スズ・クラネルという少女の物語   作:へたペン

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初めて中層へ向かうお話。


六章『白猫と迷宮』
Prologue『中層への向かい方』


 ベルのランクアップから10日後、ベルとスズはスズのランクアップ報告と新しい仲間ヴェルフと直接契約を結んだことをエイナに話し、中層に挑んでも大丈夫かの確認を取りに来ていた。

 クロッゾの一族が無名の鍛冶師(スミス)として迷宮都市(オラリオ)で生活していたのも驚きだが、ベルに続いてスズまでこうも簡単にランクアップしてしまったことにエイナは驚きを隠せずにいた。相談せずに『魔導』を発展アビリティで選択してしまったことにスズは少し申し訳なさそうにしていたが、これは元々取りたい発展アビリティとして二人で話し合っていたので問題は無い。

「ランクアップに加えて、もう『魔導』をとっちゃうなんて本当に驚いた。おめでとう、スズちゃん」

「ありがとうございます、エイナさん! これもエイナさんが色々と面倒を見てくれたおかげですよ」

 嬉しそうに満面の笑みを浮かべるスズの顔。年よりもずっと幼く見えるその姿は相変わらず愛らしく、ベルの頼りなさそうな容姿も相まってついついこの兄妹達を必要以上に手助けしてあげたくなってしまう。『白猫ちゃん』ブームのせいでギルド上層部も無用な混乱を避ける為エイナに二人を全力でサポートするようにと言いつけているが、それとは別に大切な弟分と妹分として大好きで面倒を見てあげたいのだ。ベルに勢いで「大好き」だと言われて同僚にからかわれた時、思い直してみると自分の好みがベルそのものだったりした訳だが、とにかくそういうの抜きにしても二人には無事に帰って来て笑顔を見せてもらいたい。

 

「でも、一階層の荒れ様、二人の仕業でしょう。ダメよ、端の方だからってルーム一つを台無しにしたら。他の駆け出し冒険者が見てビックリして受付に駆けつけて来たんだから」

「でも街中や奥の階層で特訓するのは危ないですし……。ビックリしないように特訓部屋って看板を立て掛けてもダメ、ですか?」

「ダーメ。ダンジョンは皆で使うものなんだからルームの独占は認められません! それに聞いたよ? インファント・ドラゴンと二人でインファイトして勝ったんだって。襲われている冒険者を助ける為とはいえもっと安全に立ち回らなちゃダメじゃない。安全第一、冒険者は冒険しちゃいけないってあれほど言ってるのに誰かの為になるとすぐに無茶するんだから」

 本当に二人は冒険者をするには優しすぎる。冒険者らしくない冒険者なので心配にもなる。だからいつも通り軽い説教をしてから本題に入ることにした。スズは『レスクヴァの里』特有のどこか常識はずれな部分はあるものの聡い子なのでしっかり反省しているし、サポーターであるリリにもものすごく心配されて注意されてしまったらしい。こういったストッパー役がいるパーティーはちょっとやそっとのことではぶれないので少し安心出来た。

 

「それで本題に入るけど、13階層まで足を延ばしたいんだったよね?」

「はい。LV2攻伐特化(スコアラー)のベル、LV2中衛の私、LV1前衛型鍛冶師(スミス)のるーさん、後衛サポーターのりっちゃん。魔法剣士の私が状況によっては負担が大きいですけど、ベルの【ステイタス】が飛び抜けて高いので問題なく13階層なら戦って行けると思うんですけど」

 スズの言葉に【スキル】と【魔法】の欄が切り取られた【基本アビリティ】のみの部分になった紙にもう一度目をやる。スズは安全適正に達していて魔力に至ってはFと基準値を大きく上回っている。ベルに至っては最低がGの最高がEと飛び抜けた【基本アビリティ】になっていた。どうやったらランクアップ10日でここまで【基本アビリティ】を上げられるのだろうか。『レスクヴァの里』の住人は本当に規格外だなと内心乾いた笑いが出てきてしまう。

 

 安全基準は三人一組のLV2【基本アビリティ】IからHで出現怪物(モンスター)は12階層とそこまで能力差はない。複雑な地形に加えて『怪物の宴(モンスター・パーティー)』が頻繁に起こり、魔物による武器の投擲やヘルハウンドの火炎、ダンジョンワームによる地面や壁からの不意打ちなどの様々な要素が一気に増えて対処が難しくなるから到達基準がLV2なだけで、LV1が混ざっていても他のLV2がカバーしきれれば全く持って問題はない。回復要員(ヒーラー)がいないのが少し心もとないが安全に探索できるパーティーだ。

「ちょっと待ってて」

 それでも心配なものは心配だ。特にヘルハウンドの炎は強力でこれによりパーティーが全滅してしまうケースは多い。大火傷を負って動けなくなったところを生きたまま食べられるなんてむごい最後を迎えた冒険者は数多くいる。二人をそんな目に合わせたくない一心からエイナは炎耐性の精霊の加護のついた『サラマンダー・ウール』が割引されるクーポン券を人数分である4枚取って来た。

「ベル君、これ」

「これは?」

「『サラマンダー・ウール』のクーポン券。これを持って摩天楼施設(バベル)に行けば少しは割引されるから」

 ベルは少し首を傾げているが、スズは「ヘルハウンドは怖いですからね」とエイナの意図を理解してくれた。しっかりと予習をしてきてくれる優等生で非常に助かる。ベルも頑張って学んでくれるのだがもう少しスズを見習って予習復習をしてきてもらいたいところだ。

「中層へ進むのは許可するよ。ただし条件付き。パーティー分のサラマンダー・ウールを用意すること。いい、これを装備しなかったら絶対に行っちゃダメだからねっ! わかった!?」

「は、はい!?」

「クーポン券ありがとうございます。でも4枚も頂いちゃって大丈夫なんですか?」

「そういうことは子供が気にしないの。いい、無理は禁物だからね。危なくなったらすぐに引き返すこと。約束だよ?」

 念には念を押しておくとベルとスズは互いに顔を見合わせて、笑顔で「はい!」とエイナを安心させるように元気な返事を返してくれた。

「頑張って来てね」

「「いってきますエイナさん!」」

「行ってらっしゃい。ベル君、スズちゃん」

 こんな二人をいつまでも見送ってあげたい。エイナはそんな気持ちを込めて笑顔で二人を送り出してあげた。

 

 

§

 

 クーポン券で割引しても87000ヴァリスもするサラマンダー・ウールを4枚購入するのは失費が大きかったが、精霊が魔力を織り込んで作り出した加護付の生地は重さを全く感じず動きの邪魔にもならなかった。宝石を作ったり人や物に加護を与えたりとあらためて精霊ってすごいなとベルは実感させられてしまう。

 ベルの新調した装備は牛若丸にグリーブとバックラー、リリのバックパックにはヴェルフの工房で貰った大剣が取り付けられている。スズは『雷甲鈴(らこりん)Mk-Ⅲ』。『雷甲鈴(らこりん)Mk-Ⅱ』は残念ながらまた耐久テストで壊れてしまったが、今の素材と技術でどこまでなら耐えられるかはわかったので、ヴェルフはしぶしぶ妥協して『偽粉砕の雷戦鎚(ミョルニル)』を数回だけ耐えられるカラクリ仕掛けの『巨大手甲(ヤールングレイプル)』がスクハの案で作られた。これもまた大剣と同じくリリのバックパックにつけられているので、ただでさえ大きなリリのバックパックの横幅が武具で酷いことになってしまっている。

 

 リューとの特訓でかなり痛んでしまっていたスズの『鎧式(よろきち)Mk-Ⅲ』もスクハが作ったジェムを織り交ぜて『鎧式(よろきち)Mk-Ⅳ』に新調されている。

 防具の完成祝いをしようと言ったのだが、中層用の装備が中層で耐えられなければ成功したとは言えないと結局様々な祝いは中層進出後になることになったのだ。何よりもヴェルフのサイフはすっからかんであり食費すらままならない状態だった。一週間で出来ることをやり切ったヴェルフの資材とサイフは空っぽなのだ。今やランクアップの他に資金稼ぎの意味でも中層進出はヴェルフにとって必要なことになってしまっていた。ある意味予想通りの結末にリリは「バカですか」と大きく溜息をついていたのが印象的だった。

 

 そんな職人気質のヴェルフの努力と意地の成果で昨日の試験運用では【ヴィング・ソルガ】の負担が少し減ったのに加えて重装なのに手足は前よりも動かしやすいとスズからは高評価を得ている。

 

 新調した防具がスズに集中することになってしまったが、ベルは現状の装備で満足しているし、リリは攻撃をもらった時点でアウトだと割り切っているので必要ないと見送りになった。一番負担が多い中衛をこなし、なおかついざという時は正面から怪物(モンスター)を支える壁役にならなければならないスズの装備を固めることは当然のことだと判断して、今必要な物は全部スズの防具だということにまとまったのだ。

 だからこれで準備万端。装備よし、道具よし、人材よし、心意気よしと特にこれと言った消費もなく10階層11階層と突破し、12階層最後のルームまでまさに快進撃だった。

 

 ベルがハード・アーマー二匹をヘスティアナイフと牛若丸の二刀流で流れるように切り裂いた。ベルの打ち漏らしたインプ二匹をスズが処理している間に左手に持つ牛若丸を鞘にしまい、代わりに『ワイヤーフック』を取り出して怪音波を放とうとするバット・バットに撃ち込み引き寄せヘスティアナイフで脳天を突き刺し『ワイヤーフック』を強引に引き抜く。

 ヴェルフがオークを切り伏せている間にスズとベルがシルバーバックをそれぞれ一匹ずつ倒したことで13階層入口があるルームの制圧は終わる。リリがテキパキと怪物(モンスター)の死体を集めドロップアイテムと魔石を回収してくれたおかげもあり次の怪物(モンスター)が生れ落ちる前に余裕を持って13階層に進出できそうだ。

 

「中層からは一気に地形も複雑になり縦穴もランダムで生成されている為、一度下に落下すれば現在座標を割り出すのは困難です。足元を見ていなかったでは済まされないのでくれぐれも落下にはご注意ください」

「隊列は予定通りでいいよね。怪物(モンスター)大量発生や囲まれた時の緊急突破はベルが穴を開けて私が皆をサポート、もしくは広域魔法で殲滅で大丈夫かな?」

「はい。なるべく早めにリリが指示を飛ばしますが、指揮権の優先順位はスクハ様、リリ、スズ様の順だと思ってください。安全の為に隊列はなるべく乱さないようお願いいたします。ベル様とスズ様に頼り切ったパーティーですので一人の油断が全滅に繋がることをお忘れないようお願いしますよ?」

 リリが13階層に降りる前に最後の注意をした。ヴェルフも13階層の魔物と戦える能力は持っているがそれは一対一の話だ。ヴェルフが一対一で戦えるようにベルが怪物(モンスター)を素早く倒し、スズがヴェルフをサポートしながら戦線を維持する役目を担っている。誰か一人でも戦闘不能に陥った場合、ベルかスズのどちらか片方が負傷者を庇いながら戦わなければいけなくなり戦線は維持できなくなるだろう。誰かを庇って主力である二人の内一人が負傷しようものなら戦線は完全崩壊だ。そうなると12階層に引き返すのも難しいだろう。

 

「足引っ張らないように気をつけろってことだろ。俺はさっさと上級鍛冶師(ハイ・スミス)になってスズの全力に耐えきれる『雷甲鈴(らこりん)』を完成させるんだ。近道は通っても自分の力量くらい把握してるから安心しろリリスケ」

「足を負傷して文字通り足手まといになったりしたら、その負傷した足を持って引きずり回すので覚悟してくださいよヴェルフ様」

「ああ、リリスケに怪物(モンスター)の死体みたいに扱われないよう心掛けておくぜ」

 リリの言葉を笑いながら受け流すヴェルフは大人の職人だなとベルは思わず感心してしまう。そして四人になったことでずいぶん賑やかになったものだな、とこれから危険なところに向かうとわかっているのに不謹慎ながらベルの頬は緩んでしまっていた。

「賑やかなのっていいよね。私もパーティーらしくて好きだな、こういうの。ベルが笑う気持ちわかるよ」

「あ、やっぱりスズにはわかっちゃうか。こうやって賑やかで、皆で力を合わせて冒険するって、なんだかワクワクしてくるよね」

 そうベルはスズと顔を見合わせて笑い合うと、リリとヴェルフは一瞬きょとんとしてしまった。

「くっ……はははははははっ! そうだな、こういうのワクワクするよな! ワクワクしなきゃ男じゃないもんな!」

「リリは少し賛成しかねますが……お気持ちはわかります」

 ヴェルフが豪快に笑い、リリが少し呆れながらも口元を緩ませてくれた。

 一気に難易度が変わると言われている中層への進出に大切な仲間達と共に挑む。実に幼心と男心がくすぐられシチュエーションだ。ヘスティアにエイナ、そして『豊饒の女主人』の皆に沢山お土産話を持ち帰る為にも頑張ろう。生きて帰って酒場で仲間と笑い合うまでが冒険なのだ。少なくともベルにとっての冒険とはそういうものだ。

 ベルはまだ見ぬ中層に想いを馳せて、それでいて何があってもみんなと一緒に帰るんだと覚悟も決めて、ダンジョン中層の最初の死線(ファーストライン)である13階層に仲間達と下りていった。

 

§

 

 【ゼウス・ファミリア】が残した忘れ形見、ゼウスの義孫ベル・クラネルのことを調べていたヘルメスは困惑していた。

 目の前に『白兎君に性欲を求めるのは間違っているだろうか?』や『白猫ちゃんと白兎君のドキドキ温泉旅行その5』などの薄い本がある。一体何がどうしてこうなったのだろうか。ベル・クラネルが『レスクヴァの里』出身の超人扱いされており、スズ・クラネルというゼウスから聞いたこともない妹と一緒に行動しているらしいのだ。それも迷宮都市(オラリオ)ではかなり有名人らしい。

 予想していなかった方向の目立ち様にヘルメスは愕然としていた。『ジャガ丸くんの癒し兄妹』から『インファント・ドラゴンとインファイトした男』、『世界最速兎(レコードホルダー)』と評価や通り名は様々だがどの話にも『白猫ちゃん』ことスズ・クラネルという謎の人物がセットになってついてくる。

「そ、それでアスフィ。スズ・クラネルというのは、『スズ・レスクヴァ』のことでいいのかい?」

「これはヘルメス様のおっしゃる通りベル・クラネルが『レスクヴァの里』の住人ではないという前提の話になりますが、おそらくですが素性を隠す為に同期であるベル・クラネルの妹として冒険者登録したのでしょう。突如スズ・クラネルが『レスクヴァの里』の住人だという噂が広まったので、ベル・クラネルが通常ではありえない戦果を立てていること、白髪赤目など特徴的な容姿が似ていることの二点からベル・クラネルも『レスクヴァの里』の住人であるという認識が広まっていったようです。だとすれば彼女がヘルメス様の言う『スズ・レスクヴァ』で間違いないかと」

 【ヘルメス・ファミリア】の団長であるヒューマンの女性アスフィの回答に「なるほど」とヘルメスは相槌を打った。

「しかし『レスクヴァの里』の『現巫女』まで迷宮都市(オラリオ)に出て来るか。『初代巫女』もウラノスの同士だったから『異端児(ゼノス)』を里に受け入れる準備をしているのかな。いや、『レスクヴァの里』の受け入れ準備が完了していても『異端児(ゼノス)』達を外に連れ出すと流石に目立つか。となると現状を直接見極めに来ただけと見るべきかな。来る者拒まず去る者追わず、けれど離れていても家族であり続ける。あのお転婆娘のレスクヴァが大事な『現巫女』を迷宮都市(オラリオ)に送り出すなんてね。これはもしかすると――――――――」

 かつてないほど優秀な人材が迷宮都市(オラリオ)に集まっている今、歴史が動くのではないかとヘルメスはついつい期待してしまう。

「それで、『世界最速兎(レコードホルダー)』ベル・クラネルの成長は順調かい?」

「はい。摩天楼施設(バベル)の者の証言ですが……今日、パーティー分と思わしきサラマンダー・ウールを購入していったそうです」

「あれ、もう中層に入っちゃったのか。【ランクアップ】してから10日で。流石は『世界最速兎(レコード・ホルダー)』。早い早い」

「また【短詠唱魔法】の連続使用、もしくは一度に複数の弾を発射する【魔法】を所持していることが判明しています。高速移動しながら使用したことから既に『平行詠唱』の技術を取得していると見て間違いないでしょう。【魔法】発動までの時間が極端に短かったことから『高速詠唱』も持っているのではないかと噂されているようです。目撃情報も多数」

 それが本当だとしたらずいぶんと【ステイタス】と技量の成長速度が速い。ヘルメスが聞いた話ではベルが冒険者になってまだ二ヶ月を満たない。まさに快進撃。まるで物語の主人公のようだ。仲間と協力したとはいえLV1でミノタウロスやLV2冒険者を撃退したことといいヘルメスの期待はどんどん高まっていく。

 

「あまりの成果と理不尽なほどの成長速度のせいか、『精霊の力』でドーピングした、ミノタウロスを倒せたのも『レスクヴァの魔法』がまぐれ当たりしただけ、【ロキ・ファミリア】の討ち漏らしを掠め取っていった、ちやほやされるだけの微温湯に浸かった『インキチ・ルーキー』などと一部で誹謗されてもいます。周りの【ファミリア】の目を気にして表立って言われることはあまりないようですが」

「はははははっ、『インキチ・ルーキー』とは上手いこと言うじゃないか。オレなんかは逆に年がら年中無茶な特訓しないと強くなれない『レスクヴァの血』が『恩恵』でどう変化しているのかぜひとも知りたいところだよ。まあ『特別』をひがむ気持ちはわからなくはないさ。迷宮都市(オラリオ)で大人気だしね、色々な意味で」

 神々が生み出した数々の薄い本を思い出してヘルメスは口を開けて盛大に笑った。ゼウスが知れば義孫そっちのけで『白猫本』を買いあさることだろう。この場にゼウスがいないのが悔やまれる。

「【ランクアップ】の所要日数を偽った、という意味も込められていると思いますが……」

「ああ、なるほど。中々冒険者達の見る目も厳しいな」

「クラネル兄妹が周りからちやほやされていることを、面白くないと思っている冒険者達がいることは確かです。おそらくは神々の中にも」

「『現巫女』がお忍びで来ていることをワザと広めた連中がいる、だったね。今頃ウラノスは頭を抱えてるんじゃないかな。娯楽に飢えた神々が集う街だからそれもまた仕方ないさ」

 スズ・レスクヴァまで迷宮都市(オラリオ)に来て、それもベル・クラネルと接触していることと予想外の兄妹人気に度肝を抜かれてしまったが、ベル・クラネルが英雄に相応しい器の持ち主かどうかを確かめるには絶好の環境が整っている。

 早くベル・クラネルを実際に見てそれを見極めたい。ゼウスはおおよそ大成する器ではないと言っていたが、短期間で偉業を成し遂げたベルに期待を抱くのは当然のことだ。『現巫女』が導いたであろうまだ生まれていない最後の英雄(ラストヒーロー)が無事孵化するのかどうか。

 そして彼がどんな【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】を歩むのか。

 最高の娯楽を前に笑いが止まらないヘルメスを見て、いつも彼に振り回されているアスフィは疲れた顔と泣きそうな声で「もうやだぁ」とついつい本音を漏らしてしまうのだった。

 




るーさんの財布は犠牲になったのです。
そんなこんなで始まりました6章。
ヘルメス様は迷宮都市(オラリオ)の『白猫ちゃん』ブームに驚きつつも、娯楽が増えたことを喜んでいるようです。

 2016/02/09
章タイトルを『白猫と巨人』から『白猫と迷宮』に変更しました。

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