スズ・クラネルという少女の物語   作:へたペン

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感謝をするお話。


Chapter07『感謝の仕方』

 昼になってもリリとヴェルフはまだ目を覚まさない。

 傷を【魔法】で癒しても失った血までは回復しないことと体を限界以上に酷使し続けた疲れが抜けきらないのだろう。命に別状はないとはわかっているものの二人のことが心配でたまらず、ベルは出来もしない看病の真似事を続けていた。

 スズは精神力(マインド)を使い過ぎたのか、疲れが溜まっているのに無理をし過ぎたのか天幕に入った途端に「すこしだけ、休むね」と毛布にくるまる前に横になって意識を手放してしまったので今はヘスティアが世話をしてあげている。

 

「ベル君もまだ完治してないんだからボクに任せて寝てていいんだぜ」

「いえ、僕は大丈夫ですから。神様はスズのことを見ていてあげていてください」

 やることは本当に何もないので眠るのが一番だとわかっているが、異常事態(イレギュラー)が立て続きに起こったとはいえ危なく全滅するところだったのだ。スクハの負担も大きかった。きっと最後はスズが無茶をして皆を助けてくれたのだろう。そんな中自分は、また一番大切なところで必殺の一撃を外してしまった。皆を守ることが出来なかった。それがとてつもなく悔しくて、申し訳なくて、もっと強くならないと全然ダメなんだと改めて現実を突きつけられた気分だった。まさに最後はお姫様にまで助けられてしまったアルゴノゥトである。それでも祖父は言っていた。英雄に憧れる少年アルゴノゥトは『これから』だと。大切なものを全部守れる英雄なんて子供じみた夢は遠くて全く手が届かないけれど、それでも諦める理由にはならない。憧れてはいけない理由にはならない。『幸運』という不確定要素に頼らなくてもしっかり仲間を守れるように頑張らないといけないなとベルの心の炉は熱く燃え滾ったままベルの気持ちを熱く燃え上がらせる。

 

 自分に出来ることを一つずつでもやって前に進んで行かなければ決して憧れには届かない。罪滅ぼしとかそういう後ろ向きな気持ちではなく、リリやヴェルフの為に何かしてあげたいという自分の正直な気持ちに応える形でベルは二人の面倒を見たいのだ。

 

「まったく、ベル君もスズ君ももう少し自分を大切にしてくれるとボクは安心できるんだけどね」

「はははは……すみません、いつも心配掛けてしてしまって」

「でも君のそういう優しさはボクは好きだぜ、ベル君。そんな君に相応しい女性はおっかない血の気の多い連中ではなくてもっと包容力のある、そう例えばボ――――――」

 

「ベル君が起きたんだって? ヘスティア、邪魔するよ」

 

 ヘスティアが何かを言おうとする中、そこに割って入るかのように一組の男女が入って来た。

「ヘルメス、君はボクに何か恨みでもあるのかい!?」

「おいおい、ヘスティア。心友(まぶだち)にこのヘルメスが恨みを抱く訳ないじゃないか! タ、タイミングが悪かったのなら偶然だ!」

 どうやら彼がヘスティアの神友であるヘルメスのようだ。隣の女性が軽くお辞儀をするのでそれにつられてベルもお辞儀を返す。

「ヘスティアやフィン達から聞いてるかもしれないが、オレの名はヘルメス。こっちが団長のアスフィだ。どうかお見知りおきを」

「あ、はい。この度は助けに来てくれるだけでなくエイナさん達に心配を掛けないように知らせを届けてくださりありがとうございます、ヘルメス様。よ、よろしくお願いします」

「そんなかしこまらなくていいよ、ベル君。もっと気楽にこれからは頼むよ」

 そうヘルメスは笑いかけた。ヘスティアの神友というだけあって気のいい神様なんだなとベルの緊張が少しほぐれる。

「それに感謝なら他の子達にしてやってくれ。うちのアスフィだけでなく彼等のおかげでここまで来れたようなものだからね。ベル君しかまだ起きていないけど、気になるんなら先にお礼を言っておけばいいんじゃないかな?」

 ヘルメスがそう言うと入口の方から極東の冒険者が三人、背の高い男に二人の少女が申し訳なさそうな顔をして入ってくる。それは13階層で怪物(モンスター)に追われているところを助けた冒険者達だった。

「よかった。無事に地上に戻れたんですね。ケガはもう大丈夫ですか?」

 真っ先に思ったことをベルは口にすると、あの時怪我をしていた前髪で目元を隠した少女が「お、おかげさまでっ」と大きく頭を下げて来る。それに続いて男とポニーテールの少女もお礼の言葉を言ってくれる。軽く自己紹介をして彼らはヘスティアの神友が運営する【タケミカヅチ・ファミリア】の団員達で、団長の男は桜花。ポニーテールの少女が命。目元が前髪で隠れてしまっている少女が千草というらしい。ヘルメスが掴んだ情報からベル達が危機に瀕していると知りここまで足を運んでくれたのだ。

「すみません。疲れている中こんなところまで……」

「いえ! 元々は私達の不注意が招いたことです! ここまで来られたのもアスフィ殿とエルフ殿のおかげ……恩を返す力もない無力な私達をお許しくださいっ!」

 そして唐突に本家本元【タケミカヅチ・ファミリア】による息の合った土下座にベルとヘスティアは「おおぅ」と戦慄を覚えてしまう。やはり本物は一味も二味も違う。

 

「その気持ちだけで嬉しいですから頭をあげてください! 怪物(モンスター)の数も異常事態(イレギュラー)さえなければスズ一人で十分殲滅できましたし、僕なんかでも時間を掛ければ処理しきれる量でしたし、そんな恩を返すとか返さないとか大げさですよ!?」

 

 その言葉になぜか【タケミカヅチ・ファミリア】一同はぎょっとした。「あの数を一人で、だと」「これが『レスクヴァの里』……」「命といいいい一緒の時期に、ら、ら、ら、ランクアップしたんだよねっ」とそれぞれ同様の仕方は違うが、『レスクヴァの里』だから仕方ないと思われていることだけは十分に伝わって来た。自分は里出身ではないのに何故いつもこうなるのかがベルにはわからなかった。

「そ、それに困っていたら助け合うのって普通じゃないですかっ。スズやリリ……ヴェルフだって、桜花さん達を助けたせいで危険な目に合ったなんて思ってませんから!」

「それがお前らの美徳だとしても、もう一度だけ言わせてくれ。仲間を助けてくれてありがとう。いつかこの恩は必ず返すことを約束する」

 最後にもう一度、桜花は深く土下座をした。ベルは特に考えなしに『困っているから助けよう』と助けただけなのに話が重くて反応に困り、助け船を求めて目線をヘスティアに送る。

「ほらほら、畏まり過ぎてベル君が困ってるじゃないか。ボクとタケとは知った仲なんだし、これからもよろしく、でいいだろう? 困ったことがあったらまた相談しに行くからさ」

 ヘスティアはこういう時に強い。伊達にジャガ丸くん屋台のマスコットをしていない。文字通り子供達に語り掛けるように優しく微笑み無駄に義理堅い空気をばっさりと切ってくれる。

「それとリューちゃんも来てくれてね。訳あって野営地には顔出してないけど、シルちゃん共々ベル君達のことをものすごく心配してたから、もしも見かけたらお礼を言ってあげてくれよ?」

「リューさんが!?」

「オレが護衛として声を掛けたんだけどね。ベル君の名前を出したら一発だったよ。ベル君はもてもてだね」

「ち、違いますよっ! リューさんは、その、スズと僕の大切な友達で、そういうんじゃっ」

「むむむむむ、5号なのかい!? あの覆面が5号なのかい!?」

「だから神様もその数は何なんですかっ!?」

 そんなヘルメスとベルとヘスティアによるやり取りを見て桜花達から笑みがこぼれ硬い空気は完全に無くなった。スズ達が起きたら三人にも改めて礼を言いにくると一度ヘルメスが用意してくれたキャンプに仮眠を取りに戻っていった。

 簡易キャンプまで用意してくるなんてヘルメスは実に準備が良い神である。

 

「それじゃあオレ達もキャンプに戻るけど、ヘスティアだって徹夜なんだからあまり無理をするなよ?」

「ふっふっふ、ヘファイストスのところで何徹したかも覚えてないボクを舐めないでおくれよ?」

「いや、寝てくださいよ!? また倒れたらどうするんですか!?」

「ああー、心配のあまりベル君とスズ君と同じ毛布の中でないとねーらーれーなーいー」

「もう少ししたら僕も仮眠取りますから! 冗談を言ってないで早く寝てください!」

 ベルはヘスティアをスズが眠っている毛布に押し込もうとするが、「ベル君も一緒でないと今日は眠らないぞ」と心配を掛け過ぎたせいか徹夜のテンションなせいかヘスティアは駄々をこねながらベルのアウターの裾を放してくれない。

「はっはっは、それじゃあお邪魔虫は退散するとするよ。お楽しみを邪魔しちゃ悪いしね!」

 ヘルメスに助けを求めるとさわやかな笑顔を返してアスフィと共にそそくさと外に出ていってしまった。ベルは別にヘスティアと一緒に寝るのが嫌な訳ではないのだが、異性と一つの毛布にくるまるなんて恥ずかしいし何よりも神様相手に恐れ多い。それでもそれで不安がっているヘスティアが安心してくれるならと思うところがあるのだが、今のヘスティアは不安がっているというよりもハイテンションだ。徹夜明けでハイになっているだけなのだ。ベルはそう思い必死で親愛なる神様を正気に戻そうと説得を試みる。

 

『人が必死に後処理をしている中、いちゃつかないでもらえないかしら。一人頑張っている『私』が馬鹿らしくなってくるのだけれど』

 

 さすがにうるさくし過ぎたのかスクハが上半身を起こして大きく溜息をついた。

「スクハ君! 君も無事で本当によかったよっ! スズ君は元気だったのにスクハ君が全く顔を出さなくてボクはものすごく心配してたんだぜ?」

『その無駄に大きな胸が暑苦しいから抱きつかないでくれないかしら、この駄女神』

「こ、今回のボクは駄女神なんかじゃないぞっ! それに死ぬほど心配してたんだから抱きつくくらい許しておくれよ!」

『本当に死ななくてよかったわね、この駄女神は』

 スクハはヘスティアに抱き着かれているのも頭を撫でまわされているのも抵抗することなくもう一度だけ大きく溜息をつく。

 

『状況確認だけれど『剣姫』が近くにいるわね。強い冒険者の気配も多いし遠征帰りの【ロキ・ファミリア】に助けられたというところまでは理解できるのだけれど、目の前に貴女がいるのが理解出来ないわ。まさかとは思うのだけれど、そんな愚かなことは流石の貴女もしないとは思うのだけれど、地上でない空気の漂うこの場所に眷族が心配のあまり危険を犯してまでダンジョンに潜る愚かな神なんている訳ないとは思うのだけれど、誰かに護衛を頼んで危険な中層まで足を運んで来た駄女神なんてここにはいないわよね、ヘスティア』

 

 その言葉に「よかったよぅ」とスクハを撫でまわしていたヘスティアの手が止まった。ついでにギクリと言わんばかりに表情も固まる。

「いや、これには海よりも深い理由があってだね……その、えっと」

『言ってみなさい。そうね、深い理由というのなら一万字以上五万字以内で言ってくれて結構よ。私は貴女のこと嫌いじゃないから長々といい訳を聞いてあげるわ』

「心配で無理言ってついて行きましたごめんなさい」

『全然文字数が足りないわ。全く、無力な駄女神がこんな危険なところに下りてきて何かあったらどうするつもりだったのかしら。流石に今の『私』に『恩恵』もなくダンジョンを脱出する力もないし、何よりも炉の女神である貴方が帰りを待たずに誰が『スズ・クラネル』とベルを出迎えるつもり? 無事帰ったら貴方が怪物(モンスター)の餌食になってましただなんて私ですらショックを受ける出来事を『スズ・クラネル』が耐えきれる訳ないでしょうが、この駄女神』

 どうやらスクハはこんな危険な場所まで出向いてきてしまったヘスティアのことを怒っているようだ。

『今回は何もなかったからいいけれど、次もしもこんな無謀なことをしたら呆れ果てて貴方に掛ける言葉なんてなくなると思いなさい』

「ボクのことをそこまで口に出して心配してくれるのかい!? ツンデレの君が!!」

『そこで喜ばないでもらえないかしら、この駄女神。それと私はツンデレではなくクールなだけよ。デレなんて成分は存在しないわ』

 言葉の詳細な意味は分からないがスクハがヘスティアのことを心配していることを指摘されて照れていることはベルにでも十分伝わるやり取りだった。

「またまた。デレの塊なスクハ君が何を―――――――」

『ベル、少しヘスティアを借りるわ。貴方も【カルディア・フィリ・ソルガ】で強制疲労回復されたくなければ仮眠くらいしときなさい。疲れが顔に出てたら『スズ・クラネル』もリリルカも心配するわ』

「わ、わかった。でも神様をどうす―――――――」

『いいから寝てなさい』

 鬼気迫る表情でスクハはヘスティアの手を取って外に早歩きで飛び出して行く。照れ隠しや説教をするような様子ではない。漆黒のミノタウロスと遭遇した時と同じような焦りがスクハの表情に出ていた。

 結局ベルはそんなスクハのことが心配で眠ることが出来ず、かといって今の反応からヘスティアにだけにしか聞かれたくない内容の相談事なので追うことも躊躇い、スクハが戻ってくるまで心配でもやもやとした気持ちを抱えることになるのだった。

 

§

 

 スクハはヘスティアを森の木陰に連れ込み周りを見回す。

「スクハ君、何かあったのかい。そんな薄着のままスズ君の体を動かすなんてらしくないだろ」

 スズを寝かしつける時に寝苦しいと思ってヘスティアはコートやリボン、二―ソックスを脱がしていたので、今のスクハの格好は黒いアンダーウェアにミニスカートとスパッツ姿だ。うっすらと下着のラインが見える薄着のまま出歩くのはスクハらしくなかった。

『ヘスティア、貴女から見て『スズ・クラネル』は人間に見えた?』

「え? あ、ああ。精霊化はしてなかったよ。神威を押さえてても子供を見る眼が盲目になることはないから間違いない」

『そう。なら今の私は?』

「相変わらずよくわからない、かな。何も感じないって訳じゃないんだけど、どちらかというと精霊っぽいかな。スズ君が無茶をして精霊化が進行したのかい?」

『魂ではなく体の器が少し嫌な方面で向上してるわ。人が来ない内に更新を初めて。新しい【スキル】が出ても全て保留にしなさい。貴方が触れた【経験値(エクセリア)】を通して『私』が凍結して隔離する。私の思い過ごしならそれでいいわ。後で笑い話にでもからかうネタにでもなんでもしなさい』

 切羽詰まっているのかスクハがアンダーウェアをその場で脱ぎ捨てた。【ステイタス】更新が必要な場合もあるかもしれないとポーチに針を携帯していたので更新自体は出来るが、それをきっかけにダンジョンに神の存在がバレるかもしれないリスクが一瞬頭を過る。だがその時はその時だ。スクハがここまで取り乱す緊急事態にヘスティアは腹をくくりスクハの更新作業に移る。

 

 

 

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 スズ・クラネル LV2

力:i80⇒h155   耐久:h124⇒g206 器用:h110⇒178

敏捷:i77⇒h141   魔力:f309⇒340

魔導:i

 

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『【ステイタス】を更新してないのに更新されているとかは?』

「そんな奇妙なことは起きてないから安心していいよ。ただ【スキル】はいくつか発現しそうなのがあるけど」

『全部余計なものだから無視しなさい。潜在値……貴方達の言うところの『隠しぱらめーたー』の変動は?』

「細かいところまではわからないから『隠しぱらめーたー』なんじゃないか。パッと見で『戦闘力たったの5か』なんて器を把握できるのは君達くらいなものだろ。大まかな器の大きさしかボクにはわからないけど、見たところ大きな変化はないんじゃないのかい?」

『ええ、そのようね。少し警戒しすぎたかしら。一応『私』の方で隅から隅まで調べてみるけれど、もういつものお気楽モードに戻っていいわよ。【スキル】の方は宣言通り私の方で処理しておくわ』

 スクハが安堵の息をついたので更新を終わらせてスクハの上からどき、放り投げたアンダーウェアを拾って手渡してあげる。

『騒がせたわね』

「ほんとだよ。そろそろスクハ君が何を危惧しているかくらい教えてくれてもいいんじゃないのかい?」

『『私』が墓の下まで持っていくどうでもいい情報だから知る必要はないわ。それで、ここからは普通の話に戻るけれど、【基本アビリティ】の伸びはどうだったかしら?』

「すぐそうやって話をはぐらかす。紙に写してないし緊急事態だったみたいだから数値をしっかり覚えてはいないけど、かなりの伸びだったよ。こんなに伸びる時はスズ君やスクハ君が無茶をした時だから手放しで喜ぶことは出来ないけどね。これがベル君に対する憧憬一途(リアリス・フレーゼ)による成長だったらお赤飯を炊くんだけど」

 これもタケミカヅチから聞いたのだがめでたい日にはお赤飯をご馳走するらしい。もしもベルではなくスズに憧憬一途(リアリス・フレーゼ)が発現していたら近くに異性はベルしかいないので安心して二人を幸せにして見守ってあげられるのだが、なぜよりにもよってベルがアイズ・ヴァレンシュタインにそんな気持ちを抱いてしまったのだろうか。スズや自分ではダメだったのだろうか。そんな愚痴をヘスティアは頬を膨らませながら吐き出していく。

 

『そんな風習は知らないし、そういう話は『スズ・クラネル』にしてもらえないかしら。そもそも貴方のそう言う変な発言のせいで今だに『スズ・クラネル』は私がベルのことを異性として好きだと勘違いしているのだから、7号らしくもう少し自重してもらえるとありがたいのだけれど』

「また一人増えたのかい!? はっ、もしかしてタケのところのっ!?」

『誰だか知らないけれど的外れよ。騒ぐと人が来るからそろそろいい加減無駄な愚痴をこぼすのは止めてもらえないかしら。ベルも心配しているだろうし戻るわよ。なによりも『スズ・クラネル』はまだ疲れて寝ているのだから誰かに出会ったら面倒でしょ?』

「スクハ君だって良い子なんだから精霊人格だって胸を張って堂々としててもボクはいいと思うんだけどな」

『『私』が良い子な訳ないじゃない。そんな目の下にクマなんて作って、寝言は寝てから言いなさい』

 否定しつつもしっかり人の心配をしてくれているあたり間違いなくスクハは良い子である。認めてくれなかったり照れ隠しをするあたり間違いなくツンデレである。いつも通りそのことをからかいたくなる衝動に駆られるがスクハの言う通り人前でやるようなことではないので大人しくスクハに手を引かれながら元のテントに向かって行く。

 

『今後こんな無茶をするのは許さないけれど、私達のことをそこまで心配してくれてありがとう、ヘスティア』

 

 その途中、スクハはそう囁くような小さな声でお礼を言ってくれた。

 見事なツンデレにヘスティアの頬は緩み切り、思わずまた抱きしめてあげたくなったがこんなところで抱きついたらまた怒られてしまうのでぐっと我慢をする。

 まだ全てを話してはくれないが、最初と比べてずいぶんスクハとの距離が縮まったものである。

 最初はスクハのことを警戒してしまったが、スクハのことを受け入れてあげて本当によかったとヘスティアは心の底から思うのだった。

 




スクハはツンデレやチョロインなんかじゃないんだからね!(え
剣と鞘は次回でさらっと返却される予定です。

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