天(そら)別つ風   作:Ventisca

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『空母棲鬼』と『赤城』『加賀』の一騎打ちです。
『加賀』の武装は三段式甲板時代の主砲を流用しています、艦載機運用能力は艦これ一番ということもあって運用限度百機を想定しています。


第壱拾参章 死戦

 その白い姿は怪しく目立ち、紅い瞳は絶望を見据えるかのように透き通っている。

異様な艤装を従え、それに禍々しく腰掛ける、絹のような滑らかで長い髪をサイドテールにし、残りは後ろに流している。

おぞましいというよりどこか優麗な気配で、触れ難い荘厳な様子である。

まるでこの“二人”の合いの子であるようだ。

浮き立つ波風に身を任せ、『加賀』と『赤城』はただそこに対当している。

 「どうやら、私達とだけ戦いたいようね」

『加賀』はすぐそこにいる敵に言い放つ、無論通じるなどと考えてのことではない。

だが、意外にも『空母棲鬼』は反応を示した。

スラリと生えた腕から伸びる人差し指を真っ直ぐこちらに向け、こちらに囁くように問いかけた。

聞こえるような声、距離ではないが『加賀』にははっきりと分かった、その嘆くような哀れみの眼差しから投げ掛けられた言葉がはっきりと脳裏に浮かんだ。

 「・・・・・・オマエハ、ナニヲシテイタ・・・?」

耳元で直接言われたかのように、その言葉は脳ではっきり認識された。

全ての事を見透かしたような台詞に、『加賀』は一瞬体中から力が抜けた。

その言葉が指す事柄はあまりに明確だった、自分が手に掛けた者が窮地の時、本来と近くに居るべき存在、むしろそちらが彼女(空母棲鬼)にとっては本命だったのだろう、その時いなかった『加賀』にある意味嫌悪の念があるようだった。

だが、『加賀』としてもそれが一番悔やまれる所で、提督を殺された相手にすら不甲斐無く感じられるなど、『加賀』にとってこの台詞は最高の煽り言葉だった。

そして次に脳を突いた衝動は唯一つ。

 「稼働機、全機発艦」

力一杯、矢を引き、真っ直ぐ『空母棲鬼』に向けた。

 「加賀さん、いったん艦隊に戻らないと・・・」

『赤城』はその形相に危機感を覚えた。

 「・・・構いません。彼女はここで沈めます・・・!!」

怒りの感情に蝕まれている事は彼女自身が一番わかっていた、だがこの番えた矢を収める事がどうしてもできない。

番えた矢は怒りに震えている、目の前に仮にも最愛の人を殺した仇(てき)がいる、ここで引き下がるのは彼女のプライドが許さない。

 「加賀さん・・・・・・」

『赤城』にはもう自分では彼女をとめることが出来ないと悟った。

満足気に『空母棲鬼』は笑った、この時を待っていたかのように満ち足りた表情を浮かべている。

 「第一次、第二次、第三次攻撃隊、一斉発艦」

三秒経たずに十五機の『流星改』を発艦させた。

 「第一次、第二次爆撃隊、発艦」

間を空けずに十機の『彗星一二型甲』を発艦させる。

だた、無謀に突っ込ませるのではなく、上空で待機している烈風と同調させるために旋回して一時高度を上げる。

『空母棲鬼』も上空を円を描いて漂う攻撃機に指示を出す動作をした。

 「加賀艦載機隊、鏃の陣形で突撃。食い破りなさい!」

指示を出すと共に『加賀』は左舷に舵を切りいっぱいまで速度を上げる。

『赤城』は呼応するように逆方向に舵を切る。

 「・・・シズミナサイ」

上を向いた手が真下に降られると、スズメバチのように嘶き急降下してきた。

同時に『空母棲鬼』の艦載機の一部は、他の艦娘を近づけんと接近を憚るように攻撃を再開した。

いままで本気でなかったかのように、『空母棲鬼』の艦載機は正確無慈悲に爆弾を水平投下した、高角砲に撃ち落とされないように絶えず動き続け戦闘機以外では撃墜は望めない。

その眼光を『空母棲鬼』に向けた、体は四十五度以上傾けて最高速の30ノットを振り絞っている。

左右後ろに数十発の爆弾が炸裂する中、憤る感情とは裏腹に行動は冷静沈着そのものである。

『加賀』は一本だけオレンジ色の矢羽の矢を引き抜き、弓に番える準備をした。

そして、『加賀』は急制動をかけて間逆の方向へ舵を切りる、加速があまりに急なため、発動機は後方に水柱を立てた。

その水柱目掛け、爆弾が降り注ぐ。

ほぼ横に倒れる格好で、『加賀』は渾身の力で一本に矢を放つ。

 「“駿迅の電で震え上がらせろ”震電改、発艦」

こちらの奥の手はこのJ7W1a『震電改』である、逆に言えばこれくらいしかない。

『加賀』の提督が唯一彼女にできる事として彼女に託したもので、『加賀』自身としても奥の手として早々簡単に出す気は無かった。

しかもデルタカナード翼機で、試作状態なので一本五機を用意するのがあの提督でも精一杯だった。

零戦を凌駕する速度、攻撃力、上昇力の局地戦闘機として試作された戦闘機で、これを艦載機に改造したもので、今だ試作の域を出ない戦闘機だが、試作機故に性能は段違いだ。

オレンジ色の塗装がされた『震電改』は、曇天の空の下で目立つ事この上ないが、敵戦闘機は全く追いつけていない。

40ミリ機関砲四門の絶大な火力で、敵機は一瞬射線に入るだけで撃墜できる、だが数が少なく直援につけるのがやっとの数だ。

突入した攻撃隊はほぼ無傷で『空母棲鬼』の直前に躍り出た。

 「全弾投下(フルバースト)」

十五本の魚雷、十発の500キロ爆弾が彼女目掛けて投下された、前面の全角度だけでなく上方からの飽和攻撃で、避ける方向は後方しかない、だがそれももはや叶わない間合いだ。

しかし『空母棲鬼』は避ける素振りは愚か、たじろぎすらしない。

『加賀』は全弾命中か近接弾を確信した。

 「オロカナ・・・・・・」

だが、この時点で『空母棲鬼』は自分を目掛ける爆弾魚雷ではなく、それらを投下した航空機を睨んでいる。

10トン以上の炸薬が一斉に爆発し、衝撃波の輪が海上を伝う。

 「・・・しまった、攻撃隊退避!」

次の瞬間、爆煙と水柱を貫き、攻撃機に光の筋が奔った。

『空母棲鬼』は自分が被弾することと引き換えに、『加賀』の艦載機の中の攻撃機である『流星改』と『彗星一二型甲』だけを撃ち落とす。 

 「なんてこと・・・!!」

『赤城』も攻撃隊を放っていたが、まだ攻撃態勢に無かった、そして『赤城』から見えた光景は『加賀』の攻撃隊が全て同時に撃墜された瞬間だった。

 「攻撃機だけを・・・、やってくれるわね」

戦闘機が無くても無茶すれば攻撃はできるが、攻撃機が無ければ何の意味も無い、こちらが不利になるよう意図的に攻撃機だけを撃墜したのだ。

手数が少ないことはこちらからすれば直接戦力に影響するからだ、こちらの単体戦闘能力はそれほど高くない。

全てが限られたこちらからすれば、『空母棲鬼』はますます有利な条件になっていく、だが

 「私を、唯の空母と甘く見ないで」

『加賀』は回避行動を緩め、頭上に戦闘機を集め、群がる敵機を叩き落す用意を整えた。

 「主砲、徹甲弾装填、射撃用意」

両脇に抱えた20センチ連装砲二基四門は空母にしては強力で、時代錯誤の兵器だが遣い方次第では役立つ。

 「前方、射撃」

ほぼ水平射線で砲弾は『空母棲鬼』に直撃した、有効打であるのは確かだがダメージは小さい。

薬莢が左右に排出され、次弾装填が同時に終了した、だがこちらの手の内を明かした以上、それを使わせない攻撃をしてくる。

今度は高度からの水平爆撃が開始された、戦闘機を頭上からあまり遠方に離すわけにはいかないため、無視するしかない。

こちらはほぼ手を打ち尽した、ここからはこれらを使った腕の見せ所ということだ。

『空母棲鬼』はすでに魚雷を少なくとも五本、爆弾は近接で十発炸裂している、こうなれば沈むまで攻撃するまでだ。

ここで『加賀』は急回頭し、『空母棲鬼』に接近した、それに続き、上空の敵機も追随する。

 「距離500であのダメージなら・・・」

装填していた徹甲弾を捨て、三式弾を起爆1秒後にして装填した。

敵母艦に接近しすぎているので、上空からは機銃掃射も加わり、周りは水柱で真っ白な視界になっているが、合間に見える敵目掛け『加賀』は吶喊を敢行しようとしている。

もてる航海技術を全て用い、三式弾による接触射撃を敢行するつもりだ。

 「・・・・・・」

『空母棲鬼』はこの暴挙にも動じる素振りを見せない、だが前方へ高角砲を向けて迎撃の準備だけした、狙いを定めるような事はせず、門数に物を言わせ迎撃するつもりだろう、むしろ当てるつもりは無いのだろうか。

距離50メートルまで接近すると、母艦に接近し過ぎないように敵機は一時離れた、それと同時に前方から高角砲が一斉射された。

頬を掠めるほどの近接弾にも、『加賀』は瞬きすらせず接近を続けた、速度は上限一杯の30ノット強を出力している。

手を伸ばせば届く距離まで接近し、目線すら交わった、『加賀』は持てる殺意を全て『空母棲鬼』に向けた、『空母棲鬼』はただ目を閉じて6インチ砲を向けた。

『加賀』は通り過ぎ座間に撃つと見せかけ、通り過ぎた後すぐに百八十度無理矢理に回頭し、態勢を低くし高角砲砲弾が頭上を通過するのを確認してから態勢を立て直し、砲の仰角を合わせ真横に三式弾を四発撃った。

白燐と子弾の爆風に紛れ、そのまま再び距離を取る。

『空母棲鬼』が射線から離れると、両側面から敵の魚雷が放たれた。

針路を変えずそのまま魚雷群の中を突き抜ける、直撃しそうな魚雷は飛び越し、着水と同時に幾度と針路を変えた。

上空には『赤城』の艦載機も混入し、ようやく同等という感じになった。

かなり有効だった事が窺える、敵が形振り構わず攻撃してきているのが何よりの証拠だ、以前煙に巻かれる母艦はまだ反応が無い。

 「・・・!」

ここで『加賀』の感が冴え亘った、回避中にもかかわらず膝を曲げ低姿勢をとった。

爆煙を切り裂き、砲弾が飛来する、かなりの精度で狙っていていた、肩を掠め血を滲ませた。

気には留めなかったが今のは回避するのがギリギリだった、最低一発当たってもおかしくなかった。

掠めて傷をつける程の威力は、高角砲ではない、6インチ以上の砲でなければ航空母艦クラスを傷つけることは出来ない。

だが、それ以上攻撃は来ない、しかも、上空にいた敵機も手薄になっている。

 「しまった、赤城さん!!」

気がつくと、敵機は『赤城』の頭上に集結していた。

彼女は艦載機を全て出払っている、自身を守る艦載機はほぼ皆無だ。

『赤城』ほどの技量でも、艦載機が無ければ手の打ちようがない、降下し襲い掛かる敵機にあまりに無力だ。

 「よくも・・・・・・!」

持てる攻撃機を全て発艦させて、『空母棲鬼』の相手をさせた、その間に『加賀』は『赤城』のもとへ駆け寄る。

 「大丈夫ですか!?」

『赤城』は戦闘不能ではないが、近接弾が多く纏った着物は裂け、特に右腕は血が滴るほどに負傷している。

すぐに適当な布で止血し応急処置をとったが、これでは戦闘はできない。

 「私は大丈夫ですから、あなただけでも戦ってください…」

決まって『赤城』は損傷したとき大丈夫と答える、それが今では耐え難いほど心苦しい。

自分が感情に呑まれ、敵を沈める事を優先しすぎたばかりにこのようなことになってしまったからだ。

後方の味方は、今度は別の敵に絡まれている、さらに悪い事に他の敵部隊も集まってきた、これでは艦隊全滅だ。

下がるわけにも戦うわけにもいかない。

 「ここで赤城さんまで失うわけにはいきません。私はここにいます」

『加賀』は頭を横に振った。

前方の制空隊が突破され、止むを得ず『震電改』を迎撃させた、これで頭上はがら空きの状態になった。

状況は悪化する、何もしないわけにはいかない。

 「赤城さん、矢を」

『赤城』から全ての矢を受け取り、『加賀』は傷ついた彼女の前に立つ格好で弓を構えた。

迫り来るは今だ二百弱の敵機と砲撃、航空機はどうにかなるが砲弾まではどうにもならない、そこは運に頼るばかりだ。

 「さあ、いらっしゃい」

倒すなら厳しいが、守るなら多少は容易い、皮肉を込めて『空母棲鬼』に笑みを見せ付けた。

 「・・・・・・テッキチョクジョウ・・・キュウコウカ・・・!」

頭上ほぼ九十度の角度からいきなり敵急降下爆撃機が現れた。

『加賀』は迎撃用の矢を五本取り出し、真上に素早く放った。

黒い真鍮製の普通の矢型で、正規空母などの搭載数が多い艦娘が持っている迎撃用の矢は、さながら弓で撃つ対空砲で、自己を守る最終手段として開発された。

一本一本が重く、連射は慣れないと厳しいが、『加賀』はその技量に漏れなく三秒で五本を撃ち切った。

五本とも五本直撃したが、爆撃機は半分しか殺げなかった、あとは運だ。

高度800メートルで投下された爆弾は、その弾道は風やら空気の影響でフラフラとしていたが、危く直撃するほど正確だった。

よほど運が良くなければこんな事は無いと、少し息をはいたが、これが二度三度とある訳がない。

直撃弾も一発や二発なら耐える自信はあるが、それ以上は意識が持つかわからない。

 「しかたがありません、烈風第三分隊、第四分隊直上につけ」

前方で敵機の進行を妨害していた『烈風』二個分隊を呼び戻し、直援として頭上に留めた、こうすれば不意の状態でもある程度多重防御の姿勢が保てる。

『震電改』は今だ敵雷撃機を追い回して殲滅している、すでに二十機は落としているはずだ、手数の損耗は『空母棲鬼』のほうが多い、だが攻撃は激化している、追い込んでいるはずなのに攻撃が全く揺るがない。

続く攻撃で疲弊しているのはこちらのほうだ、このままではいずれ手の打ち所がなくなる。

ダメージが嵩んだはずの『空母棲鬼』はなぜか嘲笑するような表情を向けている。

そしてこちらにその手を振り下ろした、次は何が起こるかと身構えるようなことをわざとやっている。

今度は『加賀』は『彗星一二型甲』の矢を番えた、隙あらば攻撃機を放つつもりだが、それはすぐに止めになった。

 「そんな馬鹿な・・・・・・!」

後ろを見れば雷撃機、左舷も右舷も雷撃機、そして前方には今まさに魚雷を投下しようとしている雷撃機の編隊が接近していた。

これほどの敵機の接近に気付かない訳がないが、警戒していたのは『空母棲鬼』だけだった、他の敵艦からの敵機など気にする余裕すらなかった。

敵は意思疎通を執り、囲みこむように攻撃を仕掛けてきた、こちらの視野が狭くなっているのだから当然の戦術だろう。

『加賀』は投下された魚雷の雷跡が見えるものだけでも爆破しようと『烈風』に攻撃させた、三~四本は爆破できたがそれが限界だった。

次に出来る事は砲撃で友爆させることだ、前方に魚雷が居るであろう場所に闇雲に三式弾を打ち込んだ、砲弾の起爆の後に一~二本の友爆を確認した。

そして次は迎撃用の矢を水中に撃つことだ、残っている全ての矢を撃ち切り、やっと五本を爆破した。

だがそれでお終いだった。

残った魚雷が二人に襲い掛かり、命中せずとも近くで爆発した魚雷に友爆する。

その瞬間『赤城』は目を瞑る、負傷した腕を庇い屈んでできるだけ防御の姿勢をとった、それ以上の事は自分にはもう出来なかった、だが途端に『加賀』のことを気にかけた。

近くで凄まじい爆発を二回三回と数え、そこからは数える事ができなかった。

『加賀』はその間、ひたすら魚雷が『赤城』に直撃しないようにしていた。

前方からの魚雷は主砲の徹甲弾で破壊し、左右後方からは弓先で強引に弾き、それすら間に合わなければ両足の発動機で蹴飛ばしたり軌道を変えたりと、死力を尽した。

だが、数発自分の懐を通り抜け、『赤城』に直撃しそうな魚雷を横目で見送ってしまう、自分に当たるのは構わなかった。

全ての攻撃が終わると、いままで気にならなかった、と言うより認識されていなかった痛みが『加賀』を襲った。

無理な方向への射撃や、普段ならしないような弓の使い方、そのうえ自分を盾としていたのだから当然だ、自分の怪我はよく分からなかったが、立っていられるものではない。

 「加賀さん!!」

『赤城』が痛む右腕を庇いながら『加賀』を抱き上げた。

『加賀』はその場に倒れこそしなかったものの、跪き必死に痛みに耐えていた。

 「なんて無茶を・・・」

魚雷はほぼ全て『赤城』には直撃していない、だが『加賀』は唯では済んでいない。

左足は魚雷が直撃して発動機は粉々になり、酷く深い傷が入り血が川のように流れている、そのほかに上半身も酷い有様で破片によって布という布は切り刻まれ血が滲んでいる、だが意識はしっかりしている。

 「赤城さん、大丈夫ですか・・・?」

『赤城』は左腕だけで『加賀』を抱えていた、恐らく左腕は最悪骨折している、それでも必死に『加賀』を抱え上げていた。

だが『加賀』は両腕が無事なのを確認するとどうにか立ち上がろうとした。

 「もういいんです、加賀さん。もう私のためにこんな無茶をしないで下さい・・・!」

目一杯に涙を貯めて『加賀』の苦痛に歪む顔を見上げた。

 「ここで倒れたら赤城さんは沈んでしまいます。それは出来ません!」

右足に力をいれてどうにか立ち上がり、弓を構えた、敵機は以前盛んにこちらを攻撃する兆候を見せていて、戦闘機隊がどうにか抑えている状態だ。

『加賀』は一度目を瞑り、体の力を抜いた。

体の彼方此方が痛み、痛くないところが無いくらいだ。

しかし、倒れるわけにはいかない、自ら傷つきながらもその決意は揺らがない。

 「赤城さんのためにも、そして我が提督のためにも、ここで倒れるつもりはありません」

そして、真っ直ぐと立ち弓に矢を番えた、いつものように敵を鋭く見据えた。

もはや後悔は無い、ここで命を賭すなら本望だろう。

だが、今回は、今回ばかりは沈むわけにはいかない。

 「加賀さん・・・」

不安の眼差しを向ける『赤城』に、『加賀』は精一杯笑って見せた。

拳を握り、力の限り矢を引く、息をはき最後の艦載機の発艦準備を整えた、もはや後はない。

 「大丈夫です。無論“自分”との戦いに負けるわけにはいきません」

最後の艦載機は『彗星一二型甲』が五機、500キロ爆弾を搭載しているため敵の懐に打ち込めば一騎当千が狙える。

気付けば腕にも切り傷が走り、血が滴っている、足の怪我はもっと酷いが、これでは貧血で先に戦えなくなる、時間ともに無くなくなってきた。

怪我のせいで身動きは叶わない、ここからは単純に艦載機を操り、敵に命中させることを考えなければ先にこちらが戦闘不能になる。

 「あなたを残して沈むわけにはいきません。彗星、発艦!」




本回で『加賀』が使っている弓はカーボン製の強度の高いものです、実際のものをモデルにしてはいませんが、逆に木製の弓を持ってるほうが少しおかしいと思いましたのでこうしました。
迎撃用の矢ですが、長さの短い矢で対空砲のような使い方をします、この小説オリジナルのものです。
『加賀』の庇う行動や、直前での魚雷の防衛など、人としての艦娘を活かしています、普通の軍艦ではできないようなことをするのが彼女等ですからね。

今回立て続けに投稿しましたが、一時間ほどで閲覧数が2000を超えていてびっくりしました。
閲覧数や感想、評価のおかげで、皆様にこれまで読んでいただくに耐える作品を書くことが出来ました。
閲覧数2000人、とってもうれしいです!!

今後も、感想や評価、どしどしお願いします!

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