【WARNING】【WARNING】【WARNING】【WARNING】
【注意】
無邪気って怖いです。
【WARNING】【WARNING】【WARNING】【WARNING】
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スズ・クラネル
力:h194⇒g203 耐久:g293⇒f308 器用:g231⇒255
敏捷:h192⇒196 魔力:b792⇒a806
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アイズとの特訓三日目。今日もベルはボロボロにされながらも学ぶことは多かった。
気絶する回数が日に日に増えている気がするが、しっかり【ステイタス】や技術面も目に見えて成長しているので指導をしてくれているアイズには感謝してもしきれない。
まだ少し痛む体を鞭打ってスズと一緒にリリとの待ち合わせ場所に向かう中「スズ……ベール……」と二人の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。
声のした方に目を向けると
スズはぱっと嬉しそうに小走りでナァーザに近づいて行きベルもその後について行った。
「ナァーザさん、おはようございます!」
「おはようございます。こんなところでどうしたんですか?」
「……おはよう……ちょっと二人を待ってたんだよ。ここにいれば、会えるかなって思って……」
いつもダンジョンに向かう時は西のメインストリート経由でバベルに向かっているので、ここで待っていれば二人に会えると思って待ち続けてくれたのだろう。ナァーザは懐から羊皮紙を取り出して差し出してきた。
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・
・内容:7階層に出現する『
ドロップアイテム『ブルー・パピリオの翅』を集めてもらいたい。
・期限:出来るだけ早く集めてもらえると嬉しい。
・報酬:労働に見合う量の
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「この
「ベル。ナァーザさんの
大体の冒険に必要なアイテムはリリが仕入れてくれているのだが、出会いや縁を大切にしているスズは自分のレッグホルスターにセットする
ミノタウロスの一件でアイズから貰った
【ヴィング・ソルガ】が
より良い新型
現金払い出来ないことを伝える時に不安そうに尻尾を垂れ下げている姿と、声とは裏腹に必死そうな表情をしているナァーザを見てしまっては手伝う以外の選択肢はなかった。
「ミアハ様にもいつもお世話になってるしね。僕もナァーザさんの力になってあげたいかな」
「ありがとう、スズ……ベル……」
ほっと安心してくれるナァーザの姿を見ることが出来ただけでも
ベルは同じことを思っているだろうスズと顔を見合わせて「ナァーザさんの為にも頑張らないとね」と笑顔を作った。
§
ナァーザから受けた
しかし信頼出来る知り合い以外からは怪しい仕事は引き受けないようにと注意されただけで勝手に
せいぜい「次からはリリを仲間外れにしないで、しっかり相談してから受けてくださいね」と軽くすねられてしまったくらいだ。
スズが【ミアハ・ファミリア】の
リリはテキパキと『
目指す先はダンジョン7階の
どの
そして実際に水晶が緑色に発光している光景を見たベルは
樹液をすするようにキラーアントとパープル・モスが結晶から液体を舐め、滴り落ちる液体で出来た泉でニードル・ラビットが喉を潤している。
普段襲ってくる
『まだブルー・パピリオは来てないみたいね。居たら他の
そんな気分はスクハの一言で台無しだった。
そういえば初めて会った日に、どうせダンジョンは再生するから腹いせに
スクハが不敵な笑みを浮かべながら襲ってくる
なんというかそこまで来ると
「ベル様。スクハ様。遊んでないで早くこっちに隠れてください」
「あ、今すーちゃん出てたんだ。すぐに行くね」
そこでリリはバックパックを下ろして地面と同じ色の大きな布を取り出した。
人の臭いに反応する
リリは本当に頭が回るし気が利く。
だが、なぜか大きな布は一枚しかなかった。
三人とバックパックをぎりぎり覆い隠せるくらいの大きさの大きな布が一枚だけだ。
人数分用意すれば窮屈な思いをしないで済むのにも関わらず一枚しか布がない。
リリにしては珍しいミスだなとベルはリリの顔色を窺って見ると、特に『しまった』といった具合の顔は一切しておらず逆にニコニコとご機嫌そうだ。
尻尾も揺れているから間違いなくご機嫌だ。
「では失礼しますね」
リリがバックパックとベルに布を被せてずいずいと体を密着させる。
リリがベルの右半身に抱き着きインナー越しに柔らかい体の感触が伝わって来てベルは一気に赤面した。
それに続いてスズもリリを見習うかのようにベルの左半身にぴったりと抱きつく。
体の感触はコートの下に着込んだプレートメイルのせいで感じないが、防具も何もつけていない太腿がベルの太腿を挟むような位置にあってベルはズボンの上からもその暖かさを感じてしまった。
さらに少しでも動けばほっぺとほっぺが触れ合うほどスズの顔は近い。
体をベルに預けながら上目づかいで見上げているリリの顔もものすごく近い。
小さな二人だが可愛い女の子にこうまで引っ付かれては不味い。
【
むしろ【
「ふ、二人とも。ちょ、ちょっと近いよっ」
「いえいえ。バックパックも包み切らないといけないので、布に余裕がないのです。ベル様、窮屈かもしれませんが
「ごめんね、ベル。プレートメイルの部分が痛かったら言ってね?」
二人とも平気そうだ。
異性として気にしているのはベルだけなのだろうか。
そう思うと妹分の二人によこしまな思いを抱くなんて生理現象だとしてもとんでもないことだと邪念が自然と消え去ってくれた。
胸の鼓動は高鳴るばかりだが静まってくれそうでベルはほっとする。
「んー、ちょっと剣と盾が邪魔かなぁ。りっちゃん、耐熱グローブと一緒にバックパックにしまってもらって大丈夫?」
「はい。少しの間リリがお預かりいたしますね」
が、柔らかい何かが触れた。
「っ!?」
「どうしたんですか、ベル様?」
「どうしたの、ベル?」
不思議そうな顔をしている二人の顔を見る限り、いや、可愛い二人がそんなことをする訳がないので絶対に故意ではないが、何かがベルの何かに触れたのだ。
「ナンデモナイデス」
「やっぱりプレートメイルが痛かった? これも脱いだ方がいい?」
「危ないから脱がないで」
主にベルの生理現象が危ない。
安心して体を預けている相手が自分に欲情していると知ったら二人は何て思うだろうか。
生理現象だからと言ってこの年の子に通用するだろうか。
そもそもソレが何なのか理解しているかも怪しいほど二人は幼い。
リリがパルゥムなことはベルの頭にはいつもながらなかったが、少なくともベルにとって二人は大切な妹分であり守るべき大切な人だ。
ソレが何なのかを理解していなくて気づかれなかったとしても、ただの生理現象だったとしても純情な二人をよこしまな目で見るなんてあってはならないことだ。
ベルは無駄に真面目な倫理観で気持ちを静めようとする。
右腕を挟んでいるリリの柔らかい胸の感触に『静まれ、僕の右腕』と訳のわからない単語が天から受信されるのもお構いなしにただただ気持ちを落ち着かせることに努めた。
「ベル、本当に大丈夫?」
スズが少しベルが辛くない位置に移動しようとするが、リリも一緒にいるのと布が三人入るには少し小さくて
その移動に手間取る度にスズの太腿がベルの太腿を刺激し、スズの膝が刺激してはいけないところを刺激した。
それを武器や防具のパーツにでも引っかかっているとでも思ったのか、ゆっくりと膝の位置を動かして器用にも無自覚のまま刺激を与えて来る。
「スズ様、どうかなされましたか?」
「えっと、ベルが楽な位置に移動しようと思ったんだけど、鎧の腰当のところに膝が引っかかっちゃったのかな。でも、正面に装甲はなかったと思うし……鞘がずれちゃったのかも」
「……スズ様、あまり触ら……動かないであげてください。その、下手にいじるとベル様が余計に苦しい思いをされると思うので……」
リリに察せられた。
少し目を逸らされたがすぐに笑顔を作ってくれる。
その気遣いが逆にざっくりとベルの心を抉り取った。
発光してないのと、リリが理解があるだけマシだと思わなければならないがこれは恥ずかし過ぎる。
さらに真っ赤になるベルにリリはくすくすと笑みをこぼし、全くわかっていないスズが首を傾げていた。
「えっと、苦しいなら言ってくれないと……どうしよう……。手でずらした方がいいのかな?」
「スズ様はこれでいてワザとでないところが恐ろしいところですね。安心してくださいベル様。ここまでいじられては仕方がないことだとリリはしっかり理解しています。ですからリリはベル様を見捨てたりなんてしませんよ、ええ。むしろ小さい子にも……いえいえ、健全であることに少しほっとしましたから。叩かれないと反応しなかったらリリはベル様の将来が心配でしかたなくなるところでした」
リリはスクハと同じく生暖かい言葉をくれて、しかも変な心配までされてしまった。
別に叩かれたくて特訓をしに行っている訳ではないのにものすごい誤解をされている。
『
しかし、天はベルを見放さなかった。
リリにバレた時点で見放されているかもしれないが、少なくとも話題を一転させてくれた。
ブルー・パピリオの群れが早くも
後は安全の為にブルー・パピリオの群れが食事を終えて
動くスズの膝に加えてつっかえている原因を探ろうとゆっくりと動く柔らかい手の感触がブルー・パピリオの登場でピタリと止まり、生理現象が解き放たれるという最悪の事態だけは免れてベルはホッとした。
しかし、予想外なことにベルよりもいっぱいいっぱいな子がいたようだ。
『【雷よ。吹き荒れろ。我は武器を振るう者なり。第八の唄ヴィング・ソルガ】』
スクハが金色の輝きを身にまとい勢いよく布から飛び出し、素手でブルー・パピリオの翅を捥ぎ取った。
そして【ソルガ】で迫り来る
たった3分間だけ暴れに暴れた結果、まるで爆破採掘でも行ったかのように地面や壁が抉れ、
だがここは食糧庫。
次から次へと
が、スクハに到達できる頃にはクールタイムである18秒が経過していた。
その間に
その3分間に渡る大暴れを5回ほど繰り返しているとついに
というよりも逃げ出し始めた。
3分ごとに【雷よ敵を貫け。解き放て雷。第二の唄ソルガ】と特大の【ソルガ】をぶちかましていたせいで、
この
倒した
明らかに赤字である。
しかし一番の問題はそこではない。
あまりに唐突過ぎるスクハの行動にベルとリリは頭が着いていけていなかったが、スクハが本来なら絶対にやらないことをしたのだ。
「スクハ様! スズ様と一緒の体なのになんて無茶をっ!!」
呆然と見ていることしか出来なかったリリが冷静さを取り戻して、バックパックを背負い直すのも時間が掛かり過ぎると判断したのか、すぐ取り出せる場所にしまっておいた緊急時用の水の入ったボトルを大量に抱きかかえて
水のボトルを抱きかかえた時点でリリの意図を察したベルもバックパックを抱えてスクハの元に駆け寄る。
先に辿り着いたリリが【ヴィング・ソルガ】の使い過ぎで体から湯気を出しているスクハに水を掛けていき体を冷やし、ボトルが全部空になったところでベルが次のボトルとタオルをリリに渡す。
スクハの体から発する熱量は無理して効果時間を伸ばした時よりも明らかに高い。
例え体を密着させるのが恥ずかしかったとしてもスズのことを最優先に考えているスクハがこんな無理をする筈はなかった。
「スクハ様! 確かに意地悪な状況を作ってしまいましたが、今のはスクハ様らしくなかったですよ!?」
リリのその声にスクハが人形のように感情のない表情で目を向ける。
それに怯まずにリリは「聞いてるんですか!?」と額の汗を濡れタオルで拭うとそこでようやくスクハが眉を少し顰めた。
『ごめんなさい、リリルカ。少しはスッキリするかと思ったのだけれど……そんなことはなかったわ。だけど、この程度なら『スズ・クラネル』に後遺症もないし、私が表に出ている限り『スズ・クラネル』が辛い思いをすることはないのだから、そう怒鳴らないでもらえないかしら』
「僕達はスクハのことも心配してるの知ってるでしょ!? スクハが苦しいなら同じじゃないかっ!」
『そうだったわね。心配を掛けてごめんなさい。それとも、この場合は心配してくれてありがとうと言うべきなのかしら?』
少し申し訳なさそうにスクハがそんなことを言った。
「スクハ様、この大惨事を招いた本人にお礼を言われても反応に困ります。そんなにベル様と肌を合わせるのが嫌だったんですか?」
『ええ、そうね。私は『スズ・クラネル』と感覚を共有しているのだから、あんな恥ずかしい行為を行うように『スズ・クラネル』を誘導するのは止めてもらえないかしら。『スズ・クラネル』が平気でも、私は恥ずかしいのだからあまり意地悪をしないで頂戴。取り乱し過ぎて思わず暴れまわってしまったわ』
スクハが少し頬を赤らめて目を反らした。
我を忘れるほど恥ずかしかったのだろうか。
あの時ベルの大切なところをスズが気づかないまま触りに触っていたので、恥ずかしさが爆発して大暴れしてしまうかもしれないとは思うのだが、スクハがスズの体を気遣わずに暴れるとはとても思えない。
それともベルとリリが心配しているだけで、そこまでスクハは放熱現象を危険視していないのだろうか。
『床に液体は残っているし、これだけあれば
「そうですね。リリもまさかスクハ様があそこまで取り乱してしまうとは予想外でした。今後は気をつけます」
『そうして頂戴』
手分けして
回収出来た『ブルー・パピリオの翅』は8枚。精神経済共に無事にとは言い辛いが初の
スズはこれでいて本当にわかっていません。しかし知識が全くない訳ではないので、どういう状態なのかを教えてあげると一章Epilogue『プレゼントのされ方』のように一気にボッと顔が真っ赤になります。
そして沢山謝ってくれることでしょう(笑)