スズ・クラネルという少女の物語   作:へたペン

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感じたものを物差しで測る話。


五章『白猫と鍛冶師』
Prologue『モノの測り方』


 ギルド上層部の予想通り『ソーマ・ファミリア』が良い方向へ向かい始めたことにエイナは驚いたが、ベル達が無事に戻って来て理想的な結末を迎えられたのだから喜ばしいことである。

 

 しかし、その際に団長であるザニスが暴走してそれをベルとスズが返り討ちにしたらしく、『ギルド本部の勧めで行ったのに襲われた』ことと『神ソーマを更正した報酬』に罪を『反乱したザニス一人のもの』としてホームの修理費をギルド持ちにしてもらいたいとリリにお願いされた。

 

 エイナはLV.2を二人掛かりとはいえ返り討ちにしたことに驚き、他の職員と現場に向かい実際に開いた穴を見てついつい乾いた笑いが出てきてまったものだ。

 

 ダンジョンに大穴を空けた時もそうだが温厚な二人でも『レスクヴァの里』の住人だと嫌でも実感させられてしまう。

 その話を上司に報告したところリリの提案は意外にもその場で許可が下りた。

 

 なんでも前回の緊急会議で【ソーマ・ファミリア】のホームが全壊するかもしれないと被害を予想していたらしく、ソーマがザニスから『恩恵』を剥奪していたことからソーマの更生も上手くいったと判断したようだ。

 

 不確定要素を減らせたのなら安い買い物だと上司は疲れた顔をしていた。【ソーマ・ファミリア】に対して少し過激に成り始めていた少数の【ファミリア】もスズが手を差し伸べた【ソーマ・ファミリア】に抗争を仕掛けるような真似はしないだろう。

 何とか事態が収拾したことにギルドはほっとしているのだ。

 

 【ソーマ・ファミリア】の問題も落ち着き始めた頃、今度は9階層で『ミノタウロスが魔石を食べていた』と冒険者から報告が入った。

 

 これは上層を探索している冒険者だけでなく、ミノタウロスが強化種になられたら上級冒険者もたまったものではない。

 目撃情報が立て続けに報告されたのでこれは信憑性のある情報だとギルド本部が慌ただしくなる中、遠征に出ていた【ロキ・ファミリア】の団員が『9階層で白猫と白兎が魔石を食らったらしいミノタウロスを瞬殺した』という情報を伝えにやってきたものだから、エイナを含めたその場に居合わせた者全ての人達のあいた口がふさがらなかった。

 

 『レスクヴァの里』が無茶苦茶なのは知っていたが、ベルとスズがLV.2のザニスに続いてミノタウロスまで軽々と倒すなんて思いもしなかった。

 

 ちょうどベル達のことを心配していたので安心はしたものの、アドバイザーとしての価値観が崩壊して無茶はしないようにと注意するべきか否かわからなくなってくる。

 それでもどんな強い冒険者でも少しの油断であっけなく死んでしまうのをよく知っているので、しっかり自分の価値観を貫き通して二人が慢心しないように注意してあげないといけないとエイナは気を持ち直す。

 

 ミノタウロスを簡単に倒してしまったとはいえ格上には違いないから、もしかしたら二人は世界最速記録である一年よりも早くにランクアップしてしまうかもしれない。

 一度痛い目をみた格上のミノタウロスにリベンジを果たしたのだから【経験値(エクセリア)】も多く貰ったはずだ。

 

 そんな異常な速度でランクアップなんて本来ありえないが『レスクヴァの里』の住人なら十分あり得る。

 

 今回『神会(デナトゥス)』で使われる冒険者の資料を担当する友人のミィシャに資料の準備を今のうちにしておいた方がいいと助言をしてあげるが、「二ヶ月も経たない冒険者がランクアップする訳ないよ。いくら弟君と妹ちゃんが可愛いからってひいき目に見すぎだよ~」とからかうように笑われてしまった。

 

 

 しかしそれから三日後である今日、案の定嬉しそうにやって来たベルからランクアップの報告をエイナと一緒に聞いたミィシャは整理中の資料を床に落とした。

 資料制作を手伝ってといった目で見つめてくるが助言してあげたのに聞かなかったミィシャが悪い。

 決して少しからかわれた仕返しだとかそういうのではないのだが、普段から真面目に仕事をしていれば余裕を持って冒険者達によるランクアップ報告のラストスパートに対応できた筈なのでここで甘やかすのは本人の為にならない。

 

 エイナは「私に頼ってばっかりいると上司に怒られるよ?」とミィシャに言ってベルとスズをいつもの個室に連れて行くのだった。

 

 

§

 

 

「大剣と大盾を持った不意打ちや戦いの駆け引きが出来るミノタウロス……ね。ベル君とスズちゃんは異常事態(イレギュラー)に遭遇しやすいのね。報告では二人がミノタウロスを瞬殺したって聞いているけど、3階層の時と同じで本当は相当無茶な戦い方したんでしょ?」

 

 ベルがランクアップするまでの冒険記録と二人が撃破したミノタウロスの詳細情報を聞いたエイナは溜息をついてそう言うと、ベルはビクリと体を強張らせてスズはごまかすようにはにかんだ。

 

 相当無理をしてミノタウロスを倒したのだろう。

 ミノタウロスを撃破してから日が空いたのもおそらく安静にしていなければならない状態だったのだろう。

 

 リリが居ればその場の状況をしっかり伝えてくれるのだが、残念ながら今日はソーマにファミリアの運営方法を教えなければならないようで今日は来ていない。

 

 ミノタウロスが大剣と大盾を持っていたことから意図的に作られた調教済みの強化種な可能性もあるが、そうだとしても周りの【ファミリア】を敵に回すかもしれない危険を犯してまで二人を襲う理由がない。

 

 人気急上昇に対する妬みだとしても、調教には時間が掛かり過ぎるし危険を犯してまでミノタウロスを調教するメリットはなく現実味に欠ける。

 狙われたとみるよりも何らかの事件に偶然巻き込まれたと思った方がいいかもしれない。

 

 それならばむやみに『調教された怪物(モンスター)だったかもしれない』と二人の不安を煽る様な真似はしない方がいいだろう。

 何よりもダンジョン内で怪物(モンスター)の調教が出来るとは思えない。

 このことは上司に報告して上層部の判断を待つしかないだろう。

 

 

「また逃げられない状況だったから仕方がないとはいえ本当に気を付けてね。死んじゃったら、なにも意味はないんだよ。次に格上と遭遇しても同じように勝てるとは限らないんだから、無茶は絶対にダメ。わかった?」

 

「はい。神様とも約束してますから。絶対に生きて帰ってくるって。生き残る為の無茶はしても死に急ぐ無茶なんてしません」

 

「僕も神様とスズを悲しませたりなんてしたくありません。その、みんなで帰って来られるようにこれからも頑張ります!」

 

 慢心はしていないようだ。

 ただ誰かを見捨てることが出来ない二人は全員で帰る選択肢以外存在しない。

 それは人として正しいことだがその優しさゆえに窮地に立たされることは多いだろう。

 

 良い人から死んでいくとよく言うがエイナはそんなこと信じたくない。

 今回のような人の武具を使い知恵のあるミノタウロスなんて異常事態(イレギュラー)はともかく、3階層のミノタウロスのように本来その階層に生息していない怪物(モンスター)と遭遇した時のことを考えてもっと下の階層の知識も与えてあげた方がいいだろう。

 でもまずは浮かれてやって来たベルが一番欲しかった言葉を言ってあげることにした。

 

「よろしい。少し遅れたけどベル君、LV.2到達おめでとう。頑張ったね」

「ありがとうございますっ!」

 ベルは本当に嬉しそうに笑い、少し照れくさいのか頬を赤めてそう言った。

 

 あまりの成長速度で駆け足気味になってしまったが、異常事態(イレギュラー)が起きなければ言いつけをしっかり守って頑張り続けてくれた教え子の成長がとても嬉しく感じる。

 

「スズちゃんもランクアップ出来たのかな?」

 

「私はまだですね。倒すサポートをしただけなので、【基本アビリティ】は沢山上がりましたけどランクアップにはいたらなかったみたいです」

「そっか。本来ならこんなに早くランクアップすることなんてないから焦らず頑張ってね。ベル君に追いつこうと無茶なことしたら駄目よ?」

 

「心配しなくても大丈夫ですよ、エイナさん。【基本アビリティ】を伸ばす目処も立ったのでもう少しだけこのレベルで頑張ってみようと思います」

 

「感心感心。それで今日はベル君のランクアップ報告だけでいいのかな? まだ私に用事があったりする?」

 

「えっと……実はちょっとエイナさんの意見を聞かせてもらいたいんですけど……」

 珍しくベルの方から質問があるらしい。

 いつもエイナとスズの話に着いていくのと学ぶのに必死で質問する余裕すらなかったベルから『意見を聞かせてもらいたい』なんて言ってくれる日が来るとは思いもよらず、そんな教え子の成長がとても嬉しかった。

 

 これはランクアップの報告より嬉しいかもしれない。

 エイナはあまりの嬉しさに「いいよ、なんでも聞いて」と満面の笑みを浮かべてしまう。

 

「その、【発展アビリティ】で『幸運』というアビリティが出てしまって。エイナさんは聞いたことありますか? 効果の心当たりとか……」

 

「それはまだギルドで確認されていないアビリティね。『幸運』っていうからにはドロップアイテムが出やすかったりするのかな? ごめんね、ちょっと私じゃ力になれそうにないかな」

 

「そんな! ドロップアイテムがよくなるって発想を頂けただけでも十分助かってますよ! エイナさんのアドバイスにはいつも助けられてますから!」

 

「そう言ってもらえると嬉しいかな。神ヘスティアは何て?」

 

「『加護』に近いものがあるんじゃないかっておっしゃってました。みんな僕にはこのアビリティが必要だって言うんですけど…効果が何なのかが結局わからなくて」

 

 確かにここ最近立て続けに異常事態(イレギュラー)に遭遇しているベルには必要な物だろう。

 お守り程度の能力だったとしてもエイナもぜひベルには持っておいてもらいたい【発展アビリティ】だ。

 

「聞いて来たということは、他に選択可能な【発展アビリティ】が出たんだよね。それは何が出たのかな?」

「他に出たのは『狩人』と『神秘』です」

「『耐異常 』は発現しなかったんだ。しっかり教えたことを覚えていてくれたみたいでちょっと嬉しいかな。パープル・モスの毒鱗粉を浴びて早めに発現する冒険者は多いから」

 

 それにしても『狩人』と『神秘』とはまた見事にレアアビリティだけを発現したものだとエイナは内心苦笑してしまう。

 一定期間で大量に怪物(モンスター)を倒すと発現する『狩人』はベルが頑張った証だからまだわかるが、どういった経緯で『幸運』と『神秘』が発現したのか気になるところだ。

 

 やはり『レスクヴァの里』の住人だから最初から『神秘』の【経験値(エクセリア)】が高い状態から始まったのだろうか。

 気にはなるが『レスクヴァの里』の記録は当てにならない。

 冒険者の質向上用に先ほど聞いたベルの冒険記録も間違いなく『あの里』だから仕方ないとお蔵入りすることだろう。

 

「ベル君自身はどれが一番気になるアビリティなのかな?」

 

「堅実に行くなら『狩人』がいいと思うんですけど、倒したことのある怪物(モンスター)相手に能力が上がるよりは緊急事態に対応したアビリティの方がいいのかなって。でも、『幸運』がどこまで効果があるかわかりませんし……」

 

「そっか。でもそれならもう答えは出てるんじゃないかな。ダンジョンの中では何が起こるかわからないから『運』という要素は大切だと思うの。ミノタウロスとの戦いで多分だけど、ベル君はそのことを実感してるんじゃないのかな。だから『幸運』なんてアビリティが発現したんだと思う。取りたいけど効果がわからなくて迷っているんだったら、ベル君が今まで歩んできた道と大切な人達の薦めを信じてあげればいいんじゃないかなって私は思うよ。例え本当は効果が薄かったとしても、きっと『幸運』というアビリティは君の心の支えになってくれると思うから」

 

 エイナがそう言ってあげると迷いが振り切れたのかベルは「ありがとうございます」と笑顔でお礼を言った。

 ランクアップしてもベルはまだまだ子供だ。

 こうやって答えが出ていても迷ってしまうことは度々あるだろう。

 

 自分の意見に誘導するような真似はしたくないが、やりたいことが決まっているのなら背中を押してあげるべきである。

 

 冒険者は本当に些細なことで命を落としてしまう。

 この『幸運』が見えないところでベル達の力になり、これからもこうやってベルとスズにお節介を焼き続けてあげたいなとエイナは心の底から思うのだった。

 

 

§

 

 

 リリが【ソーマ・ファミリア】の規律の立て直しで忙しいのに加えて、スズがリリに絶対安静を言い渡されていたのでエイナにランクアップを報告しに行くまでの3日間はダンジョンに潜っていない。

 

 スズの傷は【ロキ・ファミリア】のエルフが治療してくれたらしく、腹部の火傷痕以外は目立った外傷はなくなっていた。

 

 痕はまだ残っているもののこれくらいなら『恩恵』の効果でその内自然回復されるらしいが、失った血や体力までは回復魔法で元に戻っていない。

 ここ数日ダンジョンに潜らずに安静にしてなければならない理由はそこにあった。

 

 一昨日は絶対安静、昨日は早朝の特訓で中々手が回らなかった教会の修復作業をゆっくり進めて、開店前の『豊饒の女主人』の仕事を手伝い浮いた時間でスズがシルとリューに料理を教えているところを直に見てみると意外にもしっかり出来ていた。

 

 焦げたりはしているがレシピ通りに作ってくれている。

 少しスズが目を離すとすぐに『謎の物体X』や『炭化した何か』が誕生してしまうが、見張って教えている間は『食べ物になる』くらい進歩してくれたらしい。

 それで成長していると言えるのだから二人の絶望的な料理のセンスが見て取れた。

 

 スズが本調子に戻りつつある今日は『豊饒の女主人』でベルのランクアップを記念したパーティーを行う予定である。

 そこでサプライズとして謎の自信がついたシルが手料理を振る舞ってこないか少し心配だが、さすがに女将であるミアが止めてくれるだろう。

 

 今朝エイナに報告する前に通りで挨拶した時は「期待しててくださいね」とシルが張り切っていたがベルもスズもミアを信じている。

 

 

 そして現在、エイナに相談して『幸運』を選択したベルはヘスティアにランクアップしてもらい無事LV.2になったが力がみなぎってくる感じはしなかった。

 

 

「大体Sランク分くらい全能力が上がったのかな? ランクアップってすごいですね」

 

「器が向上したからね。ランクアップするとボク達神に一歩近づくから激的に能力が伸びるんだ。スズ君はそれを感じ取れるのかい?」

 

「『恩恵』に慣れるまで少し時間が掛かりましたけど、ベルがSSSまで成長してくれたおかげで大まかな目安を里の基準に当てはめることが出来ました。このまま私がランクアップしたらランクアップ丸々1つ分の能力差が出ちゃいそうですね。ランクアップすれば手軽に能力が急上昇しますが、こうなってくると【基本アビリティ】もやっぱり大切だって実感しちゃいます」

 

「本来S到達も難しいし、そもそもランクアップもお手軽じゃないんだけどね。ベル君に追いつこうなんて無茶はよしておくれよ?」

「エイナさんからも言われているんで大丈夫ですよ。みんなに心配掛けるような冒険はしないので安心してください」

 

 スズとヘスティアの会話から間違いなくベルは強くなった筈だ。

 しかしこれといった変化が感じられなくていまいち実感がわかない。

 

「えっと、例えば僕が10とするとスズはどれくらいの強さなの? 出来ればアイズさんの強さもこの数値に合わせて教えてくれると嬉しいんだけど……」

 

 だからベルは好奇心からそんなことを聞いてみた。

 自分が10だとしたらLV.1のスズは8で憧れのアイズは100くらいだろうと思いながらも【ステイタス】に表示されない『隠しぱらめーたー』を含めた強さをスズなら正確に答えてくれるんじゃないかと期待してしまう。

 

「ベルが10だと私は4だね。アイズさんは31くらいで、ランクアップごとに3ずつ確実に増えていくと仮定すると【基本アビリティ】は300毎に1加算されていく感じになるかな。S900でちょうどランクアップ1回分と同等の効果があると思うんだ。勿論300以下の変化でも能力は変化していくけど、ランクアップと比べるとこの数字が一番しっくりくると思うよ。普通の人はアビリティCやBでランクアップすると思うからLV2になりたての冒険者の平均は8かな? そうなると今のベルはLV.2冒険者の【基本アビリティ】オールCくらいの強さだね。3離れると能力差が圧倒的になってくるから【ヴィング・ソルガ】無しだと今の私はベルの足元にも及ばなくなっちゃったよ」

 

 スズの言葉通りだとしたら自分が予想よりもずっと強くなっていたことにベルは驚きを隠せずにいた。

 でもこの言い方からすると【ヴィング・ソルガ】有りだとまだスズは何とか出来るということだろう。

 

 ミノタウロスとの戦闘だってスズがいなければきっと勝てなかった。

 強くなったといってもそのことを忘れてはいけない。

 ベルはポケットに入れているスズの【ミョルニル・ソルガ】によって焼き切られたミノタウロスの角を握りしめる。

 

 魔石は粉々になりミノタウロスは灰に消えた時、スズが壊したミノタウロスの角はドロップアイテムとして残ったらしい。

 スズに無理をさせてしまったことを忘れない為にドロップアイテムを換金せずベルはこうしてポケットの中に入れて持ち歩いていた。

 

 一度目も二度目もスズがいなければ自分は死んでいたのだ。

 スズとスクハに無茶をさせないようにもっと強くならなければいけない。

 不意打ちされたとはいえ守るべきスズとリリに怪我を負わせてしまった。

 

 それを悔やんでも立ち止まることはしない。

 立ち止まりたくない。

 ベルの想いは輝きを失わずに今も真っ直ぐ歩み続けていた。

 

「ごめん、ベル君、スズ君。ボクはそろそろ出かけるよ。今日は『神会(デナトゥス)』なんだ。今日、ベル君の二つ名もおそらく決めることになる」

「あ、そっか。僕もLV.2になったんだ。それじゃあ僕もアイズさんと同じように二つ名を頂けるんですよね!? 『漆黒の堕天使(ダークエンジェル)』みたいなカッコいい名前を僕も頂けるんですよね!!」

 

 冒険中に調子に乗るのは良くないが、こんな時くらい素直に喜んでもバチは当たらないだろう。

 なんていっても二つ名はランクアップした冒険者に神々が与えてくれる名誉の証だ。

 何よりも神々が考える称号はどれも洗礼されていてカッコいいから男なら期待に胸を膨らませたくもなるものである。

 

 なのになぜかヘスティアはベルのことを生暖かい目で見つめていた。

 「下界の者(こどもたち)にはまだ早過ぎる」とため息までついている。

 何か失言でもしてしまったのだろうか。

 

「えっと、二つ名って『剣姫』とかですよね?」

「スズ君が言うように全部がそうならいいんだけどね。泥水をすすることになっても無難なものを勝ち取ってくるよ」

「いってらっしゃい神様。どんな二つ名でもベルはベルなのを忘れないでくださいね。それに男の子はそういうの好きだと思いますし……」

「わかってるけどボクが嫌なんだよっ。大切なベル君を神々の笑いものになんかさせてたまるかっ!」

 

 どうやらスズはヘスティアの言葉の意味がわかったらしい。

 偉大な神々の会議というイメージがベルにはあったのだが違うのだろうか。

 ヘスティアからは死地に赴く戦士のような気迫が感じられて、それをベルは汗を垂らしながら「いってらっしゃい」と見送ることしか出来なかった。

 

 




今回は変わりつつある事情と、この物語による【ステイタス】基準を少しだけ触れたお話でした。
少しだけ触れられた【ステイタス】基準は前に活動報告で書いたものなので、気になる方はそちらをご閲覧ください。
そしてこの物語だと1500以上の【基本アビリティ】があったベル君の最大【ステイタス】は11だったりします。LV2なりたての冒険者の最大【ステイタス】が7や8の中ベル君って奴は…。

LVが上がり経験を積んでくると大体相手の強さがわかるので、それをスズは数字として表現しました。ベル君の『隠しぱらめーたー』がすごいことを前面に出したかっただけなので、あまり数値に翻弄されないようお願いいたします。

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