天(そら)別つ風   作:Ventisca

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今回また実装されていない艦娘が登場します。
『洲崎』は本来違う艦種ですが、この小説中では全て補給艦とさせていただきます。
容姿や服装は独断と偏見で勝手に創造させていただいております。


第壱拾弐章 対敵

「しっかりして、天津風!」

まず耳に入ってきたのは、自分を心配してくれている『時津風』の声だった。

虚ろな視線を上げると、上空には敵機が鳥の如く群れを成している。

 「っ・・・・・・」

踏み出し、態勢を立て直した。

目の前の光景にたじろぐ暇は無いと本能が体を動かす、息は荒れたまま全力で回頭する。

どれほどの時間しゃがみこんでいたのだろうか、突然目の前に敵が現れたように感じた。

一度目を閉じ、再び見上げる。

自分に殺到するそれを改めて敵と認識し、今一度引き金に力を込める。

ただ一線に標的を見据え、数十の中から標的の一つに砲弾を浴びせた。

 「くっ・・・!!」

しかし敵が多すぎる、ここにいる四隻では埒が明かないどころか、自分達の身を守れるかどうかである。

砲弾が無くなるとすぐに回避行動に入る、三秒とかからず二つの弾倉を押し込み、再び標的を見定める。

背後から三人の援護も得て、なんとか最前から下がることは出来たが、自分達では艦隊に帰る隙すら作れない、状況は一気に最悪になった。

 「十六駆より、上空援護機を要請します!」

『時津風』が『天津風』が戻ってきたのを確認すると本隊に連絡した。

 「“状況は把握しています、すでにそちらに向わせています。本隊もそちらに向います”」

『飛龍』が艦載機の収容に手をとられている『赤城』に代わって答える。

 「あと少しの辛抱よ、天津風」

互いに背中合わせに立ち、上空を睨む、数は百はくだらない、撃ち落とす事よりも全力で避けなければならない。

 「さあ、全弾避けるわよ、あんなのに当たるわけにはいかないわ」

『天津風』が意気込む、以前気持は落ち着かないが、今は生き延びる事を考えなくてはならない。

まず第一陣の急降下爆撃機が突っ込んでくる、こちらの進行コースを予測する事はしない、頭上で落せば近接弾でも有効な損害をこちらに与えられるからだ、こちらは闇雲に逃げ回るしかない。

四方に分かれ、共倒れを防ぐ、次に出来るだけ敵の妨害をする。

爆弾が空気を切り裂く音とともに目一杯横に舵を切り、全速力でその場から離れる、すると背後で凄まじい爆風が吹き荒び、体が浮くような感覚になる。

周りでも複数の爆弾が炸裂し、一帯が一気に灼熱に晒された、もしあれが直撃したら文字通り肉片だ。

一通りの爆撃が終わると上空からの機銃掃射が来る、そこまで体力を温存しておかなければ撃たれて行動不能になれば良い的になってしまう。

『天津風』は五個まで自分目掛けて投下された爆弾を数えたが、それ以降数えるのを諦めた、自分に急降下してくる敵機は後を絶たない、状況は悪くなる一方だ。

前に着弾した爆弾の水柱を切り裂き、耐えない爆撃が終わるのひたすら待った。

やがて爆弾の雨の止んだが、気は抜けない、すぐさま全員が無事であるのを確認して次の攻撃に備える。

だが、攻撃は来ない。

 「援護が来たの!?」

高空へ退去する敵機を尻目に、『天津風』は上空に見方の艦載機の姿を求めた。

だが、それも確認できない、辺りは静寂に落とされる。

 「どういうこと・・・・・・?」

『天津風』は速度を緩める、敵機は完全に視界から失せた。

速やかに四人は艦隊へ帰る針路を執った。

艦隊は先程より島に数十キロ接近しており、十六駆からも数十キロはなれている、早く合流しなければまた追い回される。

レシプロ音が聞こえ、ようやく心から安堵することが出来た。

 「“大丈夫ですか?”」

目視できる距離になると『神通』がすぐに安否を確認する。

 「ええ、問題ありません・・・」

 「“貴女達は後方に下がりなさい”」

『加賀』が後方へ下がるよう命令した。

忠告を聞かず進撃したのだからしょうがないが、少し様子が違う。

 「“弁解は必要ありません、後方で弾薬を補給しなさい”」

 「はい、すみません」

弾倉の半分がすでに空になっている、御察しはあり難い限りだが、面目ない気持で、潔く後方に下がる事にした。 

 「“無事で何よりです”」

すれ違い座間に『赤城』が気遣って声を掛けてくれた、顔を向けて微笑み答えるのが精一杯だった。

 「“洲崎、補給をお願いします”」

サ17武装船団が後方に駆逐隊に護衛され控えている、3キロほどしか離れていないが、補給艦娘自身も武装していて、ただの補給艦ではないため機動部隊と同行している。

分隊旗艦の『洲崎』が『赤城』の命令で前線の目と鼻の先まで補給に来てくれる。

『天津風』は空の弾倉をやっと捨てる事ができた、しかし明らかに気がかりな点があった。

途中で攻撃を止めた敵機はどうしたのか、そもそも目前に現れた百機以上の数はただの空母では一度に発艦はできない。

だが、それほどの能力がある敵深海棲艦がいるなら電探に写るはずだ。

何故かはわからないがそれらのおかげで無事に艦隊に帰投することが出来た。

やがて武装船団を護衛する第二十駆逐隊の駆逐艦娘が見え、船団の給兵艦娘達の様子も窺える。

選抜編成のサ17武装船団には九人の給兵艦娘が機動部隊直属で同行している、皆背丈は小さいが『天津風』より一回り年上になる。

撫子色の襟のセーラー服に丈の短い割烹着を着た彼女等が待ち遠しそうに待っていた。

 「おつかれさまです、駆逐隊さん」

大きなリュックサックを背負い、肩に高角砲を下げている彼女こそ、サ17武装船団分隊長の給兵艦娘『洲崎』だが、さっそく弾薬を背中のリュックから取り出している。

短めの髪だが、さらに取り回しのいいように前髪はピン二本で横に流している。

小柄な彼女だが、二十四箱の弾薬箱とその他諸々も装備している、自身も武装しているため装備はかなりの重量になるが、専門職のため問題ない。

 「どうも、いただくわ」

『天津風』は弾薬箱を一箱貰い、中の千発を三人に配った。

一航戦と二航戦はすでに半分の艦載機を出払い、戦闘機隊をのぞいてその全てが補給状態にある、第一線に立っている二水戦の疲弊も少なからず。

敵の部隊を三つ殲滅したが、まだ『彩』島には50キロ以上距離がある、輪形陣の中心には程遠い。

弾薬の補給を終え、『天津風』は水筒の水を飲み一息ついた。

全員が補給を終えるとすぐに前線にもどらなければならない、少しの間だったが気持が落ち着いた気がした、あとはこの先弾薬を節約しなければならないだろう。

 「十六駆補給完了、本隊に戻ります」

 「“了解しました”」

『赤城』が言った。

 「ありがとう」

 「いいえ、頑張って」

お礼を言い、『天津風』は艦隊に戻った。

前方の艦隊本隊の上空には戦闘機隊が円を描いて飛んでいる、日が高く昇り温度も上がってきた、これから少々きつくなるかもしれない。

 「神通、戦列にもどりました」

『天津風』は真っ先に『神通』のもとへ向った。

 「本当に大丈夫ですか?」

すぐ脇まで寄ってくると『神通』が声をかける。

 「ええ」

 「慣れるものではありませんが、どのような場所でもたじろいではいけません。貴女にはまだ無茶ですがまず自分と仲間の命を最優先に考えなさい」

彼女もあの惨状を報告で聞いたのか、幾多の戦場を見た彼女に想像は容易だっただろうが、『天津風』が見たもの以上に酷いものはそうないだろう。

 「今回は私が静止を振り切ったのもあります、以後気をつけます」

 「敵機を飛ばした空母か何か見ませんでしたか?」

『天津風』も現場近辺で発見できなかったが、偵察機の捜索が空振りだったのか、当事者である『天津風』に質問してきた。

 「いいえ、見ていません。でも規模は大きかったです」

 「おかしいですね・・・」

不審なことが多いのが戦場だが、特別気に掛かる事象だ。

これから先のことを考えると背後に回り込まれることは考えたくもない、そのためにも現在捕捉している敵は殲滅する必要がある。

依然として艦隊は前進しているが、艦載機回収のために一航戦の二人が先頭に立つ格好になっており、両脇を二水戦が固めている。

偵察機隊もこれまで散々に飛行しているため機体が磨耗しているだろう、もっともここまでくると遠距離偵察がどこまで役に立つか分からない。

 「一先ず、貴方達は左翼の警戒に当たりなさい。くれぐれも無理をしないよう」

 「了解」

気にかかることばかりだが、何より献身隊を救えなかったのが悔やまれる、そもそも救うことすら叶わないような航路を執らされていたのだから一概に力不足とは言えないが、誰一人として救うことが出来ず、骸の回収すらできなかったのだから無念極まりない。

最古参の英雄も、最強を謳う敵の航空戦力には無力だった、だが彼女等が賭したのなら囮の効果があるはずだろう。

もしくは、逆にこちらの手を読まれて攻勢に出られる可能性もある。

改めて『天津風』はヘッドセットを頭にかけて、対潜の警戒にあたる、空は十分に警戒されているうえに、水中の脅威に対して航空機はあまり有効ではない。

いままで聞いた事のない音がソナーに測定(トレース)された、しかもそれらは重なって聞こえ、不気味に接近してくる。

 「左舷より魚雷接近!」

『天津風』はある意味最も良いタイミングでその方向を警戒していたため発見できたが、そうでなかった場合は恐ろしい事になる。

ともかくより精密に魚雷を計測しなければならない。

艦隊はすでに回避行動の初期動作を開始しているが、これからの魚雷の本数や針路で行動を変えなけばならない。

艦隊中心までまだ距離はあるが、到達までかかって一分無い。

 「距離2000、方位25、数12、一方向に集中しています」

 「“全艦目視で回避行動、二水戦は対潜戦闘用意”」

『赤城』が艦隊を増速させ、魚雷の回避行動を大まかに指示する。

だが『時津風』はさらに耳障りな音を測定した。

 「魚雷多数接近、距離1000!!」

さらに魚雷の接近が報告された。

魚雷による飽和攻撃に晒された、しかも距離もバラバラで別方向からの攻撃だからさらにたちが悪い。

雷跡は目の前まで迫ってきている、本数は同じく十六本だが、これは放射状に発射されている。

本隊まで依然距離はあるが、こちらは回避しなくてはならない。

魚雷の間隔が広く見える、回避は用意だがこれが艦隊に突っ込むとなると万が一当たるかもしれない。

艦隊は一時大きく間隔をとり不意の回避行動に備える。

続い距離2000メートルから発射された魚雷だが、先頭の一航戦と二水戦の間を通るような形で接近してきている。

近距離から発射された魚雷は難なく回避できたが、まだ十六本接近してきている。

 「再び魚雷多数感知、接近、数16、距離2000!」

またもや魚雷が感知された、深海棲艦の姿が水上に見えないとなると、艦隊は潜水艦に完全に捕捉されているようだ。

敵の潜水艦自体はもっと遠くにいるのだろうが、その距離では有効打を与える事はできない、なにか他にねらいがあるはずだ。

第二波の魚雷は一航戦が前進することによって回避された、だが今度がそれを読んだかのように一航戦目掛けて第三波の魚雷が突進していく。

前方を40ノットで進んでいく魚雷が僅かに見える、大型で射程の長い敵潜水艦のものに間違いない、全弾回避したら敵が逃げ果せないうちに報復攻撃を行わなければならない。

発射点まで真っ直ぐ水中を貫く雷跡を睨んだ、『天津風』は爆雷は装備していないが、後方の駆逐隊が専門的に装備している、少々厄介だが殲滅戦ゆえ致し方ない。

一航戦は回避のためにさらに前進し、距離は1キロ以上開いた、その背後方を『神通』が魚雷の警戒をしている。

 「魚雷再び同地点から四本、距離2000」

魚雷の本数が一気に減少した、敵は離脱を始めたようで、おそらく殿が放ったものだろう、毛頭当てるつもりもないものだが油断ならない。

『天津風』は最後に発射された魚雷から正確に敵の位置を割り出そうとしている、だが真の狙いはまたもや我々の攻撃ではない気がしていた。

最後の魚雷は的外れに艦隊の最前部と最後部を掠めていった、大事をとって一航戦はさらに前進し、上空援護機を増やす対策を採った。

 「しまった、一航戦が・・・!」

『神通』が一航戦に呼びかけた。

 「赤城、加賀、今すぐ後退してください!」

上空から機を見たように急降下爆撃機の編隊が姿を現した。

 「間に合わない!」

『神通』の予想は見事的中していたが、敵の策の中にすでに堕ちていた。

 「全員回避行動!」

右手を大きく横に振り『神通』は全員に回避を促す、だが狙いは二水戦や二航戦ではない。

爆撃機は一航戦と二水戦との間の墓穴ともいえる1キロ強の間隔をさらに開けるべく何も無い海に第一次攻撃を加える。

 「“構いません、そちらで指示を下してください”」

全く慌てる様子もなく『加賀』は臨機応変に指示を出す、爆撃の水柱に隠れてもはや一航戦の姿は確認できない。

第二波は、あからさまにこちらを狙って爆撃機が降下してきた、対空砲が雨霰と撃ち上げられられ、敵も虫のように撃ち落とされているが、敵は攻撃を止めない。

前方では『烈風』が一方的に攻撃を終えた爆撃機を撃ち堕している。

だが、何百という敵機からすればそのような損害は無いに等しいだろう。

しかし、この敵機の数、異様なまでに多い、空を覆いつくさんばかりの怪しく白い機体、ただの敵機ではない。

 「くそっ、キリがないわ!!」

『天津風』は特に照準を定めないまま空に撃ち上げ、敵機の接近自体を拒んでいる。

『時津風』の電探は敵機の影でほとんど役に立たず、そもそも適当に撃っても当たりそうな調子だ。

約百機の攻撃隊をやっと退けたが、艦隊はバラバラになり互いの距離は300メートル以上離れてしまった。

空は空中炸裂弾の煙幕で覆われ、黒い雲が当たりに垂れ込め視界は水平線上以外無い。

『時津風』は遠方の光景に絶句した。

 「前方5000に、敵機、数400―――」

『飛龍』は何も言わず矢を番える。

 「“全員引き続き対空戦闘、この程度私達の敵じゃないわ”」

『蒼龍』が激励した、無論諦めるなど尚早だが、こんな箆棒な数は想定すらできない。

 「“全員一度集合しなさい、そのままでは各個撃破されてしまいます”」

 「行くわよ」

『時津風』に声をかけすぐに『神通』の方へ向う。

『時津風』は絶望的な観測結果を遣す電探を見るのを止めた、敵機は恐らく第二波から五波の攻撃隊で一気に畳み掛けるつもりだ。

だが、これらの攻撃隊は一航戦の二人に中途半端な攻撃しかしていない、また何らかの意図があるのだろう。

弾倉を落し新しいものを押し込む、三式弾の残りは少ない、これからはさらに節約しなければならないが、対して敵の数が圧制の数である。

互いの距離を50メートルまで詰めて、死角を補い合う格好で前進する。

 「いいですか。必ず殲滅です、それ以上もそれ以下も認められません」

『神通』は息すら切れていない、だがその視線は苦難を見定めている。

第一陣の攻撃隊が降下するのを見計らって見越し射撃を敢行した。

何機か仕留めたが、それでもまだ一割以下で、弾倉一個で三機落すのがやっとな状況だ。

攻撃態勢に入った敵機がいると、すかさず二航戦の戦闘機隊が上から押さえつけるように掃射を加える。

敵機の白と赤黒い輪郭が見えるようになると今度は三式弾を水平射して、正確な攻撃を妨げ撃墜する。

これでやっと五割減らす事ができた、上空援護機がいるだけで大分楽に戦えるが、前方に孤立させられた一航戦が気がかりだ。

四散させられるような攻撃なら、恐らくこの策略は読めたが、単純且つ前方への分割という注意の集中する方向への誘導が我々の予防を出し抜いた。

だが孤立させた所で彼女等は困らない、最強の航空戦隊が二倍や三倍の敵機で沈むなど考えられない。

つまり、前方には孤立した二人を沈める“手段”があるはずだ、それも、とっておきの。

 「左から敵雷撃機接近です!」

すぐ横の『雪風』が叫んだ、敵機は2000メートル先を低空で雷撃態勢に入っている。

全員が敵雷撃機の方へ砲弾を浴びせる、だが低空の敵機は存外に撃ち落としにくい。

やっと半分の五機を叩き落したが、間に合わず五本の魚雷がこちらに放たれた。

全て間隔が20メートルしかなく、幅100メートルの壁となって迫ってくる、このままだと隊列中央の『神通』が魚雷の間隔に捕らわれてしまう。

 「四人は前後に回避しなさい」

自分の事は二の次に『神通』は十六駆に回避指示を出した、反論の余地など無い。

『雪風』『初風』は加速、『時津風』と『天津風』は爪先を真横に向けて急制動をかけて減速した。

迫る魚雷を前に『神通』はただそれを凝視している、間隔は水中の波の影響で狭くなっている。

あと一瞬で命中というところで『神通』はただ軽くジャンプした、普通海上航行中にジャンプしたら着地のときに必ずと言って良いほど横転してしまうが、『神通』は何食わぬ顔で着水した。

艦でない我々だからこそできるシンプルな芸当だが、戦場でやれば命取りになりかねない経験がなせる技だ。

嘆賞する暇も無く素早く対空戦闘に戻る。

いくら撃墜しても、攻撃を回避しても切がない気がしてきた。

もうゆうに百機は撃墜されているはずだ。

とうの昔に検討はついている、これはただの空母部隊の規模じゃない、これだけの艦載機を常に上空に留める艦載機運用能力は敵の正規空母ヲ級は持ち合わせていない。

不意に敵機が一時上空に上がって行った、対水上電探はその時から水上の点を示している。

 「単艦、この点は何?」

『時津風』は目を疑う、単艦でこの規模の航空機を操るなど、不可能な芸当だ。

ただ一隻を除いて。 

 「・・・結構なご登場ね」

『天津風』が引きつったような笑みを浮かべて見せた。

 「“本命のお出ましよ”」

『加賀』は目視で見える距離にいる、きっとそれは恐ろしくおぞましい姿をしているのだろうと『天津風』は想像する。

 「馬鹿な、彼女はこの輪形陣の中心にいるはず。敵の中枢がこんな所に…!」

こんなに驚いた表情をするのは『時津風』も初めてだろうが、当然だ。

本来、深窓に守られている敵の旗艦、それも深海棲艦の三柱艦の一人(一隻)がおめおめと出てくるなどありえない。

だがそれこそが盲点だった、円に中心はあるがそこに肝心な“点”があるとは限らない。

最も強力な艦を中心に据え置くという固定概念が招いた単直な策略だが、それを憶測する方法はあまりに少ない。

眼前に確かに存在する『空母棲鬼』、暗雲の如く蠢く敵機を従えて、決定的な一撃を加えるべく姿を現した。

そして、一航戦を孤立させた狙いは、ただ単に各個撃破が目的ではない、彼女(空母棲鬼)の意思が関わっている。

彼女(空母棲鬼)はここで因縁を果すつもりだ、それもまるで一騎打ちを望んでいたかのように。

彼女達は今、ここに対当する。




次号遅れてすいませんでした。
先月にありました16日からの熊本地震に被災しまして投稿が遅れた次第です。

今後、2章分は『加賀』にスポットを当てて書くので、しばらく主人公の『天津風』は登場しません。

お気に入り登録15件、及び閲覧ありがとうございます!!
無事に閲覧数2000を迎えることができそうです、これからもどうかよろしくです!

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