『少女』という異分子がまぎれたことで過程は大きく変わってしまいましたがご了承ください。
ハーメルン処女作品なのでお粗末でありますが、もしも楽しんでいただけたなら幸いです。
プロローグ01『眷族』
下界に降り友の『ヘファイストス』の世話になっていた『ヘスティア』だが眷族も作らず働きもせず甘えていたのがいけなかったのだろう。
ついにヘスティアはヘファイストスに「働け」と追い出されてしまったのだ。
ヘスティアだって好きでごろごろとしていた訳ではなかった。
処女神であり家庭の象徴であるヘスティアは眷族である自分の子供達との暮らしに憧れてはいた。ただ中々【ヘスティア・ファミリア】に入りたいと自分から申し出てくれる子が現れず、それを大好きな本を読みながら待っているだけじゃないかと反論したところヘファイストスが激怒したのだ。
「何も追い出すことないじゃないか。ボク達は神友だろ!? ボクだって好きで一人でいる訳じゃないんだぞ!!」
寝床としておんぼろな教会を用意もしてくれたしバイト先も紹介してもらっているのでなんだかんだで面倒は見てもらってはいる。
それでも一人で暮らしていくのは心細すぎる。寂しすぎる。ある程度人間の不便な生活は望んでいたが、それは家族達と一緒に過ごす生活であって一人寂しく余生を送ることでは断じてない。
だからヘスティアは必至で自分の眷族になってくれる子供達を探していた。商店街のおじさんやおばさんはもちろんのこと、これから冒険者達になろうとしている人にも声をかけてみた。
それでも無名な【ファミリア】は嫌だ。入りたい【ファミリア】が既にある。ついてきてくれた子もいたが住まいの教会を見るなり断られる。などなどの理由から頑張ってみたものの今だ眷族ができずにいた。
何度もヘファイストスに泣きついたが、それでも頑張りが足りないと言われるばかりで次第にお金すら貸してくれなくなってしまった。
一体何がいけないのだろう。ボクだって神様なのに何で誰も私の子供になってくれないのだろう。そう悩みながら街を歩いている時だった。
「もっと強くなってから来るんだな!」
そんな怒鳴り声の方向に目を向けると白髪と赤目が特徴的な、頼りなさそうな小さな少年と【少女】がまるで捨てられた小動物のようにその場に座り込んでいた。
次は大丈夫だよ。と強がりな笑顔で自分より小柄な少女の頭を撫でる少年。
そんな寄り添う二人の姿を見て、神の力を禁じられているとはいえ孤児院の象徴でもあるヘスティアは見ただけで理解できた。
――――――この子達は行く当てのない孤児なのだと――――――
助けてあげなきゃと思った。
今までは自分の為に眷族を求めていた。
初めて相手の為に自分がこの子達を守ってあげたいと思ったのだ。
「やあお二人さん。ファミリア探しているのかい?」
そう笑顔で接してあげるとおそらく兄妹であろう二人はきょとんとした後、少女の方は本当に幸せそうに笑顔を返してくれた。
手を差し伸べてあげると少年も状況を理解できたらしく、その手を取り立ち上がり笑顔になってくれた。
その時初めてヘスティアは眷族が欲しいあまり今まで相手のことを考えてあげられてなかったことに気づけた。
自分はこうやって困っている子供達を支えてあげる神様なのにそのことを忘れていた。
これでは友達のヘファイストスに怒られても仕方がないなと内心苦笑してしまう。
歩きながら自己紹介をしていると少年方が『ベル・クラネル』。
少女の方は『スズ』と答えた。
二人は冒険者になる為に外からこの街に訪れたようだ。
「ベル君とスズ君だね。良い響きの名前じゃないか。ボクの名前はヘスティア。ここでは無名で君達が最初の家族だけど神界ではそれなりに有名な神様なんだぜ!」
子供達を安心させるためにえっへんと弱音を見せずに胸を張って自己紹介をすませる。
ヘスティアは最初の子供に『恩恵』を与える時は大好きな本がたくさんあるお気に入りの書店でやろうと決めていたが、目の前の子供達は【家族】を求めている。
なら家族になるなら家で家族になろう。
だからヘスティアは二人の手を引いてホームである廃墟同然の教会に案内してあげた。
幻滅されるかもしれないと不安で二人の表情を横目でちらちら確認してみると二人とも驚いた顔はしているものの嫌そうな顔はしていない。
「大きな教会ですね! さすが神様!!」
「今日からここが私達の家になるんですよね。路頭に迷うところだった私達を向かえ入れてくれてありがとうございます」
ベルの尊敬の眼差しと本当に嬉しいのか無垢な笑顔を浮かべるスズの顔が目に入って、それがたまらなく嬉しくてヘスティアは自然と口元が緩む。
崩れかけた教会の地下室。
いつも使っている生活感あふれる小さな部屋。
そこが【ヘスティア・ファミリア】の拠点だった。
「そうさ。ここがボク達三人の家だ! まだまだ始まったばかりで貧乏だけど遠慮なんていらないよ! さあさあみんなの我が家にただいまだ!! おじゃましますなんて言っちゃぁダメだぞ?」
先に部屋のドアをくぐってベルとスズを受け入れるように両手を広げて待ってあげる。
「ありがとうございます! ただいま神様!!」
「ただいま神様。今日からお世話になりますね」
さすがに男性のベルは胸に飛び込んできてはくれなかったが、スズはヘスティアに飛びついてギュッと抱きついてきてくれた。
それが愛おしくて抱きっかえして頭を撫でてあげると本当に嬉しそうな顔で笑ってくれる甘えん坊な子だ。
「ベル君も遠慮せず抱き着いてもいいんだぜ?」
「そそそそ、そんな神様に大それたことできませんよ!? 僕はこれでも男なんですよ!?」
「はっはっはっは、ベル君も純情で可愛いなぁ。さっきも言った通り貧乏で大したおもてなしは出来ないけど、まずはなにはなくともボク達が家族になった記念日だ! 歓迎パーティーとしゃれこもうじゃないか!」
本当に二人の子供が愛おしくてたまらない。まだ始まったばかりだけど下界に来て本当によかったとヘスティアは思えた。
おもてなしもたった二つのジャガ丸くんをみんなで分け合って水を出すことしかできなくて申し訳なく感じてしまったが、二人からは不満の色は一切見えずみんなで分かち合うことに喜びを感じている。
貧乏なことを謝ると「神様が裕福な暮らしができるよう僕達頑張りますから安心して下さい!」と言ってくれた。
良い子達すぎて本当に愛おしすぎる。
それと同時にこんないい子達を邪険に扱った【ファミリア】達は何様なんだと腹立たしく感じてしまう。
すると先ほどまで幸せそうだったスズから笑顔が消えてしまいベルもそのことに気付いて「どうしたの?」と心配されている。
「何でもないよベル。神様の為にも一所懸命頑張ろうね!」
スズはそう笑顔を作りベルはそれを見て安心したようだが、ヘスティアにはそれが無理して心配掛けないように笑顔を作っているようにしか見えなかった。
一体なぜ突然気落ちしてしまったのかを考えてみるとすぐにヘスティアはやってしまったと後悔した。
「勘違いしないでおくれスズ君! ボクが機嫌が悪くなったのは君達のような良い子を邪険に扱って断った他の【ファミリア】達さ! ボクは君達のこと大好きだし頼りにしてるんだぜ」
だから慌ててフォローを入れて笑顔で親指を立てて笑顔を作り安心させてあげる。
この子達はひ弱な見た目から【ファミリア】への加入を断れ続けていたのだ。おそらくスズは『頑張りますから安心して下さい!』とベルが言った直後にヘスティアの表情に一瞬曇ったのを感じとって自分達は『必要とされてない』『期待されてない』と思われているのではないかと不安になってしまったのだろう。
スズの作り笑いに気付けなかったベルは人の感情にうとそうだが、スズの方は人の感情に敏感なようだ。
感情に敏感な分、真っ直ぐ向き合って正直な気持ちを伝えてあげる分には問題ないのか「早とちりしてしまってすみません神様。ひ弱な私ですが頑張りますね」とまた幸せそうな笑顔に戻ってくれた。
そのやり取りが何だったのかベルは終始分からなかったようだがスズもヘスティアも仲良く話をしているのを見て「よかった」とよう分からないまま安心している。
無事楽しい食事をしながら神と冒険者の関係や『
ダンジョンについての詳しいことやルールについてはギルドに申請書を出した時に専属のアドバイザーもつくように頼んで担当になったアドバイザーに任せればいいだろう。
「さて、楽しいパーティーの締めはお待ちかねの『恩恵』を君達に与えてあげるよ!」
その言葉にベルは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。
冒険者を目指していたのだから当然の反応だ。
スズの方も満面の笑みを浮かべて幸せそうに「ありがとうございます!」と大喜びしているようだがどこか違和感を感じる。
ベルは【ステイタス】のことやどんな【スキル】や【魔法】が発現するのかなと『これから』のことに想いを馳せているのに対し、スズはそういった夢を膨らませている様子は眷族になれる『今』を満足している様子だ。
スズは兄のベルにくっついてきただけで冒険には興味ないのだろうか。
もしそうならしっかり話し合って一緒にバイトをしたり家事をしたりしてベルの帰りを待つ方針の方がいいのではないだろうか。
見たところスズの年齢は大きく見積もっても十歳程度だ。冒険者に年齢は関係ないと言われているとはいえ今更ながら心配になってくる。
まだ幼いのだから本人がしっかり冒険者になりたいという気持ちを持っていても『神の恩恵』を与えた結果を見てから三人で今後のことを相談した方がいいだろう。
まず最初は本人の希望やスズの薦めもあってベルから『神の恩恵』を与えることになった。
指に針を刺して血を垂らす様子を見てスズが「痛くないですか。大丈夫ですか」と心配してくれたから全然大丈夫だとぐっとまた親指をたてて笑顔を作ってあげる。
そのやり取りを聞いてベルまで心配し出すものだからこの二人、冒険者になるには優しすぎる子達だ。でもそれがまた愛おしい。
もっとも『恩恵』を与えている最中に聞いたベルの冒険者になりたがった理由、『ダンジョンに運命的な出会いを求めている』ことと『ハーレムは最高だ』という亡き祖父の迷言を力説するベルの姿には思わず苦笑してしまったが。
それでも自宅でこんな何でもないことを話しながら【
冒険者の歴史を刻む冒険譚とは少し違う雰囲気になってしまったが、兄妹達との暮らしを毎日更新させていく日記のような『眷族物語』も悪くない。
最初に眷族になってくれる子達がこの子達で本当に自分は幸せ者だなとヘスティアは心の底から思えた。
分割したのにこの見にくさである(ゴフ
勢いで書いたのもありますが、見やすくコンパクトにくどくないよう表現するのって難しいと感じた今日この頃でした。
ひとまとまりの文を改行せず書ききるよりも、もっと改行した方が見やすいのでしょうか。
自己満足で書き始めた作品であるもののいざ投稿してみるとやはり気になってくるものですね。
超がつくほど未熟な私ですが少しでも楽しく読んでもらえるように頑張っていきたいと思います。