リアルではもう神皇編が後半戦ですね。
今回色々初めての試みで、こんなに遅くなるとは作者自身も猛省しております。
それと、描写がくどいせいで長くなってしまいました。
すまない…。書き方に困り投稿が超絶遅くなって本当にすまない…。
「リューマン・ケーニッヒで攻撃!太陽神剣と合体で受けろトリプルシンボルのダメージをォッ!!」
「やだちょとSYレならんしょ…」
二連勝…! 私もデッキもかなり良い調子になってる。パワーが上がったからか、押し切れる状況が作りやすい。引いて破壊してアルティメットの耐性に頼ってシンボルを押し付ける。確実に強くなれている!
「……ふふふ」
「凛々何その気味悪い笑いは」
「気味悪くない。調子が良いからだよ」
「そう…? 調子いいってならまぁ…」
少しした後、深緒と羽月含め四人でショップに集まり早苗に経過報告。きっと少しは強くなれたことに誉め1に対してお叱り5辺り飛んでくるかと構えていたが……
「………」
逆に表情は晴れず難しい顔をされ黙られてしまった。
確かにまだあいつに敵うか分からないけど、そんな真剣になって考えこむ程か。何が不満だってのさ。
「……凛々、バトルしなさい」
「は?」
「今の状態を確かめるにはこれが手っ取り早いわ」
「…分かった。望むとこ」
「あー!いたいたいましたぁ〜♪」
「ろ……っととと!?し、詩乃?!」
お互いデッキを出して対戦しようとしたところ突然の乱入者、詩乃が背後から抱き着いて来たため危うくテーブルに顔面をぶつけそうになった。アンブッシュはやめろアンブッシュは! それと背中に当たるものでメンタルをバラバラに引き裂こうとするのは間接的に犯罪だからやめろ!
「あっちのショップに行ったら今日は来てないって聞いてぇ、こっちのショップにいるんじゃないかって言われたんで来ちゃいましたぁ♪ 捜しましたよ〜♪」
「わわわかっ、わかった、わかったからこれ以上抱き着くのはやめて…」
「い〜じゃないですか〜。知らない仲じゃないんですし〜」
「うわっ、詩乃さん大胆!」
「あれ凛々が男子だったら夢のようなシチュだよね」
「………」
「そしてこっちの早苗さんは不機嫌MAXだ!」
「……それより梔黄さん、捜していたとは?凛々に何か用があったんじゃないの?」
「ああそうでした♪ 実は渡したいものがあってですねぇ…」
やっと離れてくれた…。
んで、空いてた他所の椅子を引っ張ってきて座った後、こほんと小さく咳ばらいした。
「奮闘する凛々さんのために、これをプレゼントしたいと思います!」
「プレゼント?」
「はい♪ どうぞ受け取ってくださいね♪」
詩乃から手渡されたのは大量のカード。しかもどれも光ってる…。
「これは…」
「デッキがパワー不足って言ってましたから、余ってた強いのを差し上げます♪」
「《ジェネラル・ドラゴン》に、《砲天使カノン》!?」
「こっちは《魔星機神ロキ》に《次代機獣ブリザ・ライガ》まであるよ…」
「……《蜂王フォン・ニード》に《極覇龍アルティメット・ヤマト》、《アルティメット・ドライアン》まで。しかも3枚ずつとは…」
三人が驚くカードばかりらしく、一部どのデッキに1枚は挿しておくと活躍し、取引…売買も高額なものらしい。
「先人は言ってました。“力こそパワー”、と!」
「…そいつ馬鹿だから名を残したんじゃ」
名…迷言を残した某はいいとして、こんなに貰っていいのだろうか。確かに強いカードは欲しいところだけど、さすがに貰いすぎじゃないかと思う。
「凛々さんは“強くなりたい”のでしょう? “どんな形であれ”、ね」
「……それは」
「ならいいじゃないですかぁ♪遠慮せずど〜ぞ♪」
……気掛かりな部分はあるけど、強くなれるのなら有り難く頂こう。さて、じゃあ軽く組み直してみよう。深緒も羽月も早苗、詩乃もいるから、アドバイスも貰える。更に強力になれば、あいつの鼻っ柱を砕いてやれる。
「……梔黄さん、ちょっと」
「は〜い。詩乃って呼んでくださいよ〜♪」
すると、不機嫌な早苗が詩乃を連れてショップの隅へ行ってしまった。…まぁ、掴み合いの喧嘩にならなければ大丈夫、か?
▼ ▼ ▼
「あなたが凛々を唆したのね」
「聞こえが悪いですねぇ。“背中を押した”って言ってほしいです」
「あんな押し方など…!」
「強くなってほしいと願うのは貴女も“同じ”でしょう」
「っ…!一緒にしないで!」
「一緒ですよぉ♪ただ“育て方”が違うだけで…♪」
「あ、あんたは…っ」
「私は行き着くのがどちらでも構わないんですよぉ。私は顔を出した“芽”に“愛”を与えるだけです♪」
「何が愛か!」
「それが嫌なら、しっかり見てあげてくださいね…♪」
「……なら一つ、頼みがある」
▼ ▼ ▼
「——よしっ。これでいいかな」
「…凛々、ほんとにこれでいいの?」
「なんかもう、元のデッキの原型が無い気がするよ?」
「そうは言うけど、デッキは生き物とか言うらしいじゃん。大概はそうなるんじゃないの?」
「んー、凛々がいいならいいけどもさ」
協力してもらっておいて何だけど何処か不満げな深緒と羽月。まぁ確かに残ったのが少数だけど、更に強い動きができるんだから問題は無いはず。そうとなれば試してみたい。……早苗も戻ってこないし。
「…ん。深緒、実験台」
「ワッザ!?」
「あっ、深緒ちゃん私理絵ちゃんの手伝いしてくるね」
「直前でとんずらとかあもりにもひきょうすぐるでしょ…」
早苗が相手でもよかったけどさすがにそこまで舞い上がってはいない。ごっそり半身を入れ換えたデッキでアレに挑むのは無謀蛮勇だろう。そこで近くの親友が役に立ってくれるというね。
「仕方ない…。こうなれば深緒様特製デッキが相手になろうではないか!」
「何でもいいから」
「言ったなぁ!」
「凛々」
と、対戦を始めようとした矢先に早苗と詩乃が戻ってきた。…何かさっきより真剣か顔つきになってるけど、何があったの。
「私の方から挑んだのに申し訳無いのだけど、バトルはまた後日に」
「え?」
「ちょっと用事ができたの」
「……そんな思い詰めたような表情する用事が?」
「まあまあ♪ 実を言えば私からの相談なんですよ〜♪」
詩乃からの相談? 深く聞くべきかどうか迷ったけど、あの状態じゃ聞いたところで気にするなって突っぱねられるか。
「……そう」
「はい♪ では早苗さん、行きましょうか」
「ええ…」
それを最後にこちらに振り返りもせず足早にショップを出た早苗。詩乃はこちらに軽く会釈し、早苗を追ってショップを出た。……一体用事って何なんだか。
——某所。
梔黄 詩乃に案内され、早苗が辿り着いたのはとある建物。標識のような物は無く、ただの空きビル…おおよそ3階建てあるか無いか程度…か何かと勘繰る。
騙されたかと疑うにしても騙して何をするのかは判断に困る。この女の事だから男でも潜ませて襲わせると予測をしてみようにも、今目の前に建つビルは天下の大通り。人が往来する場所に位置している。
なら室内で仕掛けてくるか。と思いはしたが自動ドアらしきものの向こう、ビル内に受付嬢が見えている。ますます判断に困る早苗だった。
「警戒しなくても何もありませんよぉ。エロアニメや同人誌でも無いんですからぁ」
「身も蓋も無い事言わないでくれる!?」
「あら失礼しました♪」
「くそっ、あなた可愛くないわ…!」
「恐縮です♪」
ここに着くまで、初めて会った時からこの梔黄 詩乃という人物は苦手な人種だと早苗は思う。
彼女が思う、バトルスピリッツでも黄属性を好むバトラーは掴み所が無い人物が多いと。というか、反りが合わない。妙な人が多いというべきか。黄属性を愛用する故なのか。
単に早苗自身、認めた相手以外の人に茶化されるのを嫌う質なのもある。
「……とにかく、ここであいつが待ってるのね?」
「はい。丁度ここに用事で来てたみたいですからぁ、早苗さんの用件を飲むついでに…ですって」
「そう」
とにかく入る決心は付いた。
それを見通したか詩乃が先に中へと入って行く。後に続く早苗。
そしてお疲れ様と受付嬢に挨拶をする詩乃。彼女を見知っているのか、あちらも快く挨拶を返す。
「“
(るか…?)
思うにそれがあの紫使いの名だと当たりを付ける。上の名前では無いとすると下の名前。…親しい間柄と見る。
「
「はい」
「ではゲストカードです。どうぞお通りください」
受付嬢からゲストカード…裏面は何故かバトスピだ…を受け取る。早苗の名前と称号を知っていたのかはこの際気にしない。もうすぐ目的の人物と会えるのだ。気になる事は後回し。
……とは言え、嫌でも目に付くのは“メイド”。
あちらこちらの部屋から出入りするメイド、通路を行き交うメイド、罵声や怒号を浴びせあうメイド。今受付をした女性もメイドだった。やはり気にするべきか、突っ込むべきか悩む早苗だった。
先に歩く詩乃は見慣れているのか、すれ違う度に挨拶を交わしている。
そして連れられ階段…よく見ればエスカレーターだ…を下り、更に少し歩き、扉に【B=2】と印された部屋へと着く。
「入りますよ」
「…ええ」
自動ドアの開いた先、そこは研究室のような部屋だと早苗は感じた。
白一色、広い室内に高い天井。その中心には何かの投影機と思わしき八角形の台。と言っても家財等で目にするようなものでは無く、何かしらのSF映画やらで見るようなのとでも言えばいいのか。それに奥の壁面には横列びの鏡が埋め込まれていた。こちらが写し出されているということは、マジックミラーか。
そして、その端末機の傍に腰掛け携帯を操作する人物。
「お待たせしました、琉珈♪」
「…ん」
詩乃が話し掛ければ、琉珈は軽く視線を向け、携帯の操作をやめ待ちくたびれたとばかりに伸びをした。
「…お久しぶり、かしら」
「………」
「ふあ…。さっさと始めましょ」
「約束は、守ってもらえるのね?」
お互いに険悪な空気が漂う。
琉珈としては正直どうでもいいのだが、今の早苗にとってそうはいかない。
「…当たり前よ。あんたが勝ったら、馬鹿した事を謝って、あいつをみてやればいいんでしょ?」
「ええ」
「…ふん。あいつのお守りも大変ね、『蒼雷』さん?」
同情なのか皮肉なのか、はたまた両方を悪い意味で言い放つ琉珈。
いつもなら自身が返上した二つ名に反応するが堪える。実際早苗自身、教わる事はあれど、誰かに1から手解きなどした経験が無かった。
「…ま、更に詩乃に目ぇ付けられたのも、運が無かったわ」
「あら酷い言い草」
「黙ってなさいな。…そうそう、私が勝ったらなんだけど」
「…何か」
「あんたには、あいつの指導を止めてもらおうかしら」
「っ!?」
凛々の指導を止める。それを聞き一気に頭に血が昇るのを自覚した早苗。
「ふざけ…!」
「何も見放せって言ってるんじゃあない。事の成り行きを見守れって意味」
琉珈が言うには、このままどうなるかを何もせず見ていろとのこと。
「聞けば舞い上がってるとか? どうせ詩乃が唆して、焚き付けたんでしょうよ」
「違いますよぉ。私も、早苗と同じく凛々さんを育ててたんですよぉ?」
「っは! 方便も良いところね」
「も〜琉珈ってば〜!」
「ふん。…向こうに行って操作しなさい」
「は〜い♪」
いい加減喋り飽きたのか、何処かへ行けと琉珈が詩乃へ促す。
詩乃があの窓側のある壁面の左側に近付くと、一部が横へスライドし、奥へと続く道が現れた。隠し扉か。ならあちらがモニタールームで、こちらが実験室。詩乃があちらに入室すると扉も自動で閉じる。扉と壁の繋ぎ目が見えなくなるとは、金持ちの道楽でこんな凝った作りをしているのか。
「そこ。足元に小さい三角の目印があるでしょ」
「……? これかしら」
「それ。それの上に立ちなさい」
言われた通り目印の上に。
あの端末機からはやや離れた位置に立つ。
〔はーい。では“バトルシミュレーター”起動しまーす〕
スピーカーから詩乃声が聞こえ部屋に響く。…ざっと見回してもスピーカーらしきものすら見えない。それよりバトルシミュレーターとは、と早苗が問い掛けるより早く部屋に変化が起きる。
早苗と琉珈の足元から何かが生えてきたのだ。
「っ!?」
それは一定の高さ、丁度早苗の腰よりほんの少し高い位置で止まる。
何かとは、一本の四角い支柱に向こうが見える透明な板が付いている謎の物体……なのだが、早苗はこれに見覚えがあった。
「安心なさい。ただの“プレイボード”よ」
「ボード…?」
「モデルとして、“激覇編”と“星座編”のを採用したらしいわ」
「………あっ!」
その瞬間早苗に電流走る。
これは彼の“光主”達や“ブレイヴ使い”が使用していたバトルフィールドのアレだ。通りで見覚えがある訳だと納得する早苗。
しかし同時に何故こんな物を?と疑問も浮かぶ。雰囲気作りのための趣向品なのか、はたまた——
「…説明は面倒だから、理解できたならデッキをセットなさい」
「え、ええ。……おお」
やや斜め、こちらに向く形になっているボードに自身のデッキをいつものように、プレイシートの定位置である場所にセットする。普通、置く場所が傾いていれば、滑りやすい厚紙の束だ。滑り落ち床にばらまかれるのが道理。しかし不思議な事に、滑るどころかピタリと張り付いている。試しに置いたデッキを再び取っても、崩れることなく取れた。
「『再現するからには全力でやる』とのことよ」
「謎技術すぎる…」
「とにかくバトルを始めるわ。いいわね」
「っ、いざ!」
「「ゲートオープン、界放!」」
藍河 早苗
vs
燐導 琉珈
示し合わせずとも合わさったいつもの掛け声と共に、投影機が反応を示す。中心に映し出されたのはあの円形状の舞台。“バトルフィールド”の特徴である、山を半分切り取ったような逃げ場の無い決戦場。あの見慣れたフィールドだった。
「これが…」
「駄賃代わりに試験役になってもらうから。さて、私は謙虚だから後攻を譲ってあげてもいいけど?」
「生意気な!」
「ふん、行かせていただく。スタートステップ!」
<琉珈・先攻第一ターン>
琉珈がターン開始の宣言をすると同時にボードが淡く光る。これもあのアニメでの演出を取り入れたのだろう。
「ドローステップ」
(琉珈手札4→5)
掠め取るかのようにデッキトップからカードを1枚引く琉珈。あんな風に引いては普通デッキが某パワーウォールの如く弾け飛ぶか近くに置いてあるであろうボイドケースに振り抜いた手が当たりコアシュート(物理)をかます。しかしそうはならず、綺麗に1枚引いている。
「ちなみに多少の台パンでも大丈夫だけど、目に余るようなら強制停止もありえるからね」
「心得たわ」
「メインステップ。ネクサス《双蛇の剣刃探知機》を配置」
(手札5→4)
(リザーブ4→0)
(トラッシュ0→4)
宙空にうっすらと現れたのは人間が扱うスマートフォン…のようだが見た目が何やら気味悪い。
石のような機械のような材質が解らないものに翼の生えた2匹の紫蛇が楕円形の画面に沿い、頭が下、尻尾は絡み合いアンテナのようになっている。
「あれは…」
「バーストをセットしてターンエンド」
(手札4→3)
{琉珈バースト:なし→セット}
<早苗・後攻第二ターン>
「お手並み拝見といきましょうか、“蒼雷”さん?」
「今は蒼雷に有らず!“叢空”の第二ターン、スタートステップ!」
「コアステップ!」
(リザーブ4→5)
「ドローステップ!」
(手札4→5)
左下のリザーブにコアが自動的に追加され、やりたい気持ちに動かされ左から右へ弾き掠め取るようカードを引いてみる。案の定デッキは吹き飛ばず、驚いた事にコアに触れられ、感触があり、ボードから離しても消える事はなかった。
「どうかしら」
「かなり良いわね。アニメ覇王編を思い出す」
「店舗設置型だから上々ならまぁいいわ。コスト支払いとかはボードが自動的に音声認識で色々やってくれるから安心して」
「至れり尽くせりね。メインステップ! ———っ」
いざカードを出そう。そう思い立つが先程から絶対に触れまいと決めた“物体”が視界にバッチリ収まってしまった。
あの奇妙珍妙なモノがちらつく度に今まで焦りやら何やらといった気持ちが吹き飛んでしまうというか、萎える。
ちらりと琉珈と視線を交錯させれば「触れるな」というハイライトが消えかけた瞳で語り掛けられる始末。だが早苗は乙女座ではないが我慢弱い少女。アレがあそこで優雅に居座っているのを目にして口を出さずにはいられない。
「……あれは何!」
「触れるな」
「いい加減目障りなんだけど?!」
「……ふ、触れるな」
その優雅に座るあまりにもアンバランスな物体。
何処から持ち出してきたのか分からないゴシック調の円形テーブルと椅子一脚。更にはティーセット一式と些かバトルの場に相応しくない。
更に言えば異様なのはその“人物”。
瀟洒なゴシックドレスに全くと言っていい程似合わないずんぐりとした頭。おそらく作り物でネコだというのは理解出来るが、バランスが悪いのと今さっき作った急拵え感を隠すどころかそれが味だと言わんばかり。勇ましくキリッとした眉と目なのだが、ズレていてところどころ透明なテープで補強されていたりと締まらない。
あれを気にせずバトルしろと言われ一切無視出来るバトラーがいるならば是非とも見てみたい。
「……はぁ、分かった。ちょっと待ってて」
盛大な溜息をつき琉珈が面倒臭そうに得体の知れない物体へ向かっていく。
早苗としては溜息をつきたいのはこちらだと文句も言いたいところだが、対処してくれるようなので堪える。
「“師匠”。邪魔ですって」
「………」
「師匠、聞いてます?」
「………」
「…師匠?」
「………?」
被り物の横に手を沿えるナゾのヒト。…あれはよく聞こえなかったのアッピル。
つまり外の様子は見えるが音が聞こえづらくなっているようだ。欠陥品もいいとこである。…世の中には翻訳機能を切ると全ての機能が停止する着ぐるみがあるというが、アレよりはマシか。
「そんなモン被ってるから聞こえないんでしょ……ちょ、被り物押し付けないでくださいよ!ああもう、取ってくださいぃ…!」
「っ!? …ッ!ッ!」
琉珈が無理矢理被り物を引きはがしに掛かるが、嫌なのか被り物を掴んで必死の抵抗をするナゾのヒト。
「抵抗しないでくださいよもう!めんどくさいんだから…。ぅおぉらぁッ!!」
「ぷあっ!ちょっと!師匠に対して何するの!」
「何だ何も邪魔だって言ってるんですよ」
遂に被り物を剥がされあらわになった素顔。……その人物に、早苗は覚えがあった。
低身長で黒と紫を基調にしたゴシックドレスを纏い、片目に金のカラーコンタクトを入れた紫使い。まさかあの人が琉珈の師匠とは夢にも思わなかった。
「私の“ニャモ”返しなさいよ!」
「返しますから引っ込んでくださいっつってんでしょ!」
「師匠に向かってその口の聞き方は何!」
「邪魔に邪魔って言って何が悪いんです!」
「むきぃー!」
あの玩具を取り上げられたようにムキになっているのは、何を隠そうあの……
「“
「くぬ…! あっ、久しぶりね早苗」
“
称号、『
早苗も彼女の手ほどきを受けた間柄でもあり、従姉妹の麗奈の親友でもある。
「何をしてらっしゃるんですか」
「ふっ、この“ソルマルタ・レーテル・トゥルーリーワース=
「御託はいいですから師匠は引っ込んでてください」
「あ、ちょっと!まだ台詞の途中…もがっ!?」
「はいはい後で言わせてあげますからこれ被ってあっちに行っててくださいねー」
そう言ってニャモと呼ばれる被り物を彩音に被せ強制的に話を切り、回れ右をさせ先程詩乃が入っていった一室へ押し込まれる。
途中幅が大きかったためか頭がつっかえたがそこは無理矢理何とかした。
「はぁぁ…。師匠はあの言い回しだから話が長くなるのはご存知でしょ」
「…ちょっと迂闊だったわ」
「まぁこれで気兼ね無くバトルできる訳ね」
確かに気になる物体がいなくなりはしたが、あれからかなり気が削がれてしまい、早苗としては正直後日仕切り直したい気分だった。
「ここまでやったんだからまた明日なんて悠長な事言わせないからね。このバトル、私が望んだものでもあるのだから」
「望んだ…?」
「“あの時”出来なかった決勝戦、今その前哨戦としてもいい」
「っ!」
「今は余計な考えなど捨て、私と詩い踊れ!」
「……ふふっ、やはり師弟は似るものなのね!」
「有り難く嫌味と受け取るわ」
「どうとでも!改めてメインステップ! ネクサス《海帝国の秘宝》を配置!」
(早苗手札5→4)
(リザーブ5→1)
(トラッシュ0→4)
「まぁそれを配置するのは定番ね」
「更に!」
「っ」
「ネクサス《雷海域》を配置!」
(手札4→3)
(リザーブ1→0)
(トラッシュ4→5)
「最後にバーストをセットし、ターンエンド!」
(手札3→2)
{早苗バースト:なし→セット}
早苗側のフィールドに何処からともなく海が押し寄せ、岸壁とも言える岩場がその海から生え現れた。そして海からは雷が空中へと立ち上る奇妙な現象の中、海の中心に淡い青の膜で覆われた紅い宝石のような物が宙に浮いている。
その宝石を抱える紺碧色の三つ首竜は、相手を見据え威嚇するよう護られていて、宝石の中には中心に渦巻く粒子が見える。
<琉珈・第三ターン>
「やはり【招雷】か。スタートステップ」
(リザーブ0→1)
(手札3→4)
(トラッシュ4→0)
(リザーブ1→5)
「メインステップ。《ボーン・バード》を召喚」
(手札4→3)
(リザーブ5→2)
(トラッシュ0→2)
[ボーン・バード コア1 レベル1 BP1000]
宙空から紫を示すシンボル、アメジストが現れ、弾けると共に骨だけの小さな鳥が出現しフィールドに降り立った。
骨だけだというのに翼と腿には黒い羽毛のようなものが生えており、翼には鋭い針のような羽根がいくつも並んでいて、胸元には3つの紫水晶が埋め込まれている。
「そちらもやはり【無魔】…!」
「あの紛い者の時と同じと思われるな? 多少手は加えてるのよ。ボーン・バードの召喚時効果発揮。デッキトップを3枚破棄したのち、1枚ドローする」
ボーン・バードが紫の光に包まれ、烏とも鶏とも言えないような不気味な鳴き声を上げる。
するとその隣に出現したのはカードの山、デッキだ。ボーン・バードがそのデッキを突き、1枚を嘴で啣え何が気に入らないのか荒々しく放り捨てた。それを繰り返し、上から4枚のカードを啣えると放り投げず、琉珈に向かって投げつけたた。
一方琉珈のテーブルでは自動的にデッキから3枚のカードが破棄され、淡い紫色の光に包まれた4枚目のカードを手札に加え、早苗側では宙空に突然表示されたホログラムに今破棄されたカードが示されていた。
●破棄されたカード
・《旅団の摩天楼》(ネクサス)
・《ダークマター》(マジック)
・《バットナイト》(スピリット)
(琉珈手札3→4)
紫 スピリット
《ボーン・バード》
コスト3 軽減紫1極1 <無魔>
<1> Lv1 BP1000
<3> Lv2 BP2000
シンボル:紫
Lv1・Lv2『このスピリットの召喚時』
自分のデッキを上から3枚破棄し、自分はデッキから1枚ドローする。
「ふふっ、理想的な落ちね」
「手札では無くデッキを破棄してドローとは」
「紫にとって
「ならば、その召喚時効果に対しバースト発動!」
「…っ」
早苗はセットされたバーストカードに左手を翳す。すると思った通り、弾け跳ぶように翳した手に来た。これはかの覇王編でもあった演出だ。これをやれたことに内心嬉しく思う早苗。
「《キングスコマンド》!3枚ドローし1枚破棄する! 破棄するのは《操舵手アイザック》!」
{早苗バースト:セット→発動}
(手札2→5→4)
●破棄されたカード
・《操舵手アイザック》
「手札を増やされたか」
「紫ならば召喚時効果を多様すると思ってね」
「そうね。なら私もバーストを発動させてもらうわ!」
「何っ!?」
「この発動キーは相手の効果により相手手札が増えた時。《エグゾーストエンド》!」
{琉珈バースト:セット→発動}
「緑のバーストマジック!?」
「今増やした手札の枚数1につきコアブースト。つまり3枚増やしたためコア3つをリザーブに置かせてもらう!」
(琉珈リザーブ2→5)
ここは室内だというのに何処からか吹いてくる緑の風が3つのコアへと集約し、琉珈のリザーブへと落ちた。バースト1つにも凝った演出だ。
「青ならば手札効果を多様するでしょ?」
「意趣返しとはやってくれる!」
「まだ第一節にもならない序章。蒼と紫の
「言われずとも!」
「その意気や良し!《ワンアイドデーモン》を召喚!」
(琉珈手札4→3)
(リザーブ5→4)
[ワンアイドデーモン コア1 レベル1 BP1000]
紫のシンボルが弾け次にフィールドに姿を現したのは、肥大化した後頭部に額に短い角のようなものを生やし、ぼろ切れのような翼を持つギョロリとした蝙蝠似の一つ目悪魔。剥き出しの歯が薄気味悪い笑い声と共にカタカタと鳴る。
「そして…、ワンアイドデーモンの【スピリットソウル:紫】!」
「来るか、アルティメット…!」
琉珈の声と共にワンアイドデーモンに変化が起こる。
身体の中心となっている青い水晶が紫色へと変化し、足元から紫シンボルを1つ、更に肥大化した後頭部が裂け、その内部から紫シンボルが輝き現れる。
さすがのリアルさに早苗も少々引き気味。
「舞い降りよ、火の智授けし金翼の王蛇!
《アルティメット・ケツァルカトル》!
レベル3にて、光来!!」
(手札3→2)
(リザーブ4→0)
(トラッシュ2→5)
[アルティメット・ケツァルカトル コア1 レベル3 BP12000]
宙空に現れたのは紫の輝きを放つ黄金の究極シンボル。
それは弾けること無く巨大な幾何学の魔法陣を形成し一匹の翼を持つ白蛇を喚び出した。
静かに、厳かに羽ばたき降りるのはアステカ神話において、人に豊饒と火の文明を齎したとされる“虹の羽毛を持つ蛇”。
「Uケツァルカトル…!確かに、他のスピリット達より巨大ね」
「どう?私のアルティメットは。最後にバーストをセットし、ここはターンエンド」
(手札2→1)
{琉珈バースト:なし→セット}
<早苗・第四ターン>
「先にアルティメットを出されたか…。叢空の第四ターン!スタートステップ!」
(リザーブ0→1)
(手札4→5)
(トラッシュ5→0)
(リザーブ1→6)
「メインステップ! 星の海行く勇者の血統!《星海の海賊ペルセース》をレベル1で召喚!」
(手札5→4)
(リザーブ6→3)
(トラッシュ0→2)
[星海の海賊ペルセース コア1 レベル1 BP5000]
荒波に雷立ち上る海から1粒の青い宝石、六角のサファイアが飛び出し雷が直撃する。最大10億ボルトにまで達する光が直撃したら消し炭処では無い。
その雷が弾け、未だ空間に帯電する雷を纏い現れた青い…“巨人”。
白を基調としたパイレーツハットには豪奢な赤い羽根。何処かの貴族と見紛うばかりの同じく白基調・薄紫の海賊に服。青白い肌に流れる青い長髪の美青年。
ただ違うとすれば、相対する骨の鳥、一つ目の悪魔が人間でいう大きさでサッカーボールくらいとするならば、この巨人は……三階建てのビル並。巨大なアルティメット、Uケツァルカトルより二回り程小さいが比較にならない。
「これが、私の
不意にペルセースが早苗に向き直ると、恭しく一礼した。勇者の血統がそうさせるのか。
(あれなら魂実装も間近ね…)
「頼むわよペルセース!」
早苗の声に応えてか、琉珈の方に向き直りパイレーツハットの
「続けて、ブレイヴ《リボル・アームズ》をペルセースに直接合体!」
(手札4→3)
(リザーブ3→0)
(トラッシュ2→5)
リボル・アームズ
↓ 直接合体
星海の海賊ペルセース(合体)
[コスト:5+4=9]
[BP:5000+3000=8000]
[合体時:追加、発揮可能]
[シンボル:追加無し]
次に現れた青のシンボルは海へと落ちた。そのまま水中で弾けゴボンと泡立ち、その中から額にサファイアを埋め込んだ、黄土色と焦げ茶色2色の機械魚が飛び出し海を走る。泳ぐ…のではく背鰭尾鰭がブースターになっていて、水上機が飛び立つよう真っ直ぐにペルセースに向かっていく。
ペルセースはそれを振り返りもせず見ずに軽く右手を上げるとリボル・アームズはピタリと留まり、魚型の姿から魚型の巨大な銃へと変型していく。口から胴のシリンダ部分まで縦に開くと、中からシリンダと同じく黒い銃身が出現した。銃口は2門。
「普通のスピリットにとっては巨大砲台なのに、青の闘神に持たせれば普通の銃ね」
「リボル・アームズの召喚時効果! 私のネクサス、海帝国の秘宝にボイドからコア2つを追加!」
[海帝国の秘宝 コア0→2 レベル1→2]
「すぐさまコアをペルセースへ移動させレベル2へ!」
[海帝国の秘宝 コア2→0 レベル2→1]
[星海の海賊ペルセース(合体) コア1→3 レベル1→2 BP5000→7000+3000=10000]
「バーストセット!さあ、アタックステップ! ペルセース、合体アタック!
雷海域レベル1からの効果により、【招雷】を持つペルセースのBPをプラス2千!」
(手札3→2)
{早苗バースト:なし→セット}
[星海の海賊ペルセース(合体) 10000+2000=12000]
早苗がペルセースに攻撃を命ずる。
ペルセースはリボル・アームズを肩に担ぎ、走りだ…さず空いた左手の指を弾き鳴らす。その瞬間、“寄せる海の一部が走り出し”ペルセースを乗せまるで意思があるように滑走して行く。更には雷が後を追うように走り抜け、ペルセースに雷を宿らせる。
「BPが並ばれたか…。海賊ってのは一々カッコ付けないと気が済まないのかしら?」
「格好良ければそれで良し!
ペルセース、レベル2からの合体アタック時効果! 1ターンに1度トラッシュの<闘神>スピリット、先程破棄した操舵手アイザックを手札に戻し、ボイドからコア2つをペルセースに追加する!」
(手札2→3)
[星海の海賊ペルセース(合体) コア3→5]
文字通りの波乗りで滑走するはペルセースが身体を傾かせ波を巻き上げ海を拡大させる。その巻き上がった波飛沫からカードとコア2つが飛び出した。ペルセースはコアを掴み、カードを早苗に投げて寄越す。
投げたカードがフィールドの外に出る瞬間、トラッシュにあった操舵手アイザックのカードが跳ね上がり素早く反応した早苗が掴み取った。
「更にリボル・アームズの合体アタック時効果! トラッシュは…と」
早苗がトラッシュの確認は?と質問しようとした瞬間、早苗の左手側に投影モニターが出現した。
そこには、先程琉珈がトラッシュに落としたカード4枚の詳細が載っていた。
カードに触れれば拡大されテキストも表示されると。何とも至れり尽くせりのシステムだ。
「ほう…。この《ダークマター》というマジック。07のカードであり、とてつもなく厄介なカードね」
「ふん、バレたか」
「ならば2枚目を握っていると踏んでコスト3を指定!」
早苗がコストを指定すると同時、リボル・アームズのシリンダに謎の弾を詰めるペルセース。カッコ付けか1回転させた後空に向かって撃ち出した。
青白い光球は見様によっては暗闇に放つ照明弾のようだが、それは独りでに空中で停止すると弾けて光の三角形を描いた。
「このバトルの間、そちらは今指定したコストのマジックを使えない!」
「まったく面倒ね」
「それが青!このアタックはどうする!」
「愚問ね。ライフをくれてやるわ」
琉珈はライフで受ける事を選択。
同値のUケツァルカトルならば、マジックによる返り討ちも可能だが、向こうには使えるコアが2つある。比べ琉珈は0。自由にできるコアが2つもあるならBP上げるマジックを使うには十分。更に向こうは<闘神>の【招雷】。コストも軽ければ軽減も多く、加算値もそれなりに高い。
アルティメットを失う義理も無いためその身で受ける選択をする琉珈。
小さいスピリット達を波乗りの要領で跳び越し、Uケツァルカトルを横目にすり抜け琉珈に迫る。その瞬間、琉珈のフィールド側縁に青い光の壁がせりあがってきた。
そこにペルセースは帯刀していたサーベルを抜き放ち振りかぶる。瞬間、青シンボルと一緒に叩っ斬り付けた。
「っ…」
(琉珈ライフ5→4)
(リザーブ0→1)
「ダメージ演出は最強銀河タイプなのね」
「店舗設置型と言ったはずよ。流石に小さい子にアレとかは酷でしょう」
アレとは激覇編、星座編、覇王編などのバトルタイプ。
調整等の話はまた別のお話。
一仕事終えたペルセースが戻り、やれやれといった感じに担いでいたリボル・アームズを降ろし、膝を付いた。
「招雷は無し、か」
「ターンエンド!」
<琉珈・第五ターン>
「スタートステップ」
(リザーブ1→2)
「ドローステップ。ここで探知機の効果発揮」
「ここで?」
「ドローする代わりに、トラッシュにある紫のカード1枚を手札に戻す」
「なんと!?」
「戻すのは《バットナイト》」
(手札1→2)
(トラッシュ5→0)
(リザーブ2→7)
近場に漂っていた紫の探知機がここにきて反応をする。アンテナから淡い紫の波紋のようなものが発せられ、ボーン・バード近くに謎の発光が出現。何事かと地面を突いて掘り起こすとカードが出土。それを前のように琉珈に向かってぶん投げた。
紫 ネクサス
《双蛇の剣刃探知機》
コスト4 軽減紫2
<0> Lv1
<1> Lv2
シンボル:紫
Lv1・Lv2『自分のドローステップ』
ドローするかわりに、自分のトラッシュにある紫のカード1枚を手札に戻すことができる。
Lv2:フラッシュ『お互いのアタックステップ』
このネクサスを疲労させることで、自分のデッキを上から2枚オープンする。
その中の系統:<剣刃>を持つ紫のブレイヴカード1枚を手札に加える。
残ったカードは好きな順番でデッキの下に戻す。
「色指定のみの回収…。山羊座のような効果か」
「メインステップ。《バットナイト》を召喚!」
(手札2→1)
(リザーブ7→4)
(トラッシュ0→2)
[バットナイト コア1 レベル1 BP2000]
紫のシンボルを斬り割き出現したのはバットマ…いや、筋骨隆々、顔と胸に髑髏を模したペイントを。蝙蝠の翼は骨と皮膜に紅いマントを靡かせた超人…人?
「召喚時効果、1枚ドロー。しかしUケツァルカトルが存在するため2枚ドローとなる」
(手札1→3)
「更に《ソードール》を召喚。レベルにはワンアイドデーモンのを使う。よって消滅」
(手札3→2)
[ワンアイドデーモン コア1→0 消滅]
[ソードール コア1 レベル1 BP1000]
紫のシンボルが弾けると同時に両腕が小刀の骨の兵士が現れ…たと思ったらワンアイドデーモンを踏み付け、飛び出たコアを掻っ攫いワンアイドデーモンは消滅するという某髭の配管工みたいな構図を見た。
「そして…!」
「またアルティメットか!」
「ご明察! 召喚条件である<無魔>スピリット3体は満たしている!」
琉珈が仰々しく手札の1枚のカードを抜き取り高々と掲げた。
「究極なる骸の皇! 死せる魂に慈悲無き永久の生を!
《骸皇アルティメット・ギ・ガッシャ》!
レベル4にて、降臨!!」
(手札2→1)
新たに現れた究極シンボル。
その周囲に何処からともなく大量の亡骸と彷徨う亡者の魂が嵐の様に集束し、Uケツァルカトルよりも巨大な姿を形作ってゆく。
その中心に、心臓が脈動するような音がシンボルから響く。漏れる光は黄金の輝きではなく、血のように赤く、その流れは胴体から頭部、両腕、両足、両翼へ至り、遂に骸皇がその身体を形成した。
「Uギ・ガッシャは召喚の際コスト5とする。よって紫が3つ、究極シンボル1つで支払うコストは1!」
(リザーブ4→2)
(トラッシュ2→3)
[骸皇アルティメット・ギ・ガッシャ コア1 レベル3 BP12000]
「…っ」
「一人で亡者の軍勢に立ち向かう気分は如何程かしら? 勇者の血統さん。次に、ソードールのコアをUギ・ガッシャに移しレベル4。バットナイト、ボーン・バードのコアをUケツァルカトルに移動しレベル4へ」
(リザーブ2→1)
[ソードール コア1→0]
[殻皇アルティメット・ギ・ガッシャ コア3→]
[バットナイト コア1→0]
[ボーン・バード コア1→0]
[アルティメット・ケツァルカトル コア1→3 BP12000→18000]
Uケツァルカトルが鳴き、Uギ・ガッシャが巨大な手を翳す。するとソードール、バットナイト、ボーン・バードからコアが吸い取られ2体へ取り込まれる。
コア…魂が無くなったバットナイトはその身を保つことが出来ず、ボロボロと身体が崩壊していく。しかし、骸の皇がそれを許すはずもなく、中途半端なゾンビのような状態に成り果ててしまった。
周囲のスピリット達もビックリしている。お前達も同じそうだというのに。
「亡者と海賊…これは…、パイレ○ツオブカリビアン状態!」
「おい、やめろ馬鹿。…この程度はまだ序ノ口。アタックステップ!」
「っ!」
「Uケツァルカトル、やれ! アルティメットトリガー、ロックオン!」
琉珈の指示により、翼を大きく羽ばたかせ飛翔する。更に琉珈の人差し指の先から紫の光球が弾丸のように撃ち出され、早苗のデッキトップを弾き上げた。
「っ!?」
「コストを詠みあげなさいな」
「…コスト4、マジック《インパクトロア》」
「良いのが落ちたわ。ヒット!」
2発目の撃ち出された光弾がインパクトロアに直撃し、トラッシュに叩き落とされる。そして撃ち抜かれて散った粒子がUケツァルカトルへと集束された。
「ヒット時効果。あなたのスピリットのコア1つをボイドへ還しなさい。まぁ、選ぶと言っても1体しかいないけど」
「ちぃ、ペルセースのコアを選択!」
[星海の海賊ペルセース(合体) コア5→4]
Uケツァルカトルへ集った粒子は高速で魔法陣を描きペルセースに降り注ぐ。プレッシャーのように浴びせられたペルセースは苦しみ、身体から1つのコアが虚空に吸い込まれていった。
紫 アルティメット
《アルティメット・ケツァルカトル》
コスト7 軽減紫4 <新生・妖蛇>
【召喚条件:自分の紫スピリット1体以上】
<1> Lv3 BP12000
<3> Lv4 BP18000
<4> Lv5 BP23000
シンボル:極
Lv3・Lv4・Lv5『自分のターン』
自分の「コア除去効果」で相手のスピリットが消滅したとき、自分のアルティメットのコア1個を自分のライフに置くことができる。
【Uトリガー】Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』
Uトリガーがヒットしたとき、相手は、相手のスピリットのコア1個をボイドに置く。
「アタックはライフで受ける! ——くおっ!?」
(早苗ライフ5→4)
(リザーブ0→1)
Uケツァルカトルから魔法陣越しに紫のゲロビ……いやいやブレスが放たれる。
それが紫のバリアに放射されると、何かが砕ける音と共に軽い衝撃波が早苗に襲い掛かった。
心地好い痛みやら何やらは無いが、感じとしては、あの段ボールで作った空気砲っぽいやつでボフッてやられた感じだ。
「こんなところまで再現するとは…」
「精々吹き飛ばないよう踏ん張りなさい。次に——」
「ライフ減少によりバースト発動!」
「っ!」
「《ディクタトールレギオン》!」
{早苗バースト:セット→発動}
琉珈が次の攻撃指示を出そうとした時、ペルセースが不敵な笑みを浮かべ、早苗のバースト発動宣言と同時に指を鳴らす。
その瞬間、立ち上る雷が海に隠されていた1枚のカード…バーストカードを弾き上げ表になった。
「ボイドからコア2つを雷海域に追加!よってレベル2へ!」
[雷海域 コア0→2 レベル1→2]
「更にペルセースから1つ、雷海域から1つ追加コストを支払い、バーストチェック!」
[星海の海賊ペルセース(合体) コア4→3]
[雷海域 コア2→1]
(トラッシュ5→7)
雷に包まれたカード、ディクタトールレギオンから撃ち出された稲妻が複雑な軌道を描きながらペルセースの持つリボル・アームズのシリンダへ装填され、すぐさま撃ち出される。
稲妻の弾丸は螺旋となって琉珈のボードに伏せられていたバーストに着弾した。
「《黒骸竜シャドルガー》。スピリットカードよ」
「ぃよし!スピリットカードだったからそのまま破棄する!」
{琉珈バースト:オープン→破棄}
弾かれたカード、シャドルガーのカードがそのまま風穴だらけにされ破壊される。
「雷海域レベル2からの効果により、そちらのアルティメットがアタックする際にリザーブのコア2つを支払わなければアタックできない!」
「ちっ…」
「稲妻の嵐に阻まれる気分は如何程かしら?骸皇さん!」
「……はははっ!そうこなくちゃね!ターンエンドよ」
<早苗・第六ターン>
「叢空の第六ターン!スタートステップ!」
(リザーブ1→2)
(手札3→4)
(トラッシュ7→0)
(リザーブ2→9)
「メインステップ! こちらも行かせてもらう!」
「ほう」
「世界揺るがせし王の盟友! 《剣将スティオン》をレベル4で召喚!」
(手札4→3)
(リザーブ9→4)
(トラッシュ0→3)
[剣将スティオン コア2 レベル4 BP12000]
降り注ぐ稲妻の中から出現した究極シンボルが収束し、光の中から現れた青い肌の青年。流れる碧の長髪、ペルセースよりやや低い身長に細い身体は男性とも女性とも付かぬ巨人は優雅に静かに降り立った。
隣にいたペルセースがスティオンみ見て軽く会釈する。
スティオンはそれを横目で見遣ると同じく小さく頷いた。
大王の近衛騎士である彼と勇者の星を受け継ぐ彼とで、何か近いものを感じたのだろうか。
「アルティメット…」
「招雷だけでは無いというところを見せてあげる! 続けて…」
早苗も手札の1枚を掴み取り、派手に振り翳した。二人は、いや全てのカードバトラーならここぞと言う時身振り手振りが派手になるのは性だ。
「澄み渡る蒼き星、波濤の剣刃!
《水星神剣マーキュリーブレイド》!
スティオン。この剣刃、貴方に預ける!」
(手札3→2)
(リザーブ4→2)
(トラッシュ3→5)
水星神剣マーキュリーブレイド
↓ 直接合体
剣将スティオン(合体)
[コスト:5+0]
[BP:12000+4000=16000]
[合体時:追加]
[シンボル:極+青=極青]
突如雷の嵐が止み、フィールドの海に静けさが戻る。次の瞬間、浮かぶ秘宝の下に一振りの大剣が海を割って現れた。
地表まで割れた海を、静かな足取りで剣へと向かうスティオン。恭しく片膝をつき、頭を垂れる。
身の丈の倍程ある大剣。両の手でゆっくりと、しっかりと柄を握り締め大地から引き抜き、天へ翳す。その勇姿に将と剣刃は一対となり光を放つ。
スティオンが元の場所に戻ると割れていた海が閉じ、また雷が立ち上る荒々しい海へと姿を変えた。
水星の剣刃を持つスティオンをペルセースが羨ましそうに見る。俺にも持たせてくれないか?と言っているよう。
スティオンは何も言わないが、合体条件が合わないだろうと呆れたように溜息をついた。
「アタックステップ!」
[星海の海賊ペルセース(合体) BP10000+2000=12000]
「スティオン、剣刃合体アタック! レベル4からのアルティメットトリガー、ロックオン!」
攻撃を命じられたスティオンが動く。
空いた左手で剣指を作り、空に紋様を描く。描かれた紋章は水星神剣に光となって纏わせると、軽々と一薙ぎ。その剣圧に小さなスピリット達は慌てて身を屈め回避した。
「…コスト4、ブレイヴ《龍弩ラスタバン》」
「ヒット!」
弾き上げたカードから光の粒子が飛び散り早苗のデッキに降り注がれる。淡く発光したデッキトップ2枚が浮き上がり、早苗はそれを手に取った。
「ヒット時効果。2枚ドローし、1枚破棄する!破棄するのは《生還者バディ》!」
(手札2→4→3)
青 アルティメット
《剣将スティオン》
コスト5 軽減青2 <次代・闘神>
【召喚条件:自分のコスト1以上のスピリット1体以上】
<1> Lv3 BP9000
<2> Lv4 BP12000
<5> Lv5 BP16000
シンボル:極
Lv3・Lv4・Lv5『相手のアタックステップ』
コスト3以下の相手のスピリットはアタックできない。
【Uトリガー】Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』
Uトリガーがヒットしたとき、自分はデッキから2枚ドローする。その後、自分は手札1枚を破棄する。
「そして水星神剣の効果【強襲:1】! 雷海域を疲労させ回復!」
[雷海域 回復→疲労]
[剣将スティオン(合体) 疲労→回復]
スティオンが足に力を込め飛び出す。一足飛びでフィールドの半分まで跳ぶと、更に力を込め高く跳躍。かなりの巨大さを誇るUギ・ガッシャの頭上へあっさり到達し越えて行ってしまった。
「アタックはライフで受ける!」
「ソードブレイヴアルティメットはダブルシンボル!ライフを2つもらう!」
大剣を振りかぶり、自身に究極シンボルと青のシンボルを宿すスティオン。そのまま気迫一閃。
「…、くっ!」
(琉珈ライフ4→2)
(リザーブ1→3)
「続け、ペルセース!合体アタック! トラッシュから《生還者バディ》を手札に戻し、コア2つ追加!」
(手札3→4)
[星海の海賊ペルセース(合体) コア3→5]
攻撃を終えたスティオンがUギ・ガッシャの肩を足掛かりに三角蹴りをかまし早苗の下に戻る途中、波乗りで迫るペルセースとすれ違った。
「リボル・アームズの効果、コスト4を指定! このバトル中コスト4マジックを使えない!」
「バリア系を狙ってきたか…」
「このコストなら、氷盾は張れない!この勝負もらった!」
「調子に乗るなデコ助ぇ!!」
「で…!?でこは出してない!」
「フラッシュ!マジック《シンフォニックバースト》ォッ! 」
(琉珈手札1→0)
(リザーブ3→0)
(トラッシュ3→6)
「コスト3の黄色マジックだと!?」
「阻めバットナイト! このバトルが終了したとき、私のライフが2以下ならアタックステップは終わりよ!」
琉珈に迫るペルセースに半分肉体が崩れ落ちたバットナイトが飛び阻む。邪魔され顔をしかめるペルセース。
海賊とゾンビという言及すると色々アレな組み合わせだが、バットナイトが両手に持つ剣を交叉させペルセースのカトラスを受け止める…が、BP差が大きすぎるためそのまま両剣ごと叩っ斬られた。
「ターンエンド」
<琉珈・第七ターン>
「死者を使役する私が、命拾いとは皮肉ね」
「なら大人しく負けてたのかしら」
「っは! こちらのターン、スタートステップ」
(リザーブ0→1)
「探知機の効果は使わず、ドローステップ」
(手札0→1)
(トラッシュ6→0)
(リザーブ1→7)
「メインステップ。…ふっ」
「…?」
「見せてあげる。アルティメットトリガーの新たな境地を!」
「はっ! バイクにでも乗るつもり?」
「いずれ理解るわ。手札が0でも、紫ならどうとでもなる!」
琉珈が先程までの妖しげな笑みから獰猛な笑みへと変わる。
「死せる剣聖、次代の闇騎士!
《骸骨剣聖エグゾスカル》!
レベル4にて、召喚!!」
(手札1→0)
(リザーブ7→3)
(トラッシュ0→2)
[骸骨剣聖エグゾスカル コア2 レベル4 BP14000]
琉珈のフィールドに究極シンボルが現れ、3体目のアルティメットが召喚される。
赤黒い霧が噴き出し究極シンボルを包む。中心に光る2つの眼が浮かび上がり、瞬間、霧を振り払い漆黒の鎧に身を包んだ骸の騎士がそこにいた。
「またアルティメット…」
「Uケツァルカトルのコアを1つ落とす」
[アルティメット・ケツァルカトル コア3→2 レベル4→3]
(リザーブ3→4)
「アタックステップ」
「スティオン、レベル3からの効果! そちらのコスト3以下のスピリットはアタックできない!」
「構うものかよ!かかれ、エグゾスカル! 雷海域のコストでリザーブのを2つトラッシュに置く」
(リザーブ4→2)
(トラッシュ2→4)
琉珈の命を受け、携えていた紅い闘気が揺らめく真っ赤な曲剣・ショーテルを抜刀する。
「アルティメットトリガー、ロックオン!」
琉珈の振り払った剣指から光弾が撃たれ、早苗のデッキトップを弾く。
「…コスト3、《剣帝眠る霊廟》」
「ヒット! ペルセースのコアを1つボイドへ!」
[星海の海賊ペルセース(合体) コア5→4]
極自然な動作で振り放たれた赤い剣圧がペルセースに防御の体勢を取らせる前に直撃。苦悶の表情をし、身体から抜けたコアが暗闇に吸い込まれていった。
「またボイド送——」
「更に続けて…!」
「っ!?」
「X(クロス) アルティメットトリガー、ロックオン!!」
次いで左手で剣指を作り、先程の光弾より強い輝きを放つ。カードから弾けた粒子がエグゾスカルの剣に集束され、赤い闘気が膨れ上がり、血のように赤黒いオーラを纏いだした。
「に、二発目!?」
「私のライフが3以下のとき、第二の詩弾が紡がれる! さぁ、コストを詠め!!」
「…コスト4、《船星鎧ブレイヴアルゴー》!」
「“クロスヒット”ォッ!!」
琉珈の気迫の叫びに呼応してエグゾスカルも共に咆え、大上段に振り上げた剣を全力でスティオンに向け斬り払いダークパワーを纏った剣圧を放つ。
スティオンも防御の構えを取る…が、盾として構えた水星神剣を通り越しその身を貫通していった。
「クロスヒット時効果…、相手スピリット、またはアルティメット1体のコアを全てリザーブへ置く!」
「な…、アルティメットに触れられるアルティメット!? ……っ、水星神剣は残す!」
[剣将スティオン コア2→0 消滅]
(リザーブ2→4→3)
[水星神剣マーキュリーブレイド 残留 コア3 レベル1 BP4000]
斬られたスティオン自身も何が起こったのか暫し理解出来なかったが、悟ったのか水星神剣を大地に突き立て静かに消滅した。
「スティオン…!」
「どう? これが【XUトリガー】よ」
紫 アルティメット
《骸骨剣聖エグゾスカル》
コスト6 軽減紫3極1 <次代・剣使・無魔>
【召喚条件:コスト3以上の自分の紫スピリット1体以上】
<1> Lv3 BP10000
<2> Lv4 BP14000
<5> Lv5 BP19000
シンボル:極
【Uトリガー】Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』
Uトリガーがヒットしたとき、相手のスピリットのコア1個をボイドに置く。
Uトリガー後、自分のライフが3以下なら、さらに、XUトリガーを行う。
【XUトリガー】XUトリガーがヒットしたとき、相手のスピリット/アルティメット1体のコアすべてを相手のリザーブに置く。
「エグゾスカルのアタックをどうする!」
「……この身で受ける!」
今だ黒いオーラを纏う剣を構え直し、腰溜めから振り抜き剣圧を飛ばす。剣圧は立ち上る雷を千切り、早苗を守る紫の壁を斬り裂いた。
「っ…!」
(早苗ライフ4→3)
(リザーブ3→4)
「Uギ・ガッシャ、やれ!」
(琉珈リザーブ2→0)
(トラッシュ4→6)
「アルティメットトリガー、ロックオン!」
「——!? コスト7、《戦輝神ゼルドナーグ》…!」
「ヒット!! トラッシュの<無魔>スピリット、《バットナイト》を蘇らせる!」
[バットナイト コア0 レベル1]
骸皇から発せられる黒い霧が大地に染み渡る。霧が人の形を取り、先程斬られたバットナイトが幽鬼として再び復活した。
「召喚時効果発揮!アルティメットがいるため2枚ドローする!」
(琉珈手札0→2)
「私のスピリット達を遮る将は消えた。骸皇のアタックはどうする!」
「フラッシュ!マジック《ブレイクグラインド》!」
(早苗手札4→3)
(リザーブ4→2)
(トラッシュ5→7)
「コスト3以下のスピリット3体! バットナイト、ボーン・バード、ソードールを破壊する!」
「っ!」
早苗がマジック使用を宣言した瞬間、今挙げた3体の足元から光が漏れだす。何の光?と疑問に思った刹那、盛大に爆発を起こしギャグのように吹っ飛び破壊された。
「破壊したスピリット1体につき、デッキから2枚破棄する! 合計6枚破棄だ!」
「探知機が見えている上でのことかしら!」
●破棄されたカード
・《ラウンドテーブルナイツ》(マジック)
・《万本槍の古戦場》(ネクサス)
・《バットナイト(2)》(スピリット)
・《六巨皇ボーン・ケンタウロス》(スピリット)
・《コアロスト》(マジック)
・《生還者シールデンリッター》(スピリット)
青 マジック
《ブレイクグラインド》
コスト6 軽減青4
【バースト:相手の『このスピリット/ブレイヴの召喚時』発揮後】
コスト合計3まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。
その後コストを支払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮する。
フラッシュ:
コスト3以下の相手のスピリット3体を破壊する。
この効果で破壊したスピリット1体につき、相手のデッキを上から2枚破棄する。
「アタックはライフで受ける!」
骸皇の眼に強い光が走り、内包する究極シンボルが強い心音を打ち鳴らす。
すると、骸皇の胸部から右腕に向かい赤い力が奔流し、早苗に向けられた掌からそこだけぽっかりと黒い点が開く。そこに赤い電流に似た稲妻が走り抜ける。
「…? ……っ!?」
(早苗ライフ3→2)
(リザーブ2→3)
瞬間、早苗を守るバリアが発生し、何も無い空間に無数の黒点が出現し、その穴から伸びる弾丸のような黒い針がバリアに嫌な音を立てライフを砕いた。
「くぉ…っ、ワームスマッシャー!?」
「ディストリオンブレイクでも可よ。ターンエンド」
<早苗・第八ターン>
「叢空の第八ターン、スタートステップ!」
(リザーブ3→4)
(手札3→4)
(トラッシュ7→0)
(リザーブ4→11)
「メインステップ!」
現在場の状況としては早苗の圧倒的不利という訳ではない。だが有利かと言われるとそれほどでも無い。
早苗は手札が2枚割れ、スピリットはペルセースと合体しているリボル・アームズ。アルティメットと合体しなければ本気出せない水星神剣。しかも手札のアイザックとバディでは合体どころの話でない。
(あちらに待ち構えているのはUケツァルカトルのみ。……だけど、あの手札2枚のうちどちらかがウォール系だとしたら)
それならばマジック縛りで1点は通せるはず。しかしペルセースを通せばマジックが自由になってしまうし、あのトラッシュにあるコスト3のマジックのプレッシャーもある。……あと2点が遠い。
(なら、あの2枚でこのターン凌げるか試してやる!)
「………」
「考え事は終わったかしら」
「ええ。待たせたわね。…ネクサス、《三つ首竜の海賊旗》を配置!」
(手札4→3)
(リザーブ11→10)
(トラッシュ0→1)
岸壁にいくつもの深い青の海賊旗が立つ。
その旗には、骨を交叉させ×の字を背後に骨の竜の頭部が三つ。
「透けてる手札に引いたのがそれ?」
「そこまで言うなら、堪え凌げるか勝負よ!」
「やってみればいい。……やはりバトスピはこうでなくちゃ面白くない」
お互い挑発に挑発を重ね、それでも余裕の笑みを持って返す。
「次に、《生還者バディ》をレベル2で召喚!」
(手札3→2)
(リザーブ10→7)
(トラッシュ1→2)
[生還者バディ コア2 レベル2 BP3000]
現れたのは筋骨隆々の青い巨人。厳めしい顔付きに赤い短髪のオールバック。身に纏う黄金の武具に青い闘気渦巻いている。
「海賊旗をレベル2、ペルセースとバディ、水星神剣にありったけコアを乗せて、アタックステップ!」
(リザーブ7→0)
[星海の海賊ペルセース(合体) コア4→6 BP10000+2000=12000]
[生還者バディ コア2→4 レベル2→3 BP3000→5000+2000=7000]
[水星神剣マーキュリーブレイド コア1→3]
「バディでアタック!」
「そっちはライフで受けてあげる!」
早苗の指令に素早く駆け出すバディ。
膝をつく骸皇を摺り抜け、琉珈に剛腕を振り上げる。展開された青いバリアに渾身の一撃を叩き込んだ。
「っ…」
(琉珈ライフ2→1)
(リザーブ0→1)
「ペルセース、合体アタック! トラッシュの《戦輝神ゼルドナーグ》を手札に戻し、コア2つを追加!」
(手札2→3)
[星海の海賊ペルセース(合体) コア6→8]
波に乗り躍り出るペルセース。その表情は、先程までの余裕は無く、散った仲間の敵討ちだと言わんばかりに引き締まっていた。
「リボル・アームズの効果で指定するコストは……」
「………」
「……4!」
「フラッシュ!!」
「っ!?」
「マジック、《ネクロブライト》ォッ!!」
(琉珈手札2→1)
(リザーブ1→0)
(トラッシュ6→7)
「私のトラッシュに眠るコスト3以下の紫のスピリット、アルティメット、ブレイヴのうちどれか1体をコストを支払わず復活させる!」
「な…!?」
紫 マジック
《ネクロブライト》【1枚制限】
コスト3 軽減紫1極1
【トリガーカウンター】
手札にあるこのマジックカードは、相手のUトリガーがヒットしたとき、ヒット効果発揮前に次の効果を使用できる。
■相手のアルティメットのコア1個を相手のリザーブに置く。さらに、ヒットしたカードが紫のカードならガードとする。
フラッシュ:
自分のトラッシュにあるコスト3以下の紫のスピリットカード/アルティメットカード/ブレイヴカード1枚を、コストを支払わずに召喚できる。
「生還せよ我が騎士!《生還者シールデンリッター》レベル2!」
[骸皇アルティメット・ギ・ガッシャ コア3→2 レベル4→3]
[骸骨剣聖エグゾスカル コア2→1 レベル4→3]
[アルティメット・ケツァルカトル コア2→1]
[生還者シールデンリッター コア3 レベル2 BP4000]
大地に紫の幾何学魔法陣が浮き出し、紫シンボルが出現した。
シンボルが弾け、現れたのは薄紫色の全身甲冑騎士。片手には長槍、片手には二頭竜をエンブレムにし、中心にアメジストを埋め込んだ大盾。
「ここで紫の
「ペルセースのアタックは、Uケツァルカトルが防ぐ!」
「海賊旗レベル2の効果発揮! 【招雷】を持つペルセースがブロックされたため1枚ドローし、1枚破棄! 破棄するのは《操舵手アイザック》!」
(早苗手札3→4→3)
(———っ!来た!)
雷鳴と波と共に疾走するペルセースの行く手を黄金を纏う白蛇が遮る。
Brave Attack!!
星海の海賊ペルセース+リボル・アームズ
BP7000+3000+2000=12000 →Draw!!
vs
Defense!!
アルティメット・ケツァルカトル
BP12000 →Draw!!
Uケツァルカトルが迫る。臨む所と迂回しようとはせず、真っ向から挑むペルセースはリボル・アームズを乱射しながらシミターを抜き放つ。Uケツァルカトルも迫る青い弾丸を幾何学魔法陣で跳ね返しお返しとばかりにブレスを放つ。
波から跳び上がり、身を翻して避わす。それを好機と見たかペルセースがリボル・アームズを放り投げ捨て一気に肉薄。Uケツァルカトルも再びブレスで撃墜しようとしたがシミターがブレスを斬り裂き瞬く間に間近に迫った。
「相討ちね」
「しかし、海賊旗レベル1からの効果!」
最期とばかりにペルセースが全身全霊を込めブレスごとUケツァルカトルを斬り押し込んだ。だが、代償としてこれ以上戦うことができない。
しかし、Uケツァルカトルの爆発に巻き込まれる瞬間、ニヤリと笑い、指を鳴らし爆炎に飲まれ姿が見えなくなった。
「ペルセース…、ここまで戦ってくれたこと、感謝するわ。……BP勝負に負けても【招雷】を発揮できる!」
[星海の海賊ペルセース 破壊]
[リボル・アームズ そのまま破棄]
[アルティメット・ケツァルカトル 破壊]
(琉珈リザーブ0→1)
海賊旗が淡く光る。
ペルセースがいた爆炎から一筋の稲妻が空へ走る。それは雲間へと消えたその時、先程の稲妻よりも特大の稲妻が落ちてきた。
「ペルセースの【招雷:コスト6/8】!
ペルセースが遺したこのカード…。今こそ!コォォーリング、サンダァァーーッ!!!」
「コスト6か8のスピリットなど……っ!?」
特大の稲妻から出現したのは……“究極シンボル”。
「このカードは、私のスピリットが【招雷】を発揮するとき、スピリットとして扱う!
来たれ雷鳴宿りし究極の巨神よ!
《次代巨神ブライバー》!
レベル5! 招ォォ雷ィイ!!!」
(早苗手札3→2)
[星海の海賊ペルセース コア8→0]
[次代巨神ブライバー コア8 レベル5 BP29000]
究極シンボルが弾け、渦巻く稲妻が辺り一帯に走り抜ける。
その中心から現れた巨人。
ペルセース、スティオンとは違い、Uギ・ガッシャに迫る巨体は赤く、靡く金の髪。額からは黒い2本の角と明らかな違いが見える。
「ブライバーだと…!?」
「行け、ブライバー! レベル4からのアタック時効果!コスト5以下の相手スピリット1体を破壊!」
気迫と共に大地に振り下ろされた剛腕から青い衝撃波が疾走する。それは意思があるようにシールデンリッターに迫った。
「シールデンリッターは相手の効果では破壊されない!」
「生還者共通の効果破壊耐性か! ならばアルティメットトリガー、ロックオン!」
シールデンリッターが大盾を地面に突き立て、来る衝撃に備える。するとブライバーの放った雷撃は直撃するも、あらん限りの力で跳ね返した。
しかし衝撃波は勢いを殺さず琉珈のデッキに直撃しそのままデッキトップを弾き出す。
「…コスト5、《悪魔皇デビッド》」
「ヒット!トラッシュの【招雷】を持つスピリット、ペルセースを手札に戻す!」
(手札2→3)
青 アルティメット
《次代巨神ブライバー》
コスト8 軽減青4 <次代・闘神>
【召喚条件:コスト1以上の自分のスピリット1体以上】
<1> Lv3 BP12000
<3> Lv4 BP16000
<6> Lv5 BP29000
シンボル:極
自分のスピリットが【招雷】を発揮するとき、手札にあるこのアルティメットカードはスピリットカードとして扱う。
【Uトリガー】Lv3・Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』
Uトリガーがヒットしたとき、自分のトラッシュにある【招雷】を持つスピリットカード1枚を手札に戻す。
Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』
コスト5以下の相手のスピリット1体を破壊する。
「このアタックは———」
「この勝負、私の勝ちね!」
「もう勝利宣言とは!」
「貴女の轟かせる雷鳴が、私の
「何!?」
「シールデンリッター、レベル2の効果発揮!!」
大盾を退かし、長槍を掲げる。すると弾き出された悪魔皇デビッドのカードから魔法陣が発生し、ブライバーから放たれた衝撃波の余波を取り込み始める。
「相手のUトリガーによって、紫のスピリットカード、またはアルティメットカードがトラッシュに置かれた時、Uトリガーの効果解決後、今射抜かれたカード全てをノーコストで召喚できる!」
「な…、トリガーを逆手に…!?」
紫 スピリット
《生還者シールデンリッター》
コスト3 軽減紫2 <護将・魔影>
<1> Lv1 BP3000
<3> Lv2 BP4000
シンボル:紫
Lv1・Lv2
お互いのデッキは破棄されず、このスピリットは相手の効果で破壊されない。
Lv2『お互いのアタックステップ』
紫のスピリットカード/アルティメットカードが相手のUトリガーでトラッシュに置かれたとき、Uトリガー後、それらのスピリットカード/アルティメットカードすべてを、コストを支払わずに召喚できる。
「さあ、来い!《悪魔皇デビッド》!レベル4!」
(琉珈リザーブ1→0)
[骸皇アルティメット・ギ・ガッシャ コア2→1]
[生還者シールデンリッター コア3→2 レベル2→1 BP4000→3000]
[悪魔皇デビッド コア3 レベル4 BP10000]
空中に出現した紫の魔法陣から這い出すように姿を見せた悪魔皇は、完全に現界すると華麗に降り立でた。
黄金の装飾、黄金の冠、頭の1対の旋角、翻る黒のマントがより皇である事を強調している。
大きさとしては早苗の束ねる巨人達より小さい。隣で膝をつくUギ・ガッシャよりも小さい。スピリットであるバットナイトより頭1つ分低いくらいだろうか。
「ブライバーのアタックはUデビッドでブロック。お相手をして差し上げなさいな」
琉珈の言葉にやれやれといった仕草をすれば、マントを払い翻しゆったりと前に出た。
対峙するのは山かと見間違う程巨大な巨神。これは骨が折れると言いたげに小さく首を振るUデビッド。だが怯む様子は無く、逆に愉しむ余裕すら見える。
Attack!!
次代巨神ブライバー
BP29000 →win!!
vs
Defense!!
悪魔皇デビッド
BP10000 Lose...?
BP差は歴然。ブライバーが動き、振り下ろされたのは雷を纏った左。
Uデビッドから見れば隕石が降ってきたようなものだがまるで動じず、ニヤリと笑うだけ。そのまま呆気無く叩き潰され、大地がその衝撃に噴出した。ブライバーが左手を引き、その跡には“何も無い”事を確認した。
「Uデビッドの破壊時アルティメットトリガー、ロックオン!」
瞬間、ブライバーを嘲笑うかのような声が響き、Uデビッドがいた場所から紫の霧が発生した。その霧はブライバーを摺り抜け早苗のデッキトップを勝手に持ち上げ琉珈へ向ける。
「コスト3のマジック《ストロングドロー》ね…。ヒット!」
命中宣言がされた瞬間、霧がカードからオーラのような何かを抜き出し、握り潰した。
握り潰されたオーラは青い飛沫となり、霧を伝い本体へと流れて行く。霧が靄となり確かな形を作ると、一気に飛散。するとそこには、傷一つ無い、無傷なままのUデビッドが現れた。
「Uデビッドのヒット時効果は……」
「ご存知の通り。私は1枚ドローし、Uデビッドは回復状態で場に残る」
(琉珈手札1→2)
[悪魔皇デビッド 疲労→回復]
「Uデビッドの復活を手引きし、アタックは防がれ、挙げ句ドローまで許す事になるとは…」
「引きに首が繋がったのよ」
琉珈のあんまりな引きの強さに表情が引き攣る早苗。これが彼女の強さなのか。…だが、早苗は意外と恐怖も苛立ちも沸いては来なかった。仕方ないという諦めの境地でも無い。
あるのは、久々にこんな楽しいバトルが出来たという満足感と、凛々にこれからまた苦難を与えてしまうという罪悪感。
「どうする? 残ったその剣刃で――」
「水星神剣でアタック!!」
突然、突き立っていた水星神剣が独りでに抜け、宙を滑るように琉珈に向け放たれた。
「――っ!? で、デビッド!!」
予想だにしなかった事にUデビッドも一瞬対象が遅れる。しかし翳した手から発生した見えない防壁に阻まれた。ギリギリと音を立て、それでも勢いが死なない水星神剣に、舌打ちをするUデビッド。
拮抗は長くは続かなかった。Uデビッドが防壁をずらす事で軌道を変え、逸れた所に柄を掴み、力を流し込み刃のみを砕いた。
「………」
「ちっ。一寸届かないか」
[水星神剣マーキュリーブレイド 破壊]
(早苗リザーブ0→3)
「………ふふふっ、久々にほんの少し驚いたわ」
「今のがリアルじゃなくて良かったわね、リアルだったらゴーストリック・デュラハンになってたところよ」
「はっ!さすが青使いの不意だまスフィストはA+と言ったところかしら」
「それほどでもない。……ターンエンド」
<琉珈・第九ターン>
「ラストターンね。スタートステップ!」
(リザーブ0→1)
(手札2→3)
(トラッシュ7→0)
(リザーブ1→8)
「メインステップ。……もっと長く詩っていたかったけど、終局か。深い淋しさに包まれそうよ」
「力不足で申し訳ない」
「何を謝る事。逆に感謝したいくらいよ」
「……」
「あの娘のことは……何とかやってみるから、まぁ見てなさい」
「そのセリフは…」
「まずはその邪魔な雷を破壊する。マジック《双光気弾》を使用。対象は雷海域」
(手札3→2)
(リザーブ8→5)
(トラッシュ0→3)
[雷海域 破壊]
(早苗リザーブ1→2)
「Uギ・ガッシャをレベルを5に上げて、アタックステップ!」
(琉珈リザーブ5→1)
[骸皇アルティメット・ギ・ガッシャ コア1→5 レベル3→5 BP12000→24000]
「骸皇、アタック! アルティメットトリガーロックオン!」
「——コスト3、マジック《スワロウテイル》」
「ヒット。トラッシュに眠る我が紫の巨皇、《六巨皇ボーン・ケンタウロス》を復活させる!」
(リザーブ1→0)
[六巨皇ボーン・ケンタウロス コア1 レベル1 BP10000]
Uギ・ガッシャが拳を振り下ろす。砕け散る大地から大量、無数の骨という骨が溢れ出してきた。それが繋ぎあい、重なりあい、砕け混ざりあい巨大な形を作り出す。上半身は人型、下半身は四脚の馬型の名の通りケンタウロス。
姿は骸骨というより、それぞれ違う形の骨が、謎パワーで繋ぎ止められたような姿をしている。
紫 スピリット
《六巨皇ボーン・ケンタウロス》
コスト12 軽減紫6 <無魔>
<1> Lv1 10000
<3> Lv2 16000
<5> Lv3 20000
シンボル:紫紫
自分のライフが3以下の間、手札にあるこのスピリットカードを召喚するとき、コスト6として扱う。
Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
相手のスピリット3体のコア1個ずつを相手のリザーブに置く。
「六巨皇……。Uギ・ガッシャのアタックはこの身で受ける!」
(早苗ライフ2→1)
(リザーブ4→5)
「っ…!」
「ボーン・ケンタウロス。敬意を持って、最後のライフを砕け!!」
静かな唸り声と共に、ゆっくりと骨の蹄を鳴らし歩を進めるボーン・ケンタウロス。
「ボーン・ケンタウロスはダブルシンボル!」
「……しがらみなど関係無しに、楽しいバトルだったわ。
ライフで、受ける!!!」
ボーン・ケンタウロスが右腕に黒いオーラを纏い、紫のシンボル2を拳に握り締め展開されたバリアに殴り掛かる瞬間、早苗の目にやり切れないような表情したブライバーが入った。
「ブライバー、ペルセース、スティオン、ゼルドナーグ……。凛々…! 済まない…!!」
(早苗ライフ1→0)
〔winner!! 燐導 琉珈〕
「……負けたか」
「…ありがとう、素晴らしいバトルだったわ。あなたがどう思おうとね。“早苗”」
「っ!」
◇
「流石は麗奈さんの血族。最後のときなんか麗奈さんそっくり」
「あっさり終わるかと思いましたけどぉ、私もちょっと興奮しちゃいました」
(――それに、なかなか良い見世物でしたし、ね)
なんだこの長さは…たまげたなぁ…(疲労)
今回は青vs紫。とりあえず新規キャラはやっと全員名前出たハズです。
疲労と長さがヤバすぎてもうニ度とこれはやりたくないのですが、まぁだ残ってると思うといつ終わるのか分かりません…。
ミス等ありましたら気軽にご指摘ください。