自分のピンチに仲間が駆けつけてきてくれたことはレフィーヤにとって喜ばしいことだが、それと同時に違和感も覚えた。

 レフィーヤとスクハの砲撃を緊急事態と察して駆けつけたとしても本来ならば何かあった時の為に幹部の何人かは野営地に残っているはずだ。

 いくら守るべき大切な客人がいるからとはいえ、事態がわかっていないのに【ロキ・ファミリア】の主力全員がこの場で揃うことは本来ならありえないだろう。

 

「これだけの戦力が揃えばもう大丈夫でしょう。ウィリディスさん、二人のことと説明は任せました。気になることがあるので、私はこれで」

「逃げた相手を……追うんですか?」

「はい。何か収穫があればお伝えすると約束します」

 「失礼します」と逃げた『闇派閥(イヴィルス)』の残党を追うリューに対して、レフィーヤは「気を付けて下さい」と気遣いの言葉を投げかけるとリューは振り返り相槌を打ってくれた。

 事情がわからなければ動きにくいのに加え、そのやり取りでレフィーヤが信頼を置いている相手だということは十分に伝わったので【ロキ・ファミリア】の面々もリューが行くのを止めることはしなかった。

 

 レフィーヤは全員から心配され、アイズとティオナはベルと、無理がたたったのか意識を完全に失ってしまったスクハ、もといスズのことも当然ながら心配していた。

 しかし一度情報を共有しなければいけないので一先ずスズのことはベルに任せて、レフィーヤはこの場にいる団員達に順を追って説明を開始する。

 

 

『スズが『穢れた精霊』の反応を察知したこと』

『スズが指示した方向に『闇派閥(イヴィルス)』の残党がいたこと』

『スズの探知は慣れ親しんだ反応以外探索範囲が狭いこと』

『追うかどうか、仲間を呼ぶかどうかはレフィーヤに一任されていたこと』

『最終的にレフィーヤの判断で自分で追ったこと』

『新種の地中の番人(トラップ・モンスター)のこと』

地中の番人(トラップ・モンスター)を倒すと『闇派閥(イヴィルス)』の残党が待ち伏せしていたこと』

『最初から『レスクヴァの巫女』を狙って『穢れた精霊』の反応でおびき寄せたのかもしれないというレフィーヤの推測』

『その中に『怪人(クリーチャー)』がおり、知人のエルフであるリューに助けてもらったこと』

『『闇派閥(イヴィルス)』の残党と『怪人(クリーチャー)』の会話の中で『穢れた宝玉』という単語が出て、本来それを地上で使う予定だったこと』

『『怪人(クリーチャー)』が何かを行ない規格外の怪物となったこと』

『その規格外の怪物が行った行動の詳細』

『知人のエルフであるリューが残った『闇派閥(イヴィルス)』の残党を追っていること』

 

 それらの重要だと思った出来事をスクハのことだけは約束通り多少ぼかしながらも大まかに説明していると「ねえレフィーヤ」と不思議そうにティオナが首を傾げていた。

 

「あたし達は白猫ちゃんから直接(、、、、、、、、、)レフィーヤとアルゴノゥト君が『穢れた精霊』に襲われてる反応があるって聞いてやって来たんだけど、レフィーヤは白猫ちゃんとずっと一緒にいたの?」

「え?」

 

 レフィーヤはティオナの言葉に驚きを隠せなかった。

 なんせ自分はスクハを追って、そのスクハに案内されてこの場に来たのだ。

 遠く離れた野営地にいるはずがない。

 

「あ、スズさんは【伝言魔法】を使えると言っていました。もしかしたらそれで救援要請をしてくれたのかもしれません」

 そこでレフィーヤはスクハが『精霊が天界のチャンネルになっている』という話の中で、『他と『チャンネル』を合わせる【伝言魔法】もあるにはあるけれど』と言っていたことを思い出した。

 その【伝言魔法】が実体のない幻影も作り出すことができて、その幻影のスズが【ロキ・ファミリア】に救援を求めたのなら辻褄は合う。

 

「その問題についてはクラネル兄妹に後で聞けばいいし、教えてくれないようでもそれはそれで構わない。話を聞く限りだと今回の一件は下手をすると迷宮都市(オラリオ)を破滅させかねない大事件に発展していたんだ。それを未然に知らせてくれたのだから、【レスクヴァの里】の神秘は無理強いしてまで聞くものではないさ」

 フィンはそう言い、「今至急に取り掛からなければならない問題は他に脅威が残っているかの探索だ」と冷静な判断をして余計な話は後回しにした。

 

 今回は『レスクヴァの巫女』を狙って、新たな単語『穢れた宝玉』を用いて迷宮都市(オラリオ)の壊滅をもくろんでいたかもしれないのでスズとベルの安全が第一はもちろんのこと、逃げた『闇派閥(イヴィルス)』の残党の探索や他に『穢れた宝玉』などの脅威がないかすぐさま探索しなければならない。

 疲れ果てたレフィーヤとベル。意識のないスズの護衛役は最大出力の【エアリエル】で消耗したアイズが担当し、他の幹部総当たりで辺りの探索を開始する。

 フィンの指示で野営地で待機していた第二陣の冒険者達も複数探索に参加したが、結局朝まで探索しても新たな情報は何も見当たらなかった。

 逃げた『闇派閥(イヴィルス)』の残党に関しては『火炎石』により爆死した死体が発見された。

 先にその遺体を発見していたリューの情報では、『火炎石』の爆発による飛び火で燃えたであろう草木から時間を逆算すると爆死したのは未知の黒い肉塊との戦闘中だと思われるらしい。

 『闇派閥(イヴィルス)』の残党が情報を隠蔽する為に自決したか、あるいは何者かの攻撃で起爆させられたとリューは睨んでいる。

 

 結局情報は何も得られず探索は早朝には打ち切られた。

 フィンは今の状態では何一つ手がかりを得ることはできないと判断して、日を改めて『レスクヴァの巫女』であるスズに地上で話を聞いてから改めてこの階層を調査することにしたのだ。

 幸なことに迷宮都市(オラリオ)壊滅の危機は未然に防げた。

 遠征帰りの【ロキ・ファミリア】もスズも疲労しきっているので、無理に急いで取り返しのつかないことになるよりも落ち着いてからゆっくり話した方がいいだろうという判断である。

 こうして一夜の間に繰り広げられた死闘はひとまず幕を閉じるのだった。

 




分割しどころが中途半端過ぎて結局まとめて投稿することになってしまった
怪物が出てきてあれこれするお話でした。

まさかのゲドの旦那復活劇。
リューさんとアイズさん両方の強さを書いてみたかったのですが、なかなかどうして上手くいかないものです。
おかげでまだレベル2のベル君がヤムチャ状態に(ゴフ

今回はただでさえ長いのに加え、あからさまに大きなポイントを残したにも関わらず複線だけの回答なし状態で非常に読みづらいものとなってしまいました。
ある程度の回答についてはいつも通りちまちまと物語中に出していき、忘れた頃にポンと丸ごと回答がやって来ると思いますが、考察や流し読みしつつも『少女の物語』をこれからも見守っていただけると幸いですよ。

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