Fate/EXTRA 太陽狐と月兎   作:淡雪エリヤ

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超久々の投稿、内容は限りが良いところで締めたかったので短いです


3-1

 

「お目覚めですか?」

 

「あれ……あぁ……はい」

 

瞳を開くと、眼前にキャスターの顔が見えた。

正確に言うと、ライルとキャスターの顔の間に2つの山のような物も見えている。

寝覚めのライルからすると理解の及ばない光景であり、服の上からではあるが二つの膨らみは思春期には刺激の強い光景であった。

そして絶景であった。

 

「え、えぇと……すみません、また運ばせてしまって」

 

「いえ、ご主人様。無理して、そのような言葉遣いをしなくても大丈夫ですよ」

 

「あっ……そうか、今更、か……って! そうじゃなくて、すみません!」

 

ライルは急いで、枕……キャスターの膝から頭をどかして起き上がった。

 

「もう大丈夫でございますか?」

 

「だ、大丈夫、大丈夫」

 

「まだ寝ていても大丈夫ですよ、夜は明けても、まだ早朝ですから」

 

そう言って、キャスターは自分の膝を叩いた。

 

「いや、それじゃキャスターが休めない……それよりもキャスターこそ休んだ方がいい」

 

膝枕をしながら、ライルの様子をずっと看ていたのだ。

その態勢で休められるかと言われれば答えは否だろう。

 

「ご心配ありがとうございます。ですが私はサーヴァントですから、睡眠を取る必要はありません」

 

「そ、そうか……と、と言うか何故膝枕?」

 

何故、キャスターが自分に膝枕をしているのか。

少しずつ頭が働いてきたライルは、その疑問に辿り着いた。

確か自分は、ランサーとユーリ・シュライツマンが消えていくのを見届けて……その後に気を失ったのだ。

そして目が覚めて今に至る。

 

「何故…ですか……。そうですね、何となくそうしたかったから……ですね。ご迷惑でしたか?」

 

「い、いや迷惑じゃないけど……むしろ悪くないと言うか、心臓に悪いと言うか……」

 

「ふふっ……」

 

歯切れの悪いライルの様子を見て、キャスターはイタズラが成功した子供のように笑みをこぼした。

 

(笑った……)

 

その顔は夢で見た少女と少しだけ重なって見えた。

 

「キャスター」

 

ライルは落ち着いた声色で話す。

 

「あ、すみませんでした。つい……」

 

ライルの突然の声、笑われた事にライルが怒ったと勘違いしたのかキャスターは謝罪の言葉を口にする

 

「ん? あぁ……いや、そうじゃなくて。キャスター、前にも言ったかもしれないけど、もう俺に遠慮はしないで欲しい」

 

今みたいに遠慮なく笑っていて欲しい。

自分はキャスターのお陰で吹っ切れたのだ、それなのにキャスターが窮屈で堅苦しいままだと不公平だ。

 

「この前みたいに聞きたい事、言いたい事があったら遠慮なく言ってくれ。答えられるか分からないけど……応えようと思うから、だから……」

 

そうは言っても、夢の中でも落ち着いた物腰だったキャスターが、そう簡単に態度を変えるとは思えなかった……

 

 

 

 

「ご主人様、ご主人様。きつねうどんがあるのに、お稲荷さんが無いのはどうかと思いません?」

 

「あ、あぁ、うん。そうだね……」

 

「そもそも、あんな劇物をメニューに追加するくらいなら、稲荷寿司を置くべきだってんですよ、抗議しましょう!」

 

「あはは……」

 

キャスターの言う劇物とは、あの見るからに辛いだけでは済まなそうな麻婆豆腐の事だろう。

その赤黒さはランサーの槍を髣髴とさせ……

 

(いや、そんな事よりも……まさか本当に態度が変わるとは)

 

遠慮しないで、とは言ったが予想に反して態度が激変しているキャスター。

一回戦の途中からは静かだったので忘れていたが、今思えば契約したての頃に片鱗は少しあったような気がする。

 

「いっそ材料だけ買って自分の手で握ってみるのは」

 

そう提案したライルの言葉に最初に反応したのはキャスターではなかった。

 

「へぇ……前から思ってたけど、やっぱり貴方の知識って妙に日本に傾いてるわよね」

 

ライルとキャスターの会話に乱入してきたのは遠坂凛だった。

 

「またお前か、毎回初日に声をかけてくるけど……何? 俺の事心配でもしてくれてんの?」

 

「まさか、厄介そうな相手が消えていてくれてないか確認してるだけよ」

 

「ツンデレ?」

 

「は?」

 

「いや、冗談だから。そんな声出すなよ……」

 

キレ気味な遠坂にライルはたじろぎながら言う。

 

「で、何か用か?」

 

「別に、前に見た時と違って随分とスッキリしてるから気になっただけ」

 

「まあね。吹っ切れたと言うのには語弊があるが、覚悟を決めたって感じかな……」

 

「そう。いっそ前のままなら楽に戦えそうだったのに。まぁ用は特にないから。それじゃ」

 

そう言って、遠坂はライルの前から去っていった。

本当に用はなかったらしい。

 

 

 

 

「うわぁ、真っ白だね、アリス」

 

「そうね、真っ白だわ、ありす」

 

次の対戦相手、その確認をしに行こうと廊下を歩いていたら、目の前に現れたのは双子の少女だった。

 

「お目々は真っ赤よ、ありす」

 

「そうねお目々は真っ赤! まるでウサギさんみたい」

 

「えっと……」

 

双子と称したが、それが本当の双子ではない事くらいライルは察していた。

片方はサーヴァントだ。

マスターの姿に化けているのか、マスターがアバターを弄ってサーヴァントの姿を真似しているのか。

はたまた偶然姿が同じなのか、服の色が白と黒で分かれているので見分けはつくが……

 

「ウサギさん、ウサギさん、わたしたちと遊びましょ!」

 

「待ってありす、今回はあっちのお姉ちゃんが遊び相手みたいよ」

 

そう言って黒い服の少女が指差した先に居たのは岸波さんだった。

 

「そうだったわアリス、あっちのお姉ちゃんと遊びましょ!」

 

そう言って、興味の対象をライルから岸波白野に移したのか、あっさりとライルの前から去っていった。

今の様子を見る感じだと、おそらく岸波さんの次の対戦相手が今の少女達なのだろう。

まるで無邪気な子供だったが。

しかし、この戦いを二回も勝利しているのだ、侮っていい相手ではない。

まぁ心配は要らないだろう。

岸波さんが今この場にいると言う事は、あの主従を倒したと言う事だ。

ならば、覚悟ば決まっている筈。

人の事を言えた義理ではないけど、自分も既に覚悟は決まっている。

さて、さっそく次の対戦相手を確認しよう。

そう思い、対戦表が表示されている掲示板を覗く。

そこに記されていた名前は……

 

『柳洞一成』

 

ライルにとってこれが、予選にて行われた虚構であり同時に本物でもあった青春との最後の訣別となる。






出来栄えに関しては、納得がいってないんですが、拘って何も出さないでエタるよりかは取り敢えず投稿しようと思った次第です

別作品も制作進めてたりゲームにハマったりで次回更新も凄い時間かかるかもですが

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