私は好きです。
総督府は、暗朝の沈黙に縛られている。
『天津風』の部屋で『時津風』が堂々と寝ている事実を、本人にベットから蹴落とされた時に気付いた。
「……合鍵奪うの忘れてた」
これ以上の来客は御免なので部屋の鍵は再度閉めた。
『天津風』は真っ白い部屋用のYシャツを着ているだけで、あとは下着姿も同然だったので、『時津風』の占領する毛布に再度突入した。
うって変わって『時津風』は長袖長ズボンの寝間着を着ているのにも関わらず、毛布に包まっている。
力いっぱい毛布を引っ張ったが、包まっている彼女には勝てず、結局諦めてシーツを毛布代わりにして寝ることにした。
時間は三時、あと四時間と寝れない、その後は出撃待機で、出撃後は不眠が続く。
窓から差し込む鋭く透通った月光が、『天津風』の力ない手を照らす。
昔の事も、これからの事も、全て思い返し尽くしてしまった。
これ以上先の事を考える必要もない、前回のように出撃し、前回のように帰還する、ただそれだけだ。
でも、本当にそれだけ?
でもそれ以上考えられない、それ以上の状況が思い浮かばない。
怪我をする?傷を負う?帰れなくなる?沈む?死ぬ?
これ以上の最悪は想像がつかない。
私が居なくなって誰が悲しむだろうか、提督、『時津風』、『神通』、みんな。
でも何故か、漠然と死の恐怖が存在するだけで、死への拒絶は全く感情に浮かばなかった。
あるのはただ、自分に課せられた“任務”を果たせない事への後悔だけだった。
これが経験の浅さというものかと『天津風』は考える。
「あまつかじぇ……」
後ろから優しく毛布がかけられた。
「時津風?」
ベットの外側を見つめていた『天津風』は、声の主の方を振り返った。
『時津風』は頭まですっぽり毛布を被り、伸びた饅頭のような寝顔を覗かせている。
「起きてないの」
意識がある状態で毛布をかけてくれたなら礼を言うところだが、これが無意識なら誰に礼を言えばいいのか分からない。
すると、また無意識なのか『時津風』は右手を伸ばし『天津風』を毛布の内側へ寄せた。
寝息が聞こえるほどの近さで二人の顔は向き合った。
左向きに寝る『時津風』、うつ伏せで息を潜める『天津風』。
このまま顔を右に向けてしまえば、彼女の頬に触れてしまいそうで、息苦しさを耐えてずっとうつ伏せのままでこれ以上動くことが出来なかった。
左肩に乗ったままの彼女の腕、右肩に触れている彼女の胸。
確かに伝わってくる、彼女の温かさ、彼女の優しさ?、彼女の吐息、彼女の存在、彼女の命。
ひとつ違いの姉妹、こんなにも近く親しい存在はこの世界に二つと存在しない。
彼女こそ、自分よりも大切なモノ、失いたくないモノ。
そして悟った、彼女を、『時津風』を失う事こそが、自分の死よりもずっとずっと恐ろしい事だと。
そう考えると、『天津風』は彼女の方を向かずにはいられなかった。
そっと触れ合うお互いの頬、顎を引き辛うじて当たらない互いの唇、そして強く握られた彼女の左手。
息が荒れ脈が速くなり、顔に汗が滑るのが分かり、『天津風』はさっと目を閉じる。
「あまつかぜー……」
そっと彼女の唇が、頬に振れた。
「時津風……起きてたの……?」
目をパッと開けて『時津風』の顔を見つめた。
彼女は見たことも無いような目で『天津風』を見つめている。
慈しむ?愛おしむ?、何れに当てはまるかはわからないが、何故か悲しく見えてならなかった。
「そのまま来てくれればいいのに」
意地悪そうに『時津風』は微笑んだ。
「なっ……何よ、嫌よそんなの」
「ふひひっ、そんなに耳まで真っ赤なのに…?」
そう言うと彼女は静かに笑った。
ふう、と『時津風』は大きく深呼吸ししばらく息を殺していた。
「――――――私、妙に嫌な予感がする」
彼女はそれ以上言わず、肩を強く寄せた。
温もりと不安の中、『時津風』の涙が自分の頬を伝うのを感じた。
「時つ……」
それ以上言うと、余計な事まで考えそうで『天津風』はそれ以上喋らなかった、喋れなかった。
経験上、こういう悪い嫌な予感は当たる。
だが、今回は当たらないという、まったく“当てにならない”自身が『天津風』の中にある。
自分の時だけ、自分に限ってそうではないと思いたいのが人の性だ、そう分かっていても、そう考えるしかなかった、大丈夫と思うしかできなかった。
「……大丈夫よ、時津風」
昇る朝日を無視して人々は今だ眠りの中にいる。
今日は休日、七時から活動する者は多くは無い、だが我々は別だ。
小雨の中、第二水雷戦隊は全員点呼完了を合図に例の運用棟に道脚で向かう。
揃うはずの物資はもう七割港に揃っている、あとは船に積み込んだり、然るべき措置をするだけだ。
本日中に間違いなく、大海令の下、遅延されていた出撃命令が下される。
運用棟ではすでに、『神通』と『阿武隈』がブリーフィングを開始していた。
今回の艦隊編成上、一水戦二水戦は行動を最後まで共にする、一水戦が水雷戦隊のみで作戦主力の第二艦隊を編成し、二水戦が旗艦の所属する第二水雷戦隊のみで編成する。
出撃カタパルトには『阿武隈』の『神通』の意見を否定する声が響いていた。
隣のカタパルトでは、第一第二第三第四第五第七戦隊、簡単に言えば現在出撃可能な戦艦娘と重巡洋艦娘全員がすぐそこで出撃を今か今かと待っている、空母娘は艦載機の調達がまだ十分ではないのでいだ港に留まっていると考えられる。
火力だけなら、大型艦砲である46センチ砲九門、41センチ砲十六門、35,6センチ砲八十門に上り、対空砲百門以上、対空機銃千丁以上、戦闘機四百機以上、ここほど恐ろしい場所は無いくらいだ。
その上に通常艦艇は戦闘艦だけで百を軽く上回り、陸上兵力は十個師団、戦車一個師団規模が既にこの島に居ると聞く。
世界を滅ぼすぐらい軽くできそうな兵力だろう。
だが、それらの頂点に第二水雷戦隊は存在する。
二水戦の偵察成果でこれらの戦力の運用方針が決定づけられる。
軍艦旗が無数に翻る港を眺め、その実感をどうにか持とうと『天津風』は努力したが、どうやらそれは難しいようだ。
マストに掲げられた多数の信号旗は、近々の出港を示唆し、埠頭の移動式ハンマーヘッドクレーンは定位置に戻されている。
しかしそれらは、旧式艦艇の三本マストに吊るされたもので、お世辞にも頼もしいとは思えなかった。
せいぜい、対地攻撃ぐらいが適任で、対艦戦闘ともなると危うく、対空戦闘など以ての外だ。
まあやる仕事が違うのだから、そう危惧する必要はないだろう、海上でも私達が守ればそう危うくはないという感じだ。
「中央総督府より緊急入電です!」
運用棟に入電ベルが鳴り響いた。
タイプライターで刷られたばかりの電文を、電話番をしていた『鬼怒』がインクが付かないように一枚一枚をヒラヒラさせながら走ってきた。
「読み上げてください」
『神通』は振り返る、すると全員が『鬼怒』に注目した。
「ZⅡ作戦関連命令系統南方司令部イ、ロ号命令下達。イ号、物資搬入完了次第出撃命令、命令権を南方司令部司令官及び提督に委任。ロ号、第一航空戦隊欠番航空母艦赤城代艦として、本部直属第一航空戦隊所属航空母艦雲龍を配置。又、増加艦娘として本部直属第二航空戦隊葛城、笠置を明後日までに後方支援艦隊に配置す」
「まだ増強するの?」
『阿武隈』は愚痴っぽい口調で言い放った、何せ彼女は作戦主力と後方支援艦隊の仲立を担うからだ。
「階級が上の人に命令するのは気が引けますぅ……」
「立場上貴女が上です、臆することはありません」
綺麗さっぱり『神通』は切り捨てる。
遅れて、提督が最上階の作戦司令デッキから降りてきた。
「出撃は刻一刻を争う。三時間前に、督島仮設通信所に先遣哨戒隊からの救援信号が、隊長艦第四十六号哨戒艇から達された。今夜日付変更と同時に洋上補給を視野に入れた緊急出撃を慣行されたい」
先遣哨戒隊は、『天津風』達二水戦が攻略した『督』島近海を哨戒していた二等駆逐艦娘十隻を束ねたもので、名前の通り
哨戒に必要な戦力で構成されており、主兵装は12センチ砲と爆雷、そして電探や水中探信儀であり、防御以上の戦力は無い。
その哨戒隊からの救援要請なのだから、防御しきれない敵の出現が示唆される。
しかし、攻略済の海域に仮にも艦娘が対応できない程の深海棲艦の出現というのは疑問視すべきだろう。
しかも、『督』島は平時の通常艦艇の展開限界線の最外輪に位置すると同時に、第二物資集積地として設けられている。
さらに先遣哨戒隊は、作戦本隊出撃後に、予定航路上の重要地点であるダンピール海峡の哨戒にも当たるはずだった、これは大きな誤算であり、作戦に支障が出かねない。
そこで、本隊の出撃時期を早め、先遣哨戒隊の援護及び海域の深海棲艦の掃討を提督は考えたのだろう。
任務(タスク)は多くなるが、戦力は圧倒的であり、また寄り道するわけでない。
「相違はありません」
『神通』は五秒ほど悩んで回答した。
彼女の事だ、拒否する理由ではなく、どういった作戦行動が要求されるかを考えていたのだろう。
だが、本来彼女はこういった突発的な提案は嫌うタイプだが、絶対的な戦力と物量が、彼女の選択肢から拒絶という答えを消した。
「命は下されました、今夜、出撃です」
『神通』は今後の命令を指示すると、提督と共に後方支援艦隊とのブリーフィングに向かった。
皆は装備を一旦置いて、弾倉の作成に向かう。
作戦は既に始まっている、常に状況下にある設定で時程が崩され、全てが各人の権限義務行動になる。
弾薬は昨日『神通』が受領済みで、あとはメンバーそれぞれが受け取るだけだ。
外に出ることなく、この施設では弾薬を受け取ることが出来る。
普通、爆発物は同じ敷地内でも同じ屋内には無いが、この運用棟には厚さ30センチ強の鉄筋コンクリート壁倉庫が爆発物一時保管所として設けられている。
また、弾薬をこのように正式に受領する(普段は面倒なので省略する)のは、今回が大量に弾薬が必要とされる作戦であるから、もっと言えば、移動距離が1000キロ以上になる作戦では状態の良い弾薬が必要とされるからだ。
『阿武隈』が、一時保管場所の錠を開けると、厚い合板とコンクリートで作られた扉が開き、扉が開けられた事を知らせるブザーが鳴り響く。
慣れた手つきで、暗闇からブザー停止のレバーを探し出し、一番奥にあるライトのスイッチを入れた。
縦横高さ10メートルのコンクリートの打ちっぱなしの部屋には、換気口と吊るされた電球以外は見当たらない。
床に規則正しく並べられた弾薬箱の上には、合成乾燥剤が置かれ、部屋の端には新品の空弾倉がケースのまま置かれていた。
素早く弾薬箱をツルハシで抉じ開け、バケツリレーの要領で百発一箱の紙箱を運び出す。
全て外に並べると、扉を再び閉め神箱を破って開ける。
更に弾薬は紙箱に二十発ずつ梱包されていて、それを開けるとようやく実包が姿を現した。
とりあえず、最初は数は数えずに十発弾倉を一つずつ作っていく。
幾週か前に之と同じ境遇に立ち会った、今は戦う理由も少し分かった気がする。
死に向けて研ぎ澄まされる命は、恐ろしく感情に対し白状で、一切の干渉を許さない、だが隣に居る『時津風』を見て確かに心が振れるのが感じられた。
その時、未だに見つけられない疑問が、脳裏に確かに閊えているのが分かった。
それ以上分からず、ただ新しく弾倉を作っていった。
ある程度弾倉を作ると各人に弾倉が配分され、弾嚢に詰め込んでいく。
物資集積次第という事は、いつ命が下っても可笑しくない、そのために各港との無線と提督は睨み合っている。
下令の時刻が定まっていないというのは、自分がいつ死刑台に立つか分からない様な気分だ。
どこか高揚感に襲われ、興奮に駆られ、恐怖に包まれる。
外は一層騒がしくなり、埠頭から放たれた艨艟群が閉ざされた湾内で吼えている。
湾の外に浮かぶ島には、揚陸艇が躍り出て我先にと火砲の陸揚げを急く。
十二時を回り、有線の電話は啼き止めるを事を忘れ、無線通信は機材が音を上げた。
「提督」
『鬼怒』が一番端の集束通信機に提督を呼んだ、この通信機は全てのチャンネルと周波数を監視できる。
「これは、軍使用の全周波数への同時発信か」
どの通信機も同じ“応え”を吐き出している、もはや中身を見る必要はない。
「ええぇ、中身見ないの?」
吐き出された電文まとめた紙を手に『鬼怒』は去る提督を追いかけた。
「GOのサインが出たのなら、いつ出るかはここの決定権者の決めることだろう。それとも時間の指定があるのか?」
「……いえ」
確かに、『鬼怒』の持つ紙にはト連送が並んでいる。
「神通」
提督は『神通』を呼びつけた。
「あと何時間で出撃できる?外(ほか)の準備はあと一時間でできるそうだが」
「では、あと二時間後に」
一切の躊躇無く「神通」は答えた。
「そうか。君がそう言うならあとは君に任せよう。二時間後から君が前線指揮官だ、後は頼んだぞ」
「はい」
振り向いた『神通』は既に“いつもの眼”では無くなっていた。
場が凍り付くほどの殺気と威圧感は、流石百戦錬磨の巡洋艦、さらにその責務の重さで眼光に磨きが懸かったように思える。
「全員集合!」
『神通』が声を張り上げる、途端に駆逐隊が全員集まり、整列完了する。
改めて『神通』は全員の顔を眺め、比類なき実力と自信を皆から感じ取った。
「二時間後、我々は最長一週間の任務(タスク)に従事します。いつも通り、いつも通りに今出せる全力で臨んで下さい」
皆無言の敬礼で答えた。
二時間後、つまり正午ピッタリに先遣である一水戦が出撃する、出撃カタパルトの能力上、二水戦の出撃はさらにその二十分後になるだろう。
「各員、弾薬数の点検に当たりなさい!」
十六駆のチーフである『天津風』はいつも通り、戦闘出撃前の最終チェックを指示した。
弾の数、種類、もちろん錆や亀裂等の異常までも、全てここで省いておかなければならない、戦場での武器の故障はそのまま死に直結する、まして今回のような弾薬満載の状態では、信管の誤作動で自爆する可能性の無きにしも非ず、特に魚雷は念入りに面倒を見てやらないといけない。
三十分ほどで全ての第一陣艦娘が武器弾薬の最終チェックを終え、装具の装着を待つばかりとなった。
最後に陸の飲物をと、『鳳翔』が紅茶を入れてきた、勿論、提督のついでとの事。
いつもそうだが、これが最期と思い様々な飲料を飲ん出来たが、それぞれ普通で素っ気なさ過ぎると思っていた、特に今回は『天津風』にとってはそうだろう。
柄にもなく『神通』は受け皿を持って海際で丁寧に紅茶を飲んでいた。
「神通、少しよろしいですか?」
遠巻きに『天津風』は『神通』に話しかけた。
「まだ作戦は始まっていませんよ、普通に話してくれても良いのに」
この運用棟は展開時は海側は全て解放され、高さ1メートル半の高い手摺と柵が海への落下を妨げるのみだ。
その隔たれた海では、先ほどのト連送を皮切りに、タグボートが慌ただしく大型艦艇の世話に追われている。
「今朝、時津風が言ってました、嫌な予感がすると。いつもはそんなことを言わないから、どれほど信用できるかはわからないけど。神通、今回の作戦、どれくらいヤバいの?」
『神通』はゆっくりと受け皿にティーカップを置いて、落ち着いて語る。
「信用に足るかどうかは別として、時津風の予感、確かに敵中しています。何せ敵の本丸に乗りこむわけですから、二個水雷戦隊で」
いかにも冗談っぽく言ったが、『神通』は教官時代に自分たちに向けていた、試すような笑みを向けた、甚だ生半可な戦いにはなりそうに無いらしい。
「今回の戦い、激戦の経験が生きるでしょう。不利な戦況、絶体絶命、打開不可能な環境。それでも戦い続ける者が今回生き残ります、いつも言っていますが、この生き残る者に負傷者は含まれません。奔れなくなったら最後…」
「私には、その経験が足りないと思います」
「何を、今回経験すればいいんですよ?」
「そんな無茶な……」
『神通』は不敵な笑みを浮かべた、そう、正に“不敵”の笑みを。
「でも貴女は、私にはない貴重な経験があるようですね」
「本土でのことですか?」
「ええ、それは戦いには活きません、ハッキリとは言い切れませんが」
「活きないんですか…」
「でも、それは今後、もっと長い目で見ると必要とされるでしょう。私のような徒花には無い貴重な経験です」
「そんな……徒花だなんて」
こんなに話すのも珍しいと思ったが『天津風』は『神通』の話を掘り下げた。
「でも、神通さんは、もっと凄まじい経験をしてきたのだと知っています、それには敵いません」
「ええ、してきましたよ、自慢にもなりませんが。戦場を共にした方々を無くし、指揮官を変え、部下を変え。まだ姉妹は失ってはいませんが、そのうちこの三姉妹にも終焉が来るのだと覚悟はしています、まあ、その時一番最初に沈むのが自分かもしれませんが。このような経験はしない方が得ですよ、失ってやっと守るべきだったモノに気付く愚かさ、守れなかった浅はかさ、こんな経験は戦場で己が刃を鈍らせるだけです、生き残るためだけに戦場を駆ける、それ以上は贅沢です」
守るべきものが戦士を強くする、そんな話を本か何かで見たことがある、だが、それが通じるのは“ヒト”の世界だけ。
肉身、親子、親友、戦友、どれも長い間の触れ合いで生まれる代え難い関係、だがそのようなものは艦娘には無い、偶然同型艦として生を受け、偶然隣に居て、偶然同じ戦場で戦い、偶然隣で散っていく……。
だが、『天津風』にはそれだけで、それだけで何物にも代えがたい関係だった、どうして皆それに気づかないのか、『天津風』には不思議でたまらなかった。
「いいですか天津風、戦場では他人を助けても、他人に助けられても、“他者を生かそう、他者に生かされよう”などと思ってはなりません。もし足が折れたのならそこで浮砲台となり、腕が折れたら駆け回り的となりなさい、最後の最期まで戦う事を諦めてはいけません」
「つまり、戦えない者は、見捨てると言うんですか………?」
「残念ながら、私の選択肢には“それ”しかありません。そして“それ”が戦場において自らが生き残る最善の策です」
冷酷にも十一時の予鈴が鳴り響いた。
「さあ、出撃一時間前ですよ、戦列に戻って準備をしなさい」
「はい…」
彼女は何時もそう言っていた、だから今回答えが覆るなどとは期待していなかったが、これほどはっきり言い切るものかと、恐ろしく悲しく思った。
だが、今の『天津風』には痛いほど相応しい言葉かもしれない。
明けましておめでとうございます、今年もどうかご愛読の程よろしくお願いいたします。
投稿間隔がかなり空いてしまい、本当に申し訳ない限りです。
近々、設定などを纏めた章を一つ上げるつもりなので、ここがわからん!とか言うところがあったらご指摘いただけると掘り下げて解説させていただきます、若干今後のネタバレに成りかねないところは伏せたりはしますが、今後のストーリーに直結する大事な設定で、作中に出せていない裏話的な所もいっぱいあります、そこも含めて今後ひとつの章として投稿させていただきます。
22件のお気に入り登録、ご愛読ありがとうございます。
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